ひらかれしもの 第四話 「シークレット・ソウル」
・飛鳥蛍一(あすか
けいいち)♂:17歳。善部町に越してきた高校二年生。
ちょっとヘタレな、ごく普通の男の子。
「しっかし・・・」が口癖。
未知数の霊力を持ち、【詠姫】雛菊の詠唱者となる。
・音羽雛菊(おとわ
ひなぎく)♀:17歳。善部高校二年。学校ではお嬢様を演じ、
家族と蛍一の前でのみ、態度が相対する。
色魔(シキ)と呼ばれる霊・妖怪を封じる【詠姫】の三代目。
・音羽葉桜(おとわ
はざくら)♀:16歳。雛菊の妹。善部高校一年。
活発・男っぽい性格で、一人称は「僕」。
詠唱者の第一人者で、雛菊をサポートするしっかり者。
霊力が高く、相手の属性や霊能度を把握する能力がある。
・キトラ ♀:29歳。妖艶な謎の美女。
高飛車で高慢だが、どこか冷ややかな性格も持ち合わせている。
・北原名子(きたはら
なこ)♀:17歳。善部高校二年生。雛菊の友達。
関西弁を話す、元気で活発なムードメーカー的存在。
配役比率 ♂1:♀4=五名
M=語り K=回想
蛍一M:答えは決まっていた。・・・心も、身体も。
なんだかんだで俺は、安心していたんだ。
自分の近くに、他の誰かがいることに。
・・・そうして、甘えていた。この、先の見えない魂に。
―昼休み。屋上。
(蛍一・雛菊・葉桜の三人が昼食をとっている)
雛菊:「・・・で?何であんたがここにいるのよ?」
蛍一:「えっと・・・なんででしょう?」
葉桜:「僕が呼んだんだよっ。
結局さぁ、
蛍(けい)兄さんにちゃんとした詠唱者(えいしょうしゃ)としての説明って、してなかったじゃん?
だから先輩としてねっ!」
蛍一:「さくらちゃん・・・!」
蛍一:(なんて優しいんだ!)
雛菊:「え、してなかったっけ?」
蛍一:「あーほら、あの動く木を退治するのでいっぱいいっぱいで・・・」(※第二話参照)
雛菊:「・・・そうだっけ?」
蛍一:(ホントこいつは・・・!)
葉桜:「で、ちょうどお昼ごはんだし、屋上(ココ)なら誰も来ないでしょ?)
雛菊:「まぁ・・・そうね。アスカがいるのが不本意だけど」
蛍一:「・・・」
葉桜:「蛍兄さんがいなきゃ話になんないっしょ!
・・・で、蛍兄さん。僕に聞きたいことがあったら何でも聞いて!
なんせ僕は先輩だからねっ♪」
雛菊:「・・・いやに嬉しそうね?」
葉桜:「うん、嬉しいよ!なんかこう・・・弟が出来たみたいでさ!」
蛍一:(いや、俺は年上なんだけれども・・・)
蛍一:「そうだな。詠唱者のしての概念はつかめたけど・・・
まだ詠唱者のシステム的なものがわからないんだ。
どうして【色魔(シキ)】が生まれて、【詠姫(よみひめ)】の力になるのか・・・とか」
雛菊:「・・・」
葉桜:「・・・うん。シキがなんで生まれるかは、僕もよくわからないんだ。
僕と姉さんは、ただ、『いる』から『封印する』だけで。
もうずっと、僕が詠唱者として覚醒した時からこの生活をしてるからね。
でも、シキを放っておいていいわけじゃない・・・人間を襲うから」
蛍一:「・・・人間を?」
葉桜:「特に、霊力の高い人間をね。
兄さん、こないだ倒した老い木が、なんで神社(うち)まで来たかわかる?」
蛍一:「?」
雛菊:「うちの神社は、低級のシキが入り込めないように、結界が張ってあるの。
それを打ち破り、わざわざあたし達の前に現れた・・・」
蛍一:「んじゃあ・・・霊力の高い人間を神社で見つけたから・・・?」
葉桜:「そ。・・・今までこんなことなかったんだ。
・・・その人間ってのが・・・・・蛍兄さんだよ」
蛍一:「お、俺?」
雛菊:「実際、詠唱者だったしね。
・・・理解できないけど、あんたにはそこまでに高い霊力があるってこと」
蛍一:「んなこと言われてもなぁ・・・」
葉桜:「蛍兄さんは特別だよ?
