ひらかれしもの 第十七話 「アラウンド・ペース」
・飛鳥蛍一(あすか
けいいち)♂:17歳。善部町に越してきた高校二年生。
雛菊と同じクラス。ちょっとヘタレな、ごく普通の男の子。
雛菊と出会い、【詠姫】の詠唱者の一人となる。
・音羽雛菊(おとわ
ひなぎく)♀:17歳。善部高校二年。クラスではお嬢様を演じ、
家族と蛍一の前でのみ、態度が急変する。
色魔と呼ばれる霊・妖怪を封じる【詠姫】の三代目。
・音羽葉桜(おとわ
はざくら)♀:16歳。雛菊の妹。善部高校一年。
活発で男っぽい性格で、一人称は「僕」。
詠唱者の第一人者で、雛菊をサポートするしっかり者。
霊力が高く、相手の属性や霊能度を把握する能力がある。
・安部月白(あべ
つきしろ)♂:27歳。雛菊・葉桜の母親・沙尭の弟。つまり叔父にあたる。
女の人との色恋話が多く、女遊びが激しい。
その言動から、雛菊・葉桜には相手にされないことが多い。
陰陽道に似た技を使い、相手を翻弄する能力を持つ。
詠唱者の一人。
・夏目硝子(なつめ
しょうこ)♀:16歳。葉桜の親友で、雛菊とは中学からの後輩。
大人しく礼儀正しいが、小心者のため人見知りが激しい。
言霊に霊気を発し、傷の痛みを留める能力を持つ。
詠唱者の一人。
配役比率 ♂2:♀3=五名
葉桜M:ほんっと、あの男は僕のこと怒らせるの上手いよね!
何度注意しても聞く耳持たず、
上手くかわされて、「ハイ、それで?」って流される。
・・・別に僕には関係ないけどさ!
関係ないけど・・・・さ・・・。
―善部高校。2年1組。
女子1:「ねえねえ、新任の先生、チョーかっこよくない!?」
女子2:「うんうん!しかもウチのクラスの副担なんて、超ラッキーだよねっ!!」
蛍一:「・・・・・」
雛菊:「・・・・・」
(教壇に立つ人物を見て、愕然とする二人)
月白:「本日付けで、このクラスの副担任になりました。
安部月白といいます。みんな、よろしく。
仲良くしてくれると嬉しいな・・・特に、可愛い女子生徒は大歓迎だよ」
(女生徒に色目を使い、二人に微笑む月白)
蛍一:「ウソ・・・だろ!なんで・・・・!」
雛菊:「あ、ありえないわ・・・!!」
蛍一(&雛菊):「月白さん!!!???(月白お兄さん!!??)」
(放課後。教室)
雛菊:「・・・で?どういう事なのか説明してもらいましょうか?」
(月白の前で、腕組をして仁王立ちする雛菊)
月白:「まぁまぁ、怒らないでよ姫さん。
【大和】の首領が高校に来たって言っただろう?
味方は多いほうがいいじゃないか」
雛菊:「そういう問題じゃありません!
それだけのために教師にまでなって・・・
大体、なんの教科教えるんですか!!」
蛍一:「いや、ツッコむとこ、そこじゃないだろ!!」
月白:「そうだね。一応、化学って事になってるよ。
安部の力は、まじないと化学の融合みたいなものだからね。
・・・まぁ、俺としては保健体育の方が得意なんだけど」
女子2:「やだぁ、先生ったら~!」
月白:「ふふっ、本当だよ。・・・試してみる?」
女子2:「キャーv また今度にしまぁーっす!」(教室を出る)
雛菊:「高校生相手に口説かないでください!!」
蛍一:(・・・もはや只のエロオヤジだな;)
蛍一:「しっかし、そんな簡単に教師になれるもんなんですか?」
月白:「あぁ・・・もともと教員免許は持っていたんだよ。
使う機会がなかっただけで」
蛍一:「へぇ・・・意外」
月白:「ここの校長とも、音羽の人間は深い仲だしね」
蛍一:(ホント・・・なんでもアリだな;)
雛菊:「それよりも・・・どうすんのよ、これから。
その天理って男のとこに行ってみる?」
月白:「残念ながら、姫さん。それはまたの機会になりそうだよ」
雛菊:「え?」
月白:「俺も一応は教師として、奴のクラスに行ってみたが・・・
藤堂天理は、ここのところずっと学校を休んでいるらしい」
蛍一:「転入して、まだそんなに経ってないのに?」
月白:「ああ。
我らとの戦いを避けているのか・・・
それとも何か、他の目的があるのか・・・。
いずれにしろ、向こうが現れない限り、手の施しようがないね」
雛菊:「じゃあ、待つしかないってことね・・・。
・・・っ、ああ、もう!イライラするっ!」
(スタスタと、教室を出る雛菊)
蛍一:「お、おいっ雛菊!ドコ行くんだよ!」
雛菊:「・・・トイレっ!!」
月白:「おやおや・・・女の子がそんな口を聞くもんじゃないよ」
蛍一:(まったくだ・・・)
―その頃。1年3組。
葉桜:「信じらんない、信じらんない!信じらんないぃ~~~!!!!」
硝子:「さ、さくらっ。落ち着いて・・・」
葉桜:「だってありえないでしょ!
なんでいつの間にか教師になってんのさ!」
硝子:「でも、私もクラスの子から聞いた話だし・・・。
もしかしたら、その子の勘違いってことも・・・」
葉桜:「いや・・・。あんな目立つ人間、そうはいないから!
・・・あ゛ぁーっ、気になる!
ちょっと僕、確かめてくる!!
