ひらかれしもの 第七話 「ブレーン・レイン」
・音羽葉桜(おとわ
はざくら)♀:16歳。雛菊の妹。善部高校一年。
活発で男っぽい性格で、一人称は「僕」。
詠唱者の第一人者で、雛菊をサポートするしっかり者。
霊力が高く、相手の属性や霊能度を把握する能力がある。
・安部月白(あべ
つきしろ)♂:27歳。雛菊・葉桜の母親・沙尭の弟。つまり叔父にあたる。
女の人との色恋話が多く、女遊びが激しい。
その言動から、雛菊・葉桜には相手にされないことが多い。
陰陽道に似た技を使い、相手を翻弄する能力を持つ。
詠唱者の一人。
・夏目硝子(なつめ
しょうこ)♀:16歳。葉桜の親友で、雛菊とは中学からの後輩。
大人しく礼儀正しいが、小心者のため人見知りが激しい。
言霊に霊気を発し、傷の痛みを留める能力を持つ。
詠唱者の一人。
・マルコ ♂:12歳。天理の配下。何事にも無感動無関心の感情をもたない少年。
自分の存在意義を求めるためだけに、天理のそばにつく。
・子供 ♂or♀:善部町に住んでいる子供? 6~7歳。
配役比率 ♂1:♀2:♂or♀1=四名
硝子M:初めて会ったのは、小学4年生のとき。
その時もう既にあなたは、詠唱者としての義務を背負っていて。
・・・それからは、ずっと一緒にいたね。
あなたはいつも、人見知りで弱気な私を支えてくれて。
どこまでもかっこよく、私を助けてくれて。
・・・だからね、今度は私が助ける番なの。
側にいて、一緒に戦っていくって・・・・・・そう決めたの。
―夜。河川敷。
葉桜:「んん~。なんにもいないねぇ」
硝子:「そんな、すぐ出てくるわけじゃないんだから・・・」
月白:「そのほうが、都合はいいけどね」
葉桜:「僕は、蛍(けい)兄さん達の方が心配だよ。
一番に襲われそうだもん、蛍兄さん」
月白:「まぁ・・・秘められた強大な霊力を持っているのは確かだ。
だけど、姫さんがついてるんだから大丈夫だろ」
葉桜:「だといいけど。っていうか、何で月白叔父さんはこっちなわけ?
僕と硝子で大丈夫だっていうのに」
硝子:「さ、さくらっ・・・!」
月白:「叔父さん言うなって言ってるだろ、お・に・い・さ・ん!
女の子二人にしておくのは、紳士としてはどうかと思うからね。
・・・ね、硝子ちゃん?」
(そう言って、硝子の肩を抱く)
硝子:「へっ!え、そ、そうですね・・・」
葉桜:「紳士ぃ!?変質者の間違いなんじゃないの?
それから!硝子に気安く触んなっ!」
(月白の腕の中にいた硝子をひっぺがす)
硝子:「さくら・・・。もう・・・」
月白:「・・・!」
(突如、何かを感じ、動きを止める月白)
月白:(視線・・・?)
葉桜:「大体、月白兄さんは・・・」
月白:「しっ!」
硝子:「・・・?」
子供:「・・・」
葉桜:「? ・・・声がする・・・?」
硝子:「子供?あんなところに・・・」
(川岸で泣いている子供を見つけ、葉桜が歩み寄る)
葉桜:「どうしたの?
こんな時間に外に出たら、お母さんに怒られちゃうぞ?」
子供:「うぅっ・・・ひっく、うぇっ」
硝子:「迷子、なんでしょうか?」
葉桜:「お家どこ?家まで送ってあげようか?」
子供:「みんな、いないの・・・かくれんぼしてたのに・・・。
おかぁさんも、むかえにきてくれないの・・・」
月白:「・・・」
葉桜:「そっかぁ。じゃ、僕が家まで・・・」
子供:「おねえちゃん、あそんでくれる?」
葉桜:「え?」
月白:「っ!葉桜、離れろ!!」
葉桜:「へっ・・・」
(がっしりと、子供が葉桜の足につかまる)
子供:「ねぇ・・・あそんでくれる・・・?」
硝子:「さくらっっ!!!」
葉桜:「この子・・・っ、もしかして・・・・!」
子供:「いっしょにあそんでよ・・・おねえちゃん・・・」
葉桜:(霊!?)
