涼宮ハルヒの憂鬱  孤島症候群 ¡½後編①¡½

 

配役比率 ♂3:♀3:♂or♀0=六名

 

 

 

 

 

 

キョン:「・・・」

 

ハルヒ:「・・・あ、あ・・・」

 

(圭一のそばに歩み寄り、脈をとる)

 

新川:「動かしてはいけません。

・・・亡くなられております。果物ナイフですな」

 

みくる:「ひぇ~、ふぅー・・・」(気絶)

 

古泉:「大変なことになりましたね・・・。

・・・おや?(圭一の胸ポケットを見て)

手帳を貫通しています。

犯人はかなり、腕力のある人間のようです」

 

キョン:「ということは・・・犯人は男だと考えて、間違いないだろう。

そして、多丸裕さんの姿が見えないということは、すると・・・」

 

古泉:「このこと、妹さんには・・・」

 

キョン:「言わない方が、いいだろうな」

 

古泉:「ちょっと考えるべき事態が発生したようですね。

この状況はまさしく、クローズドサークル。

一見すると、殺人事件でもあります。

さらに・・・この部屋は密室になっていました。

さて・・・出入り不能な部屋で、

犯人はどうやって犯行を行い、出ていったのでしょうか」

 

 

 

 

 

キョン:「・・・」

 

妹:「ねえ、キョンくん。なんかあったの?」

 

キョン:「言ったろ。圭一さんが急病で寝こんじまったから、

大人しくしてなきゃいけないんだ」

 

妹:「でも、なんでみくるちゃんまで・・・」

 

みくる:「ぅう~!うっ・・・」

 

ハルヒ:「・・・。キョン、ちょっと」

 

キョン:「・・・」(ハルヒに呼ばれついていく)

 

ハルヒ:「有希。ちゃんと鍵閉めて、誰が来ても開けちゃダメよ」

 

有希:「・・・わかった」

 

 

 

 

ハルヒ:「これって殺人事件なの?」

 

キョン:「どうやらそうらしい」

 

ハルヒ:「うー・・・まさかな。

こんなことになっちゃうなんて、思いもよらなかった」

 

キョン:「おまえ、事件を熱望するようなこと言ってたじゃないか」

 

ハルヒ:「だって!・・・本当になるとは思わないもん!」

 

キョン:嵐の島で発生した密室殺人。

旅行先でたまたまそんなもんに出くわしてしまう確率は・・・いかほどのもんだろう?

ひょっとして、これもハルヒが望んだから起きた事件なのか?

 

ハルヒ:「はぁ・・・困ったことになったわね」

 

キョン:エイプリルフールのつもりで言った冗談が、

本当になって困惑しているいたずら小僧のような風情だ。

 

キョン:「こんなことは考えたくないが・・・最大の容疑者は裕さんだな。

何しろ、姿が見えないんだから」

 

ハルヒ:「そういえば・・・。昨日みくるちゃんが言ってたわ」

 

 

 

みくるK:「ふぅ・・・・。・・・ぁ?」

 

 

 

キョン:「二人がケンカしてた?」

 

ハルヒ:「・・・ように見えたんだって。

それから、もう一つ。夕べのことだけど。

ゲームの途中で、あたしトイレに行ったでしょう?

そんとき、ちょうどこの場所で・・・」

 

 

 

裕K:「あぁ。急ぐんだ。パスポートとトラベラーズチェックを用意してくれ」

 

 

 

ハルヒ:「今から思うと・・・あれは外国に高飛びする手配をしていたのかもね」

 

キョン:「でもなんで密室なんだ?

自殺に見せかける工作でもないし。

わざわざ密室に仕立てる理由がないだろう」

 

ハルヒ:「・・・。うん、やっぱりじっとなんかしてられないわ!

圭一さんの部屋、もう一回よく見てみましょう!」

 

(キョンの腕をひっぱる)

 

キョン:「い?うぉっ」

 

 

 

 

新川:「警察に連絡しましたところ・・・

誰の立ち入りも許可しないように、とのことでございます」

 

ハルヒ:「いつ来るの?警察」

 

新川:「予報によれば、明日の午後には天候の回復が見込まれるようですから、

そのころあたりになるのではないでしょうか」

 

ハルヒ:「鍵は一晩中かかってたの?」

 

新川:「わかりかねます。私はノックをしてみただけですので」

 

ハルヒ:「ノックだけ?」

 

新川:「圭一様のお部屋には仕事の書類などがありましたので、

お返事なしにドアを開けることは憚(はばか)られたのです」

 

キョン:「圭一さんと裕さんは、仲悪かったのか?」

 

新川:「・・・・・・それも、わかりかねますが。

今となれば、私と森がここに仕えるようになりましたのは、

この一週間程度のことでございますので」

 

ハルヒ(&キョン):「一週間!?」

 

新川:「私どもは、パートタイマー。

臨時雇いの執事とメイドでございます。

夏のほんのひと時、二週間ばかりの契約でございました」

 

ハルヒ:「・・・つまりこの別荘だけ?昔から圭一さんとこにいたんじゃないのね?」

 

新川:「左様で。

ご兄弟の間柄についても、裕様が圭一様の会社の社員でおられた、としか・・・」

 

キョン:・・・なにか引っかかる。なんだろう・・・この妙な感覚は。

 

 

 

 

ハルヒ:「・・・あら?古泉くん!何してたの?」

 

古泉:「館の中を見回っていたんです。

裕さんはどこにもいませんね。あなた方は?」

 

ハルヒ:「外!船があるかどうか確かめるの!」

 

森:「船はないと思われますが」

 

ハルヒ:「どうして?」

 

森:「昨晩のことです。

裕様が、何かに急き立てられるように玄関に向かっておられたのです」

 

