Chapter10 達人の技

 
 車は、目隠しでもするように長く伸びた枯れた葦を、カーテンをかきわけるようにじれったく進んだ。
 やがて視界が突然開け、明るくなる。
 シネマスコープの画面の端から端まで無駄なくうめ尽くすように、捜査員が広がってあわただしく動いている。
 「この風景も二度目だとなんだかなじんだものになってきたなあ」
 耕下がおもしろくなさそうに言った。
 前の事件の手がかりどころか、糸口へたどりつくきっかけさえつかめないうちに、なんと類似の事件が起きてしまった。自分たちのもたつきが模倣犯を呼んだのか、同一犯による、捜査をかいくぐった計画的なものか…どうにも展開が早過ぎる。
 馬子は口を一文字に引き結び、一言も答えずハンドルを握る。日ごろから表情の少ない娘ではある。もうすこし、先輩に対して、百歩譲って、先輩の経験というものだけに対しても、敬意を払う態度があってもいいのではないかと耕下は考える。あるいは馬子は、耕下などすぐ追い抜いてやると本気で思っているのかもしれない。馬子はたいそう有望な若手だそうだ。
 試験だけで昇進するのなら、私は十年後は警視総監になりたいと思います、馬子が舞網署に配属されたときに冗談めかして言ったことだ。
 馬子は、ごつごつした川原の石に揺られながらも、上手にハンドルをさばき、川から離れて呂洲署の車が三台止まっているところの後ろに駐車させた。
 ドアを開けると、上空から何機ものヘリコプターがいきかう音がいちだんと高く聞こえる。連続猟奇殺人事件となったいま、マスコミは本格的に騒ぎ出すことにしたようだ。
 「事件現場を上空から撮ることにどんな意味があるんでしょうね、ヘリなんか一機で十分なのに」馬子は上を見ながらうるさそうに言う。
 「アングルが変わっていいんだろ、警官の姿ばかりじゃ単調だ。ところで、そんな靴で石の上を歩けるのかい?」
 馬子は今日はシックなこげ茶のパンツスーツだったが、靴のかかとがやたらと高かった。
 「いえ、大丈夫」
 答えながら、ごつごつした川原の石の上を、長い髪をなびかせ平気で歩き出した。
背が高いので、モデルが撮影場所を目指して川原を歩いていくようにも見える。もうすこし肩がいかつくなく、もうすこし表情があったら、美人と言われるかもしれない。
 二人で歩くと、脚の長い馬子がいつも一足先になる。あとを行く耕下はよけいにさえなく、ずんぐりと見えることになる。
 呂洲署は舞網署が気後れするくらいの規模で捜査にあたっていた。
 川原といわず、川の中といわず、葦のしげみの根元といわず、捜査員たちが猟犬のように、事実、警察犬も何頭かいたが、それと鼻を並べてかぎまわっている。
 そのほぼ中心にいた、ベージュのコートを着た男が、二人をみとめたらしく、近づいてきた。
背が高く日焼けした精かんな顔立ち、同じ警部補だとういが、耕下よりはだいぶ若い。馬子と二人でいくときはたいていそうだが、相手はまず馬子を見てから耕下へ視線を移す。しかしこの警部補ははじめから耕下に視線をあわせ、
 「耕下警部補ですね、呂洲署機動捜査隊の河北です」
といって会釈してから、馬子に視線を移して目でうなずいた。こいつはわりあいしっかりしているようだ。しかし、
 「で、どうですか?」
 という耕下の問いには精かんな顔がくもった。
 「同一犯と思われます。舞網署管轄の事件との」
 「ということは…」
 「いまのところ手がかりはありません。残していないようです。じつに手際がいい、かなり洗練されてますよ。あそこに(土手の近くの葦原の中にぽつんと置かれていた大型のワゴン車を見やって)乗り捨てられていた護送車に残っていた指紋もガイシャのものだけでしたし、ガイシャが誘拐された裁判所にも目撃者はいない。縛られていた護送車の運転士も護送の警官も何も見ていない。同僚の誰かにいきなり腹を殴られたと思い込んでいたくらいですから」
