トモダチ 友人 な・か・ま






注)九尾襲来はなかった、うちはも健在!の設定です




 目の前にあるのは黒い外衣。黒い礼服で牙を付けると、最後に武器にもなる杖を手にする。
鏡の中に居るのは夜目にも白い(母から練り白粉を借りた)顔をした、完璧な吸血鬼であった。

「フン。」
 くるりと回って見ると、ふわりと外衣が広がってなかなか風情がある。
此れに包まって闇に沈めば、同級生…いや、下忍位まではきっと気付かずに通り過ぎる筈だ。
そう考えて、サスケは満足げに口の端を上げると部屋から出た。

 今日は、万聖節前夜。ハロウィーンと呼ばれる祭の日である。
四代目の御世になって益々の発展を遂げた木の葉は、火影自身の祭好きもあって最近では様々な異国の催しが盛んになった。
特にこの、ハロウィーンは『仮装』と『お菓子』の2点によって子供達は勿論、実は甘党の多い
…何せ肉体労働者ばかりだ。糖分摂取は重要である。…の熱い支持を受けている行事なのであった。
 因みにアカデミー生は強制参加が決定されている。それも、衣装は自分自身が調達せねばならないのだ。

 で。

 本来ならこの手の催しは端から馬鹿にして掛かる性質のサスケだが、今回は違う。
変装の出来具合が実は平常点に組み込まれる…との真しやかな噂が流れた事もあって、秘かにではあるが気合が入っていたのだ。
貸衣装屋を巡ってみたが、仮装用に置かれているのは今一つ気に入らない物ばかりで。
漸く良さそうな礼服を見つけ、其れを借りた。但し飽く迄礼服だったので外衣は付属してなくて。
致し方無くサスケは似たような布を買って来て、チクチクと縫ったのである。
杖や牙も手作りだ。
元々手先は器用な方なので、そこそこには出来た…と自負していた。
 するりと部屋から抜け出す。と

「サスケ?」
 …母に気付かれてしまったらしい。

「アカデミーの行事に行って来ます。」
「ああ、行ってらっしゃい。」
「気を付けてな。」
「はい。」
 台所から顔を出してにっこりと笑ってくれた母に頭を下げ、序に奥にも一礼する。
だが声だけで、父はどうやら出てくる気は無いらしい。
 …その方が有難かったり、する。
理由はこの扮装を見て何を言うか判らないからだ。いや、非難はされないとは思うのだが…父の反応はサスケには読めない。
時々父、そして兄との間に相容れないモノを感じては密かに頭の痛いサスケであった。



 街は色々な魔物で一杯だった。
包帯男に魔法使い、幽霊に天使まで居る。勿論サスケと同じ吸血鬼もちらほら居るのだが。

「あ、サスケ君!」
「格好良いv」
「凄っく似合う!!」
 キャアキャアと騒ぐくの一候補達の賛辞に、表向き眉を顰めながらも…内心ではガッツポーズを取るサスケであった。
周囲の輩のは、所詮はセット売りやレンタルの衣装。拘り捲くったサスケに敵う筈も無いのだ。
似合う、と言われるのは少々複雑だが…まぁ、可笑しいと言われるよりマシだろう。
内なるサスケがそんな風に落ち込んだり浮上したり忙しくしていると其処に。

「あ、ナルト君!!」
 一人が叫ぶ。と、皆が口々に名を呼びながら走って行ってしまった。
視線の先では、同級生にして四代目火影の息子である波風ナルトが男女を問わず寄って来た相手にもみくちゃにされている。
それを見て取り、サスケは気付かれるより先に…とそそくさと逃げようとした。
 …サスケは、ナルトを苦手にしていた。

 理由は在る。先ず、忍として。
圧倒的な量のチャクラを持ちそれを利用しての体術や忍術を駆使するナルトは、一気呵成と言えば良いが要は短期決戦型のサスケにとって相性の悪い相手であった。
 そして性格も、だ。
いつも明るく元気で諦める事を知らず、時々抜けた事を仕出かすのにそれすら憎めない…ナルト。
几帳面で完全主義な分神経質なサスケとは、正に対極であった。故に、傍に居ると妙に疲れてしまうのである。
だから出来れば近付きたく無いと言うのに何が気に入ったのか、ナルトは矢鱈とサスケに絡んで来るのだ。
 またサスケサスケと五月蝿くなる前に立ち去りたいと思うのは当然である。

