涼宮ハルヒの憂鬱 ミステリックサイン 前編
配役比率 ♂2:♀2=四名
※古泉は一言なのでキョンとかぶりでも可です。
キョン:七夕のとき憂鬱だったハルヒは、
期末試験期間中にステータスをメランコリー状態から回復させて・・・
また好き勝手にふるまうようになっていた。
俺はといえば・・・
その反作用で押し出されたブルー色をバトンタッチさせられたような鬱々真っ盛りだ。
キョン:「はぁ・・・」
キョン:俺の後ろの席でテストを受けていたハルヒは・・・
何故かいつも時間が余るようで、
試験終了30分前には大抵机で寝息を立てていた。
・・・いまいましい。ああ、いまいましい、いまいましい。
キョン:ハルヒによると・・・SOS団には休みというものがないらしい。
試験期間中で部活動が中止されていた間も、
部活でもなんでもないこの謎の団は、
コンビニエンスストアのように年中無休で営業していた。
ハルヒ:「ふぅ。・・・ちょっと、これ見なさい」(パソコンを画面を指差す)
キョン:「・・・なにこれ」
ハルヒ:「見てわからないの?」
キョン:「わからんね。全然わからん」
ハルヒ:「あたしのSOS団のエンブレムよ!」
キョン:「エンブレム?
酔っ払ったサナダ虫が、管を巻いてるようにしか見えないな・・・」
ハルヒ:「ちゃんと見なさいよ!ほら、真ん中にSOS団って書いてあるでしょ?」
キョン:「そう言われてみると、そんな気がしないでもないようなあるような・・・。
でも大声で言いかねるくらいには見えないでもないねぇ。
さて、俺は一体いくつ否定を重ねたかなぁ。ヒマな奴がいたら、数えてくれ」
ハルヒ:「一番ヒマなのはあんたでしょ!
それより、これをSOS団サイトのトップページに載せようと思ってるの」
キョン:「トップページしかないこのしょぼくれたサイトにか?」
ハルヒ:「あんたの作ったこのサイトは、訪問者が増えないのよ!遺憾を覚えるわ!
にぎやかすものが全っ然ないのよ!あんたが邪魔したせいよ!
・・・せっかくみくるちゃんのエロ画像で客を呼ぼうと思ったのに」
キョン:「・・・」
ハルヒ:「だから考えたの!SOS団のシンボルみたいなものを貼り付けたらどうかって」
キョン:こんな阿呆なホームページ、とっととネットから撤収しろよ。
アクセスカウンターは3桁に達してないうえに、
そのうち9割はお前が自分で回しているようなもんだぞ。
キョン:「日記でも書いたらどうだ?業務記録をつけるのは団長の仕事だろ?」
ハルヒ:「イヤよ。めんどくさい」
キョン:俺だってめんどくさいんだが。
ハルヒ:「さ、キョン。このシンボルマークをサイトの頭に表示するようにしなさい」
キョン:「お前が自分でしろ」
ハルヒ:「あたしは団長なの!団長は命令するのが仕事なのよ。
それに、あたしが全部やっちゃったら、あんた達のする仕事がなくなくでしょ?
少しはあんたも頭を使いなさいよ。
言われたことをやってるだけじゃ、人間進歩しないわよ!」
キョン:「お前は俺にやれと言っているのか、するなと言っているのか、どっちなんだ?」
ハルヒ:「いいからやんなさい!」
キョン:「ハァ・・・」
キョン:俺はしぶしぶ、ハルヒ画伯様のサナダ虫風イラストをてきと~なサイズに縮小してから、
ファイルに貼り付け、アップロードした。
キョン:明日から夏休みまでの間には・・・つかの間の休息・試験休みがある。
教師が俺の答案用紙にペケを朱入れする時間でもある。クソ、いまいましい。
せめて、朝比奈さんを眺めて少しでも安らぎを得よう。
俺は、“はぁ~い?v”と舌足らずな朝比奈ボイスを期待して、ドアをノックした。
ハルヒ:「どうぞ!」
キョン:「いっ。・・・なんだお前だけか」
ハルヒ:「有希もいるわよ」
キョン:こいつは部屋の付属物みたいなものだから、人数に入れなくていいのさ。
正式には文芸部員だ。だがここは言い直しておくべきだろう。
キョン:「なんだ、お前と長門だけか」
ハルヒ:「なんかクレームでもあるわけ?」
キョン:俺のお前に対するクレームを箇条書きにしたら、
それだけでA4ノート両面はびっしり埋め尽くされることになるぞ。
ハルヒ:「ノックなんかするから、てっきりお客さんが来たんじゃないかと思ったじゃない」
キョン:「朝比奈さんの生着替えをうっかり目撃しないように、気をつけているんだよ」
キョン:あの迂闊で愛らしい方は、なかなかドアに施錠することを覚えないからなぁ。
キョン:「それで、お客ってなんだ?」
ハルヒ:「あんた覚えてないの?」
キョン:3年前の七夕がどうとか言うつもりじゃあないだろうな。
ハルヒ:「あんたがやったことじゃないの。あたしの許可も得ずにね!」
キョン:「何のことかなぁ?」
ハルヒ:「あんたが貼ったポスターのことよ」
キョン:「あぁ、それか」
キョン:実は、かつて俺は・・・よろず悩み相談所として、
SOS団を存続させるべく生徒会に働きかけていた。
ポスターまで手書きで作って、目に付いた掲示板に貼っておいたのだ。
ハルヒ:「それより、これ見てよ。なんか変なの。パソコンの調子が悪いのかしら」
キョン:SOS団のエンブレムは、ギャザー処理されたみたいに歪んでいて、
カウンタやタイトルロゴも吹き飛んでいたりと、俺が作ったものと微妙に違っていた。
キョン:「サーバーにあるファイルが狂ってるみたいだ。いつからこの状態なんだ?」
ハルヒ:「さぁ?今日見たらこんなだったのよ。どこにクレームつければいいの?」
キョン:「クレームをつけるまでもない。・・・ん?・・・」
ハルヒ:「おかしいでしょ?アレかしら。噂に聞くハッカーとかクラッカーとか!」
キョン:「まさか。何かのエラーだろ」
ハルヒ:「むっかつくわ!誰かがSOS団にサイバーテロを仕掛けてるんじゃないかしら?
