涼宮ハルヒの憂鬱 涼宮ハルヒの退屈―前編―
配役比率 ♂4:♀3=七名
(部室:みくるがナース姿でお茶を入れている)
みくる:「お茶です。どうぞ」
キョン:「あぁ、どうも。フゥー・・・」
みくる:「・・・」
キョン:「ああ、おいしいですよ」
みくる:「ふふっ。・・・どうぞ」
古泉:「ありがとうございます、朝比奈さん」
キョン:五月にハルヒがSOS団を立ち上げて、早くも今は六月だ。
実はこの間に俺は・・・
世界がこむら返りを起こしたような事件に巻き込まれたりしたのだが、
まぁそれはそれとして、今回はこんな話である。
ハルヒ:「みんな!野球大会に出るわよ!!」
キョン:あれから今日まで、特にこれといったことは起こらず、
つかの間の平和と退屈をのどかに楽しんでいたのだが、
それはまさしく・・・つかの間に過ぎなかったらしい。
なぜなら・・・こいつがこんないい顔で笑い出すと、
何故か俺が疲れるからくりになっているからである。
キョン:「何に、出るんだって?」
ハルヒ:「こーれ!」
キョン:「第九回市内アマチュア野球大会・・・。
で、誰が出るんだって?この草野球大会とやらに」
ハルヒ:「あたし達に決まってるじゃない!」
キョン:「その“あたし達”というのは、俺達も入ってるのか」
ハルヒ:「あと四人、メンツを揃える必要があるわね!」
キョン:例によって、自分の都合の悪い話が耳に届かない奴である。
キョン:「お前、野球のルール知ってんのか?」
ハルヒ:「知ってるわよ、それくらい。
野球部に仮入部したこともあるから、一通りこなしたわ。
てんで面白くなかったからすぐ帰ったけど」
キョン:「その面白くなかった野球の大会に、どうして参加しないといかんのか?」
ハルヒ:「我々の存在を天下に知らしめるチャンスだわ!
この大会で優勝したら・・・
SOS団の名前が一人歩きしていくきっかけになるかもしれないじゃない!
いい機会よ!ね?ナイスアイディアでしょ、みくるちゃん!」
みくる:「へ!?え、でも・・・」
ハルヒ:「ねー!(みくるに抱きついて)いいでしょー、野球!
言っとくけど、狙うのは優勝よ!一敗も許されないわ。
あたしは負けることが大っ嫌いだから!はむっ(みくるの耳を噛む)」
みくる:「ふぁぁああ~!・・・ふぅ~(失神)」
ハルヒ:「いいわね?」
古泉:「いいんじゃないですか?」
キョン:「そんなにさわやかに賛成すんな!たまには、反論の一つでもしてやれよ」
古泉:「宇宙人やUMAを探して歩き回るより、よほど健康的だと思いますが」
キョン:「はぁぁ~。で、その試合とやらはいつなんだ?」
ハルヒ:「今週の日曜」
キョン:「あさってじゃねえか!いくらなんでも急すぎんだろ!」
ハルヒ:「でももう申し込んじゃったし。
あ、安心して!チーム名はSOS団にしといたから!
そのへん抜かりはないわ!」
キョン:「・・・他の四人のメンツは、どこからかき集めるつもりだ?」
ハルヒ:「そこらを歩いてる暇そうなのを捕まえればいいじゃない」
キョン:これを本気で言ってんだから。
キョン:「わかった。お前はじっとしてろ。
とりあえず、谷口と国木田なら暇そうだが・・・」
ハルヒ:「それでいいわ!」
キョン:クラスメイトをそれ呼ばわりするハルヒであった。えっと・・・あと二人か」
みくる:「あの・・・あたしのお友達でよろしければ・・・」
ハルヒ:「じゃあ、それ!」
キョン:誰でもいいらしい。
ん?待て!朝比奈さんの友達?
ちょっと気になるぞ。いつ、どこの友達だ?
みくる:「大丈夫です。この時間・・・あ。クラスで知り合ったお友達ですから」
古泉:「では僕も。実は、我々に興味を抱いている知り合いに心当たりが・・・」
キョン:「俺が、なんとかする!」
ハルヒ:「そうと決まればさっそく特訓ね!特訓!!」
キョン:「特訓だと!?今からか?」
ハルヒ:「そうよ!」
キョン:「どこで!?」
ハルヒ:「あそこで!」
野球部員:「オーライ、オーライ!」
キョン:こうして俺達は、野球大会なんぞに参加することになっちまった。
なぜだろう?その答えは簡単だ。つまり、ハルヒはただ・・・退屈だったのだ。
ハルヒ:「ふふーん♪」
ハルヒ:「ねえちょっと。この場所貸してくんない?それから、野球道具も」
野球部員:「ああ?何言ってんだ?」
ハルヒ:「あたし達、急いで野球の練習しないといけないのよ。邪魔だからどいて」
野球部員:「そんなわけにいくか!」
ハルヒ:「いいじゃんちょっとくらい!ねっ、みくるちゃん!」
みくる:「ふぇ!え、あ、あの・・・」
野球部員:「おぉ・・・」
キョン:わかりやすい青春・・・。
ハルヒ:「さぁ、最初は千本ノック!いくわよ!!」
みくる:「へ? ん?うわぁぁ~!」(しゃがみこむ)
ハルヒ:「そのボールにSOS団の未来がかかってるの!つかみとりなさい!」
キョン:俺達の未来が、こんなちっぽけなボールに乗っていたとは初耳だ。
ハルヒ:「もういっちょ!!みくるちゃん、いくわよ!」
みくる:「みぃぃ~~っ。うきゃぁ、うぅ。痛いですぅー・・・うぅ~」
キョン:「! ・・・大丈夫ですか?立てます?」
みくる:「キョンくんダメ。私と仲良くしたら、また・・・」
ハルヒ:「こらぁ、キョン!みくるちゃん!戻りなさーい!」
キョン:「・・・負傷退場だ!!」
ハルヒ:「・・・。もういいわ。次、野球部入って」
野球部員:「なんで俺達が!」
ハルヒ:「ふっ!よ~し、今日はここまでね!」
キョン:「ハァ・・・」
古泉:「驚きですねぇ。本当にちょうど、千本ぴったりですよ」
キョン:「そんなもんを数えてるお前のほうが驚きだよ。・・・ん。おい、長門。
試合当日だがな、雨を降らせてくれないか?
