養生訓  1713年 貝原益軒84歳で著わした       徳間書房

    「禍は口から出でて、病は口から入る」「何でも食べよ腹八分目」

    腹がすかないのにひっきりなしに食べることが肥満の最も大きな原因

    食時の前後に運動をすること。食後は、少なくとも300歩は歩く。

    昼間は寝てはいけない。食後にすぐ寝ると胃は休み消化しない。

    7時以降は食べない。食して臥すれば消化しがたく病となる。

    小食こそ健康で働くための源泉である。飲食の慾をおさえることが日本人の健康にとつて重大である。「腹の皮つっぱり、目の皮たるむ」頭が働かない。

 お菓子は、少し食して可、過すべからず。

    中年以降、元気へりて、男女の色欲は、やぅやく衰ふれども、飲食の慾はやます。老人の、にわかに病をうけて死するは、多傷なり、慎むべし」

    いにしへの人、三慾を忍ぶ事をいへり、三慾とは、飲食の慾、性の慾、睡眠の欲望なり。

    「夕食は、朝食より進みやすし、心に任せて、食すべからず」

    「怒の後早く食べからず、食後怒るべからず、憂ひて食すべからず、食して憂いべからず」

    「百病は、多飲多食からおこる。」と古書に書いてある。

    すべて、陰気(古い)なものは、食らうべからず、毒がある。野菜は変色したもの、夏季には長く蓋をしておいたもの。

    酒は少し飲み酔う。飯の後一杯の美酒。空腹に飲むべからず。

    冷酒の害。夏冬とに温酒を飲むべし。熱飲は、気升る、食道がん、胃がんがおこることもあるという。冷飲は、胃をそこなう。冷酒を飲む命知らず。ゆっくり温めると有害物が発散する。

    焼酎は、すべて大毒であり、多く飲むべからす。一時に合わせ飲めば、筋骨をゆるくし、煩悩す。

    酒を多く飲む人の、長命なるはまれなり。酒は半酔に飲めば、長生きの薬となる。

    煙草は、すこしは益ありというども、害多し。煙草のみの銭失い。

    性の欲望に手綱をひけ。精気を保ちて減らさず。欲情をおさえることが大切であり、このことが健康の根本である。

    男の射精は生命力を減らし、肉体を疲労させる。若い時に、あまりにも性欲にふけった人は、知らず知らずに男らしさを食いつぶして、結果は知力も意思力も食いつぶして、必ず短命である。

    男女の性交は、二十代で四日に一度、三十代で八日に一度、四十代で十六日に一度、五十代で二十日に一度、六十代では射精はしない方がいい。六十代を過ぎて慾念おこらずば、とじてもらさずとして、回数の制限を除いている。わかくさかんなる人も、よくよくしのんで、ひと月に二度もらして、慾念おこらずば、長生なるべし。

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    四十すぎたら、精力はおとろえるが、あせることはない、ちょくちょく行い、ただ

射精をつつしむようにすることだ。交接してももらすなという教えである。

    病気になれば病気になりきる。もし死ぬか生きるかの段階がきたら、それは天命。騒いであまり他人を苦しめない。

    老後は、わかきときより、月日の早きこと、十倍なれば、一日を十日とし、十を百日とし、ひと月一年とし、喜楽して、ただに日をくらすべからず。つねに時・日をおしむべし。こころ静かに、いかりなく慾することなく、老後一日を楽しむべし。

    ただ生きながらえるのではなく、たのしく暮らすことであり、青年のまま、長い人生を終わることである。

    老人が気力をたもつ法は、言行をやわらげ、感情を激さず、すべてに無理せず、こころしずかに、寛容な態度で臨むことがもっとも大切である。

    いろいろ気をまわし、自分の体力に過ぎることをせず、心を楽しませるためには、庭やでたり、たかいところに登ったり、花木の手入れをせよ。

    老人の大食はバカの業。老人の胃腸は弱い。老人が頓死するのは十に九は食べ過ぎである。栄養価の高いものを小食せよということである。

    朝夕は肉一種を少し。そしてみだりに間食するな。

    小児をそだてつるには、三分の飢えと寒さとを存すべしと、古人いへり。小児に、味よき食にあかしめ、きぬ()多くきせて、あたため過ごすは、大いに禍となる。貧家の子は、衣食とも乏しき故、無病にて、いのち長し。

    小児はあたためすぎれば弱い。

    鍼をさすことは、いかん。曰く、鍼は、瀕死の病人などひどい高熱のひとにはさしてはいけない。

    灸が特にきくのは血行障害と食欲不振ということ。血りめぐりを良くし、胃腸を丈夫にするに効果がある。

    灸は患部に直接、よもぎの葉から作ったもぐさをあて、線香で火をつけて、その熱さを利用した古い物理療法である。通常摂氏七十度から百二十度に達するので、患部に軽い火傷ができ、それが神経を刺激して、ストレス効果をおこすのである。

    天晴れて灸すべし。

    養生訓のあとがき    「八十四翁 貝原 篤書」

以上、記したところは、昔の書物や先輩たちから聞いたことが大部分で、それを自分で試みて、効果があることは、思いつきのようなものでも、とりいれて、その大意を述べたものである。その詳細な具体的なことは、説き尽せないから、古人の書を読んで知らなければならない。

   本書は単なる文字を並べた書物ではなく、彼のすばらしい実践によって裏づけられた貴重なる「体験の書」であることを思うのである。(東京大学医学部卒 杉はる三郎)                   -2-