ひらかれしもの 第十六話 「シャドウ・リグレット」
・飛鳥蛍一(あすか
けいいち)♂:17歳。善部町に越してきた高校二年生。
雛菊と同じクラス。ちょっとヘタレな、ごく普通の男の子。
雛菊と出会い、【詠姫】の詠唱者の一人となる。
・音羽雛菊(おとわ
ひなぎく)♀:17歳。善部高校二年。クラスではお嬢様を演じ、
家族と蛍一の前でのみ、態度が急変する。
色魔と呼ばれる霊・妖怪を封じる【詠姫】の三代目。
・藤堂天理(とうどう
てんり)♂:17歳。蛍一のすぐ後に善部高校に転校してきた二年生。
【大和路】のリーダー。冷静沈着で、いつも笑顔を絶やさない。
・キトラ ♀:29歳。天理の配下。金髪碧眼の妖艶な美女。
かなり高慢な性格の持ち主だが、天理の前でだけは従順になる。
・フリージア ♀:快活で無邪気な低級霊。体長およそ20センチ。
月白の式神であったが、シキに襲われ、その記憶を失くしており、
善部高校内で天理に拾われる。
式神の本能的なもので、主には絶対の忠誠(愛)を誓う。
・北原名子(きたはら なこ)♀:17歳。善部高校二年生。雛菊の友達。
関西弁を話す、元気で活発なムードメーカー的存在。
・志賀裕也(しが
ゆうや)♂:17歳。善部高校二年生。蛍一の友達。ウワサ好きで好奇心旺盛。
個人的に校内の情報を集め、それを楽しむという「噂部」の部長。
配役比率 ♂3:♀4=七名
キトラM:真っ暗な闇を、ひらりと白い蝶が飛ぶ。
それを追いかける先も闇で、ひたすら虚無を走り続ける日々。
貴方のその、鋭い視線が好き。
笑顔の裏にある、冷たい心が好き。
貴方はいつか離れていく。それでも・・・追わずには居られないの。
―【大和路】社・一室。
天理:「待っていましたよ。キトラ」
キトラ:「キトラ、只今はせ参じました」
(壇上の天理に、かしずくキトラ)
天理:「今まで酷い仕打ちをして、すみませんでした・・・。
こんな僕を、許してくれますか?」
キトラ:「そんな・・・天理様。
許すも何も、私の全ては貴方のもの。
どんな仕打ちも、喜びに変わりますわ」
天理:「・・・ふふ、ありがとう」
フリージア:「キトラ殿はお優しいのですっ!」
天理:「クス、そうだね。
・・・ところで、今日は二人に頼みたいことがあるんです」
フリージア:「はいっ!なんなりとお申し付けくださいっ!
先生殿のご命令は、しっかり承るのですー!」
キトラ:(この子・・・っ!私が言おうと思っていたのに・・・!)
天理:「ここに二体、雷属性の色魔(しき)がある。
これを使って、この人間を亡き者にして欲しいんです」
(そう言って天理は、一枚の写真を床に落とす)
キトラ:「まぁ・・・天理様から抹殺の命令が下るなんて・・・」
フリージア:「うにゅ?」(写真を覗きこむ)
キトラ:「この男・・・」
フリージア:「うわぁお♪イケメンなのですーっ!」
フリージア:(でも、どこかで見たことがあるよーな・・・)
キトラ:「確か、【詠姫】(よみひめ)の詠唱者ですよね」
天理:「ああ。名は、安部月白。いろいろと面倒な人物でしてね・・・。
早い内に排除しておいた方がいいと思って」
キトラ:「ふふ・・・おまかせください。
必ずや、仕留めてみせますわ」
天理:「クス。・・・期待していますよ」
フリージア:「フリージアも、精一杯お手伝いするのですっ!」
天理:「ああ。よろしくね」
―善部高校、2年1組。
名子:「でな!その転校生、めちゃ美少年らしいねん!
だからな~ひなっ。一緒に見に行こうや!」
雛菊:「ええっと~・・・その、私は別に・・・」
名子:「なんや、興味ないん?
だって見たいやん~。その美少年とひなのツーショット!
めっちゃ空気、キラキラしてんねんで、きっと!」
雛菊:「は、はぁ・・・」
名子:「バックに花とか出てくるんやでぇー!
あたし、その光景見たいわー!」
裕也:「なんだなんだ?何の話?」
(ノートを持ち出し、会話に入ってくる裕也)
名子:「あっ、裕也!
アンタなら知ってるやろ?噂の転校生の話!」
裕也:「あぁ、4組の転校生?」
名子:「そうそう♪めちゃめちゃエエ男らしいやん?
そりゃあ、女としては、一回くらい見とかんと!」
裕也:「お前、女だったんだ」
名子:「・・・なんやてぇ?」
雛菊:「ま、まぁまぁ。北原さん、落ち着いて・・・」
蛍一:「しっかし・・・確かに、すっげー綺麗な顔してたな」
裕也:「あれ?お前見たことあんの?4組の藤堂」
蛍一:「ああ。ちょこっとだけ話した」
蛍一:(“友達”・・・になったって言えるのか、アレ?)
名子:「うわぁ、エエなぁー飛鳥くん!
