(9)「ぶつかる」か「ぶつける」か:自動詞・他動詞の話(2) 2002.2.10. 更新
| 前回は、「意志他動詞を非意志的に使う場合」について考えましたが、今回は、他動詞に対応する自動詞、さらには受け身の形の意味と使い方の違いについて考えてみましょう。 まず、「意志他動詞を非意志的に使う」動詞をもういちど列挙してみます。(左が他動詞、右が自動詞です) |
| 1組 頭をぶつける 頭がぶつかる 指を切る 指が切れる 手を挟む 手が挟まる 骨を折る 骨が折れる とげを刺す とげが刺さる |
2組 足を痛める 足が痛む 手を擦る 手が擦れる 指を突く × 足を挫(くじ)く × |
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| 3組 鼻血/熱を出す 鼻血/熱が出る 財布を落とす 財布が落ちる 泥棒を逃がす 泥棒が逃げる 品物をなくす 品物がなくなる 親を亡くす 親が亡くなる |
| 他動詞の用法については、前回で述べましたので、
ここでは、自動詞を使った文を紹介します。
@オートバイが自動車にぶつかった。 A(指の傷を見て)山の中で遊んでいる時に、切れたようだ。 B電車を降りようとした時に、背広のすそがはさまった。 Cそんなに力を入れたら、骨が折れるよ。 D長い間、熱い風呂に入っていたら、のぼせて鼻血が出た。 E(医者が患者に)どこが痛みますか。 F気がついたら、とげがささっていた。 G手が擦れて、そこから血が出てきた。 これらの文で分かるように、自動詞は動作主の過失や不注意を表現するのではなく、事態の成り行きや出来事、推移を表現するにとどまります。したがって、動作主や話し手の責任意識や後悔の念はないし、迷惑を受けたという気持ちもありません。 |
| ところが、受け身の文になると、事情はまったく、異なってきます。
もう一度、前回の作文に戻ってみましょう。 Hころんだはずみに、頭が壁にぶつかって、ひたいが切られた。(×) 「ひたいが切られた」とすると、当然、「切った人」と「切られた人」が必要です。ところが、Hの状況では、「切られた人」はいるようですが、「切った人」は見当たりません。したがって、この文は正しくありません。考えられる表現としては、次の二つの文です。 Iころんだはずみに、頭が壁にぶつかって、ひたいが切れた。(自動詞) Jころんだはずみに、頭が壁にぶつかって、ひたいを切った。(他動詞) Iは事態の成り行き、出来事を表します。Jは自分の動作の結果が自分に戻ってきて、自分が被害を受けるという構造になっていて、動作主の責任意識や失敗に対する後悔の気持ちが表されています。 では、前述の表の動詞の中で、受け身文ができるのはどれでしょうか。まず、他動詞の1組を考えてみよう。1組では、次の文が考えられます。 K(私は)昨日友達にボールをぶつけられた。 L(私は)スリにかばんを切られた。 M作業中に歯車に指を挟まれた。 N(レスリングで)相手に首の骨を折られそうになった。 O(私は)ナイフで足を刺された。 |
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受け身文では、普通、動作をする人(もの)とその動作を受ける人(もの)が必要です。上の五つの文では、どちらもそろっているので、すべて正しい文です。つまり、1組の他動詞は受け身文を作ることができると言えます。
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