 が。

「あ、サスケ!」
 一頻皆と挨拶を交じわせたらしいナルトが、サスケを見付けて駆け寄って来る。
チッと影で舌打ちをしたサスケであったが流石に面と向かって不快感を示す程馬鹿でも無い。
何事も無かったかりのように何時も通りの平静な様子を作って見せた。

「よう。」
 短く応えるサスケを、ナルトはまじまじと見詰めて来る。そして

「サスケ、ピッタリだってば!良く似合ってるっでばよっっ」
 絶賛された。

「此処来るまで、一杯吸血鬼見たけどサスケが一番だってば!流石だってばよっっ」
「…そうか。」
 満面の笑みで断言されれば、サスケとてそう無碍にも出来ない。
少なくともくの一達の裏…と言うか下心を感じる褒め言葉よりは余程嬉しかった。

「お前も似合ってる。…が。」
 それは狐、か?
つい怪訝そうに問うたサスケに、全開の笑顔が忽ちくしゃりと歪んだ。

「狼、だってばよ!!サスケまで酷いってば…」
 がっくりと肩を落され、内心慌てるサスケである。
だがふかふかの金の尻尾と耳を付け、金色の毛の胴衣を着けたナルトは何処から見ても子狐でしかなかった。
咄嗟に上手い言葉も見つからず沈黙してしまったサスケに、ナルトは益々落ち込んだ風情となる。
 実はナルト、此処に来るまでに散々通り縋りの忍達に『可愛い』だの『子狐ちゃん』だのと呼ばれて弄られた処だったのだ。
其処に先刻の同級生達にも同じ事を言われ…聊か凹んでいた処にサスケが止めを刺されたのである。
だが、そんな事をサスケは知らない。惨めっぽく沈み込むナルトの姿にわたわたとしてしまう。

 と

「まぁ、ソレは良いってば。それよりサスケ!一緒に回ろう!!」
「は?何でお前と…」
 急に顔を上げたナルトの言葉に。焦りながらも、口ではそう言ってしまうサスケ。だが

「確か吸血鬼は人狼を部下にしてるって聞いたってば?丁度良いって。」
 と言われて思わず頷いてしまうサスケであった。
本当の処、触り心地の良さそうなふわふわと艶の良い耳と尻尾に心惹かれていたサスケである。それに、ナルトを部下として連れ歩くと言うのも魅力だった。
どの道二人以上で組んで練り歩くようにと教師に言われていたし、今から相手を物色するのも面倒である。

「判った。」
「良いってば!」
 途端、パッと顔を輝かせるナルト。

「じゃあね行くってばよっっ」
「お、おい…」
 行き成り腕を取って駆け出したナルトに引き摺られ、焦りつつも…少し赤くなったりしてしまうサスケであった。





「盛況だってば。」
「ああ…」
 キョロキョロと周囲を見回すナルトに対し、サスケは素っ気無く答える。
だが、心持ち俯いたサスケの、左手はナルトの右手をしっかりと掴んでいた。
 最初、落ち着きの無いナルトを捕らえる為ナルトの尻尾をサスケは掴んでいたのだが…思った通りふわふわのふかふかだった…ナルトが。
『其処握る位なら手、繋ぐってばよ!』
と叫んで、強引に手を握って来たのである。
で、そのままになってる訳なのだ。

「おっナルト!何だ、サスケと一緒か?」
 声の方を見ると、狼ならぬ犬男が本物の子犬を頭に載せてブンブンと手を振っている。

「キバ、それにシノ!今晩はだってばよ。」
「…今晩は。」
 ナルトの言葉に、蜘蛛男が言葉少なに挨拶を返す。此方も、犬男の手をがっしりと掴んでいたりする。

「どうだ、一緒に回らないか?」
 キバが誘って来る。それに

「ん、ん〜〜…この人混みじゃ、どうせ逸れる気がするから良いってば。サスケと行くってばよ。」
「そっか。」
 ナルトの返答に、キバはあっさりと頷いた。それにサスケが、思わず力が入ってしまった手をそっと緩める。
キバが提案した途端、横から妙な気が突き刺さって来たからなのだが…自分も同じような気をキバに向けて発していた事には自覚がないサスケである。
鈍い二人組はその事に気付いていない様子なのだが、蜘蛛男の方は立ち去り際チラリとサスケに意味深な眼を投げ掛けていた。
 とりっく・おあ・とりーと、と良く判らない異国の言葉で呼び掛けながらお菓子を貰って回る。
金色狼(?)と吸血鬼の取り合わせは特に女性達に好評で、戦利品はたっぷりであった。

