ひらかれしもの 第二十二話 「リリカル・ヴァース」
・飛鳥蛍一(あすか
けいいち)♂:17歳。善部町に越してきた高校二年生。
雛菊と同じクラス。ちょっとヘタレな、ごく普通の男の子。
雛菊と出会い、【詠姫】の詠唱者の一人となる。
・音羽雛菊(おとわ
ひなぎく)♀:17歳。善部高校二年。クラスではお嬢様を演じ、
家族と蛍一の前でのみ、態度が急変する。
色魔と呼ばれる霊・妖怪を封じる【詠姫】の三代目。
・音羽葉桜(おとわ
はざくら)♀:16歳。雛菊の妹。善部高校一年。
活発で男っぽい性格で、一人称は「僕」。
詠唱者の第一人者で、雛菊をサポートするしっかり者。
霊力が高く、相手の属性や霊能度を把握する能力がある。
・夏目硝子(なつめ
しょうこ)♀:16歳。葉桜の親友で、雛菊とは中学からの後輩。
大人しく礼儀正しいが、小心者のため人見知りが激しい。
言霊に霊気を発し、傷の痛みを留める能力を持つ。
詠唱者の一人。
・音羽大喬(おとわ
ひろたか)♂:37歳。雛菊・葉桜の父親。
ハイテンションなオカマ。これでも神社の神主。占いが得意。
・緑牙(りくが)♂:西の地・土属。鋭い爪と牙を持ち、地を駆ける獣型の色魔。
仲間を裏切り【詠姫】のもとへとつく。
自分の仲間・紅牙と空牙を食らい、力を得て、
空を裂き飛ぶことが出来、人間に変化することも出来る。
配役比率 ♂3:♀3=六名
硝子M:・・・鼓動が速くなる。
今までに感じたことのない傷み。
でも・・・これを認めてはいけない気がした。
だって、違いすぎる。
私とあなたじゃ・・・・住む世界も・・・・・それを取り巻く全ても。
―放課後。葉桜から、蛍一の家に電話がかかってくる。
蛍一:『・・・音羽神社のお祭り?』
葉桜:『そう!結構、人とかもいっぱい来るし、出店もあるから楽しめると思うよ♪』
蛍一:『へぇ~。おもしろそうだね』
葉桜:『ふふん♪ 姉さんの巫女衣装も見れるから、楽しみにしていいよ♪』
蛍一:『なっ・・・!さくらちゃん!!』
葉桜:『アハハ!じゃあ、またあとでね!』
蛍一:『・・・まったく。完全に遊ばれてるな;』
―夕刻。音羽神社。
葉桜:「あっ、来た来た!兄さ~ん!」
蛍一:「こんばんは、さくらちゃん。
しっかし・・・かなり人が来てるんだな」
(煌びやかに飾られた神社に、集まる人。周りを見回す蛍一)
葉桜:「にぎやかでしょ?」
雛菊:「・・・娯楽が少ない町だからね。勝手に集まってくんのよ」
蛍一:「おう、雛ぎ・・・・・・・!!」
蛍一M:その時、俺は一瞬言葉を失った。
巫女姿の雛菊があまりにも、その・・・・綺麗だったからだ。
雛菊:「・・・何よ?」
蛍一:(やっぱりこいつ、顔だけはいいんだよなぁ・・・)
蛍一:「あ、いや・・・」
雛菊:「分かってるわよ。どーせ似合わないって言いたいんでしょ!」
蛍一:「いや、その・・・・似合ってる、と思う。・・・可愛い」
雛菊:「ばっ・・・・バッカじゃないのっ!/// あ、当たり前でしょっ!///」
葉桜:「姉さん、照れてやんの~♪」
雛菊:「う、うるさいっ!///」
蛍一:「ハハハ・・・」
蛍一:(なんか慣れたな、この光景も)
雛菊:「ま・・・せっかく来たんだから、楽しんでいけば?
丁度、葉桜のお守りしなくて済むし」
葉桜:「僕、子供じゃないよ!」
雛菊:「ハイハイ」
蛍一:「え?雛菊は回らないのか?」
葉桜:「姉さんはこの神社の巫女さんだからね。
本殿で祈祷するのがお仕事なんだよ」
蛍一:「そっか・・・」
葉桜:「だから、兄さんは僕とデート♪」
雛菊(&蛍一):「で、デートって!!」
葉桜:「あれ?何かご不満でも?」
蛍一:「い、いえ・・・」
雛菊:「べ、別に気になんてならないし!・・・じゃ、じゃあねっ」
(足早に本殿へと戻る雛菊)
葉桜:「姉さんも兄さんも素直じゃないなぁ・・・」
蛍一:「う゛っ・・・。
そ、それよりさくらちゃん。今日、硝子ちゃんは?」
葉桜:「硝子?硝子も、デートだよ♪」
蛍一:「え、硝子ちゃんが?誰と?」
葉桜:「ふふん♪ 僕だって、結構気を使ってるんだから~」
―一方。出店を回る硝子と緑牙(人間姿)。
(辺りを物珍しそうに見回す緑牙)
硝子:「あの・・・ごめんなさい; こんな人の多いところ、連れまわしたりして・・・」
緑牙:「いや・・・面白いものだな。
これほどの数の人間を見たことはなかったが・・・退屈しない」
硝子:「そ、そうですか・・・よかった」
緑牙:「それに、そなたが楽しんでいるのが一番だ」
硝子:「ぁ・・・ありがとうございます///」
緑牙:「硝子・・・あれは?」
(言って、金魚すくいを指さす緑牙)
硝子:「あれは“金魚すくい”ですね。
最中に針金を刺したものを使って、水槽の金魚をすくう遊びなんですよ」
緑牙:「ほう・・・」
硝子:「やってみますか・・・?」
男:「おう!いらっしゃい、お二人さん!
