●芸術的バックグラウンド
武蔵の生歿年からすれば、武蔵が生きたのは、16世紀末の織豊期から17世紀半ばの徳川3代家光の時代までである。とくに安土桃山時代という面白いエポックの最中に生まれた世代で、しかも慶長年間に青年期を送り、元和・寛永という経済高度成長期に生きている。
この時期は一般的な言い方をすれば、中世から近世への移行期である。一口に安土桃山時代といっても、織田信長の時代と豊臣秀吉の時代ではもう違いがある。秀吉の時代になると、かなり中世的なものは後退し、新しいものが出てくる。しかし秀吉死後も慶長年間を通じて、なお過渡期の渾沌としたなかで、続々新しいものが出てくる。これがはっきり近世的なものになるのは、元和寛永期であろう。
この時期にどういう作品が生まれたか、ジャンルを問わずに、ほぼ年代順に列記してみれば以下のようなことである。美術史の復習みたいなぐあいだが、何のコメントも入れないので、できるだけ先入観なしに通覧していただきたい。
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