古泉:「裕さんが船を奪って島を出て行った、と言われるんですか?」

 

森:「確認したわけではありません。

でも、私が裕様を見たのはそれが最後です」

 

ハルヒ:「何時ごろ?」

 

森:「午前、1時ごろだったと思います」

 

ハルヒ:「・・・」

 

 

 

 

(嵐の中、外で出るキョンとハルヒ)

 

キョン:うっかりすれば、がけ下に転落だ。

まあいい。

落ちてもこいつと一緒なら、生還の確率が上昇するような気がする。

 

ハルヒ:「見て、キョン!」

 

キョン:「クルーザーがない。やっぱり、裕さんの仕業か?」

 

キョン:灰色の空。黒い海。いつぞやの閉鎖空間を思い出す。

どうもこういうモノクロ世界は、好きになれそうにもない。

 

ハルヒ:「キョン!」

 

キョン:「え?」

 

ハルヒ:「誰かいる!あそこ、岩の向こう!

誰か外に出てきたのかしら?それとも・・・。真犯人かも!」(走り出す)

 

キョン:「おい、待て!ハルヒ!」

 

 

 

キョン:「なぁ!本当にこっちに来たのか?」

 

ハルヒ:「だって、他に道ないじゃない!・・・ぁあああ!」

 

キョン:「ハルヒ!!」

 

(足元が崩れ、二人転げ落ちる)

 

 

 

ハルヒ:「・・・キョン?キョン・・・キョン!」

 

キョン:「うっ・・・」

 

ハルヒ:「大丈夫?生きてる?!」

 

キョン:「・・・あぁ。多分な」

 

ハルヒ:「(あたりを見回し)やっかいなことになったようね」

 

キョン:「・・・もとの道には、戻れそうもないな」

 

ハルヒ:「ねえ。あれ」

 

(岩壁の隙間を発見する)

 

 

 

キョン:幸い、洞窟の中はあったかかった。

地熱のおかげか、温泉の湯脈でもあるのかもしれない。

 

ハルヒ:「あの影・・・なんだったんだろう?」

 

キョン:「ホントに、生物だったのか?見間違いじゃないのか」

 

ハルヒ:「そんなハズない・・・と、思うんだけど。

ねえキョン。圭一さんを殺したのって、本当に裕さんなのかな?」

 

キョン:「どういう意味だ?」

 

ハルヒ:「さっきからずっと考えてたの。

森さんの証言によれば、裕さんが島を出て行ったのは昨夜遅くでしょう?

でもね、さっき圭一さんに触れたとき、死体はまだあったかかったのよ。

意味わかる?

つまり、あたし達が見つけたとき、圭一さんはまだ死んだばかりだったってこと」

 

キョン:「どういうことだ?

裕さんは台風の夜別荘を出て、

いったんどこかへ潜んでおいてから、圭一さんを刺して逃げたのか?」

 

ハルヒ:「・・・違うと思う。

仮に、圭一さんが殺されたのがあたし達が見つける一時間くらい前としても、

そのころにはみんなとっくに起きて、家の中を動き回ってたじゃない。

物音も悲鳴も聞こえないなんて、不自然よ」

 

キョン:「でもおかしいだろ。

圭一さんは胸を刺されたまま、何時間もずっと生きてて、

自分で鍵を閉めたとでもいうのか?

そもそも裕さんが犯人じゃないなら、逃げ出す理由が・・・」

 

ハルヒ:「待って!わかった!わかったわ・・・事件の真相が」

 

キョン:「・・・」

 

ハルヒ:「ちょっと聞いてるの、キョン?」

 

キョン:「あぁ。とりあえず話してみろ」

 

ハルヒ:「裕さんが圭一さんを刺したのは間違いないわ。

でないと、あんたの言ったとおり、逃げ出した理由がないものね」

 

キョン:「まあ、そうだろうな」

 

ハルヒ:「どんな事情があったかは知らないけど・・・裕さんは圭一さんを刺した。

計画殺人とは思えないから、口げんかでカッとして、

その場にあった果物ナイフを思わずふるったとか、そんなとこでしょうね。

でも、ナイフは心臓まで達していなかったの。

・・・ナイフは手帳に阻まれ、致命傷にはならなかったの。

でも、ここでややこしいことになっちゃったのは、

圭一さんはショックでその場に気絶しちゃったのよ。

それを見て裕さんも、殺したと信じこんでしまった。

問題はここから。

実は気絶しただけだった圭一さんは、そのまま朝まで失神していた。

目を覚ました圭一さんは、朦朧とした頭で立ち上がり、

弟に殺されかけたことを思い出して、ぼんやりとした頭で扉に鍵をかけた。

悲劇が起きたのはこの後よ。

圭一さんは足をもつれさせて、うつぶせに倒れてしまったのよ。

その結果、ナイフは胸に押し込まれて、圭一さんを死に至らしめた。

これが真相よ」

 

キョン:「ちょっと待て。そう都合よく何もかもが進むか?」

 

ハルヒ:「進んだんだから仕方ないじゃない。他に考えようがある?」

 

キョン:「本当に殺したかどうかくらい、裕さんにもわかるだろ。

大体圭一さんの死体は、あおむけに倒れてたんだぞ」

 

ハルヒ:「うっ」

 

キョン:「おまえの考えが正しければ、圭一さんはうつぶせの状態で発見されるはずだ」

 

ハルヒ:「それはそうだけど!ううん・・・でも待って。あ!それなら・・・!」

 

キョン:「どうした、ハルヒ?」

 

ハルヒ:「あ、えーと・・・なんでもない。考え違いしてたみたい」

 

キョン:「・・・?」

 

 

 

 

古泉:「ぉおーい!」

 

キョン:「!」

 

古泉:「お二人とも、ご無事ですかー!?」