朝比奈ミクルの冒険 Episode00 ―後編―

 

配役比率 ♂3:♀3:♂or♀0=六名

 

 

 

 

 

 

 

キョン:ここは、イツキの自宅のようだ。

それよりも気になるのは、かつぎこまれたミクルの何気に湯上りの格好だが、

これはもしや気絶してる間に、イツキがミクルを風呂に入れたということなのだろうか。

いや、そうに違いない!

ならば、ここは誰だって、疑問が激怒から、しまいには殺意に急変するところなのだが、

あえて今は湧き上がる感情を押し殺して、深く考えないことにしたい。

我々の予測範囲内で動く登場人物に、人間的リアリティなどあるわけがないからだ。

 

イツキ:「・・・」(静かにうなずいて、ミクルに覆いかぶさる)

 

キョン:!?  って、藪から棒になんだこれは!

それ以上顔を近づけると、

さすがに予定外の人物がフレームインして、蹴りを入れてやるぞ、オイ!

 

ユキ:「待つがよい」

 

イツキ:「・・・」

 

ユキ:「古泉イツキ。あなたが彼女を選ぶべきではない。

あなたの力は私と共にあって、初めて有効性を持つことになるのである」

 

イツキ:「え!それはどういうことですか」

 

キョン:まず、窓からユキが現れたことを驚かないのだろうか。

 

ユキ:「今言えるのは、あなたの選択肢は二つあるということだ。

私と共に宇宙をあるべき姿へと進行させるか、

彼女に味方して未来の可能性を摘み取るか」

 

キョン:イツキは、いつになく真剣に悩んでいた。

しかし、さっきの長門の、ユキの台詞はイツキに向かって言ってるんだよな?

 

イツキ:「・・・なるほど!

どっちにしても彼、いやこのシーンは僕ですが、僕が鍵となっているのですね?

そして、鍵そのものに効力はない。

鍵はあくまで、扉を開ける手段でしかないものです。

その扉を開けたとき、何かが変わるのでしょう。

おそらく、変わるのは・・・。

それはわかりましたよ、ユキさん。

ですが今の僕には決定権がない。

まだ結論を出すには早すぎると僕は考えます。

保留ってことで、今は手を打ちませんか?

僕たちにはまだ考える時間が必要なんです。

あなたたちがすべての真相を語ってくれるなら、別かもしれませんが」

 

ユキ:「その時は遠からず来るだろう。

しかし、今でないことも確かだ。

我々は情報の不足を、何よりも瑕疵とする習慣がある。

可能性の段階では、明確な行動をとることはできないのだ」

 

キョン:複線といえば聞こえのいい、意味不明の会話であったが、

イツキとユキの間には何故か共通認識が芽生えたようだった。

 

 

 

 

~CM:ヤマツチモデルショップ~

 

ミクル:「こ、この模型屋さんは、山土敬二さん28歳が、

去年脱サラして開店オープンしたんだそうでーっす!

えー、趣味が高じたばっかりに、やっちゃったって感じですっ。

あ、案の定売り上げは思うように伸びず・・・(カンペが出される)

えっと、今年度前期は昨年に対して伸張率80%なので・・・。

みなさんどんどん買いに来てあげてください!

・・・ふぅ~。・・・え、持つんですか?(モデルガンを持たされる)

ひ、人に向けて売ってはいけません!空き缶でも売って我慢しましょう!

え、撃つの?・・・・ひぃいい!」

 

 

 

 

 

キョン:さて、そろそろストーリーを追う気も失せてきたところだと思うが、

・・・いきなりの急展開だ。

ミクルとイツキの同棲生活が始まったのだ。

ここまでの、SFバトルちっくな内容は何だったのかと思うくらいの、幼な妻的展開である。

萌え要素をちりばめて、構成の中だるみを一気に解決しようとでも言うのだろうか。

 

妹:「ほら、シャミ。ご挨拶して~。はい!シャミでーす、よろしくっ」

 

キョン:それはそうと、こいつは誰だ。イツキの妹のつもりか?

っていうかこのネコ・・・さっきユキの肩にいなかったか?

 

 

 

キョン:一方ユキも負けてはいられない。

なんと、イツキの学校に転校してきたのだ。

色仕掛けという奇策を使って、イツキを篭絡しようとするユキ。

しかし見ようによっては、いたって正当なアタックの仕方に見えるのは、気のせいか?

やがてミクルも、同じく高校に転校してきた。

イツキを見守る役なんだから、

最初から高校にもぐりこんでおけばいいじゃないかというツッコミもむなしく、

ユキとミクルの戦いは、ラブコメバトルとして激しさを増した。

もはや、ただの三角関係である。

・・・かと思うと、どうやら学校内で不戦協定を結んでいたのか、

はたまたお互いたまには本分を思い出すのか、

二人は戦うウェイトレスとエイリアンマジシャンに扮装しては、

しょぼい戦闘を繰り広げるのであった。

まさにこの後どうなってしまうのか。

カメラを回す俺にも検討がつかない。

手に汗握りようもない、どろ沼の展開だ。

 

 

 

キョン:そしてこの支離滅裂な物語は、取って付けたように最終局面を迎える。

おそらくこの作品の監督も、どんな形であれ、

終わりはつけなければならないと思ったのだろう。

いささか手遅れの感はあるが。

ともあれユキが、最終決戦を申し込んできたのだ。

 

ミクル:「・・・そっか!」

 

キョン:今何を理解したのだろう。

 

鶴屋:「どうしたの、ミクル?

