涼宮ハルヒの憂鬱 射手座の日 前編
配役比率 ♂3:♀3=六名
古泉:「涼宮閣下。
先行の索敵艇より入伝。敵艦隊を補則しました」
有希:「敵艦隊、高度8時20分。
距離6.3天文単位。光速の約60%で、本艦隊に接近中。
総数は、約一万五千隻」
ハルヒ:「・・・来たわね。
敵を殲滅するわよっ!全艦、戦闘配置!」
古泉:「アイアイマン。
全艦戦闘配置。反応艪(はんのうろ)、戦闘出力へ。
推進機関駆動、第四戦速。3・2・1・・・イグニッション!」
みくる:「ちょ、超重力魚雷、全発射艦に送電開始しますっ。
それから・・・スーパープロ、プロトン砲!ぜ、全砲門発射体勢!」
有希:「電子戦開始。
電磁ブースター最大。全ECM・ECCM作動」
ハルヒ:「よし!全艦最大船速よ!!」
キョン:「おい、ハルヒ」
ハルヒ:「ん」
キョン:「もうちょっと下がったほうがいいんじゃないか?
お前の艦隊が前に出すぎだぞ?」
ハルヒ:「あたしだって、ビームやミサイルをぴこぴこ打ち合ったりしたいのよっ!」
キョン:「将棋やチェスだって、王将が敵陣にズカズカ乗り込んだりしないだろ?」
ハルヒ:「それは・・・・・・そうかもね。
あじゃあ、あんた達でなんとかしなさいっ。
敵の大将を見つけだして、バシバシ砲撃するの!
必ず勝つのよ!
ちょこざいなコンピ研の連中なんか・・・ギッタギタのメッタメタにやっちゃいなさぁぁーいっっ!!」
キョン:「・・・・とっとと白旗をあげた方がいいんじゃないのか?
ま、そうもいかないんだろうが」
(一週間前)
キョン:季節は秋。
文化祭がどうにか無事に終わって数日が過ぎ、学園に静けさが戻っていた。
つまり平凡な日常がまた始まったわけなのだが・・・
このSOS団アジトでの放課後を、平凡な日常と呼んでいいのかは保留しておくべきだろう。
未来人・宇宙人・超能力者の三人と一室でまったり過ごし、
かつ正気と客観性を保ち続けている俺は、結構大物なのかもしれないな。
ラカンにスカウトされるかもしれん。
古泉:「ずいぶん、悩んでいるみたいですね」
キョン:「別に。
最近、この理不尽空間に普通に馴染んできてる自分に感心してなぁ。
そろそろ誰かが褒めてくれてもよさそうなものだ」
古泉:「ならば、僕が賞賛の言葉を贈ってさしあげましょうか?」
キョン:「お前に褒められても嬉しかねぇよ。
何か裏があるんじゃないかと、かえって不安になるだけだ」
古泉:「ふふっ。ごもっともですね」
みくる:「お待たせしちゃってごめんなさいっ。(お茶を出す)
『雁音(かりがね)』っていうのを買ってみたんです。
うまく淹れることができたと思うけど・・・」
キョン:いえいえ。朝比奈さんの御手が差し出すものなら、
たとえ水道水でもアルプスの雪解け水以上です!!
みくる:「ふふ、味わって飲んでね」
古泉:「ところで、涼宮さんは?」
キョン:「掃除当番だ」
キョン:あいつがいないと、平和そのものだな。
(コンコン)
みくる:「はーい、ただいまー!
・・・あっ。コンピュータ研の部長さん・・・?」
部長:「ん?団長さんは不在か・・・」
キョン:「何でしょうかねぇ?」
部長:「フフ。まずこれを受け取ってほしい。
中に入っているのはゲームソフトだ。
僕たちのところが開発した、オリジナルのものだよ?
この前の文化祭で発表したんだけど、見なかったのかな?」
キョン:「・・・覚えてません」
キョン:文化祭でいつまでも覚えていたい記憶は、
朝比奈さんの焼きそば喫茶用衣装くらいのものだ!