一体それは誰?見つけたら裁判なしで30日間の社会奉仕活動を宣告するわ!」
(コンコン)
ハルヒ:「どうぞ!」
古泉:「おや珍しい。朝比奈さんはまだですか?」
ハルヒ:「二年は余分に試験があるんじゃない?」
キョン:さっさと帰宅すればいいのに・・・なんで揃いも揃ってこんなところに集まりたがるんだ。
それとハルヒ。ノックに対する突っ込みを古泉に入れないというのはどういうわけだ?
キョン:朝比奈さんのお茶が、待ち遠しいね。
キョン:「・・・!」
ハルヒ:「ちがう!あー違う違う!ほら次!そこ左!」
キョン:それからしばらくの間俺は・・・ハルヒの無理難題の注文に応えさせられていた。
ハルヒ:「あー違う!」
(コンコン)
ハルヒ:「どーぞ!」
キョン:それは、救いの鐘の音だった。
みくる:「あ、遅れちゃってごめんなさいっ。4時限目までテストがあって・・・」
キョン:そう控えめに謝辞を告げながら現れたのは、部室専用のエンジェル、朝比奈さん降臨☆
みくる:「えっと、その・・・ですね・・・。あ、あの、お客さんを連れてきました」
キョン:なんということか。
来るはずがない悩み相談者第一号が来てしまったのである!
彼女は喜緑江美里さんと言う。おとなしく、清楚な感じの2年生だった。
ハルヒ:「するとあなたは、我がSOS団に行方不明の彼氏を探してほしいというのね?」
喜緑:「はい」
ハルヒ:「う~ん・・・ふっ(キョンを見て笑う)」
キョン:「はぁ・・・」
キョン:彼女は・・・SOS団の活動目的を本当に、
よろず悩み相談所か、便利屋家業と誤認してしまったようだ。
キョン:「で、その悩み事なんだが・・・」
喜緑:「彼がもう何日も学校に来てないんです」
ハルヒ:「電話してみた?」
喜緑:「携帯にも、家の電話にも出なくて・・・。
家まで行ってみたんですけど、留守でした」
ハルヒ:「うぅ~ん。その彼氏の家族は?」
喜緑:「彼は一人暮らしなんです。
ご両親は外国にいらっしゃると前に聞きました。
でも私は連絡先を知りません」
ハルヒ:「へぇ~。外国ってカナダ?」
喜緑:「いいえ。確かホンジュラスだったと思います」
ハルヒ:「ははーん、ホンジュラスねぇ。なるほど~」
キョン:“なるほど~”じゃないよ。
どこにある国か知ってるのか疑わしいねぇ。
えーっと・・・メキシコの下くらいだっけ?
喜緑:「夜中に尋ねても真っ暗でしたし、私心配で・・・」
ハルヒ:「・・・あなたの気持ちは、わからないでもないわ」
キョン:うそつけ!恋する気持ちがお前にわかるわけがない。
ハルヒ:「にしても・・・よく我がSOS団のところに来たわねぇ。動機は?」
喜緑:「彼がSOS団のことをよく話題にしていたんです」
ハルヒ:「へぇー。誰?彼氏って」
喜緑:「・・・や―――です」
ハルヒ:「誰だっけ、それ?」
喜緑:「SOS団とは、近所付き合いとしているように言ってましたけど」
ハルヒ:「・・・うぅーん」
キョン:「・・・?」
みくる:「?」
喜緑:「彼はコンピュータ研の部長を務めていますから」
キョン:あぁー・・・・・はっ!
ハルヒに朝比奈さんへのセクハラ写真を撮られ、
それを盾としたハルヒに、最新のパソコンを譲渡させられ!
なくなく配線までさせられた、あの気の毒な部長氏か。・・・全く忘れていた。
ハルヒ:「・・・わかった。あたし達がなんとかするわ!
喜緑さん、あなたツイてるわよ!
依頼人第一号として、特別にタダで事件を解決してあげるから!」
キョン:金を取る気だったのかよ・・・。
キョン:「おい」
ハルヒ:「ん」
キョン:「そんなの簡単に引き受けて、解決できなかったらどうするつもりだよ?」
ハルヒ:「ふっ・・・できるわよ。
きっとあの部長は、二ヶ月遅れの五月病で閉じこもってるんだわ。
部屋に乗り込んで、二・三発ぶん殴って引きずり出せばいいだけの話よ」
キョン:本気でそう思っているようだ。
しかし、部長氏は喜緑さんのような恋人がいて、なんで閉じこもっているんだ。
キョン:「喜緑さんとは、親しいんですか?」
みくる:「ううん。一回も話したことなかったです」
キョン:相談するなら教師か警察に言えばいいのに。
いや、すでに言ったけれども相手にされず、それでSOS団に相談を持ちかけたのか。
そんなところだと思うね。
ハルヒはこれを契機にもっと大々的に依頼を募集し、
片っ端から解決することを考えているようだ。
ハルヒ:「また校門前でチラシ配りするのもいいわねぇ!」
みくる:「ひぃっ」
続