 「腹を?」
 「『あてみ』です。適確に気を失わせています。国道を走る護送車は何人かに目撃されていますが、中の人物までは見ていない、ここでの殺害を見たものももちろん誰もいない。首の乗っていた白木の台は手作りのようでしたが、誰でも作れる程度のもので特徴はなく、もちろん指紋も残ってはいない」
 「確かに我々のヤマと似ている」
 ということは、呂洲署の捜査も耕下たち同様難航が予想されるということになる。呂洲署の捜査から、にわかに突破口が開ける可能性も低そうだ。
 「例のインターネットはどうです?」
 「掲示板ですからね、しかも特殊な技術で掲載した…特定するまではなかなか…」
 「河北さんの、ざっと見たかぎりの印象では、どうですか?」
 「プロか、それに近い連中のしわざでしょうね」
 「連中…と、いいますと?」
 「これだけのことを一人でやるのは無理です。周到な準備と慎重な計画が感じられます。ホシはすくなくとも二人以上いますよ。」
 「ガイシャの状況からはどうです?」
 河北は、河から離れた葦のしげみの前にある青いシートを見やって言った。
 「あそこに胴体があります。首のところをだいぶカラスにやられていますがね。まあ、妙といえば、両手を腹の上で組まされていたことでしょうかね。」
 「どういうことですか?」
 これは前の事件では見なかった現象だった。
 「あきらかに犯人が、殺したあとにやったんでしょう。死者に対する礼儀のつもりなのか、ブラックユーモアのつもりなのか…」
 「首のほうは?」
 河北は止まっている呂洲署の車の一台に向かって手を挙げ、さらにこっちへこいというように手招きした。鑑識係の一人が大きな発泡スチロールの箱をかかえて小走りにやってきた。
 「これですがね」
 河北は、いましがた捕った魚でも見せるように、スチロールのふたを開けて見せた。
 ドライアイスの煙とともに現れた九頭真吾の顔は、ワルでならしたおもかげの微塵もない悲惨なものだった。その表情はあの掲示板の写真にあったものよりさらにゆがみ、いまにも泣き出しそうにしわがよっている。しかも顔半分はカラスの宴会に供されたようで、皮がほとんど破られ、食いちぎられてぼろぼろだった。灰色みをおびた赤黒い肉がむき出しで、さらに鼻と額からは白い骨まで見えていた。
 うかうかとまともにのぞきこんでしまった馬子は、むごたらしさに思わず息を呑んだが、そのとき立ちのぼるドライアイスの煙とともに、死臭まで吸い込んでしまい、さしもの鉄面皮もたちまち気分が悪くなって、飛びのくようにその場を離れた。
 「おっと失礼、女性には刺激が強すぎたかな」
 河北はあわててふたを閉めた。
 「彼女は気を使ったのさ、あんまり見つめちゃ、首がきまり悪がるだろうと思ってね」
 耕下の軽口にむっときて、何か言い返そうとにらみつけたとき、けたたましく彼女の胸が鳴った。ほどよくウエストを絞った仕立てのいいスーツ、イタリア製かもしれない。スーツの下は明るい色のTシャツだ。これもブランドものにちがいない。馬子はジャケットの内側に手を入れると、Tシャツとコーディネートしたような明るい色の小さな携帯電話を取り出した。彼女の折りたたみ携帯は、片手の親指を動かすだけで、できのいい秘密道具のようにパカンと開いて大きくなる。
 頭を軽くふって、耳のあたりから柔らかい髪をどけて、携帯を押し当て、二言三言話したのち、
 「耕下警部補にです。」
 と携帯を差し出した。
 「誰から?」
 「前にも電話をいただいた方です」
 耕下は、まだ馬子の胸の温みの残る携帯を受け取ると、耳に押し当てた。彼女の快い肌の温もりが、耳から伝わっていこうとするのを、絹のようななめらかな声が妨げた。
