まいどブルー
2007年9月上旬。
週末の夜、テニス部の合宿から帰ってきた彼は、
マンション前に車を軽く駐め、洗濯機を速攻で回した。
出した衣類を持ち出し、そのまま車で、
500mほど離れたランドリーへ、乾燥機を回しに向かった。
もう日曜夜なので乾燥機頼り。
大サイズのマシンに衣類をぶっ込み、
500円、75分の料金を投入した彼は、
マンション隣にある銀行前の路肩に車を乗り上げて駐め、
いったん自宅へ戻った。
1時間少々、自宅で時間つぶし…。
ふと目覚め、ソファベッドから起き上がった彼は、
時計を見て驚いた。
5:00過ぎ、もう明け方近い。
帰って来たときは、まだ日付も変わらない、
23:00ごろだったはずだ。
いつの間にか、眠っちまった。
乾燥機、回しっぱなしだな…。
エンドレスで回ってたらしい大画面のニコニコ動画を、
まだ寝起きの頭でボーッと眺めていた彼は、
ふと思い出した。
(あ、車、駐めっぱなしじゃん……)
自分のマンション下なら、
朝、薬局が開店する前にどけてさえいれば、
車体の9割がた路肩に収まってるし、
まだ、なんとかなる。
しかし、今日彼が駐めたポジションは、
商店街に面した、銀行の入り口の側だ。
まずいかな…。
合宿で疲れ切ってはいたが、そんなのは彼の都合。
サンダルで車に向かった彼は、
角を曲がった瞬間、
まず車の両サイドのドアミラーを確認した。
駐禁切符を切られているなら、
ドアミラーに黄色い輪っかがくくり付けられているはずだ…。
(お、ない……)
無事を確認してホッとした彼は、ランドリーへ、
乾いてだいぶ経つ洗濯物を取りに向かうべく、
背後から愛機に近づいてドアキーを解除し、
運転席へ乗り込んだ瞬間。
(む!?)
運転席の目の前、フロントガラスに、
外から何かシールが貼ってある。
何の嫌がらせだ? と思うのと同時に、
嫌な感触が、彼の脳裏を支配した。
(……)
席を立つのも、めんどくさい。
ドアを開けた彼は、
隙間からフロントガラスの前に右手を伸ばし、
貼り紙をベリベリはがして手元へ。
(あぁぁ……)
食らってたか、駐禁…。
昔、何度か食らった駐禁は、ドアミラーのくびれに、
黄色いタグがくくり付けられるスタイルだった。
今は違うらしい。
フロントガラスに貼り紙。
郵便局の不在通知くらいのサイズ。
“放置車両確認標章”とある。
初めての経験なので、彼は内容を熟読した。
“貴方の車の違反駐車を、監視員が確認しました”
“最終確認時刻5:05”
なにぃ!?
つい、さっきじゃねーか。
“心当たりのある方は、
この標章を持参の上、最寄りの派出所へ出頭……”
“……出頭しない場合は、後日、車の所有者に郵送で、
違反金の通告を行う場合があります”
ふうむ…。
誕生日は近い。
そして、免許更新の年。
あと数日ねばれば、ゴールド免許だったのだ。
しかし貼り紙には“通告を行う場合があります”とある。
通告を受けなければ、
ゴールド免許の線は、まだ残ってるってことなのかな。
ま、やっちまったもんは仕方ない、なるようにしかなるまい。
数日後。
帰宅して、マンション入り口のオートロックを開けた彼は、
ポストの郵便物を取って、自分の部屋の階に上がりながら、
郵便物を見ていた。
警視庁運転免許本部からのハガキが混ざっていた。
免許更新の案内。
(お。)
で、どっちなんだ?
Sメールになっているハガキのフリップを剥がし、
ステータス確認。
“講習区分:違反”
むぅ…。
切られたか。
ん?
“信号(赤色)等”
なんだ?
