ひらかれしもの 第九話 「ディア・マイ・リリー
①」
・藤堂天理(とうどう
てんり)♂:17歳。【大和路】のリーダー。
冷静沈着で、いつも笑顔を絶やさない。
・キトラ ♀:29歳。天理の配下。金髪碧眼の妖艶な美女。
かなり高慢な性格の持ち主だが、天理の前でだけは従順になる。
・マルコ ♂:12歳。天理の配下。何事にも無感動無関心の感情をもたない少年。
自分の存在意義を求めるためだけに、天理のそばにつく。
・飛火野(とびひの)♂:38歳。天理の配下。赤い髪に鋭い目をした中年男性。
年相応の落ち着きがあるが、【大和路】封印に関わると、感情的になる。
【大和路】に与しているものの、慈悲の心を持ち合わせる程々の常識人。
・事務員 ♂:善部高校の事務員。
・女教師 ♀:善部高校の女教師。
配役比率 ♂2:♀1:♂or♀1=四名
天理M:親愛なる君へ。
ずいぶんと長い時間を費やした気がするけれど、
それももうすぐ終わる。
そうして、君とこの暗闇で眠り続ける時間がはじまるんだ。
―【大和路】アジト・黒社。
(傷をさすり、鏡をのぞくキトラ)
キトラ:「っ・・・嫌ね。思ったより傷が深い」
マルコ:「そんなに自分の顔、大事?」
キトラ:「っ! いきなり背後に立たないで頂戴。
・・・ええ、大事よ。天理様に見せる顔だもの」
マルコ:「合わせる顔・・・ないんじゃない」
キトラ:「なんですって?」
マルコ:「天理様、呼んでる。きっと、怒ってる」
キトラ:「・・・」
マルコ:「自分の顔と、天理様・・・どっちが大事?」
キトラ:「天理様に決まってるでしょう。 ・・・分かってるわ、すぐ行く」
マルコ:(わからない・・・人に尽くすということ、慕うということ。
わからないからボクは・・・ここにいるのかな。
だからって・・・知りたいとも思わないけど)
キトラ:「天理様?お呼びですか?」
天理:「キトラ・・・。言いたいことは、わかってますよね?」
キトラ:「・・・っ。 天理様!申し訳ございません!
今回は失敗しましたが、次は・・・次こそ!」
天理:「残念です、キトラ。 あなたなら分かってくれると思っていた。
僕が失望しているのは、そこじゃないんですよ」
キトラ:(失、望・・・)
マルコ:「・・・」
天理:「・・・どうして、僕に何も言わず行動したりした?
【十二色魔(じゅうにしき)】も勝手に持ち出したりして・・・。
言いましたよね、僕。 “時間をおく”と・・・」
キトラ:「・・・も、申し訳ございません・・・私は・・・」
天理:「そして、マルコも連れ出しましたね。・・・僕にバレないとでも?」
キトラ:「い、いいえっ!私は・・・私はただ、貴方様のために!!」
(歪んだ表情で泣き出すキトラ)
天理:「・・・ハァ」
キトラ:「貴方様の為に・・・あ奴らがいなくなればいいと・・・!」
飛火野:「言い訳は見苦しいぞ、キトラ」
(暗闇の向こうから、一人の男が入ってくる)
キトラ:「あ、あんたは・・・・!」
天理:「・・・おかえり、飛火野」
飛火野:「ただいま戻りました、天理様」
キトラ:「いつ・・・戻って・・・」
飛火野:「フッ・・・俺はいつだって、天理様のそばにいたさ。
天理様。これの制裁は、私におまかせください」
天理:「・・・いいでしょう。けれど、彼女も女性だからね。
丁重に扱ってほしいな」
飛火野:「・・・かしこまりました」
天理:「キトラ。あなたにはしばらく、謹慎していただきます。
その間、監視役は飛火野に任せる。・・・いいですね?」
キトラ:「天理様・・・。そんな・・・私はっ!」
飛火野:「来い、キトラ」
(キトラの腕をつかみ、また暗闇へと消えていく)
キトラ:「離して頂戴!私は・・・!天理様!」
天理:「少し・・・大人しくしていてくださいね」
キトラ:「・・・っ!」
マルコ:「・・・バカな女」
天理:「さて、マルコ?」
マルコ:「はい、天理様」
天理:「キトラの監視、ありがとう」
マルコ:「別に・・・天理様の命令だから。
ただあの女の様子、見てただけ」
天理:「ふふっ、そうだね。
最近のキトラは、周りが見えていないから。
・・・それで? どうでした?“彼”の力は?」
マルコ:「・・・あの男の力は、大きい。
他の詠唱者に比べ物にならないくらい強大で、危惧すべきもの。
・・・でも、まだ不安定」
天理:「彼のコントロール力が不足しているから、ですね。
本当・・・どこまでもあの男と似ている・・・」
マルコ:「・・・?」
天理:「・・・いや。
それ以外に何か、気になることは?」
マルコ:「別に・・・ない」
マルコ:(何を聞いたって、天理様は答えない。
微笑んで、誤魔化して、それで終わり。)
天理:「そう?」
マルコ:(それでも・・・)
天理K:『そんなに自分を知りたければ、僕と一緒に来ませんか?』
マルコK:『あんたと行けば、ボクが何者かわかるの?』
天理K:『あぁ・・・おそらくね』
マルコ:(何の確証もないあの言葉に、今も縛られてる)
飛火野:「・・・フゥ」
天理:「・・・飛火野、キトラは?」
飛火野:「とりあえず部屋に閉じ込めておきました。
泣き喚いて、うるさくて敵わない」
マルコ:「・・・自業自得」
飛火野:「まったくだ」
天理:「そう言わないで。キトラが僕の為にしてくれたことなんだから」
飛火野:「・・・」
天理:「“彼”の力も分かったしね」
飛火野:「・・・やはり、彼を器(うつわ)に?」
天理:「あぁ。彼以上の人間はいないでしょう。
それに彼なら、“沙尭”(さゆり)とずっと一緒にいられる」
マルコ:「・・・さゆり?」
飛火野:「・・・相変わらずですね・・・あなたも」
飛火野:(以前の器も、そうやって軽々と捨てて・・・)
(だんだんと飛火野の俯く顔が険しくなる)
天理:「・・・飛火野?」
飛火野:「・・・何か。天理様」
天理:「フフ・・・大丈夫?顔色が悪いですよ」
飛火野:「そんなことは。何でも・・・ありませんよ」
飛火野:(・・・何もかもわかっているくせに・・・聞いてくる。
・・・この人はそういう人だ)
天理:「そういえば・・・あの珍獣はつかまったんですか?」
飛火野:「あぁ・・・次の【十二色魔】(じゅうにしき)ですね。
今追っている最中です。必ずや、貴方様の下に届けますよ」
天理:「フフ・・・楽しみだな。お願いしますよ」
(急に立ち上がる天理)
マルコ:「天理様、また出かけるの?」
天理:「あぁ・・・準備が出来たからね。じゃ、行って来ます」
マルコ:「・・・いってらっしゃい」
―善部高校。
事務員:「“藤堂天理”さんですね。確かに、承りましたよ」
女教師:「あら、可愛い男の子!」
天理:「ふふ、可愛いだなんて、そんな」
女教師:「君、転入生?何年何組?」
天理:「2年4組・藤堂天理です。よろしくおねがいしますね、先生」
天理M:準備は整った。
さぁ姫君。今から向かえに行くよ。
共に闇へと進む、これからの未来のために・・・。
ね・・・“沙尭”。
続