「少し休むってば?」
「ああ。」
 腕に掛けた袋一杯のお菓子を満足気に見たナルトがそう提案すると、人の多さに少々当たり気味だったサスケは素直に頷いた。
二人で公園に入ってベンチに座ろうとする。と、その時。

「アレ、何だってば?!」
「・・・・・・・」
 素っ頓狂なナルトの声に対し、思わず絶句したサスケである。
其処には白い胴衣を着た南瓜頭が、奇妙な踊りを舞っていた。周囲の人間は敢えて目を合わさないようにして、足早に立ち去ろうとしている。
と、ナルトの声に気付いたのか…南瓜が此方へ寄って来ようと、した。

「走るぞ。」
「え、ちょっとっサスケ!?」
 唐突に全力疾走に入ったサスケに引っ張られて、ナルトも一緒に走り出す。
暫く逃げて追って来ない事を確認したサスケは、漸く足を止めると其処にあった壁に寄り掛かるようにして一息付いた。ナルトもそれに習う。

「な。アレってば、ひょっとして…」
「言うな!」
 言葉になる前に、全力で拒否してしまうサスケである。
そう、あの南瓜頭は。…『兄』であった。
何処から見付けて来たんだと言いたくなるような巨大な南瓜頭の被り物といい、その割に下は暗部服を着たままな処といい。
最年少で暗部の部隊長にまでなった一族自慢の…凝り性な癖にずぼらな『兄』に間違い無い。
 …サスケが兄との間に溝を感じるのはこう言った時なのだ。
出掛けに父と会いたくなかったのは兄の趣味が父の伝授だから、である。
うっかり見咎められたら、自分もまた南瓜にされていたかも知れないのだ。
 因みにあの奇妙な踊りは、決して舞っているのではなく。単にスキップしようとしているだけな事も弟は知っていた。
運動神経も反射神経も良い癖に何故かスキップもツーステップも出来ない兄は、しようとすると均衡を崩し…
手で調和を取ろうとする為、怪しい踊りを舞っているように見えてしまうのである。

「サスケも大変なんだってば。」
「…『も』?」
 肯こうとして、ナルトの微妙な言い方に引っ掛かる。其処を突っ込んで訊き返そうとした時であった。

 キャ〜〜〜
悲鳴と言うよりは歓声が、向こうの方で沸き上がった。振り返ったナルトが、その場で固まる。
 釣られてサスケも眼を向けると、金と銀に輝く…まり○っこりの着ぐるみが、二体でポーズをとっていた。
全身が包まれていて中身は見えないのだが、あのキレの良い動きと隠れて尚ダダ洩れる独特のオーラは、この里の者ならば間違いようも無い。

「ナルト。」
 と、突然背後から声を掛けられる。

「イルカ先生。」
 振り返ると。四代目の側近の息子であり上忍師をやっている、顔見知りのイルカが決まり悪げに立っていた。

「済まん。ウチの親父達も随分頑張ったんだが、阻止出来なかった。流石に
『コレが駄目なら外套を脱いだ透明人間をやる』って言われちまったら、なぁ…」


 何処か遠い目をしたイルカに、思わずゴメンナサイと謝ってしまうナルトが居た。
居た堪れないらしいその様子に、親近感が沸いて来る。

「お前も苦労してるんだな…」
「…してるってばよ。」
 思わず口を突いて出た言葉を肯定され、二人して溜息を付く。
身内の恥、とは割と良く使われる言葉だが…こう言った状況を示す物では無いような気がする。だが間違い無く此れも『身内の』『恥』であった。
二人で言葉も無く項垂れていると

「生憎と任務明けで菓子は持って無いが、一楽で良かったら奢るぞ?」
 イルカが苦笑しながら誘ってくれた。揃って大きく頷く。
そしてまだ続いている騒ぎに背を向けると、三人は仲良く一楽へと足を踏み出した。

 馬鹿騒ぎはまだまだ続いて行く…




 この夜以降サスケはナルトと屡、行動を共にするようになるのだが。
それが一生涯の付き合いへと変わるのは…

あの時の銀のまり○っこりが自分達の上忍師として現れてからの事、であった。







   おまけの設定…?