部長:「そっか・・・展示場所が悪かったのかなぁ」
キョン:「それで、ご用件は?」
部長:「そうだった!・・・僕たちと、そのゲームで勝負してもらいたい!!」
キョン:「ハァ?」
部長:「勝負だよ!ゲームで勝負するんだ!」
キョン:「ハァ・・・」
部長:「真剣勝負だ!君たちと勝負したいんだよ!」
キョン:頼むから、そう勝負勝負と連呼しないでくれ。
ハルヒの地獄耳がその単語を聞きつけたら・・・
ハルヒ:「うりゃあーっ!(部長にドロップキック)」
部長:「うわぁああっ!」
部員:「部長~!」
ハルヒ:「勝負ですって?あんた達何者?
ははーん、さてはあたしのSOS団を邪魔に思う秘密組織か何かでしょ?
そうはいかないわよ!
暗い闇を照らして邪悪を根絶やしにするのが、正義の味方の使命なんだからねっ!」
キョン:「なぁ、ハルヒ。蹴りを入れる前に話を聞けよ」
ハルヒ:「キョン!勝負事っていうのはね、言い出したその時から勝負なの!
敗者が何を言おうとそれは言い訳よ!
・・・って、何よお隣さんじゃん。
どうしてこんな奴らがケンカ売りに来たわけ?」
キョン:「だから、今まさにそれを説明してもらうところだったんだよ」
ハルヒ:「あぁ。そうだったの」
部長:「・・・っ、卑怯なりSOS団!
とにかく、我々コンピュータ研は、SOS団に勝負を申し込むぞ!」
ハルヒ:「勝負ね!てやぁっ!」
部長:「うわぁ!!」
部員:「部長~!」
キョン:「・・・なあ、いい加減話を進めたいんだが?」
ハルヒ:「で、要するに?」
部長:「自作ゲームで対戦して、僕たちが買ったら返却してほしいんだ」
ハルヒ:「返却?何を?」
部長:「使ってないならパソコンを返せよ!!」
ハルヒ:「あたしは使ってるわよ?この前の映画も、これで編集したのよ!」
キョン:やったのは俺だが。
ハルヒ:「ホームページも作ったし!」
キョン:はい、それも俺がやった。
部長:「そのホームページだってほとんど更新してないじゃないか!!」
キョン:毎日カウンタを回してた暇人は彼だったのか。カマドウマの時のアレも。
ハルヒ:「でもあたしがちょーだいって言った時、あげるって答えてたじゃないの!
キョン、あんたも覚えてるでしょ?」
キョン:「・・・そうだっけ?」
部長:「あんな取引は無効だ!断固抗議する!
パソコン強奪時に受けた精神的苦痛は、この際だから忘れてもいい・・・」
みくる:「ぅっ!」
部長:「いや、忘れたい・・・。お互い忘れよう。
・・・とにかく!そういうわけで僕たちと戦えっ!!」
ハルヒ:「まぁいいわ。そんなに勝負したいんならしてあげようじゃないの。
それで?そっちは何を賭けるの?」
部長:「そうだな・・・
新たにパソコンを人数分、四台進呈しようじゃないか」
ハルヒ:「え、いいの!?」
部長:「ああ」
ハルヒ:「ホントね!?途中で、やっぱやめー!なんて許さないわよ!」
部長:「言わない!約束する」
ハルヒ:「結構な自信ねぇ・・・いいわ。
そういやぁあんたんとこ、女子部員いないでしょ?
もしそっちが勝ったら、(有希を指差し)この子をコンピュータ研に進呈するわ!」
部長:「ええ!?」
ハルヒ:「有希ならきっと即戦力になるわよ!
そっちがパソコン四台を賭けるのに、こっちが一台じゃ不釣合いだからねっ」
部長:「えっ、いや・・・・・それは!」
キョン:いや・・・パソコン四台と長門ではスペックに開きありすぎるぞ。
お前は知らないだろうが。
ハルヒ:「なに?みくるちゃんの方がいいわけ?」
部長:「・・・!」
みくる:「ふぇっ・・・」
キョン:「・・・お前が賞品になれ。
賭けるなら自分の体を賭けたらいいじゃねぇか。勝手なことぬかすな!」
ハルヒ:「何言ってんのよ!
神聖にして不可侵な象徴たる存在、それがSOS団団長なの!
