
若い頃は駅までの7分間、ゲーム感覚で毎日俳句をつくりました。
出来はともかく、努力なく出来ましたが、今はなぜかその気も起きなくなりました。
でも、うたはあそびの一種ととらえて、粗製濫造で良いと思っていることに変わりはありません。
したがって、自信はありませんが、誰か添削してくれるかもという期待をこめて、載せました。
<俳句>
陽だまりのぴくり残菊ノラのそり
床ばらいとっくり着て見るなごり雪
そば打ちて花はまだかと新酒抜く
空近しトビの輪はるか下にあり
枯れ沢の流木かすめ黒き影
頂に春蝉聞きてまどろみぬ

風起る漱石枕の彼岸過ぎ
枝打ちて つるりと剥けし秋のそら
連休は庭木に鋏空高し
風花に朱き狂女の爪が舞う
わび寺や障子の影は女郎花
散文/雪によせて/2008.02.07
目覚めると雲ひとつ無い真っ青な空だったのに、地面には雪が積もっていた。
東京はこれで今冬 早4度目の雪。
メールを開けてみると友人が撮った手賀沼や菅生沼の雪景色の写真があった。
見ているうちに 何か棘に触れた気がした。
こんな気持ちを言葉にしてみた。
詩の形式は別にして 日記風によんでいただければ うれしい。
「夢」
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一年ぶりの雪が 街に舞いはじめると
不思議と気分まで ふわっと
うきあがってしまう
空からやってきた突然の使者は
ひたすら点描し
汚れたキャンバスを つぎつぎと
無垢の世界へ塗り変えていく
でも
塗り残しがすっかり無くなる頃には
ひとのこころはもう
決して軽くは無い
多分 からだのどこかにも 雪が吹き込んだのだろ
風船の空気がぬけたように
不思議と萎えてしまうのだ
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そのうち 先が見えぬほどの風雪に変わったりすると
最果ての地で どん詰まりの人生を歌った
「北国の演歌」の世界の主人公になったりもする
そこでは 己が人生の不運や失ったもの などなど
うらみつらみが悲しみと一緒にこみ上げてきたりして
・・・・
そう もうその頃は外の雪は脇役に退いてしまうのだが
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男は 凍てついて行き先の読めないプレートのついた
がらんとした 夜汽車に乗って
星明かりの広い雪原を
ひたすらまっすぐに
横切って行く
男はその行き先を知らない
車内のダルマ・ストーブには 「燐」の青い炎 が見えるが
それは光だけの
冷たい炎だ
寒さで足や耳が だんだん鈍いものになってきたが
さほど痛さは感じない ものだと知った
思いっきり 強い酒を呷って 願った
が その願いとは裏腹に いつの間にか
だらしなく 眠ってしまった
分厚い皮コートの下で 男は夢をみた
とうに死んだ父だった
何か お金のトラブルに巻き込まれていたようだったが
何故か顔がない
金を立て替えたという男に どうも騙されていたようだった
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汽車は突然グワーンという金属音をたてて
強い衝撃とともに急停車した
夢を中断された男は 鉛のように重い頭をあげて
ゆっくりと窓の外を見上げる
が もうそこから雪の世界は消えていた
どのくらい時間が過ぎたのだろう
音が死んだ世界だったが、
時折遠くで
からから乾いた音が
かすかに聞こえたようだった
ここは もう違う世界なのだろうか
外に出てみた
夜が白みかけ ゆがんだ光のなかに
両側を灰色の岩山に囲まれた
恐ろしく殺風景な峡谷が続いていた
いつかTVが伝えていた
タリバン アルカイダ を想起した
戦いだけで生きている 義勇兵
迷い無き青春の匂い
目を凝らして よく見てみると
軌道に無数の石が崩れ落ちて
行く手を阻んでいる
もうこれ以上は進めないのだろう
望みを失った男には 既にどうでもいいことだったけど
その時 汽車のプレートが目に入った
埃まみれの青いホウロウ引きの鉄板を袖で拭ってみると
そこには白抜きで
男の生まれた ある外国の とある町の名前が
ぼんやり浮かんでいた
それはまるで 蝶の脱皮のように
姿を変え
男の胸のなかで羽化し
異国の空に消えた
その時 男は生きてきた己の永い時間が
薄れゆく苦い後悔の念とともに
初めて愛しいものに感じることが出来た瞬間だった
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短歌 |
<やま>
みねざくらさがし迷いて那須のやますさぶ風花われはなに臥す
しゃくなげははるかなるらし那須の谷しろきゆけむり朱ありとみゆ

瑞垣をつめれば白き岩塔の先にのりたるはい松いかに
まっすぐに立ちて朽ちたる白樺の示す矢先に水の音かすか
こめかみの高鳴り続く峠越え攀じる手にふるかたばみのはな
足尾なる袈裟丸山の白樺はわかば陽に透けひとり沸き立つ

白樺の疎林を行けばかぜわたり拙き身にもはなびら運ぶ
山小屋に友まだ着かず外見れば携帯利かぬおぼつかなき空

小夜ふけて雨しきりなる無人駅光る鉄路が途中でぶつり
一面の君影草は葉隠れの白き鈴より香り勝りて
高原の牧をのぼれば点々と乳垂れ牛が置物のごと
高原の時止りたる昼下がり放牧の牛置物のごと
高原の乳垂れ牛は白樺の影に潜みてごろりと涅槃
未知のやま畏れおののき萎える気をそっと抑えて家を出る朝
ジャングルの雨中の敗走かくなるかぬるぬるの山こちらあそびで
稜線戻るすべなく道なきを日暮れと競いて鳥の骨踏む
<同窓会>
デジカメですぐとどきたり薄き髪ストロボ反射の断り付きで
<麦秋>
赤城野にけむりたなびく麦秋の暮れ行くさまを切り取る車窓
茫々とセピア色なる赤城野は野焼きの土に赤き火のみゆ
<街あるき>
潮風に醤油のかおりまじりおりむかししのびて佃一丁目
<夢>
諍いを避くるばかりの吾(あ)をいとう夢枕だに本音言えずば
<会社を辞めた部下>
旅先の社(やしろ)で見つく辞めた部下角とれてあり流転ありしか
祈らるる神も告ぐなり「48」セールスのほか求職難しと
旅先の小さき社に誰かある転職多き辞めた部下なり
ふる社祈るかげあり伸びし髪いたつきしのばる辞めし部下なり
くじ引くかげは辞めし部下唯我独尊今はむかしに
参道をぽつりと行くは辞めし部下背中角張りいたつきしのばる
<つゆ空>
ながつゆに夏山あそび延びゆくをなげきつながむ長野路ネット
.再建の重責背負いし旧友を励ましおれば遠雷きこゆ
<むくげ>
一日を終えた先にも浄土なくくるま熨すなり路上のむくげ
死ぬるとも安住なき身はあらあらとタイヤ轢き去りむくげ二度死ぬ
ちりてなほやすらかならずたちまちにワゴンふみしくむくげの花よ
青きケシヒマラヤありしを明野の丘に細きその身を焦がしつつあり