どうだい、やっていくかい?」
緑牙:「そうだな・・・」
硝子:「じゃ、おじさん、一回お願いします」
男:「あいよ!
しかし・・・いいねぇ~。デートかい?」
硝子:「そ、そそそ、そんなんじゃ・・・!///」
緑牙:「ふむ・・・」
(そんな会話をよそに、真剣に金魚を見つめる緑牙。
すばやくポイを動かしたが、最中がやぶけてしまう)
硝子:「あっ・・・!」
緑牙:「うむ・・・・難しいな」
硝子:(やぶけちゃった・・・)
男:「あちゃ~。ダメだよお兄さん。
それじゃ金魚が逃げちまう」
硝子:「緑牙さん。私のあげますから、もう一回がんばりましょう?
こう、ポイを斜めに水に入れて、水槽の隅の方へ・・・
ゆっくり金魚を追い詰めて・・・」
男:「おっ、お嬢ちゃん分かってるねぇ!」
硝子:「ふふ・・・昔から、このお祭りでよくやりましたから」
緑牙:「ふむ・・・・ゆっくり・・・」
(緑牙のポイに、うまく金魚が入る)
男:「おっ!」
緑牙:「ふっ!!」
硝子:「やった!」
緑牙:「しょ、硝子!この後はどうするのだ!」
硝子:「はいっ、このボールにいれてください。
おじさん、これを・・・」
男:「あいよ!今、包んでやるからな」
硝子:「おめでとうございます、緑牙さん」
緑牙:「ああ・・・・初めてやったが、楽しいな」
硝子:「ふふっ、真剣でしたね」
緑牙:「あぁ・・・」
少女:「うええええ~~~~んっっ!!」
硝子:「あら?」
少女:「ママぁ~~!金魚、とれないよぉ・・・!」
(金魚がとれず、泣いている子供をあやす母親)
緑牙:「・・・」
男:「はい、お待たせ!お二人さん!」
緑牙:「・・・親父殿。この金魚、そこの童女(わらわめ)にあげてくれ」
少女(&硝子):「え・・・?」
緑牙:「私がとったものでいいのなら、だが。いるか・・・?」
少女:「いいの?おにいちゃん」
緑牙:「ああ。構わない」
少女:「わぁ~!ありがとうっ、おにいちゃん!」
(うれしそうに金魚を持ち、走っていく子供)
硝子:「・・・・いいんですか?」
緑牙:「・・・ああ」
硝子:「あんな真剣にとったのに・・・」
緑牙:「構わない。それにきっと・・・似ていたのだろう」
硝子:「え・・・?」
緑牙:「あの金魚は、虚空を彷徨っていた私だ。
それを・・・硝子。そなたがすくい上げてくれた」
硝子:「そ、そんな、私なんか・・・」
緑牙:「そなたの優しさという網は・・・きっとやぶれないのだろうな」
―一方。蛍一と葉桜は屋台をはしごしていく。
葉桜:「兄さん!次、僕たこやき!」
蛍一:「ええっ!今、焼きそば食べたのに・・・」
葉桜:「い~からい~から! あっ!今年はいか焼きもある~!」
蛍一:「・・・げ、元気だなぁ~」
蛍一:(というか、サイフの中身足りるか・・・?;)
葉桜:「・・・ねえ、兄さん」
蛍一:「んー・・・?」
(ジュースを飲みながら、葉桜の後ろをついていく蛍一)
葉桜:「姉さんのこと、好き?」
蛍一:「ぶはっっ!!!
な、何、いきなり!!」
葉桜:「あ、いや、そんなに反応しなくても・・・」
蛍一:「あ、あのねえっ、さくらちゃん!?」
葉桜:「あっ、ほら!姉さんの祈祷がはじまるよ!
兄さん、見に行こう!」
蛍一:「あ、ちょっと!さくらちゃん!」
(本殿での祈祷がはじまる。静かに祈りを捧げる雛菊の姿が見える)
葉桜:「ほら、ちょうどいい時間♪」
蛍一:(・・・・綺麗だ・・・・・)
葉桜:「・・・姉さんさ」
蛍一:「?」
葉桜:「わかってると思うけど、責任感強いでしょ?
で、意地っ張りだし。
だからね・・・すぐ心、壊れちゃうと思うんだ。
だから、姉さんの一番近くにいる蛍兄さんには・・・
姉さんのそばで、崩れそうな姉さんを支えてほしいって思ってる」
蛍一:「うん・・・」
蛍一:(前に、大喬さんにも同じようなこと言われたな)
大喬K:『雛菊を、よろしくね』
大喬K:『雛菊には仲間がいる。・・・あなたもいる。
アタシは、一番にあの子を守れるのは、蛍一クンだと思うから・・・』
蛍一:「うん・・・・守るよ」
葉桜:「へ?」
蛍一:「俺が、支える」
葉桜:「兄さん・・・ありがとう」
女生徒:「あっれ~?さくら!何してんの?
ってか、その人だれ?まっさか・・・彼氏ぃ?」
葉桜:「え?
ああ・・・この人?」
女生徒:「さくら、彼氏いたんだぁ~」
葉桜:「違うよ。この人はね・・・」
女生徒(&蛍一):「?」
葉桜:「僕の将来のお兄さん♪」
蛍一:「ちょ!さくらちゃ・・・!!!」
葉桜:「っへへ~♪」
蛍一M:『お兄さん』
その言葉が妙にくすぐったかった。
でも、決意も気持ちも変わらない。
俺が・・・彼女を守りたい気持ちは、何ひとつ変わらなくていいんだ。
続