 
うみのイルカ
ネジ・テンテン・リーの担当上忍師
 因みにガイ先生が中忍師で、リーは『上忍師はイルカ先生だが人生の師はガイ先生』と公言している。
ガイ先生とは熱血・真面目な教師同士で仲が良く、屡飲みに行っては教育論を戦わせたりしている。
親は夫婦で四代目の秘書兼護衛。その為ナルトとは赤ん坊の頃からの知り合いで
ナルトは『オシメを変えた事もミルクをやった事もある』為、頭が上がらない。
 体術をメインに基礎忍術を組み合わせる、堅実な戦闘を得意とするタイプ



 
はたけカカシ
暗部 四代目の側近 写輪眼ではありません
弾け気味な四代目を止めずに一緒に暴走する為周囲からは危険人物と目され、特にイルカ父母には警戒されている。
因みにオビト君生きてます。リンを口説き落とすのに成功し、今は夫婦で遠方任務中。
ナルトとサスケの指導の為上忍師となる。イチャパラ好きは変わらず…



番外 マイト・ガイ

 中忍師
ナルト達を熱く指導していた、担任教師。
火影の息子だろうが旧家の跡取りだろうが血系限界だろうが纏めて『生徒』として扱ってくれた為、暑苦しさにメゲず皆密かに信頼している。
イルカとは熱血仲間。カカシとは階級を超えて体術勝負をする、ライバルです。




 おまけでカカイル


 二人の初めての出会いは、ガイを介しての物であった。

「おお、イルカ!コイツがマイ・ライヴァル、はたけカカシだ。」
 廊下で偶々であったイルカに、ガイはにこやかに傍らの人物を紹介した。
…のだが。

「貴方が、はたけカカシさんですか。」
 途端、視線が険しくなったイルカにカカシもまた眼に険を浮かべる。

「そう。で、アンタは何?」
 飄々とした口調だが、全身から殺気が放たれている。その重圧を物ともしていないのは目の前のイルカと、すっかり慣れてしまっているガイ位であった。
蜘蛛の子を散らすように、周囲から人が逃げ去って行く。

「俺は、うみのイルカです。
先年度から上忍師をさせて頂いているのですが…貴方には、うみの夫婦の息子でナルトの幼馴染と言った方が判り易いでしょうか。」
 坦々と語るイルカだが、その背からはカカシに匹敵する妖気が漏れ出ている。

「あ〜〜アノ頭の固い側近連中の息子?成る程良く似てるね。」
 小馬鹿にした調子で眼を眇めるカカシに

「はい。アンタの手引きで四代目に逃げられては、山の様な事務仕事を任務外で押し付けられてるうみのの息子です。
序にアンタが二時間三時間と遅刻する度に待ちぼうけを喰らい、任務を後ろ倒しにされてるナルトは、俺の弟みたいなモンです。」
 にっこり
表情筋は笑みを作ってはいるが、眼が笑っていない。

 ビシッ
一触即発。感電しそうな空気を放つ二人に、呵呵…と笑って声を掛けたのはこの中で尤も太い神経を持って居るガイであった。

「何だ、知り合いだったのか。だったら、イルカも参加しないか?此れからカカシと演習場で一勝負するんだ。」
 笑顔でのお誘いに、冷気を漂わせたままイルカが頷く。

「はい、是非!一度はたけさんとはじっくり話し合いたいと思っていましたので。」
「そうだね〜アンタとは、一度きっちり話し合った方が良さそうだねぇ。」

 バチバチッ
 飛び散る不可視の火花。だが、飽く迄もガイはマイペースだった。

「おおっそうか。では、すぐ行こうではないか!利用時間が減ってしまうからなっ」
 楽しげに大笑するガイは、二人の肩に手を回すと三人横並びになって演習場へと向かう。

 その後行われた『勝負』に関しては
『イルカは兎も角、カカシがあそこまで熱くなるのは初めて見たぞ!』
とガイが熱く語る程だったと、言う…


今度こそ終