 「どうだね、警部補、私の言ったとおりだろう。」
 辺田は名乗りもせずに切り出してきた。一度、しかも携帯でしか話したことがない、顔も知らない相手なのに、耕下が恩を感じなければならない先輩のような言い方をする。
 「どうだとはどういうことです」
 耕下もあいさつ抜きで、しかも辺田が言わんとしていることはわかっていながら、ことさらとぼけてぶっきらぼうに言った。
 対テロ高度対策室(TAHD)の特別捜査官・辺田和門は、人の話など受け流すように応答してくる。またしても、さも遠くから話しているような、雑音とともに高くなったり低くなったりする声。しかも今回はなめらかな声にひびが入るほどに割れている。耕下は3時の方向でホバリングしているヘリに乗っているに違いないとあたりをつけた。
 「変質者の仕業ではないってことさ。」
 「そんなことはわかりませんよ。呂洲署が捜査を始めてまだ3時間しかたっていないんですから」「君はこの新たな事件を聞いたとき、すぐわかったはずだ。そこに来て現場を見て確信したはずだよ。」
 辺田は見透かすように言い切る。
 「手口は同じ、犯行声明の仕方も同じ。何より現場に手がかりを残さない手際のよさだ。そんなことをしでかす大胆な奴は、世界広しといえども同じ奴しかいない。」
 耕下はヘリコプターの騒音にあおられるようにいらいらしてきた。現場を直接見てもいない、上司でもない人間の断定的な高説を聞き続けるいわれはない。
 「変質者だね。どう見ても変質者ですよ。同じ犯人かもしれないし、前の、俺たちのヤマを真似した野郎の仕業かもしれない。いずれにしても人騒がせな愉快犯だ、黒い警察きどりのね。」
 意地になって大声を張り上げたが、携帯の彼方の絹のような声の抑揚には変化はない。
 「愉快犯という説は悪くはない。しかし被疑者は愉快に感じてはいない。大事なのはここだ。犯行声明は芝居がかってはいるが、妙に淡々としているとは思わないかね。
 我らは天誅団、不埒者どもに天誅を加える…シンプルなキャッチコピーだ。宣伝会議で練り上げたような」
 絹のような声が説得力ありげに朗々と響くのがしゃくだった。
 「ガイシャは二人も殺していて裁判中でした。今回もガイシャに怨みを持つもののしかえしというセンも濃厚です。依頼された殺し屋による犯行ということも考えられる」
 「犯行の範囲が広く、大胆で、インターネットを自在に使ってくるなど起伏に富んでいることは、きわめて計画的で組織だっていることをうかがわせる」
 「あまりに場当たり的で我々が煙にまかれるという場合もありますよ。インターネットだって、今は珍しくない」
 「冷静沈着に人を殺し、つまり首を一刀の下に斬り、証拠を残さない犯行を連続させるというのは、並みの犯罪者ではない」
 「捜査官、両方とも現場を見てもいないのに、なぜそう断定的なことが言えるんです?」
 「見なくてもわかるさ、今私の膝の上にあるパソコンで、本庁にも舞網署にも呂洲署にもアクセスできる。私の身分を照会すれば、捜査報告書や資料をのぞかせてくれる。それに、ワイドショーと新聞と君の話しぶりも大いに参考になるしね。」
 「なるほど、車椅子の名探偵だったってわけですか。さっきからジージーいっているのは車イスの音だったんですね。そしていま私たちの上空にやってきたヘリに乗っているってわけだ。」
 「はずれ!確かに上空から現場のようすを見てはいるが、それはパソコンの中の、テレビ局のヘリが生中継している映像だ、ワイドショーでね。私は今、君とははるかに離れた場所にいるよ。しかも上空ではなく地面の下だ。ここはとほうもなく広い地下道なんだ。君、知っていたかね、国会議事堂や首相官邸、議員会館などは入り組んだ広い地下道で結ばれているんだ。地下鉄なみだよ。どこへでも行き来できる。近道であり、万一のときの避難場所であり、脱出口でもあるってわけさ。」