硝子!ここで待ってて!」
硝子:「ええっ!?」
葉桜:「一人で帰ったりしたらダメだよ!一緒に帰るんだからねー!」
硝子:「・・・ふふっ、はいはい。いってらっしゃい」
(走って教室を出る葉桜)
硝子:(普通に『会いたいから』って言えばいいのに・・・。
相変わらず素直じゃないんだから・・・。
まぁ、さくららしい・・・かな♪)
―化学準備室。
葉桜:「・・・ハァ、はぁっ! ・・・い、いたっ!!」
(扉を思いっきり開けて叫ぶ)
月白:「おや、葉桜。
・・・じゃないね、一年の音羽さん」
葉桜:「うっわ。超他人行儀」
月白:「今は“教師と生徒”なんだからしょうがないだろう?
・・・何か用かな?」
葉桜:「用かな? じゃないよ!!
今、この状況に文句言ってやろうと思って来たの!
何、いきなり教師って!」
月白:「姫さんから、【大和】がここに来ているって話、聞いたろう?
・・・だからさ。
味方は多いほうが、何かあった時に便利だろう」
葉桜:「だからって・・・いくらなんでも急すぎない!?
普通、相談とかあるでしょ!」
月白:「決めたのも急だったんだよ。
まぁ実際、お前のクラスの担当はないし、問題はないはずだ。
それとも何?そんなに俺のことが気になるのかな?」
葉桜:「別に!
・・・なんか今日、嫌にケンカ腰じゃない?」
月白:「それは毎回、お互い様だろ」
葉桜:「・・・っ!
・・・で、アレだ?
“安部先生”は女子にモテまくって、これからさぞかし幸せな毎日を送るわけだ?」
月白:「・・・・・・ハァ」
(まっすぐに葉桜を見つめて、また目をそらし、小さくため息をつく)
葉桜:「・・・なんだよ?本当のことじゃん」
月白:「・・・・“音羽”。
これから学校では、俺に気安く話しかけてくるな」
葉桜:「・・・・・・は・・・?」
月白:「・・・」
葉桜:「なんで・・・そんなこと・・・・」
月白:「・・・・いいな?」
(言って、その場を後にする月白)
葉桜:「・・・っ、はは・・・・なんだ、そーゆーこと・・・。
結局、自分のジャマになるから、僕は要らないっていうことだろ?
・・・・・っ・・・月白叔父さんの・・・・ばか・・・」
―1年3組。教室。
蛍一:「あ。さくらちゃん、おかえり。
月白さんには会えた?」
葉桜:「あれ・・・蛍兄さん?
硝子は?あと、姉さんも」
蛍一:「それがさぁ、聞いてよさくらちゃん!
・・・雛菊がさ。
トイレ行くって言ったまま、何十分も帰ってこないから、さすがに心配になって・・・。
でも、男の俺が女子トイレに行くわけにいかないだろ?
んで、教室に一人残ってた硝子ちゃんを捕まえたってワケ」
葉桜:「・・・そっかぁ」
蛍一:「・・・さくらちゃん・・・?
・・・どうしたの、何かあった?」
葉桜:「え・・・ううん!何もないよ!うん!何もないっ」
蛍一:「・・・・・・・ウソ」
葉桜:「へっ!?」
蛍一:「やっぱ姉妹だよなぁ。
俺、なんとなくわかるんだよ。
雛菊もそう。・・・っはは!二人とも、嘘つくの下手だよなぁー!」
葉桜:「う゛・・・」
蛍一:「何でも言ってみてよ。
俺、さくらちゃんのこと、ホントの妹みたいだって思ってるし」
葉桜:「・・・うん」
蛍一:「それでも話したくなかったら・・・
俺のくだらない話でよければ、いつでもするからさ!」
葉桜:「うん・・・ありがと、蛍兄さん。
実はね・・・」
(先程までの月白との会話を、全て蛍一に話す葉桜)
蛍一:「・・・そっか・・・月白さんがねぇ;」
葉桜:「別に必要とされたいわけじゃないけど・・・
あそこまで突き放されること、今までなかったから・・・」
蛍一:「月白さんもさ・・・」
葉桜:「え?」
蛍一:「月白さんも意外と、嘘つくの苦手だよね」
葉桜:「そーかなぁ?人を騙すの、ものすごい得意そうだけど;」
蛍一:「あははっ。そんなことないよ。俺はそう思う。
だからさくらちゃんにそんな態度とったのも、きっと理由があるんだよ」
葉桜:「・・・・・うん」
(俯き、考え込む葉桜)
蛍一:「ほら!そんな顔しないでよ!
・・・っと・・・」
(突然、蛍一のケータイが鳴る)
蛍一:「硝子ちゃんからメールだ。
なになに?」
硝子:『雛先輩、トイレに行っても居ないから探しにきたら、裏庭で修行してました!』
蛍一:「ぶっくく・・・・どれだけ修行したら気が済むんだよ・・・!」
葉桜:「あっははは!姉さんらしい・・・!」
硝子:『もう終わりだそうなので、みなさんで帰りましょうとのことです。
校門前でお待ちしています。 硝子』
蛍一:「さ、今日はもう帰ろうか」
葉桜:「だねっ」
蛍一:「ちょっとは元気でた?」
葉桜:「うん!ありがとう!
蛍兄さん大好き!!」
葉桜:(僕も蛍兄さんのこと、本当のお兄さんみたいだって思ってるよ・・・)
月白M:これでよかったんだ・・・そう自分に言い聞かせることにした。
深い傷を負わせるより、浅く、すぐに治る傷をつけたほうがいい。
君の前から居なくなるなんて気はさらさら無いが・・・
それでも、近づいてくる闇を振り払わねばならない。
たとえばこの先・・・何度泣かせることになったとしても。
続