朝比奈ミクルの冒険 Episode00  ―前編―

 

配役比率 ♂3:♀3:♂or♀0=六名

 

 

 

 

 

 

 

キョン:彼女の名は、朝比奈ミクル。

ごく普通のけなげで可愛らしい少女のようでいて、

実は、未来から来た戦うウェイトレスである。

何故未来から来たのがウェイトレスなのかは、些末な問題にすぎない。

物語とは往々にして、開始と同時に、問答無用の奇怪な設定がつきつけられるものだ。

 

ミクル:「お急ぎのところすみませぇーんっ!今日は、生きのいい白菜が大量入荷でーす!

 今から、一時間ぽっきりで・・・一束半額セールスなのでーっす!」

 

キョン:ところで、戦うウェイトレスと言っておきながら、

何故今、唐突にバニーガールの衣装を着ているのか・・・

それは普段彼女が、地元商店街の客寄せ用呼び子のバイトで、糊口を凌いでいるからだ。

 

おばさん1:「あらぁ、今日は、白菜が安いのねぇ」

 

おばさん2:「い、急いで買わなきゃねぇ」

 

おじさん:「・・・ミクルちゃん!今日も精が出るねぇ」

 

ミクル:「は、はい!がんばってます!」

 

キョン:頑張りすぎのコスチュームで、明るく返答するミクル。

その無垢な魅力で、白菜はたちまち売り切れとなった。

 

森村:「いつもすまないねえ。少ないけどこれ、とっといて」

 

ミクル:「そんな、全然です!

あたしこそごめんなさいです、こんなことくらいしかできなくて・・・。

それじゃあ、次はお肉屋さんのところに行かないといけないので、失礼しました、あっ! 

失礼します!」(走り去る)

 

キョン:今や彼女はこの商店街にはなくてはならないマスコットキャラとして、

地域住民に愛される存在であった。

がんばれミクル!去年できた、大型デパートに出来た客を商店街に取り戻すのだ!

地域の活性化と、個人店舗の命運はひとえに、ミクルの双肩にかかっている。

ただし、本筋とは何の関係もない。

 

 

キョン:さて、その本筋だが、彼女はもちろん戦うウェイトレスであり、

その目的とはすなわち、一人の少年を影ながら見守ることであった。

その少年の名は、古泉イツキ。

ごく普通の能天気な高校生のようだが、実は超能力者である。

しかし本人にはまだ、その自覚がない。

どうやら何かをきっかけにして、

秘めたるスーパーインクレディブルパワーが覚醒するということらしい。

 

ミクル:「・・・ふぅ」

 

キョン:なんだか、憧れの上級生に声をかけられなかった、下級生のようにも見えるが。

とりあえず、イツキの無事な姿に、安堵してるのだとしておこう。

こうしてその後も、あられもない衣装でバイトを続けたミクルはやがて、

今のミクルに、居住スペースを提供している文具店に戻ってきた。

 

鈴木:「あー、おかえり。ミクルちゃん、おつかれかい?」

 

ミクル:「えっと・・・平気ですっ。今日はお客さんも多くて・・・大繁盛でした!」

 

鈴木:「あー、それはー、いいことだなぁ」

 

キョン:今日の勤めは果たした。

ミクルはやっと、そのご無体な衣装を脱ぎ、カジュアルな姿で床についた。

・・・断じて言っておくが、着替えのシーンはこれ以上撮ってないので、

早々問い合わせても無駄である。・・・ウソではない。

 

 

 

キョン:何の前触れも、前フリもなく立っているのは、長門ユキ。

ごく普通でもなければ、一般人の少女にも見えないが・・・。

それもそのはず、実は悪い魔法使いである。しかも宇宙人。

そうこうしてるうちに、ミクルとユキの初対決となった。

二人の出会いから、因縁関係に至るまでの一切の経緯は、

処々の事情により、見てる人のご想像にお任せするしか、ない。

このへんで、本作の演出方針をだいたい察していただければ、甚だ幸いである。

 

ミクル:「・・・」

 

ユキ:「・・・」

 

ミクル:「古泉く・・イツキくんを、あなたの思い通りにはさまささせん!

 あたしが守ってみせまーっしゅ!」(緊張して噛んでいる)

 

ミクル:「えぇーいっ!(銃を撃つ)」

 

ユキ:「・・・」(棒をかざす)

 

キョン:説明しよう。

このありがちなデザインの棒は、スターリングインフェルノとかいう魔法のステッキなのだ。

 

ミクル:「うぅう・・・こ、こうなっては奥の手です!・・・とうりゃっ。(銃を捨てる)

 ・・・み、み、ミクルビーム!!」

 

ミクル:「え、え、わぁっ・・・ふ、ふぐぅう・・・っ」(ユキが馬乗りになりミクルの口をふさぐ)

 

キョン:説明しよう。

ミクルビームとは、朝比奈ミクルの左目から出る、マジで危ない必殺ビームなのだ。

 

ハルヒ:「カット、カット!ちょっとユキ、なにしてんの!そんなの設定にないの!」

 

キョン:「長門!」

 

キョン:一体この後、事態はどんな急転直下を迎えるのか。イツキはなんのために出てきたのか。

 

 

 

 

~CM:大森電気店~

 

ミクル:「こ、このお店は、えっと・・・店長がとっても親切です!それに、ナイスガイです!

