涼宮ハルヒの憂鬱 ライブアライブ ―後編―
配役比率 ♂2:♀3=五名
キョン:後で聞かされた話になる。
ハルヒ:「校門で映画のビラまいてて、なくなったから部室に戻ろうとしたの。
そしたら下駄箱のあたりで、北高祭実行委員とあのバンドが、
ステージに立つとか立たせないとかでモメてたの。
・・・ボーカルの榎本さんが前日に扁桃炎で入院、
ギターの中西さんが当日学校で転んで手首をくじいて・・・。
二人が演奏不可能になったのよね。
中西さんは三年生だし、最後の北高祭だから死んでも出たかったみたい。
曲もオリジナルだしね。
でも中西さんは結局、手の検査の為に連れて行かれて・・・」
キョン:「それで、お前が腕まくりして出て行ったのか」
ハルヒ:「・・・それはなかったけどね。
まぁあたしだったら、
喉がイカれようが腕が潰れようが気合で演奏するだろうけど」
キョン:「だろうな」
ハルヒ:「でも、その時の中西さん見てたらしょうがないかって感じ・・・。
ただ、これじゃ演奏できる残りのメンバーが可哀想じゃない?
この日のために必死で練習してきたのよ?
・・・それであたし、こう言ったの。
“なんだったら代わりに出ようか?”って」
キョン:「よくOKしたな。その残りのメンバーも」
ハルヒ:「歌だけなら、って言ったの。
そしたら、岡島さんと財前さんが“あなたなら出来るかも”って。
あたし、軽音楽部に仮入部してた時もあったし、覚えててくれたのかしら?」
キョン:ハルヒの奇人変人伝説は有名だが、
何でもこなすスーパーユーティリティープレイヤーとしても、
校内に名が轟いているからな。
ハルヒ:「ホントはギターもまとめて弾いたらよかったんだけど、時間がなかったのよね。
楽譜をさらわなきゃいけないし、コードおさえるだけで精一杯」
キョン:「そこで長門か」
ハルヒ:「そう。
占いしてるところに押しかけて、理由を言ったらすぐについてきてくれたわ。
あ、知ってた?有希って意外に器用なのよ!
譜面を一度さっと眺めただけで、完璧に弾いたわよ!
どこでギターなんか習ってたのかしらねぇ?」
キョン:多分、お前に言われた瞬間にさ。
国木田:「あのさぁ、お客さんが来てるよ。涼宮さんに」
ハルヒ:「あ・・・」
キョン:「・・・行ってやれ」
ハルヒ:「・・・。・・・ちょっと一緒に来て!」
キョン:「ぉわ!」
ハルヒ:「扁桃炎は、もういいの?」
榎本:「ええ。だいぶ」
ハルヒ:「手首の方は?」
中西:「ちょっとかかるみたい。受験勉強が大変で」
榎本:「・・・ありがとう、涼宮さん」
ハルヒ:「え。・・・うん」
岡島:「すごいんだよ!あれからオリジナル音源のリクエストが殺到して!」
財前:「MDのダビングがおっつかなくて!」
榎本:「ビックリする数なんだから!」
中西:「全部、あなたのおかげ。
これで、あたし達の曲を無駄にせずに済んだ。ホントに感謝してる。
・・・さすがは涼宮さんね!
軽音としては北高祭最後の思い出だし、自分でやりたかったけど・・・
でも、棄権するより何倍もよかった」
ハルヒ:「・・・そう」
キョン:「・・・?」
中西:「何か、お礼ができたらと思うんだけど・・・」
ハルヒ:「あ、いいっていいって。
あたしも気持ちよく歌えたし、いい曲だったし、
お礼なんてもらったらかえって後ろめたいわ。
あ、それより有希に言ってあげて!
あの子は無理やりあたしがやらせちゃったんだし・・・」
榎本:「さっき言ってきた。一回うなずいて、このクラスを指差しただけだったけど」
ハルヒ:「そう」
中西:「あ、卒業までにどっかでライブやるつもりだから、よかったら見に来てね。
そちらの・・・お友達と一緒に」
キョン:ハルヒはそれからずっと複雑そうな面持ちで、
昼休みになるや、教室からさっさと姿をくらました。
谷口:「いや~。マジで文化祭にはろくな女が来てなかった。
俺が思うに、この高校は立地条件が悪すぎるぜ。
もっと平地にねえと人が来ねぇ!」
キョン:メシの後・・・なんだか無性に腹ごなしの散歩をしたくなった。
いや、特に意味などない。
キョン:「よぉ」(中庭で寝転んでいるハルヒに声をかける)
ハルヒ:「・・・・何よ」
キョン:「・・・」
ハルヒ:「時間なくて、簡単なアレンジに変えちゃったからね。
本物が聞きたいのは当然でしょ?」
キョン:「MD希望者の話か?」
ハルヒ:「そ」
キョン:「でも、ぶっつけにしてはなかなかの演奏だったな。
いい宣伝にはなったんじゃないか?」
ハルヒ:「あと一日あったら・・・しっかりした準備が出来たのにね。
・・・あんなのでよかったのかなぁって少しは思うけど、
なんて言うの・・・今、自分は何かやってるっていう感じがした」
キョン:「・・・」
ハルヒ:「ん~、なんか落ち着かないのよねぇ。なんでかしら」
キョン:「俺が知るわけないだろう?」
キョン:それはな・・・お前が人から感謝されることに、慣れていないからなのさ。
いつもは、ありがとうなんて言われそうにないことばっかりやってるもんな。
ハルヒ:「・・・なによ?なんか言いたいことがあんの?なら言いなさいよ!
どうせろくなことじゃないんでしょうけど・・・・。
黙って溜め込むのは精神に悪いわよ!」
キョン:「別に?なんも」
ハルヒ:「!!・・・・っ、もうぅ!」
(草をむしってキョンに投げようとするが、追い風で自分にかかってしまう)
キョン:「ぷっ」
ハルヒ:「~~!
・・・!(思いついたように)ねえ、あんたなんか楽器出来る!?」
キョン:「出来ん!」
ハルヒ:「練習次第でどうにでもなるわ!
なんたって、あと一年も時間があるんだからね!」
キョン:おいおい。
ハルヒ:「来年の文化祭、あたし達もバンドで参加しましょうよ!
あたしがボーカル。有希がギターで・・・。
みくるちゃんはタンバリンでも持たせて、ステージの飾りにでもなってくれればいいわよ!」
キョン:いやいやいや。
ハルヒ:「もちろん、映画の第二弾もあるしね!
うん、来年は忙しくなるわよー!
やっぱ目標数値は常に昨年対比を上回らないといけないのよ!」
キョン:待て待て。
ハルヒ:「さ、行くわよ、キョン!」
キョン:「え、どこに?」
ハルヒ:「ギターを貰いによ!」(キョンの手をひく)
キョン:「い?ぁ、ぁあ!?」
ハルヒ:「軽音楽部の部室に!行けば余ってるのがなんか落ちてるわ!
それに、中西さん達に作曲の方法とか聞いとかないと!
安心しなさい、作詞・作曲・プロデュースはあたしがやってあげるから!
もちろん振り付けもね!」
キョン:「今からやらなくていいだろ!」
ハルヒ:「何言ってんの?一年なんてあっという間よ!?」
キョン:「ところで振り付けってなんだ?バンドやるんじゃないのか?」
ハルヒ:「いるの!あたし達は新しいバンド道を作り上げるのよ!」
キョン:「バンドとアイドルをごっちゃにしてるだけじゃないのかぁ!?」
終