月白:「・・・やっぱりか!葉桜・・・動くなよ・・・!」
(月白が懐から札を取り出し、息を吹きかける)
月白:『我、望み賜(たま)いしは、悪しき者の消散。・・・“砕(さい)”!!』
(札が放たれ、子供の霊が葉桜から離れる)
子供:「うわあぁぁっっ!!」
葉桜:「っ!」
硝子:「さくら!大丈夫・・・?!」
葉桜:「あぁ、うん・・・。月白兄さん、今の・・・」
月白:「安部の力だ。陰陽道(おんみょうどう)に、少し似てるかな」
葉桜:「そっか・・・あ、ありがとう」
葉桜:(兄さんは、今までずっとこれを修行してたんだ・・・)
子供:「う、うう・・・・」
硝子:「まだ、動いて・・・?」
子供:「・・・へぇ・・・人間も、意外とやるんだ・・・」
葉桜:「?」
月白:「お前は誰だ?」
子供:「教えてあげてもいいけど・・・?」
葉桜:(何、この子。さっきとは別人・・・!)
(子供は立ち上がると、一瞬にしてその姿を変える)
硝子:「!!」
マルコ:「ボクはマルコ。・・・名前だけ言えば充分だよね?」
硝子:(さっきの子が、ちょっと大きくなった・・・?でも・・・)
月白:「何者だって聞いてる。俺たちに何の用だ?」
マルコ:「・・・」
硝子:(なんて、うつろな瞳・・・)
マルコ:「“何者”・・・そんなこと、ボクが知りたい。
キミ達に攻撃するのは・・・天理様の命令だから」
月白:「天理様?命令・・・?」
マルコ:「命令だから・・・攻撃する。それだけ」
葉桜:「何言って・・・!」
月白:「命令・・・ね。じゃあ、これも命令かい?」
(グシャリ、と、手の中の生き物を潰す。
落としたそこには、札に巻かれた眼球のようなシキが転がっている)
葉桜:「これ・・・シキ!?」
硝子:「いつの間に・・・」
月白:「視線を感じたんだよ。・・・しかも、これ一体じゃない。
何体ものシキが、潜んでこちらを見張ってる。
おおかた、霊力で姿を消しているんだろう?」
マルコ:「へぇ・・・そんなことまでわかるんだ」
硝子:「月白さん・・・すごい・・・」
葉桜:「やるじゃん、月白兄さん」
月白:「お褒めに預かり光栄だね。・・・悪くないよ」
マルコ:「じゃあ・・・隠してても無駄だね」
(マルコがそういうと、一気に姿を現すシキ)
硝子:「っ・・?!」
葉桜:「なっ・・・!!なんて数!!」
(三人の周りを取り囲むように浮かぶシキ。
紫色の眼球のようなその物体が、一斉に動く)
月白:「・・・いや、でもこれは・・・」
葉桜:「大丈夫だよ、硝子。
これは【十二色魔(じゅうにしき)】じゃない。ザコだ」
硝子:「え・・・?」
葉桜:「力が弱い。・・・そうでしょ、兄さん?」
月白:「ああ。これは恐らく子分だろう。親玉は別にいる。
・・・どこかで遠隔操作でも行っているんだろう」
硝子:「もしかして・・・親玉は・・・!」
(ポツ、ポツ・・・ザァァァ・・・・・)
葉桜:「あ、雨・・・。そうか、水属性だから・・・!」
月白:「親玉は・・・姫さん達のところだろうな」
硝子:「でも、そうしたら・・・!」
葉桜:「姉さん達なら大丈夫!僕達は・・・ザコだけでも!」
月白:「・・・あぁ!」
硝子:「わかりました・・・!」
<ウィィィィィィィン・・・!>
(不定期な機械音を鳴らし、近づくシキ)
葉桜:「マルコって言ったよね?