同じ詠唱者でも、僕や月白兄さんとは・・・きっと違う」
蛍一:「違うって・・・どう違うの?」
葉桜:「それは、よくわかんないけど・・・そんな感じがする」
雛菊:「葉桜は、相手の属性や霊能度を把握する能力を持ってるのよ。
アスカにも、それをなんとなく感じてるんじゃない?」
蛍一:「そ、そうなんだ・・・」
葉桜:「でもね!僕らは仲間だから!
だから蛍兄さんには、姉さんの封印の手伝いをしてもらいたいんだ」
蛍一:「それは・・・」
名子:「あ~~~!こんなとこにおった!
ひなっ!捜してたんやでっ?」
(突如、屋上のドアが開き、名子が入ってくる)
雛菊:「き、北原さんっ」
名子:「名子でいいっていつも言ってるやろ!?
もう~、一緒にご飯食べよう思ったら、声かける前にどっか行ってまうしっ!」
雛菊:「ご、ごめんなさい・・・妹と話してて」
(申し訳なさそうに頭をさげる雛菊)
蛍一:(お。・・・お嬢モードオン)
名子:「まぁ、アタシが一緒したいだけやから、ええけどねー。
・・・あり?転校生の飛鳥くんやん」
蛍一:「ど、どーも」
名子:「なんや、二人付き合ぅてるん?」
雛菊:「まっ、まさか!!」
名子:「またまた~。照れんでもええのにぃ」
蛍一:「は、はは・・・」
雛菊:「・・・そんなことないんですよ。
ただ、まだ飛鳥くん転校してきたばかりだし、案内も含めて・・・」
名子:「フーン。・・・そうなん?さくらちゃん」
葉桜:「へっ。・・・あぁー、まぁ、そんな感じです」
葉桜:(姉さんの視線が怖いよっ、蛍兄さん!)
蛍一:(いや、俺にはいつもこうだから!)
名子:「んじゃ、そういうことにしといたるわ!
ひな?明日は絶対、ご飯一緒に食べような!
さくらちゃんも、またねっ」
雛菊:「・・・ふぅ」
葉桜:「姉さん、まだ学校でお嬢様やってたんだね。・・・疲れない?」
雛菊:「うるさいわねっ、ほっといてよ。
それより葉桜。今日、硝子(しょうこ)ちゃんは?」
葉桜:「今日は午後からだって」
雛菊:「そう」
蛍一:「硝子ちゃん・・・?」
葉桜:「僕の親友。今度、蛍兄さんにも紹介するねっ」
名子:「きゃああああああっっ!!」
(突然、ドアの向こう側から悲鳴が聞こえる)
葉桜:「!?」
蛍一:「今の、北原さんっ?」
雛菊:「北原さんっ!!」
名子:「お、おばけや!!なんや、かぼちゃみたいなっ!」
(ドアの向こうから、色魔とキトラが出てくる)
<ゴォオオオオオオ・・・・>
キトラ:「あらあら・・・関係ないやっかい者もいたのね?」
(名子の視界を手を覆い、耳元でささやく)
名子:「な、なにすんねん・・・!」
キトラ:「・・・恍惚(こうこつ)の扉、永楽(えいらく)の夢、睡(すい)の邂逅(かいこう)」
名子:「うっ!!」
(倒れる名子)
雛菊:「・・・っ、あんた誰!北原さんに何をしたのっ!?」
葉桜:「姉さんっ、先にシキの方を!」
雛菊:「答えなさい!」
キトラ:「ふふ・・・お怒りかしら?【詠姫】様?
・・・彼女には少し眠ってもらっただけよ。
起きる頃には私のことも忘れてるでしょう」
蛍一:「・・・」
葉桜:「姉さんっ!」
雛菊:「・・・わかってる。
『三代目【詠姫】・音羽雛菊の名をもって招ずる。
管弦・雅楽(ががく)・唱合(うたあわせ)、加持を詠みし声を聴け』」
葉桜:「シキの方・・・名は枯実(こじつ)。
色は橙、属性は地」
蛍一:「確かに・・・一瞬見たらかぼちゃのお化けだな」
蛍一:(どーしてこう、現れるのは突然なんだっ!)
葉桜:「そっちのお姉さんは・・・」
キトラ:「私はキトラ。今日は挨拶だけだったのよ?
・・・そっちの姫様はやる気みたいだけれど」
蛍一:「あなたは、何者ですか?」
蛍一:(さくらちゃんじゃなくたってわかる。
この人の威圧感、力を大きさは計り知れない・・・!)