信号無視? ありえないな。
免許更新の度に、
駐禁1回とかでゴールドを逃し続けて来た彼だが、
運転中のマナーは人一倍守っているつもりだ。
信号無視など、何かの間違いだ。
“2004年10月”
何やってたときだろ、
そんな昔のことなど覚えていない。
心当たりがない彼だったが、
記憶力の低下で恥をかくことが多い最近の傾向を考え、
クレームを上げることはためらわれ、
そのまま鮫洲行きの日程を考え始めた。
2007年11月。
失効ギリの日付に有休を取り、
鮫洲の免許更新センターへ向かった彼は、
前回の更新で某芸能人に会った教室で、
再び違反者講習を受けた。
こういうの、たまに聞くと、意識は引き締まる。
彼のような“うぬぼれドライバー”は、
数年に1回は真面目な講習を受け、自重した方がいい。
しかし、赤信号ってなんだ…、やっぱりわからん。
講習が終わり、免許を受け取った。
青いライン。
いつになったら、ゴールド免許になるんだろう。
ま、最近は会社のテニス部の部活か土地整備以外には、
車もあまり乗らなくなったから、
違反リスクはかなり低くなっている。
次回はゴールドいけそうだな。
2007年12月。
昔の写真を整理していた彼は、
とあるセットに目が止まった。
二子新地のバーベキュー。
nanaたちとやったやつだ。
「あ…」
フラグが立った瞬間、鮮明に蘇る記憶…。
2004年10月。
バーベキューの帰り道、
メンツを乗せた彼は、多摩川の堤の道へ出た。
6人乗ってる。
ひとり、定員オーバー。
何人かはニコタマで降ろすから、
橋を渡って少しまでの間、ひとりは荷物扱い、勝手に。
対向車線の往来が赤信号で途絶えた瞬間になってようやく、
ニコタマへ橋を渡る右折が禁止だと気づいた彼は、
曲がれずにやむを得ず登戸方面へ直進した。
交差点に進入した彼は、
左側の信号待ちの車列の先頭に、
パトカーがいるのに気づいた。
「あぶねっ、
曲がっちまう前に右折禁止に気づいてよかった……」
「今の、赤信号ギリギリは、大丈夫なんですか?」
「交差点内で止まるより、抜けた方が、
交通の妨げにならないだろ? 大丈夫だよ」
聞こえはいいが、
要は目をつけられて“荷物”に気づかれたら、
まずいってこと。
さりげなく通過しながら、
彼はすみやかにアクセルを踏み増し、加速した。
そのまま堤通りを走りながら彼は、
東京都方面へ向き直す挽回策を考えていた。
右は多摩川。
左には、左折できる路地も、転回できる駐車場もない。
ひとつめの信号が近づいてきた。
赤になりかけている。
直進と、左折レーンがある。
彼は左折レーンに進入した。
「あれ?」
赤信号になった信号機の左に、
別の青信号がこっちを向いている。
そっちも3ツ目、車用の信号だ。
そのすぐ下には、
レーンが左折専用だと示す標識がある。
「これ、行っちゃっていいってこと?」
「さあ、どうなんでしょ」
「行っちゃえ〜」
後部座席でバーベキューの余韻に騒いでたメンツのうち、
nanaの連れのコが割って入った。
例えば女神さまの歌声のような、
低くてしっとりしている声が、
落ち着けて心地よい彼は一方で、
対極にある高い周波数のキンキンした声質は、
ハナから生理的に受け付けない。
本人に何の罪もないが、
受け入れ難い質の声で叫ばれたのが、
彼には耐えられず、瞬間的にイラッとした。
その声から逃げるように、
彼はアクセルを踏みながら、T字路の交差点に進入した。
「大丈夫だろ」
とつぶやきながら、彼はハンドルを切り、
進路とミラーの視界を順番に確保。
「あれ」
彼が走って来た堤通りに並行して、
堤の下に、別の車道があるのに気づいた。
彼が見た青信号って、こっちの道用ってこと?
ってことは、彼のレーンは赤信号だったか。
下の道に車がいなくて、よかった……。
いや、なに?
