Special Paperbacked Essays, Vol.54 梅干しにはタネがありマス・・・ - Who knows that plum has a stone -
最近ぼくは腹を立てている。
一体全体何に腹を立てているのかというと、それはとりもなおさず、あらゆる商品とその製造者、そして特にそれを助長する消費者の姿勢である。
とこう書くと、
「おいおい、穏やかじゃないなあ」
「何反発してんだよ、いいじゃんか、世の中それで」
とかいわれそうであるが、それでもぼくは腹が立っているのである。
では一体何があってそんなに腹が立っているのかというと、原因はこうである。
* ある日、ぼくはス−パ−に行って買い物をしていたのである。ぼくは梅干しが好きなので、梅干しを売っているコ−ナ−に行き、お気に入りの梅干しを買おうとした。
ちなみに、ぼくは紀州の、いわゆる、
「デカ梅」
と呼ばれる種類が好きなのであり、特にからからに干涸びるまで漬けていない、身がトロトロのが好きなのである。さらにそのような紀州梅の中でも蜂蜜漬けのが最高に好きなのであるが、蜂蜜付けともなると超高級品であるので中々手が出ないのが、悩みの種である。
さて、お目当ての紀州梅はどこかいな、と探していると、ふとある梅干しのポリパックの上ブタに、見慣れない表示がしてあるのに気がついた。
なんとそこには、
「梅干しにはタネがあります。タネで口の中を傷つけないよう、またタネを食べないようにお気をつけください。」
と書いてあるではないか。
ぼくは思わず、
「うぬぬぬ〜、アホかこのモグリ梅干し業者の野郎めがっ、消費者をバカにするにもほどがあるぞ〜!」
と怒り心頭に発してしまった。
それはそうであろう、一体全体、ここ日本国内のス−パ−において、梅干しを購入しようとする人間の中に、
「梅干しってグミみたく丸ごと飲んでもいいんだよね〜」
と思い込んでいるヤツがいるというのか。んなヤツいるわけがないのである。
しかも、である。
よしんば百歩譲って梅干しにタネがあることを知らなかったヤツがいたとして、タネがあることは食べて数秒後に自然と判るはずであろう。梅干しを食べたことのある人なら判ると思うが、梅干しのタネは非常に硬い。前述のように、
「うむっ、これはグミだ」
と思って噛んで、普通に噛み砕けられるものではないのである。普通に噛めばケガなどするはずがないのである。そういえば、戦後食料難の頃はこの梅干しのタネの中にもまた酸っぱい成分の元があって、タネをわざわざ噛み砕いて中の成分をおかずに飯を食ったらしく、実はぼくも2・3度やったことがあるのだが、苦心して噛み砕いた割にはそんなに美味い味ではなかった記憶がある。
それはまあいいとして、要するに梅干しの中にタネがあることは日本人の常識であり、そのことを知らせなかったからといって、ケガをするはずなどないし、製造業者が責められる理由はないのである。
さらによしんば日本人でない人、例えばエジプト人がはるばるやって来て日本のス−パ−で梅干しを買って食べたところ中に硬いタネが入っていて、
「○×△〜! ウメボシノタネデクチガキレテハガオレタジャナイカドウシテクレンダ〜」
などといってエジプト大使館に抗議しにいきそれを聞いて怒ったエジプト大使が「ハムナプトラ」に出てくるスケベ神官イムホテップのようにおどろおどろしい魔術を使って梅干し業者に復讐する事態になって日本政府が困ってしまい国際外交問題に発展した、というのならいざ知らず、通常梅干しを買うヤツの中にはそんなヤツはいないのである。
* ハアハア、少し興奮して話が大げさになってしまったので話を戻そう。
というわけで、本来全く不要な表示をなぜこの業者はあえてしたのか。それはいうまでもないことであるが、一部の消費者からの指摘・要望があったためと思われる。ぼくはそうは思いたくはないのだが、そのようなことがなければいかに業者といえど、印刷代をかけてまで不必要な表示をするという、日本人の常識を試すようなみっともない真似はしないであろう。
となると、その消費者は一体何を考えているのであろうか。さっきぼくが断言した、
「んなヤツいるわけがないのである」
というジャンルの人が、実はいたということになる。そいつらはまさにぼくの予想までも超えた大アホであるといえる。
だいたい、そんなことがまかりとおるのなら、例えば魚屋で塩サンマや塩サバを購入し、生のままで食って腹痛を起こし(当たり前だ)、その後買った魚屋に行って、
「おいっ、生で食ったらアタったじゃないか。なんで最初から『加熱してください』と魚に書いとかないんだっ!」
てな話になっちゃうのである。
それとか、定食屋でテ−ブルの上に置いてある醤油には、
「食品にかけて食べてください。決してゴクゴクと飲まないでください」
と表示されなければ、醤油を飲む人がいるかもしれないではないか。
さらには、焼き鳥屋に行けば、
「肉だけ食ってください。串は食べちゃだめです」
とか、もっといえばビ−ルやジュ−スの缶には、
「中身の液体は飲んでもいいです。缶は絶対に食べないでください」
などと、表示されなければ、それらを食べる人がいるかもしれないではないか。
う〜む、そう書いていたら、もしかしたらそういう人たちは本気でそういう運動を起こすかもしれないと思うようになってきてしまった。これは困ったことである。
* なんだか今回の話の最後は怒りを通り越して情けなくなってきちゃった感があるが、先ほどの冗談のような話が現実にならないためにも、日本の教育は、卒業して一回も使わないサイン・コサイン・タンジェントなんかより、食べ物のうんちくと効能や調理方法についてもっと授業してもらいたいと思うのである。
確かに消費者は弱い立場にあるのだが、だからといって食べ物の常識を知らない消費者であってはいけないと思うのであるぞ、まったく。
Published 2002.8.25
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