 捜査官の声は自慢話でもするようにはずんできた。
 「地下商店街ほど混み合っちゃいないが、適度な人の流れが常にある。なにしろ広いし、それなりの距離があるから、歩くよりは車に乗っているほうがいい。というわけで、ジージーいっているのは電気自動車の音だ。この車はわが部局ふたつめの備品だ。ちょっとした仕掛けもあるし、スピードも出てなかなか快適だ。用途は広い。今日は試運転の日なんだよ。」
 「新しいオモチャが手に入ってよかったですね。ところで今度のヤマは呂洲署の河北警部補の担当だ、河北くんにかわりましょうか」
 「いや君でいい、煩雑さをなくして小回りをきかせるために、すべての窓口は君にする。現在のところ事件のことを一番よく知っているのは君だ。君は私にとって有力な協力者でもある。今後とも協力をよろしく頼む。」
 耕下が辺田のスタッフに組み込まれてでもいるような言い方をする。
 「ちょっと待った、私は舞網署の生活安全課の所属だ。テロ対策室とは何の関係もない。」
 「だから協力を頼むと言っている。君はほかの普通の刑事より小回りがきくはずだ。5年前の不祥事にかかわる事件で上と対立して以来、昇進の道が断たれて、生活安全課という目立たない部署でひとり地道にこつこつやっている、そしてそこそこ腕利きだ。」
 「それもパソコン情報ですか、『そこそこ』というのを『かなり』に訂正してもらいたいね」
 「君の経歴を見て親しみがわいたよ」
 「こっちはあんたの声を聞くかぎりそれほどでもないよ。それにこのヤマはそのうち捜査一課に召し上げられる」
 「君はかなりいいところを言い当てた、『黒い警察』ということだ。」
 「スポーツ新聞に載ってましたよ、『現代の仕掛人』ってね。『法の届かない悪を一刀両断、悪党は眠れない、恐怖の天誅団』。まるで礼賛するような騒ぎだね」
 「それこそが奴らのねらいではないかという気がするんだ。手段はどうあれ、自分たちのやっていることは正しいと人々に納得させる、これは序曲だ…」
 「テロ対策室の捜査官という立場にこだわりすぎた思い込みじゃないですか、この時代に日本刀で何ができるというんです、時代錯誤の変態ですよ。」
 「なるほど、君は今回も日本刀による犯行と認めているわけだな。で、どう捜査する?」
 辺田はさりげなくつめよってくる。
 「まあ、前のヤマからの流れでいくと、とりあえず日本刀を持っていそうな右翼かな」
 「いいセンだ、それが一番有望だと思う。怨恨だの変質者だのという、ムダ足に終わるに違いない、こまごました方面の捜査は呂洲署の捜査官にまかせておけばいい」
 電話の声が聞かれるはずもないが、辺田の、呂洲署を軽く見ているような口ぶりを河北に聞かれてはと、思わず顔を上げた。
 河北たちは、長電話に没頭しているらしい耕下はさっさとうっちゃって、馬子と話していた。馬子は感心したようにしきりにうなずいている。
 ツーッと携帯が鳴り始めた。辺田からの電話はいつの間にか切れていた。今回もうかうかと相手をしてしまった。唐突に一方的に電話してきて、言いたいことだけ言うと一方的に切る。あの辺田という男はいったい何様なのだ。通話終わりのボタンをさがしてまごまごしていると、シャキンという音がして、いきなり自動的に携帯が折りたたまれて小さくなった。この携帯もどことなく辺田に似ているようだ。
 「馬子ちゃん、携帯をありがとう。」
 耕下は出遅れた思いで近づき、馬子に携帯を差し出した。
 「いや失礼、事件に関係あることではあるんですが、長電話してしまって」
 いくらかバツが悪そうに河北に言い訳めかして言う。
 馬子は、耕下などいてもいなくても気にするほどのことではないといったようすで、うるさそうに携帯を受け取ると、
