涼宮ハルヒの憂鬱 孤島症候群 ¡½後編②¡½
配役比率 ♂4:♀3:♂or♀0=七名
~別荘~
キョン:結局、ハルヒの推理は破綻したわけだ。
だが、すると真相はどうなる?
死亡指定時刻には、裕さんは島にいなかった。
とすると、真犯人は別にいることになる。
“カチャン”(食器の音)
妹:「どれにしようかなー?」
キョン:「こら!」
妹:「きゃぁん!キョンくん、ビックリさせないでよ、もー!」
キョン:「つまみ食いか?」
妹:「だってお腹すいたんだもーん!」
森:「お待ちを。ただいまお部屋にお持ちいたします」
妹:「あ、ずるーい!一人だけ先に食べた人がいるー!」
森:「これは新川の食事です。
新川は朝から何も口にしておりませんでしたので、先に届けたのです」
キョン:「あんまり兄貴に恥をかかせるなよ」
妹:「むぅうー!」
キョン:「?」
妹:「どうしたのー?」
古泉:「はは・・・」
ハルヒ:「有希!あたしだってば!開けてちょうだい!」
有希:「誰が来ても開けるなと言われている」
ハルヒ:「もういいわ!開けてったら!」
有希:「それでは、誰が来ても開けるなという命令に反することになる」
キョン:「・・・朝比奈さんは、まだ気絶してるのか?」
古泉:「声が聞こえないから、そうでしょうね」
ハルヒ:「誰もっていうのは、あたし達SOS団以外の誰もってことよ!
あたし達はSOS団の仲間でしょう?」
有希:「そうは言われなかった。
私が言われたのは、誰に対してもこの扉を開けてはいけないという指示」
妹:「有希ちゃん、あたしが出るときには何も言わなかったじゃない」
有希:「内側からドアを開くことについては、何も指示されていない」
ハルヒ:「はぁー」
キョン:「おい、長門。ハルヒの命令は、たった今解除された。
なんなら、その指令は俺が上書きする。
妹もいるんだ。開けてやってくれ」
(扉を開ける)
ハルヒ:「んもう、少しは融通を利かせてよね!」
みくる:「うぅー・・・うぅ~ん」
キョン:今のはもしや、長門流のジョークだったのだろうか。
キョン:「頼むぜ、長門。
お前は表情も顔色も変化ナシなんだから、
いつも本気としか思えないんだよ!」
妹:「有希ちゃん、ありがとう!」
古泉:「これからどうします?」
ハルヒ:「・・・」
古泉:「真相の究明を続けますか?」
ハルヒ:「・・・やめやめ!
やっぱりあたしに名探偵なんて無理よ。後は警察に任せましょ!」
古泉:「なるほど。ほら穴の中でそんな話を」
キョン:「だが妙だな。
あれだけ探偵ごっこをやりたがってた奴が、何だって急に態度を変えたんだ?」
古泉:「ふふ、僕にはわかりますよ・・・涼宮さんの考えが。・・・お話しましょうか?」
キョン:「聞こうじゃないか」
古泉:「涼宮さんが話した推理は、
途中までは合っていますが、最後の部分が違うのですよ。
圭一さんは裕さんに刺されたが、その時には死ななかった。
裕さんは勘違いして逃げ出した。そこまでは合っています。
圭一さんは僕らの声で目を覚まし、僕らがドアを開けようとする寸前に、
朦朧として鍵をかけた。その時」
キョン:「はっ・・・!!」
古泉:「圭一さんの体にナイフが押し込まれたのは、その時ですよ」
キョン:「つまり、犯人は・・・」
古泉:「ドアを破った人間、つまり。
僕と、あなたと、新川さんということになります。
涼宮さんは、それに気づいたんでしょう。
だから何も言わなかった。僕らをかばうため。
真相を、自分ひとりの胸に秘めて、ね」
キョン:「確かに筋は通っているが・・・お前に気づかれたのは、まずかったな。
お前の口さえ塞いじまえば、このことは誰にも知られずに済む」
(キョンが、古泉の首元に手をかける)
キョン:「そういう理屈だな?」
妹:「大変!大変だよぉー!
古泉くんが・・・古泉くんが死んでるの!ナイフで、胸を刺されて!」
新川:「なんですと!?まさか!」
妹:「早く来て!早く!ほらー!」
ハルヒ:「・・・あんたがこんなワルだとはね」
キョン:「お前は殺さないさ。真相を黙ってる限りはな。
・・・古泉はひそかに戻ってきた裕さんに殺された。
動機は本人にしかわからないが・・・元々異常な性癖の持ち主だったらしい。
そういう筋書きだ」
ハルヒ:「警察が騙されてくれるかしら?」
キョン:「そのために、この死体にもう二・三本ナイフを刺しておく。
裕さんの異常性が際立つようにな。・・・いくぞ!」
圭一:「ま、待て!!
・・・え?」
古泉:「ふぅ・・・お芝居は終わりです。僕らの負けですよ」
圭一:「・・・?」
新川:「まんまとしてやられましたな」
妹:「ごめんね!キョンくんに言われてやったのー」
ハルヒ:「さて!
