ひらかれしもの 第二十七話  グレイスフル・ネーム

 

 

・飛鳥蛍一(あすか けいいち)♂:17歳。善部町に越してきた高校二年生。

雛菊と同じクラスに転校してくる。

ちょっとヘタレな、ごく普通の男の子。

雛菊と出会い、【詠姫】の詠唱者の一人となる。

 

・志賀裕也(しが ゆうや)♂:17歳。善部高校二年生。蛍一の友達。ウワサ好きで好奇心旺盛。

安部の分家の人間であり、【詠姫】の裏で情報収集などをしている。

 

・北原名子(きたはら なこ)♀:17歳。善部高校二年生。雛菊の友達。

関西弁を話す、元気で活発なムードメーカー的存在。

裕也とは中学からの腐れ縁。

 

・占い師 ♀:年齢不詳の占い師。(40代~?)

よく当たると噂される占いで有名。別名「善部の母」

 

 

 

配役比率 ♂2:♀2=四名

 

 

 

 

 

 

 

 

―善部高校、教室。昼。

 

蛍一:「・・・・はぁ」

 

裕也:「おんや、どうした蛍一クン?

(声色を変えて)

・・・・ため息をつくと・・・幸せが逃げちまうぜ?」(キラッ☆)

 

蛍一:「・・・それ、もしかしなくても月白さんの真似?」

 

裕也:「おっ、わかってるねぇ大将!どう?似てた?」

 

蛍一:「ぜんっぜん」

 

裕也:「本日もなかなかにつれないねぇ、蛍一クンは」

 

蛍一:「・・・いや、平和だなと思ってさ。

こないだの騒動が嘘みたいに」

 

裕也:「あー。結局、藤堂も見つからなかったしなあ~。

俺、あん時、人生で一番一生懸命走ったのに・・・」

 

蛍一:「ああ・・・どこ行ったんだろうな」

 

裕也:「二言目スルーすんなよ!」

 

名子:「なーなー。なんの話?ウチも混ぜてぇや」

 

蛍一:「わっ!北原さん!」

 

裕也:「・・・なんでもない。お前には関係ないよ」

 

(今までとがらりと話のトーンをおとして冷たく言う)

 

蛍一:「!」

 

名子:「なっ・・・なんやねん!ちょっと聞いただけやないの!」

 

裕也:「・・・あ、俺、部室に忘れ物してきたんだった。

ちょっと取ってくる」

 

蛍一:「お、おい志賀――」

 

(名子を避けるかのように教室を出て行く裕也)

 

名子:「・・・っ。なんやねんな、アイツ!」

 

蛍一:「北原さん、あいつ・・・」

 

名子:「あ、エエねんエエねん。いつものことやから!」

 

蛍一:「え?」

 

名子:「ウチに黙って、さっさと一人で行ってまうとこ。

昔から・・・いつものことやから。

っていうかウチ、別にあいつの何でもないし!」

 

(強がって笑ってみせる名子)

 

蛍一:「北原さん・・・・寂しそう?

何でもないけど、心配なんだよね?」

 

名子:「あ、飛鳥くん・・・。

・・・もぉ、なんでわかってまうかなぁ?」(小声で)

 

蛍一:「はは、なんでだろう?

北原さんによく似たヤツ、知ってるからかな」

 

名子:「ふぅん・・・。

あんな?・・・これから喋ること、

ウチの独り言ってことに、しといてもらえる?」

 

蛍一:「うん、いいよ。今、俺は何も聞こえない」

 

名子:「ふふっ。優しいなぁ飛鳥くんは。

・・・裕也が心を開くのも、わかる気ぃするわ。

――裕也とは、ずっと中学からの腐れ縁でな。

四年間同じクラスで、ウチが善部町(こっち)来てから、

結構いい漫才コンビやってん。

裕也のよう分からんボケに、ひたすらウチがツッコむって感じで!

けど・・・高校入ってから、裕也は変わった」

 

蛍一:(変わった・・・?)

 

名子:「裕也の親父さんな、裕也が高校入る前に亡くなってん。

それから・・・親父さんの代わりに、

裕也が家の仕事を手伝うようになったらしくて。

そっから急にや。

噂部なんて変なもん作って一人で出歩いたり、

ふと気付いたらいなくなってたり、

こんな風に、ウチや周りの人間のこと避けるようになったり・・・」

 

蛍一:(そこから、安部の仕事をしだしたってことか?)

 

名子:「ウチ、なんかよう分からんくて・・・

あかんなぁ・・・気にしすぎやって分かってるんやけど」

 

蛍一:(なんか、似てるな・・・。

安部側の人間だからなんだろうか。

前に、危険だからといってさくらちゃんを避けた、月白さんのように。

志賀も、きっと北原さんを巻き込みたくなくて・・・)

 

名子:「よっしゃ!独り言おしまい!