あんたも敵だって言うなら、こっちもそのつもりで行くよ!」
マルコ:「・・・ボクは見てるだけでいいって、天理様言ってた。だからやめておく」
葉桜:「そういうことを聞いてるんじゃ・・・!」
マルコ:「だって・・・」
(瞬時に葉桜の背後に回るマルコ)
葉桜:「っ!!」
マルコ:「・・・今のキミなんて、すぐ殺せるもの」
月白:「葉桜!!」
葉桜:(早い・・・!)
マルコ:「・・・あ・・・天理様が呼んでる。行かなきゃ・・・」
葉桜:「な、どこへ・・・!!」
マルコ:「じゃあ・・・ね」
(消えるマルコ)
<ビュッッ!!!>
(次の瞬間、葉桜の足元に紫の液体がかかる)
硝子:「気をつけて、さくら!それ、毒よ!」
葉桜:「くっ・・・バカにして・・・!姉さんがいなくたって・・・こんなザコ!
『迸(ほとばし)れ、天空の咆哮。
詠唱者・音羽葉桜、大雲を突きぬけ直下に、けやけし者を滅し、候(そうろう)!』」
(突風が吹き荒れ、小さなシキを消し散らす)
月白:「毒とは・・・向こうもずいぶん頭が良くなったじゃないか。
数で逃げるならば、囲うまで!
『我、望み賜(たま)いしは、悪しき者の拘引(こういん)。・・・“戒(かい)”!!』」
(月白が唱えると、周囲一辺を結界が覆い、シキが閉じ込められる)
葉桜:「くうっ・・・!」
(攻撃されて消えたシキが、体内の毒を撒き散らす。
それにかかる葉桜と月白)
月白:「ぐっ・・・まさか、消えてなお毒を放つとは・・・!」
硝子:「二人とも・・・!!」
硝子:(力がほしい・・・二人を・・・ううん。
みんなを癒せる力と、敵に対抗できる攻撃力が。
雛先輩・・・どうか、私に力を・・・!)
硝子:「・・・」
(怪我をした葉桜と月白に近づく硝子)
葉桜:「硝子!近づいたら、危ない・・・!」
硝子:「大丈夫。・・・もう、大丈夫だから・・・」
(そっと、毒をあびた葉桜の腕に触れる)
葉桜:「?」
硝子:『揺(ゆり)動け、大地の緩衝(かんしょう)。
詠唱者・夏目硝子、風土を渡りて早期に、けやけし者を滅し、候(そうろう)』」
葉桜:「・・・!傷が・・・治った?」
硝子:「治ったんじゃないわ。毒の効力を留めただけ。
だから・・・あのシキを全部消さないと・・・」
月白:「傷を留める力、か・・・硝子ちゃんらしい」
硝子:「・・・月白さん、すぐにあなたも・・・」
月白:「いや、俺は大丈夫。先にあいつらを・・・」
硝子:「わかりました・・・!」
硝子:(敵は水属性・・・
だけど浮遊系だから、地属性の私の攻撃は利かない。
それならば・・・私の攻撃も敵に合わせないと・・・)
硝子:「『揺(ゆり)動け、大地の震源。
詠唱者・夏目硝子、風土を渡りて早期に、けやけし者を滅し、候(そうろう)!』」
(突如大地が揺れ、数多の飛礫がシキを襲う)
<ウィィィィ・・・・ガシャン>
葉桜:「硝子、すっごーい!」
月白:「だな。・・・ぐっ」
硝子:「月白さん!今、傷をみますから・・・!」
葉桜:「そんなことしなくたって、月白兄さん、すぐには死なないと思うけどなぁ」
月白:「お前はまたそうやって、生意気な口を・・・。
・・・まぁ、二人ともがんばったよ。エライエライ」
硝子:「ありがとうございます・・・」
葉桜:「無事で済んだから、まぁヨシとしますか!」
硝子:「・・・二人とも、楽天的すぎです」
葉桜M:大雨の中、硝子の初めての戦いは終わった。
僕も月白兄さんも、何とか無事で。
それでも・・・また新しい“敵”ができた。
そう・・・あれは多分、敵。
蛍兄さん、姉さん。そっちは・・・大丈夫だよね・・・?
続