藤堂くん、って言うん?」
裕也:「あぁ。 2年4組・藤堂天理。
フランス出身、転校前の学校は不明。
髪の色・銀、瞳の色・紫。
両親は海外を渡り歩いていて、行方不明。
住所も不明、家族構成も不明」
雛菊:「・・・っ!!」
名子:「・・・なんや、不明ばっかやん;」
裕也:「しょうがないだろっ。
俺のリサーチを持ってしてもコレなんだから;」
名子:「アンタの捜査能力が甘いだけなんとちゃうの~?」
裕也:「なんだとッ!噂部をバカにしたら、ひそひそ神のたたりがあるぞ!」
名子:「・・・なんやねん、それ;
ひそひそ神なんて、生まれて初めて聞いたわ!」
雛菊:「今・・・・・なんて?」
裕也:「へ?」
蛍一:「雛菊?」
名子:「いや、だからひそひそ神・・・」
雛菊:「違う!その転校生の名前!」
裕也:「ひぇっ! と、藤堂天理?」
雛菊:「そう!!! 天理!!」
(机をバン!と叩き、立ち上がる雛菊)
名子:「・・・知ってる人なん?ひな」
雛菊:「えっ!(我に返り)・・・え、ええ・・・まぁ・・・
ちょっとアスカくん・・・来てもらえる?」
(笑顔で蛍一の腕をひっぱり、廊下へ連れ出す)
蛍一:「え、ちょ、ちょっと!拒否権はナシかよっ!」
(教室から出て行く二人)
名子:「あの二人・・・最近ごっつ仲ええなぁ・・・」
裕也:「・・・同感」
―【大和路】社内。
キトラ:「では私は、早速準備の方、始めさせていただきますわ」
天理:「ああ、お願いしますね」
キトラ:「お任せください。・・・全ての命(めい)は、貴方の元へ・・・」
(そう言って、暗闇に消えていくキトラ)
フリージア:「・・・先生殿」
天理:「どうしました?フリージア」
フリージア:「フリージア、肝心なことを聞くのを忘れていました;」
天理:「肝心なこと?」
フリージア:「・・・先生殿の、最終目標ですっ。
先生殿は、何をしたいのですか?
世界を手に入れるとか、そうゆうモノですかっ?」
天理:「・・・フフ・・・・・フフフ・・・・・フハハハハハ!!」
(狂ったように笑い出す天理)
フリージア:「せ、先生殿っ・・・?!」
天理:「世界征服ね・・・まぁ、それもいいけれど・・・・。
・・・教えてあげるよ、フリージア。
僕が欲しいものは、今も昔も一つだけさ。
ずっと追い続けている。それが近々叶うんだ・・・!」
フリージア:「先生殿の、欲しいもの・・・?」
天理:「さぁ・・・行っておいで、フリージア。
僕の夢を叶えてほしいな」
フリージア:「は、はいっ・・・行ってまいりますっ」
(一筋の光を伸ばし、逃げるように飛んでいくフリージア)
天理:(・・・フフ。結果、どちらに転んでも構わないさ。
塵芥(じんかい)同士がぶつかり合うだけなのだからね・・・)
―善部高校内、裏庭。
蛍一:「ちょ、ちょっと雛菊!どこまで連れて行くんだよ!」
雛菊:「・・・・・あんた・・・その転校生と会ったって言ったわよね?」
蛍一:「え、い、言ったけど?」
雛菊:「すぅ~(息を大きく吸って)・・・・・・このバカッ!!!」
蛍一:「うわっ!なんだよっ!」
雛菊:「あんた、思いっきり忘れてるんじゃないわよっ!
天理よ、天理!
その名前でなんか思い出したりしないわけ!?」
蛍一:「はぁ・・・」
雛菊:「天理っていったら・・・・前に葉桜達も、緑牙(りくが)も言ってたじゃない!
【大和】の首領でしょうがッ!」
蛍一:「あ、そっかぁ~・・・・って・・・・でぇえええええっっ!??」
雛菊:「し、信じらんない・・・本当に忘れてただなんて」
蛍一:「だって、女みたいに華奢な体してたぜ?
あれが、敵の親玉・・・?」
雛菊:「相手は、色魔(しき)を作り出し、操る元凶なのよ?
自分の姿を変えるくらい、造作もないでしょ」
蛍一:「そ、そっか・・・・」
雛菊:「・・・逆に尊敬するわ。
あんたが生きていたことにね」
蛍一:「うっ・・・」
雛菊:「ま、いいわ。・・・行きましょ」
蛍一:「行くって、ドコに!」
雛菊:「4組に決まってるでしょ!」
蛍一:「いきなり会いに行くのかよ!
危ないって!みんなに知らせてからの方がいいよ」
雛菊:「でも・・・!」
蛍一:「俺はまぁ、奇跡的に生きていたからいいとして・・・。
親玉ってことは、それほど強いんだろ?二人だけで勝てるとは思えない」
雛菊:「・・・だけど・・・」
蛍一:「それに俺はまだ・・・お前の力になってる自信がない。
だから、みんなに相談してからでも遅くないんじゃないか?」
雛菊:「・・・」
蛍一:「気になるのは分かるけどさ。
・・・俺の言ってること、間違ってるか?」
雛菊:「・・・悔しいけど、正論」
蛍一:「だろ?」
雛菊:「分かった。今日は諦めるわ。
その代わり、帰ったらあんたも修行に付き合いなさいよ!」
蛍一:「げっ、マジ?」
雛菊:「大マジよ!
自信がないなら、つけるしかないでしょ!」
蛍一:「・・・ハイハイ。それも正論です。
どこまでも付き合いますよ、お姫さん;」
雛菊:「分かればいいのよ、分かれば!」
(教室に戻る二人)
天理M:さて・・・やっと僕に気づいてくれたようですね。
ずっと待ち焦がれていたんですよ。
その瞳が僕だけを捉え、その脳裏に浮かぶ顔が、僕だけになる・・・。
運命の再会の準備は万全だ。
不要なモノは全て捨てよう。
この腐乱の世界には、僕と君だけいれば充分なのだから・・・。
続