あたしはこれだって思う人以外に、この職を譲るつもりはないわっ」
キョン:お前は卒業後もここに居座るつもりかっ。
ハルヒ:「で?どっちがいいわけ?」
部長:「なっ、ええっと・・・」
ハルヒ:「どうしてもって言うなら・・・まぁ、あたしでもいいけどさ」
部長:「あぁっ、それは断固遠慮しておく・・・」
ハルヒ:「ん」
部長:「ゲーム内容は、5対5のオンライン宇宙戦闘シュミレーションだ。
対戦開始は一週間後の午後四時。
それまでに腕を磨いておくことだねぇ。あまりに弱いと拍子抜けするから」
キョン:既に勝った気でいるな・・・
ハルヒ:「賞品の前払いとは、気前がいいわねぇ。
うんうんっ、やっぱパソコンは団員の数だけあるべきよねぇ!」
キョン:こっちも勝った気でいるし!
キョン:「今度の勝負だけどな、とりあえずインチキをするのはやめておこう」
古泉:「インチキとは?」
キョン:「今回ばかりは宇宙的・・・あるいは未来的、または超能力的なイカサマ技は封印だ。
全うに戦って、全うな結末を迎える。それが一番いい」
古泉:「我々が負けてしまってもいい、と?」
キョン:「そうさ。負けても失うのは盗品のパソコンだけだ。俺たちは別に困らん」
キョン:返す前に、パソコンの中の朝比奈画像集をどこかに移す必要はあるだろうが・・・
古泉:「パソコンのことではありません。
涼宮さんは、何かに負けることが好きではないのです。
負けそうだと感じると閉鎖空間を生み出して、人知れず例の『アレ』を大暴れさせてしまう・・・
それでもいいというのですか?」
キョン:「構いやしないね。いくらあいつでも、そろそろ学んでいい頃だ」
古泉:「くすっ。ふ、ふふっ・・・」
キョン:「・・・なんだ、気色悪い」
古泉:「いえ。うらやましくなったものですから。
あなたと涼宮さんの間にある、見えざる信頼関係に対してね」
キョン:「何のことやらさっぱりだね」
古泉:「例えば、一週間後のゲームに負けたとします。
しかし、そこで涼宮さんが閉鎖空間を生み出したりはしないだろうとあなたは思っている。
そのように信頼しているからです。
また、涼宮さんはあなたならゲームを勝利に導くだろうと信じている・・・これも信頼です。
彼女が団員の身柄を賭けようかと言い出したのは、負けるはずがないと確信しているからですよ。
・・・決して言葉に出したりしませんが。
あなた方二人は理想系といってもいいくらいの信頼感で、結びついているんです」
キョン:「・・・はぁー」
古泉:「『THE DAY DF
SAGITTARIUS Ⅲ』ですか」
キョン:「Ⅲってことは、ⅠとⅡもあったのか・・・」
ハルヒ:「なんかイイ感じに決めようとして、
かえって意味不明になってる名前ね!」
キョン:それを言い出したらSOS団はどうなんだ・・・
キョン:「ゲーム自体はごくシンプルだな・・・。
五人にそれぞれ一万五千隻の宇宙艦隊が与えられる。
それを各自のパソコンから操る・・・。
敵を全滅させるか、あるいは敵の大将を撃破すれば勝ちだ」
ハルヒ:「・・・この明るいところは?」
古泉:「これは索敵範囲ですよ。
この中でしか、敵の位置や障害物がわからないんですね。
索敵艇を出して、この範囲を広げないと、敵の船艇を撃てません。
すみやかな敵の位置特定と行動予測が、勝負の明暗を分けることになりそうですね」
みくる:「えっと・・・最初は相手が見えないってこと・・・?
キョンくん、あの・・・あたしこういうの苦手でよくわからないんですけど・・・」
キョン:「大丈夫。ゲームですから、適当に遊んでおけばいいんですよ」
ハルヒ:「適当なんてとんでもないわ!!」
みくる:「ひっ!」
ハルヒ:「完膚なきまでにコンピュータ研をたたきのめすんだから!!
これからみっちり練習するわよ!
大将はとーぜん、あたし!さぁ、総員戦闘配置!!」
キョン:・・・長門なら健闘できそうだが。
(マウスを空に浮かして回す有希)
キョン:前言撤回!ダメだこりゃ。
続