おっさんのストーカーに困ってるような顔しちゃって。

水虫の告知でも受けたの?」

 

ミクル:「・・・いよいよこの時が来たのです!

あたしは最後の戦いに赴かなければなりません!」

 

鶴屋:「(笑いをこらえながら)そ、そいつはすごいねぇ。任せたよ、ミクル。

地球をよろし・・・ぶはっ!っはっはは!(爆笑)」

 

ミクル:「・・・がんばります」

 

キョン:たびたび、重箱の隅をつつくようでなんだが、

ミクルと鶴屋さんは、ミクルが転校してきてから知り合ったと考えるのが普通だから、

その前の池の戦闘シーンで鶴屋さんを出したのは、

明らかな演出ミスなんじゃないだろうか。

あ、それとつなぎに困ったら、空映してないか?

 

 

 

キョン:ってなわけで、やっとクライマックスシーンである。

 

ユキ:「これで全ての決着をつけようではないか。

我々にはあんまり時間が残されてはいないのだ。

昼休み中になんとか終わりにしないといけない」

 

ミクル:「それだけはあたしも同意ですが・・・でも!

イツキくんはきっとあたしを選ぶと言ってくれます!

うぅ・・あたしはそう信じまーす!」

 

ユキ:「あいにくだが、私は彼の自由意志を尊重する気などない。

彼の力は私がいただく」

 

キョン:だったら、さっさとイツキの身柄をおさえたらいいんじゃないかと思うのは、俺だけか?

 

ミクル:「そうはさせませーん!そのために、私は未来から来たのです!

・・・とりゃー!ほぇあー!へいやー!」(ミクルビーム)

 

ユキ:「・・・」(ステッキをかざす)

 

ミクル:「とーぅ! ふぇ、あ!ひゃぁあーー!」(周りの花火に怖がり、しゃがみこむ)

 

ハルヒ:「ちょっとみくるちゃん!反撃反撃!」

 

先生:「こらー!何やって・・・」(強制終了)

 

キョン:花火と爆竹の音に駆けつけた、教師とのいざこざもどこ吹く風で、

ミクルはついに追い詰められてしまった。

 

ミクル:「ふぃぃ~・・・高いぃ・・・」

 

ユキ:「ここが年貢の納め時だ。観念するがいい」(ステッキをかざす)

 

キョン:ユキのとどめの一撃が、ミクルに襲いかかる。

画的に問題はあるだろうが、

もうここ以外は盛り上がるところもないので、あとは想像で補ってもらいたい。

 

ミクル:「ひぃー!うぇー! あー、あー、あぁ~」

 

キョン:絶対絶命だ、どうなるミクル?

 

イツキ:「・・・大丈夫ですか? ユキさん、もうやめてください」

 

シャミ:「考えることはなかろう。

その少年の意思を奪ってしまえばよいではないか。

仄聞したところ、君にはそのような能力があるはずだが?」

 

キョン:げぇ!おい、シャミセン!喋るな!喋るなって!

 

ユキ:「・・・今のは腹話術。

・・・くらうがよい、古泉イツキ。

あなたの意思は、私の思うがままになるであろう」

 

イツキ:「デュワ!」

 

ユキ:「・・・・・無念」

 

シャミ:「みゃ~」

 

 

 

イツキ:「終わりましたよ、朝比奈さん」

 

ミクル:「あぁ・・・」

 

キョン:イツキの理屈不明なポテンシャルパワーが覚醒し、ユキは宇宙の彼方へと飛ばされていった。

世界に平和が戻ったのだ。

ありがとう、朝比奈ミクル。ありがとう、古泉イツキ。

終わりよければ、すべてよし。

って、最後もパンアップかよ。

 

 

 

ハルヒ:――この物語はフィクションであり、

実在する人物・団体・事件・その他の固有名詞や現象などとは何の関係もありません。

嘘っぱちです。

どっか似てたとしても、それは他人のそら似です。

あ、CMシーンは別よ?

大森電気店とヤマツチモデルショップをよろしく!

じゃんじゃん買いに行ってあげなさい!

・・・え?もう一度言うの?

・・・この物語はフィクションであり、実在する人物・団体・・・

ねえキョン?なんでこんなこと言わないといけないの?

 

ハルヒ:「出来たわ! すごい出来じゃない!

SOS団の辞書に不可能の文字はないのよ!そうよね、キョン!」

 

キョン:これを衆目にさらすというのか・・・。

 

ハルヒ:「これは文化祭初日から満員御礼大入り袋よ!

入場料とればよかったわね・・・。

これから映研に掛け合ってみようかしら・・・。

制作費が回収できるどころか、次回作の資金も十分貯まるわ!」

 

キョン:今日は文化祭のことは忘れて、どっかで寝てよう・・・。

 

ハルヒ:「ね、キョン!」