心に残ることば
  楊名時 健康太極拳の真髄 心・息・動の訓え 楊名時 海竜社 2005
    第一章  


 私は太極拳を舞うとき、体中に真っ赤な花をさかせるように心に念じつつ、誠心誠意精神を統一して、体の全組織を動かします。気は全身に流れ、血液も気に従って循環します。

 小周天―人間の体には目に見えない経絡が無数に張りめぐらされています。太極拳の動きは、この経絡に添って気を全身にめぐらし、血をめぐらします。…

 大自然は人間に自然治癒力を与えてくださったのです。太極拳で健康と心の病も快癒した報告があります。


 心が楽しく充実すれば、形もゆとりある美しさになります。
 
内面が7分、外の形が3

 心が気を動かし、気が血を導き、体のすみずみまで血液を送り、細胞を活性化する。明るい心、やさしい心、平らかな静かな心の人には病気は棲みつきません。 心乱れれば百の病を生じる。また、心は病を治す主治医であり、愛は効き目のある良薬。日々太極拳をつづけていくなら、身心を充実させ、計り知れない恵みをもたらします。天地に人に感謝しましょう。謙虚な心、明るい澄んだ心を保てば心は老いません。
心から楽しむことが人生の極意である。太極拳を心から楽しんで稽古をして下さい。


 武道は、魂を高め、己を磨く道であって、一時的な力、優劣を競うものではありません。反目するより譲り合い、戦うことより許しあうこと、縁あって同じ舟で出会ったのです。

   第二章      

 息をゆっくり吸いながら「意」をもって「気」を丹田に導く。単に空気を吸い込むだけでなく宇宙の精気、神気、活気を体中にめぐらして、静かに吐き出す気持ちでします。

  私は太極拳の稽古をするときに、体がふんわりと空に浮くアドバルーンになるようなイメージを描いて舞います。体中が気でいっぱいに満ち、軽やかにふんわりと膨らんでいる。

 吸って吐くの間に呼吸を止めること、これも重要です。

 太極拳は、呼吸を整えながら、全身の筋肉を無理なく伸ばしたり、縮めたりして血液の循環をよくし、体内のツボ(365あるといわれている)に自己指圧し、気を養う健康体術です。
 気は神経などがつまっている骨の髄に収めるのです。

  精気神「精」は食べ物によって生じた内臓の気
     「気」は心からでるもので体動かす原動力
     「神」は人間の全身を司る自律神経
      を指しています。口を開くと元気を散らします


 気は、体中に平均して、風船のようにまーるく、かけていたり、へこんでいたり、出っ張っていることがない。

太極拳を稽古するときは、素足になって下さい。気が足芯に素直に通じる気がするし、足芯から大地、地球へと…。母は足の裏で呼吸ができなければいけないと言われました。

   第三章  動

「気」を養う具体的方法は、心静かに雑念を払い、体中から力を抜いて「気」を丹田に集めるように深く長い呼吸をします。やがて内臓は動き新陳代謝が盛んになり、自律神経を調えます。呼吸に合わせた動きによって骨が丈夫になり、筋肉が育つのです。太極拳の静かな動きが病気を治し健康に導いてくれるのです。信じて下さい。

意識(意念)動き呼吸でつなぎ、三位一体とすることが太極拳の極意なのです。

下半身7分に気をこめます。足裏が5メートルもの地下まで根を張っているかごとく、どっしりと気を張ります。

※禅問答の一つですが、中国の隠元禅師が「あの宇治川の流れを止めよ」と弟子にいいました。あなたならどうしますか?目を半眼にするか、閉じると無念夢想の境地に入ります。

能や舞、太極拳も同じです。身ぶり、手ぶり、顔の表情、全身の動きが内面の心と一体となったとき、人の心を惹きつけるのです。あらゆる芸の出所は心と体、陰と陽です。

体のそれぞれの場所に虚と実があります。手を押し出したとき、手の方が実、指先が虚、上半身が実なら下半身は虚、下半身が実なら上半身は虚。常に動きによって変化します。

役に立つ人間を育てるには十年かかります。十年でやっと芸の道に達することができるんですね。柱になる立派な木を育てるには百年かかります。鍛錬を千日(3)してもこわすのは一瞬です。継続は力なり。

人生の最大の宝物は健康である。人生の幸福は人のために役立つことである。健康は人生の目的ではありません。私の薬は太極拳です。疲れたとき、まいっているとき、無心に太極拳を舞えば、たちどころに私の中の宝が輝き出します。太極拳していてボケた人は、探したがいません。ボケるのは何も考えないからボケるのです。