これから、超人的天才的名探偵・涼宮ハルヒ様の名推理をご披露するわ!」
キョン:よくこれだけ自分を持ち上げられるもんだ。
ハルヒ:「言うまでもなく、全ては古泉くんと多丸さん兄弟と・・・
新川さんと森さんが私たちを担ぐためにしたお芝居だったわけ。
偽の真相まで用意して、芸の細かいことね~」
古泉:「ご明察です。ちょいとした余興、サプライズパーティのつもりだったんですよ」
キョン:有希(あいつ)は最初から、全部わかってたんだろうなぁ。
ハルヒ:「途中までは確かに、あたしも騙されてたわ。
偽の真相。
圭一さんを死なせてしまったのは、ドアを破ったキョン達だったってね。
でも気づいたの。
ナイフを心臓に突き刺すくらい勢いよくぶつかったら、
ドアに多少の傷や凹みが出来てていいでしょう?
なのに、ドアには傷ひとつなかったわ」
キョン:気づいたのは俺だがな。
裕:「しかし、ドアが頑丈なものだったのかもしれない。
それだけでは疑う理由には足りないんじゃないか?」
ハルヒ:「おかしなことはまだあるの。
古泉くんと新川さんが会ったときのことよ。
“久しぶり”って言ったでしょう?
一週間前雇われたばっかりで初対面のはずなのに、こんな挨拶は変じゃない!」
新川:「仰せの通りでございます」
キョン:それに気づいたのも俺だ!
ハルヒ:「さらに、圭一さんの部屋に駆けつけたときのことよ。
古泉くんはまっすぐ圭一さんの部屋に行ったでしょう?
どうして部屋の場所を知ってたの?
この別荘には初めて来るようなこと言ってたのに」
古泉:「失態でしたねぇ。一度ならず二度までも」
圭一:「だが知っていても不思議ではない。
君たちが知らないうちに確認していたのかもしれない」
ハルヒ:「確かにね。でも決定的だったのは、キョンが台所で見た食事。
キョン説明して。その場にあたしはいなかったから」
キョン:「俺達の中で、ナイフとフォークを使って食事をするのは圭一さんだけだ。
無論、新川さんがナイフとフォークで食事する可能性も0じゃない。
だが問題は、にんじんが残されたいたことだ。
それで、あれは圭一さんの食事だったんじゃないかと思い当たったのさ」
ハルヒ:「これらのことを総合的に考えて出てくる結論はひとつ!
すなわち、圭一さんは生きている!
すべてはやらせのお芝居だったってことよ!!」
妹:「ぉおおー!(拍手)」
キョン:きっとハルヒの頭の中には、この数十倍の歓声がわいているに違いない。
ハルヒ:「で、今度はこっちが一芝居うったってわけ」
みくる:「私が見たバルコニーでのケンカも、お芝居だったんですね」
圭一:「その通りだよ」
裕:「同じく、夜中の電話もね」
古泉:「ふぅ。いずれ何もかも自白しようとは思っていましたが・・・」
圭一:「こうも早く、詳(つまび)らかになるとはね」
キョン:「ま、お前の推理がきっかけになったのは確かだ。
大した名探偵ぶりだったなぁ」
ハルヒ:「なーに。初歩的なことだよ、ワトソン君!」
~船~
キョン:「やっぱり、お前の組織の仕込みか」
古泉:「ええ。多丸さん兄弟も、新川さんも森さんも、みんな仲間です。
涼宮さんに変なこと思いつかせない為には、
あらかじめ事件を提供するのが最善だと考えたんです。
妹さんがいらしたのは計算違いでしたがね」
キョン:「行きの船の中では、今回のことに期間は無関係とか言ってなかったか?」
古泉:「ふっ。・・・まさか、本当のことを言うわけにも・・・いきませんしね。
あなた、いつごろから真相に気づいていたんです?」
キョン:「実のところ、事件の最初からだ」
古泉:「最初から・・・」
キョン:「こんな事件は起こりえない。
なぜなら、ハルヒが本気で殺人事件なんか望むはずないからだ。
あいつはそういう奴だ」
古泉:「涼宮さんを、信じておられるんですね」
キョン:「・・・。・・・もう一つだけ聞かせろ。
ハルヒが見た怪しい影、あれもお前らの仕業だな?」
古泉:「怪しい影?
・・・ぁあ、本当です!これ以上お芝居を続ける理由はありません」
キョン:「じゃあ、あの影はなんだったんだ?まさか・・・」
古泉:「涼宮さんは、真犯人が我々の他にいることを、望んでいたようですよ」
キョン:「あれをハルヒが作っちまったんだとすれば・・・。・・・!
あの島には・・・今も得体の知れない何者かが潜んでいることになる。
いや、それともやっぱりハルヒの見間違いだったのか」
古泉(&キョン):「・・・」
ハルヒ:「今度はどこ行こうかしらねー!バミューダトライアングルとか!」
終