 今の店主の栄次郎さんの、おじいさんの代からやっています!

 か、乾電池から冷蔵庫まで、なんでも揃います!

 え、えーと・・・それから・・・と、とにかく、大森電気店をよろしくおねがいしまーす!」

 

ミクル:「・・・ふぅ」

 

 

 

 

 

キョン:ユキとの初対決に敗れたミクルは、悩んでいた。

 

ミクル:「ミクルビームが通用しないなんて・・・なんとかしなくちゃ」

 

キョン:どうやらミクルは、変身ヒーローではなく、着替える必要があるようだ。

そして今日も、律儀にバイトに出かけなくてはならないらしい。

 

 

キョン:そのころイツキは、相も変わらず、空虚な顔で道を歩いていた。

 

イツキ:「あ!・・・何者です?」

 

ユキ:「私は、魔法を使う宇宙人である」

 

イツキ:「そうなんですか・・・」

 

ユキ:「そう」

 

イツキ:「僕に何の用です?」

 

ユキ:「あなたには隠された力があるので、私はそれを狙っている」

 

イツキ:「迷惑だと言ったら、どうします?」

 

ユキ:「強引な手を使ってでも、私はあなたを手に入れるだろう」

 

イツキ:「強引な手とは、なんでしょうか?」

 

ユキ:「こうするのだ」(ステッキをかざす)

 

ミクル:「あぶなーい!!」

 

イツキ:「わっ」

 

ミクル:「う、痛っ!(電柱に顔をぶつける) うー、あぁ。いたた・・・。

 あ、あ、あなたの思い通りにはさせませぇーん!」

 

ユキ:「ここはひとまず退散しておく。けれど次はそうはいかないのだ。

その時までに自分の戒名を用意することだ。

今度こそ、私は容赦なく、おまえを打ち滅ぼすだろう」

 

イツキ:「・・・あなたは、誰ですか」

 

ミクル:「はっ、あ、えー・・・あたしは、通りすがりのバニーガールですっ、それだけなんです!

 それじゃあ、さよならー」

 

イツキ:「あの人は、一体・・・」

 

キョン:無駄に、不思議そうな眼差しで、ミクルを見送るイツキであった。

って、なんだ、このパンアップは・・・?

 

 

 

 

 

キョン:ここでまた、ごっそりと過程が省かれる。

それっぽいなんやかんやがあった後に、

再び戦いの火蓋が切られることになったのだろう、多分。

 

ミクル:「こ、こけ、こ、こんなことでは、あたしはめげないのです! 

 わ、悪い宇宙人のユキさん!し、神妙に・・・地球から、立ち去りなさぁーい!」

 

ユキ:「あなたこそ、この時代から消え去るがいい。

彼は我々が手に入れるのだ。彼には貴重な価値があるのだ。

その一環として、まず地球を侵略する」

 

ミクル:「そ、そんなことはさせないのです!この命に代えてでも!」

 

ユキ:「では、その命も我々が頂こう」

 

鶴屋:「ふっふっふっふ」

 

ミクル:「あ、あ、鶴屋さん!まさかあなたまで!正気に戻ってください!」

 

鶴屋:「ふ、はっはっは!・・・こんな姿で言われてもなぁ!あっはっは・・・あ。

ミクル~ごめんね。あたし操られちゃってるからさ。ホント、ごめんよー」

 

ミクル:「ひっ!」

 

キョン:あの、スターリングインフェルノとかいうやつから出る、魔力か電波かで、

鶴屋さん他二名は自意識を喪失した、操り人形と化してしまったようだ。

これではミクルは手を出せない。どうする?ミクル。

 

ミクル:「ひぃぇぇぇ~」

 

谷口:「うわぁ~!」(ミクルと一緒に池に落ちる)

 

キョン:・・・どうしようもなかった。

 

ミクル:「ひぁっ、あう・・・っ」(溺れる)

 

イツキ:「どうしました? つかまってください。・・・落ち着いて」

 

キョン:ところで、いきなり現れたイツキは、これまでどこにいたのだろうか。

さっきうっかり、映ってた気もするが。

 

ミクル:「ぅう~冷たかった~」

 

イツキ:「こんなところで、一体何をしていたのですか?」

 

ミクル:「へっ?あ、その・・・。悪い人に、池に・・・その・・・」

 

ハルヒ:「そこで気絶するの!」

 

ミクル:「は!・・・きゅう~」

 

イツキ:「しっかりしてください」

 

キョン:普通は救急車を呼ぶか、周囲の民家に助けを呼びに行くかするものだが、

この少年は、意識を失った無垢な美少女をお姫様だっこで、

どこへ連れて行こうというのだコノヤロウ。

第一、さっきまでいたユキ達は、とどめも刺さずに一体どこへ消えてしまったのだろうか。

様々な謎や、矛盾をことごとくほったらかしにして、この物語はようやく半分に達する。

って、まだ半分あるのか?これ。

 

 

 

 

 

 

 続