研究題目
ーー主にイネとトンボについてーー
田んぼは、日本国土の5%にあたります。私たちの周りには、人工の自然とは言 え、まだ田んぼがあり、さまざまな生命が育まれています。今回は、田んぼの主役の イネと、「田んぼ」が語源といわれる「トンボ(ヤゴ)」について観察しました。


(写真)
そこで「えい」の中から雌しべを取り出して、酢酸カーミン液で染色して顕微鏡で 観察しました。するとたくさんの花粉が受粉していました。本で調べたところ、イネ は自家受粉すると書いてありました。倍率を上げると花粉が雌しべにしっかりからま っていました。
受粉してから次第に子房がふくれ始め、50日間でりっぱな種子つまりお米ができる のです。9月下旬、田んぼのイネは黄金色のこうべを垂れて稲刈りを待っています。 この中の一部は来年の種もみになります。
私たちは田んぼにいる様々な生き物のうち、トンボのヤゴについて観察しました。 「トンボ」の語源は「田んぼ」から来ているそうなのですが、どのくらいたくさん田 んぼから発生するのでしょうか。はじめ、ヤゴはそう簡単に見つけられまいと考えて いたのですが、慣れると以外にたくさん見つけることができました。そして何種類か のヤゴが共存しているようでした。
田んぼの生態観察をするため、学校近くの田んぼの地主さんに許可をもらって、約 2反(2000u)の田んぼを1年間観察させてもらうことにしました。
一方、プランターでは自分たちでイネを「もみ」から育てて観察しました。具体的
には、気温、水温、地温の関係、イネの生育観察、ヤゴの調査などを行いました。
1、田んぼの気温(地上10 cm)、水温、地温(地下5cm)の関係
まず手始めに、田んぼの環境としての各温度を調べました。一日の変化を見ると 水田では昼間は水温が高く、ついで気温、地温の順になっていました。しかし夕方 から夜にかけて水温、気温は7〜9℃も下がるのに対して、地温の下がり方は ゆるやかで、4℃くらいしか下がりませんでした。
イネの根は地中という温度変化の少ない環境で生きているといえます。一方、トン ボのヤゴをはじめとする水中の生き物には温度変化の激しい環境と言えそうです。
ところが、プランターではこの3つの温度の関係が水田とは違っていました。プ ランターをアスファルトの上に置いたので照り返しのため気温や地温が高くなりまし た。イネの密集している田んぼでは、たくさんのイネが蒸散をすることにより、気温 の上昇を抑えているとも考えられます。
2、イネの葉齢ごとの葉の伸び方と、背丈の伸び方
私たちはプランターで「日本晴れ」と「瀬戸娘」という品種の種もみをじか まきで育てました。イネは分けつ、つまり株を増やしながら、葉を左右交互に伸ば して成長します。最初の葉から1葉齢、2葉齢と呼び、それぞれの葉の成長を記録し ました。6月3日のじかまきから約80日たった8月20日、イネに花が咲きました。
穂が出る前の2〜3枚の葉は少し短めになっていました。穂が出ると葉や背丈の成長 は止まってしまい、しっかりと光合成がおこなわれ、45日から50日の後にしっかり完 熟した種をつくります。
(右の写真図)
イネの生育・名称
3、田んぼのヤゴ調査
「トンボの語源は田んぼ」とある本に書いてありました。さて本当だろうかと疑問 に思い、調べてみました。田んぼの周辺34uを、ていねいに調べたところ、145匹の ヤゴを見つけることができました。これは1u当りに4.3匹いることになります。この数 字は予想以上のものでした。
縦9m、横7mの教室の広さで考えると273匹のヤゴがいることになります。うまく 羽化すれば教室の広さから273匹のトンボが飛び立つことになります。トンボの語源も うなずける思いがしました。
7月21日、夕方、羽化後のトンボが田んぼの上をたくさん飛んでいました。この時期 が羽化の真っ最中のようでした。
しかし、田んぼの活性化のため水を抜いて干上がらせたり、除草剤の散布などで全 ては生き残れないと思われます。稲の害虫の天敵としてのトンボの役割については今 後、もっと研究してみたいと思います。
(下の写真)
「トンボの語源は田んぼ」という説もある。ヤゴの多いことに驚く。
4、米の収穫量について
ご飯茶碗1杯の米の数はいくらくらいか。教室の広さの田からはどれくらいの米が 取れるのかを試算してみました。
まず米10gの数は630粒でした。これをもとに比例関係から、米1合は約9000粒にな り、1合はご飯2杯分だから「1杯は約4500粒」となります。また「1杯は稲株(束) で2束分」となりました。
教室の広さからは263合、37kgの米がとれます。1人1日に3合食べるとすると教室の 広さの田からは90日分つまり3カ月分とれることになります。そして、「1人1年分の米 は4教室分の田」からとれる計算になります。
「1人1年分の米を育てるのに4教室分の田んぼがいる」ことを考えると、最近田ん ぼがどんどん宅地に変わっていく様子を見るにつけ、このままでいいのかと不安に なりました。
「小さな田んぼのつくり方」 中村 修・著
(於:山口県教育会館)