雨天中止になりそうなでかいやつを」
有希:「出来なくはない。ただし推奨は出来ない」
キョン:「なぜだ?」
有希:「局地的な環境情報の改ざんは、
惑星の生態系に後遺症を発生させる可能性がある」
キョン:「後遺症って、どれくらい後だ?」
有希:「数百年から一万年」
キョン:「・・・。じゃあ、やめた方がいいな」
有希:「・・・いい」
キョン:そんなこんなで、試合の日がやってきた。・・・来なくてもいいのに。
鶴屋:「はっはっは!君がキョンくん?
みくるからよ~く聞いてるよぉ!ふーん。へぇ~」
みくる:「あの!お友達の鶴屋さんです」
谷口:「谷口です!よろしくおねがいします」
国木田:「国木田ですー」
谷口:「いやぁ、親友のキョンの頼みなんで断れなくて・・・」
鶴屋:「谷口くん、国木田くんね。覚えとくよ!」
谷口:「よろしくおねがいします!」
キョン:やれやれ・・・
ハルヒ:「キョン!ちょっと来なさい」
ハルヒ:「何考えてんの?あんた、あんなのに野球やらせる気なの!?」
キョン:「あんなのとは失礼な。あんなんでも俺の妹だぞ」
ハルヒ:「小学五年生、10歳って自己紹介されたわ。
あんたの妹とは思えないくらい素直そうないい子ね!
そんなことより、あたし達が出るのは一般参加の野球大会なの!
リトルリーグじゃないのよ!」
キョン:わかってるさ、ハルヒさん。
だからこそ妹を連れてきたのですことよ!
勝つ要素など皆無だが、ハルヒのすることだからな、間違って優勝でもしてみろ。
絶対面倒なことになる。
小学五年生を混ぜておけば・・・これはもう勝つほうがおかしい。
ハルヒ:「フン。まぁいいわ。ちょうどいいハンデね。
あんまりボロ勝ちしても悪いし」
キョン:どうやらマジで勝つつもりらしい。
キョン:「ところでだなぁ、
まだ打順も守備位置も決めてないんだが、どうすんだ?」
ハルヒ:「ちゃんと考えてきたわ。これで決めたら、文句ないでしょう!
(ポケットからあみだくじを書いた紙を出す)打つ順番と、守るとこの二種類ね。
それから、あたしはピッチャーと一番だから!」
キョン:「お前が考えたのは決める方法だけか」
ハルヒ:「何?なんか不満あんの?民主的な方法でしょ。
古代ギリシャじゃ、くじ引きで政治家選んでたのよ!?」
キョン:古代ギリシャの政治制度と、現代日本の草野球の打順を一緒にするな!
しかもお前だけ自分の好きなようにして、それのどこが民主的だ。
・・・まぁいいか。余計に早く帰れそうだ。なんせさっき聞いたところ・・・
初戦の相手は上ヶ原(かみがはら)パイレーツという大学生チームで、
今大会の優勝候補の筆頭だそうだ。
10点差がついたところでコールドゲームになるから、
今のうちに帰り支度をして早すぎるということはないだろう。
審判:「プレイボール!」
ピッチャー:「フッ!」
ハルヒ:「はぁ、はぁっ。
ふふっ、全然大した球じゃないわよ!あたしに続きなさーい!」
みくる:「よろしくおねがいしまー・・・うわぁ!」
審判:「ストライーク!」
キョン:「!」
キョン:朝比奈さんに向かってなんて球投げやがる!
当てでもしてみろ、即乱闘だ、乱闘パーティだ!
審判:「ストライーク!」
みくる:「ううぅ・・・」
ハルヒ:「みくるちゃん!」
みくる:「?」
ハルヒ:「こうバーンと打つのよ、バーンと!・・・ぉ」
審判:「ストライクアウト!」
ハルヒ:「こら!なんでバット振らないのよっ!」
有希:「・・・」
審判:「ストライクアウト!」
ハルヒ:「有希!振らなきゃ当たらないじゃないの!
キョン、あんた絶対打ちなさいよ!四番でしょ!」
キョン:くじで決まった四番に何を期待しようというのだ。
審判:「ストライーク!」
キョン:・・・。ハルヒはこんなのを長打にしたのか?
審判:「ストライーク!」
ピッチャー:「フッ!」
審判:「ストライクアウト!」
ハルヒ:「アホ~!!何やってんのよ!」
キョン:・・・無念。
続