こんなんぐだぐだ言うても、なんも始まらんわ!」

 

蛍一:(安部側の人たちは、

こういうやり方でしか、大事な人を守れないんだな)

 

蛍一:「大丈夫だよ」

 

名子:「へ?」

 

蛍一:「あいつ、きっとそんなに器用なヤツじゃない。

嫌いだったら、もうずっと前に突き放してる。

だから北原さんは、あいつの傍にいてもいいんだよ」

 

名子:「・・・飛鳥くん。

な、い、イヤやなあっ!だから、ウチはあいつの何でもないって!」

 

裕也:「お。まだいたのか北原名子」

 

(飄々とした顔で、教室に戻ってくる裕也)

 

名子:「わっ!な、なんやねん!

ウチは飛鳥くんと話してるんやで!?

別におっても問題ないやん!」

 

裕也:「うん、ないけど。

ほい。コレ」

 

名子:「え・・・何?ウチに?」

 

(裕也は一枚の紙切れを名子に渡す)

 

名子:「えーっとなになに?

超有名占い師、善部の母 占い整理券

なんやコレ・・・」

 

裕也:「最近、商店街に、かなり当たるって噂される占い師がいるらしくてさ!

もう何も言ってないのに、事実をバシバシ当てられるんだと!

年齢不詳のオバサンらしいんだが、生徒の間で評判でさ~。

そんでついた名前が善部の母!!

どうだ?面白そうだろ~?」

 

名子:「うわ、めちゃめちゃ怪しいやん・・・。なあ、飛鳥くん?」

 

蛍一:「・・・たしかに;」

 

裕也:「まぁ、今回はその噂を調査するってのもあるが。

お前、前に音羽神社で占いしそこねたことあったろ?

代わりにはなんないかもしれないけど・・・」(※第十話参照)

 

名子:「あ・・・」

 

名子:(裕也、覚えててくれたんや)

 

裕也:「そのオバサン、人気すぎて整理券ないと占ってもらえねんだよ」

 

蛍一:「へえ、よく手に入れられたな。どうやったんだ?」

 

裕也:「そ、それはまぁ、えっと・・・き、企業秘密だ!

それより北原名子!どうする?行くか?」

 

名子:「せなやぁ・・・・あ、アンタがどうしてもって言うなら・・・。

そんなに当たるんやったら、いっぺん試してみよか!」

 

裕也:「そうこなくちゃ!前回のリベンジだぜ!」

 

名子:「飛鳥くんは?行く?」

 

蛍一:「え・・・?あ、俺はいいよ。

そういうの興味ないし」

 

裕也:「そうかー残念。

お前の驚愕した顔を、俺の心のアルバムに収めたかったんだけどなー」

 

蛍一:「気持ち悪いこと言うなよ;

二人で行ってこいよ。報告だけ聞かせてくれ」

 

名子:「わかった!楽しみにしててな♪」

 

裕也:「じゃ放課後な」

 

(言って、自分の席に戻っていく裕也)

 

名子:「オッケー。

って、なんやコレ・・・なんか・・・」

 

蛍一:「デートみたいだね?」

 

名子:「なっ、あ、飛鳥くん!?///」

 

蛍一:「っはは、ごめんごめん!」

 

蛍一:(がんばれ・・・北原さん)

 

 

 

 

 

 

―商店街。夕刻。

 

(商店街の路地裏を、メモを見ながら歩いていく裕也。

その後ろからついていく名子。)

 

名子:「・・・あんなぁ、裕也?」

 

裕也:「んー?

・・・うーん。確かこのへんだったよなぁ・・・」

 

名子:「ウチ、何占ってもろたらエエかな?

その・・・ウ、ウチらの相性・・・とか―」

 

裕也:「おお!ここだ、ここ!」

 

(路地裏のさらに奥に進んだところに、小さなプレハブ小屋が現れる)

 

名子:「聞いてへんし・・・;」

 

占い師:「さぁ、次の方いらっしゃい」

 

裕也:「ホラ。行け、北原名子」

 

名子:「もう、フルネームを呼び捨てすなって!」

 

(文句を言いつつ、小屋の更に奥へ入っていく)

 

 

 

―占いの館。

 

占い師:「さぁ、かわいらしいお嬢さん。ここへお掛けなさいな」

 

名子:「はぁ、どうも」

 

(名子の目の前には、黒いベールと衣装をまとった怪しい女性の姿が)

 

名子:(うわ、このオバはん、やっぱめっちゃ怪しいやん;)

 

占い師:「さて。あなたは何が知りたいの?

やっぱりオ・ン・ナ・ノ・コだから、恋占い?」

 

名子:「えと・・・まぁ、そうですね」

 

占い師:「そうよねそうよね~そうなっちゃうわよね~!