葉桜:「シキじゃない、普通の人間でもない・・・」
キトラ:「ふふ・・・そうね。確かに普通の人間じゃないわ。
もしかしたら、あなた達に一番近い存在かもしれないわね」
雛菊:「要領を得ないわね。ハッキリ言いなさいよ!」
<ゴォオオオッ!!>
(突然、地震が起こり、シキが蛍一を襲う)
キトラ:「ふふっ。私にかまってると、あの男の子やられちゃうわよ?」
雛菊:「くっ、やっぱり狙いはアスカなのっ!?」
蛍一:「っわぁああ!」
葉桜:「兄さんっ!くっ・・・
『迸(ほとばし)れ、風靡(ふうび)の竜巻。
詠唱者・音羽葉桜、空間を突きぬけ直路(ちょくろ)に、けやけし者を滅し、候(そうろう)!』」
(葉桜の体から竜巻が起こり、それが何倍にも膨れ上がりシキを襲う)
<グァオオオオオオッ>
蛍一:「す、すごい・・・」
葉桜:「相手が地属性だったら、僕有利なんだ!
こないだの無能さを挽回しなきゃね!」
雛菊:「やった・・・?!」
キトラ:「そう簡単にいかないと思うわよ?
一応は【十二色魔(じゅうにしき)】なんだから」
雛菊:「アレも!?」
キトラ:「・・・おもしろい男の子が仲間に増えたのね?」
雛菊:「なんであんた、そんなこと・・・」
キトラ:「さぁ・・・?そうね・・・ヒントは“大和(やまと)”」
雛菊:「・・・!!!!」
キトラ:「ふふっ・・・心当たり、あるかしら?
そうね・・・今日はお暇(いとま)するわ。
色魔(シキ)とは充分に遊んであげて頂戴?」
(屋上から落ちて、姿を消すキトラ)
雛菊:「っ、逃げた!!」
葉桜:「あのオバサンはもういいよ!姉さん、とりあえずこっち!」
雛菊:「もう、わかってるってば!」
蛍一:「せめてシキだけでも・・・!」
葉桜:「迸(ほとばし)れ、天空の咆哮。
詠唱者・音羽葉桜、大雲を突きぬけ直下に、けやけし者を滅し、候(そうろう)!」
<グォオオオオオオオオ!!>
(暴れる枯実)
葉桜:「【十二色魔(じゅうにしき)】の割に、ずいぶんと弱っちいじゃん」
雛菊:「・・・おかしくない?
今まで【十二色魔(じゅうにしき)】を倒したことがないにしても・・・こんなの」
葉桜:「うん・・・」
蛍一:「そんなに変なのか?」
雛菊:「まぁ・・・こんなものなのかもしれないけど」
葉桜:「勝手が分からないからね。
僕達だけじゃ、判別できないよ。
とりあえず姉さん、封じちゃえば?」
雛菊:「・・・そうね。
『汝、只、元の色に戻れ。・・・昇華』」
(橙色が束杖へとしみこんでいく)
葉桜:「帰ったら、父さんと月白兄さんに聞いてみようよ」
雛菊:「そうするしかなさそうね。・・・それにしても・・・」
蛍一:「・・・?」
雛菊:「あんた本当に使えないわね!
シキには狙われるし、すぐ詠唱も出来ないし・・・こないだのは何だったのよっ」
蛍一:「ゔ・・・ご、ごめん」
葉桜:「まぁ・・・まだなったばっかなんだから、しょうがないよ。
今のところは、僕らで蛍兄さんを守るしかないんじゃない?」
雛菊:「【詠姫(よみひめ)】に守られる詠唱者なんて、聞いたことがないわ!」
蛍一:「・・・返す言葉もございません」
葉桜:「まぁまぁ・・・
・・・シキもそうだけど、あの色香たっぷりのお姉さんも、味方ではなさそうだね」
蛍一:「キトラ・・・さん、だっけ」
雛菊:「注意はしておいたほうがいいかもね」
葉桜:「だね」
蛍一:「あぁ」
雛菊:「フゥ・・・・・・“大和”、か」
蛍一:(雛菊・・・?)
蛍一M:“大和(やまと)”
つぶやくように漏れたその言葉が、俺の頭に焼け付いた。
いつもより一層険しくなった雛菊の横顔に、波乱の予感を感じる。
何を思って、何を考えて・・・
その表情を曇らせているんだろう。
続