 「河北警部補は、日本刀による犯行だとお考えのようです。この状況ではそれが有力な手がかりになる可能性があるとのお話です。」
 と、早くも河北に心酔しているような調子で言った。確かに河北の好男子ぶりに心酔しているのだろう。
 「それで、刀剣の専門家の方に来ていただいているんだそうです。」
 なるほど、河北は気のつく警部補ではある。
 「宮本さん」
 河北の声に、背を向けていた人物が振り返った。
 河北と同じような長いコートを着て、ひときわ寒さを感じるとでもいうように身を硬くしている。余裕のある顔立ちから警察関係者でないことは一目でわかる。丸々とはげあがった頭の両わきにわずかに灰色の髪が残っている。かなりの年輩と思えるが、ぴんと伸ばされた背筋はかくしゃくとした、機敏な印象を与えている。
 「地区抜刀道連盟の首席師範・宮元さんです。」
 河北の紹介とともに、丸い頭が耕下に向かって軽く下げられた。しかしその眉間にはしわがより、顔色がいくぶん青ざめている。
 「いや、殺人現場というのは初めてでして…。なかなか凄惨なものですね」
 死体をじっくり検分させられたらしい。
 「宮元さんのお考えを聞かせて下さい」
 河北にうながされ、宮元はうむと気をとりなおしたように顔を上げると、
 「日本刀とみてまちがいないでしょう」
 と、河北、馬子、耕下をかわるがわる見ながら、愉快でなさそうに言い切った。
 「切り口から見て、江戸中期の薩摩のものかもかもしれない」
 「そんなことまでわかるんですか」
 耕下が思わず言った。
 「単なる推測ですがね…薩摩の刀は重い、あれほど鮮やかに斬るには、それなりの重量がいります。一太刀でやるには重さもあり、幅もある薩摩の刀が最適です。」
 「では斬った犯人はどんな奴と推測されますか?」
 「もちろん居合い、剣道の心得のある人物と考えられますが…」
 「剣道の心得なら私もいくらかあります、真剣を持ったことはありませんが。で、さらに推測すると?」
 耕下はつりこまれた。
 「真剣を使うのはご存知のように居合道です、むろん登録された真剣をね。…それより、この人物、犯人は、天性のものを感じさせます。最初の一太刀で胸から背中へ抜けている。つまり、肋骨を断ち、肺と心臓を断ち、胴を両断している。さらに二太刀目で首を完全に斬っている。どちらも一刀のもとです。私よりかなり上手だ。
 首を断ち切るのは、相手が頑健な男であればなおのこと、刀が主役だった昔でも、容易なことではありませんでした、真ん中に脊柱骨という直径2、3センチの骨があるわけですから。たいていはナタをふるうように何度か叩いて叩き切るか、のこぎりのようにひいて切ったりしたものだそうです。一刀もとに切れるのは使い手のみです。
 しかも今回のこの人物には、ためらいも迷いも感じられない。一呼吸で適確に切っています。居合道で切るのは、据え物切りといって、丸めたワラの束です。私も何年も居合をやっているが、生き物を、まして人間など切ったりしたことは一度もない。江戸時代ではないのだからあたりまえです。しかし、切り口から見て、この犯人には熟練の腕を感じる…たいへんな使い手ですよ。」
 宮元は凄惨な殺人現場に脅えて青ざめていたのではない、犯人の腕前に畏怖していたのだ。宮元の解説に一同少しの間声を失っていた。日本刀の達人の殺人鬼…
 頭の中の犯人のイメージを振り切るように、耕下がきいた。
 「では、河北警部補は、まず手始めに、管轄内の居合道や剣道の関係者、刀剣の持ち主などを中心にあたっていく…?」
 「その前に、緊急に対策が必要なことがあります。ガイシャ・九頭真吾の親のことですよ。このまま黙っているはずがない」
 河北はため息まじりに答えた。
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