いいわねぇ~恋するオンナノコ!うぅ~ん、ラブリーガール♪

キュートでふわふわ、甘くロマンチックな学生ラブストーリー!」

 

名子:「な、なんやねん・・・」(ドン引き)

 

占い師:「いーえ、何も言わなくていいのよ、ナスターシャ!」

 

名子:「な、ナスターシャ!?」

 

占い師:「私がつけた、あなたのお・な・ま・え♪

いいの。何も聞かなくてもなんとなくわかるわ。

恋する乙女に悩みは付き物!そうでしょう?」

 

名子:「あー・・・はぁ」

 

占い師:「悩みがあるなら、ワタクシに話してごらんなさいな。

大丈夫。ほら、館の表に男の人が立っていたでしょう?」

 

名子:「え。あ、そうでしたね」

 

占い師:「ナスターシャの秘密が漏れないように、

この館にはちゃ~んと警備員がついてるんだから♪」

 

名子:「・・・あんたは少し、自分の頭を警備したほうがエエわ」(小声で)

 

占い師:「・・・なあに?」

 

名子:「あー、ほな、占ってもらいましょか?

手相ですか?」

 

占い師:「そうね、見せてみて。

あと私は基本、人相占いなのだけど、

一応生年月日も聞かせてもらえるかしら?」

 

占い師:「ふむ・・・・・」

 

名子:(ごくり・・・)

 

占い師:「・・・大きな悩みがずっと胸につっかかってるって感じね」

 

名子:「え!」

 

占い師:「大事に思っている彼の真意がわからない・・・

先が見えないのが不安ってところかしら」

 

名子:(な、なんでわかるん?!)

 

占い師:「うん・・・彼氏ではないわね。告白はまだ?」

 

名子:「そ、そんなん言えませんて。もう・・・今更やし」

 

占い師:「あら、言わないと伝わらないことは多いわよ?

長い付き合いだけど気付かれていないってことは・・・彼は相当鈍感ね」

 

名子:「そ、そう!そうなんよ!

もうアホみたいに何も考えてなくて!」

 

占い師:「つらいわよねぇ・・・こんなにナスターシャが想っているのに。

可憐な一輪の野の花が、陽に向かって必死に顔を上げているように!

そんなアナタの美しさに気付きもせず通り過ぎるなんて・・・!」

 

名子:「いや、その・・・・ははは」

 

名子:(なんやこのオバハン、見た目こそ怪しいけどけっこう信頼できるやん!)

 

占い師:「大丈夫よ」

 

名子:「へ?」

 

占い師:「運命の時期は尚早に来たる。彼にはね、とても重い責務があるの。

そのために、今必死で戦っている。あなたを・・・守るためにね」

 

名子:「ウチを・・・?」

 

占い師:「でもその戦いも、じきに終わりを迎える。

そうしたらきっと、あなたに意識を向けてくれるわ。

とっても辛いけど、今しばらくの辛抱ねぇ・・・」

 

名子:「そうですか・・・。

でも、少し納得できる気がするわ。なんや、スッキリしました!」

 

占い師:「そーぉ?私もナスターシャの笑顔が見れて、とっても嬉しいわぁ♪

あ、ところでどう?

今ならこの、『なんでもお見通し水晶』をプレゼントしちゃうわよ?」

 

名子:「あ、いりません」(キッパリ)

 

占い師:「いやぁーん、格安でお譲りするのにぃ~」

 

名子:「金とるんかい!余計いらんわ!」

 

占い師:「あら。ひっかからなかったわねぇ」

 

名子:(このオバハンは・・・! ・・・・でも)

 

名子:「ありがとうございました。ウチ、信じて待ってみます」

 

(言って、占い部屋を出て行く名子)

 

 

 

 

 

 

裕也:「・・・・で、どうだった?」

 

占い師:「あら、悪趣味ね、話聞いてたの?」

 

裕也:「聞いてねぇよ。いつも聞こうとすると怒るだろ」

 

占い師:「ならよかった♪・・・そうね。

悩んでるふしはあったけど、もう大丈夫そうよ」

 

裕也:「そっか・・・」

 

占い師:「あんたも素直じゃないわねぇ・・・心配なら自分で声かければいいのに」

 

裕也:「・・・出来るなら最初っからそうしてるよ」

 

占い師:「裕也・・・」

 

裕也:「・・・とりあえず、ありがとな。 母さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

名子:「あ、裕也!もう、どこ行っとったん?」

 

裕也:「あー悪い悪い。で?どうだった?当たってた??」

 

(メモを片手につめよる裕也)

 

名子:「あーそうやな・・・。

当たってるっていうか・・・言いくるめられただけっていうか」

 

裕也:「え?」

 

名子:「まぁ~悪い気はしなかったで!うん、面白かった!」

 

裕也:「おいおい・・・それじゃ記事になんねぇよ;」

 

名子:「うーるーさーいー!ほんじゃ、帰りますかぁ!」

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