もっとまずいものの姿を、
彼はバックミラーの中に捉えていた。
パトカー。
さっきのパトカーだ。
手前の交差点で見かけたときから、
彼の車はロックオンされてたってことですか。
気づいた瞬間、バックミラーの中のそいつは、
サイレンを鳴らし始めた。
“はいシルバーのRVぃ、路肩に寄せてくださいぃ”
「うわ、まじで……」
「え、なになになにぃ?」
イラッ。
いいから、ちょっと黙っててくれないかな、その声。
さて、どうしたものか。
逃げ方ではなく、被害を最小限に食い止める方法を、
彼は考えていた。
止められる理由は、赤信号の交差点に進入したってことだ。
真後ろから見届けられたから、これは動かしようがない。
定員オーバーは、まだ気づかれないはずだ。
ダブルはイヤだ。
「みんなは出て来ないでくれ」
ハザードを灯いて路肩に止めるなり彼は、
ドアを開け財布を手に取り、
彼の車の後ろに停止しようとしているパトカーに、
自ら接近していった。
警官が出てきた。
先制攻撃。
「あの信号と標識の組み合わせ、わかりにくいっすよ、
左レーンが青かと思うじゃないっすか」
「ちゃんと見たら、赤は赤だろう」
そこを否定されるのは折り込み済み、
あまり問題ではない。
彼の車の方には、行くなよ……。
「はい免許証、見せてください」
パトカーのボンネットの上で、やりとりが始まった。
これは、いい流れだわ。
神妙に手続きを終え、切符を預かった彼は、
車へ戻って走り出した。
免許更新直後なのに。
次の更新も、またブルー免許なのか……。
そんなことを考えながら、彼はニコタマを目指した。
そういえば、そんなことがあったな。
そもそも、先日の駐禁が通告を受けようが受けまいが、
ブルー免許は3年前に確定していたわけだ。
忘れるもんだな、自分に都合の悪いことは。
ま、思い出してスッキリした。
気をつけて早いとこ、ゴールド免許になろ。
2007年12月。
帰宅した彼のポストに、
ある封書が届いていた。
「……」
開けるまでもない、内容はわかっている。
彼は歩きながら封を切った。
“2007年9月、
貴方の車の違反駐車が確認されました。
云々……”
違反金、15,000円也。
あぁ、次の更新も、またブルー免許なのか……。
週末の夜、テニス部の合宿から帰ってきた彼は、
マンション前に車を軽く駐め、洗濯機を速攻で回した。
出した衣類を持ち出し、そのまま車で、
500mほど離れたランドリーへ、乾燥機を回しに向かった。
もう日曜夜なので乾燥機頼り。
大サイズのマシンに衣類をぶっ込み、
500円、75分の料金を投入した彼は、
マンション隣にある銀行前の路肩に車を乗り上げて駐め、
いったん自宅へ戻った。
1時間少々、自宅で時間つぶし…。
ふと目覚め、ソファベッドから起き上がった彼は、
時計を見て驚いた。
5:00過ぎ、もう明け方近い。
帰って来たときは、まだ日付も変わらない、
23:00ごろだったはずだ。
いつの間にか、眠っちまった。
乾燥機、回しっぱなしだな…。
エンドレスで回ってたらしい大画面のニコニコ動画を、
まだ寝起きの頭でボーッと眺めていた彼は、
ふと思い出した。
(あ、車、駐めっぱなしじゃん……)
自分のマンション下なら、
朝、薬局が開店する前にどけてさえいれば、
車体の9割がた路肩に収まってるし、
まだ、なんとかなる。
しかし、今日彼が駐めたポジションは、
商店街に面した、銀行の入り口の側だ。
まずいかな…。
合宿で疲れ切ってはいたが、そんなのは彼の都合。
サンダルで車に向かった彼は、
角を曲がった瞬間、
まず車の両サイドのドアミラーを確認した。
駐禁切符を切られているなら、
ドアミラーに黄色い輪っかがくくり付けられているはずだ…。
(お、ない……)
無事を確認してホッとした彼は、ランドリーへ、
乾いてだいぶ経つ洗濯物を取りに向かうべく、
背後から愛機に近づいてドアキーを解除し、
運転席へ乗り込んだ瞬間。
(む!?)
運転席の目の前、フロントガラスに、
外から何かシールが貼ってある。
何の嫌がらせだ? と思うのと同時に、
嫌な感触が、彼の脳裏を支配した。
(……)
席を立つのも、めんどくさい。
ドアを開けた彼は、
隙間からフロントガラスの前に右手を伸ばし、
貼り紙をベリベリはがして手元へ。
(あぁぁ……)
食らってたか、駐禁…。
昔、何度か食らった駐禁は、ドアミラーのくびれに、
黄色いタグがくくり付けられるスタイルだった。
今は違うらしい。
フロントガラスに貼り紙。
郵便局の不在通知くらいのサイズ。
“放置車両確認標章”とある。
初めての経験なので、彼は内容を熟読した。
“貴方の車の違反駐車を、監視員が確認しました”
“最終確認時刻5:05”
なにぃ!?
つい、さっきじゃねーか。
“心当たりのある方は、
この標章を持参の上、最寄りの派出所へ出頭……”
“……出頭しない場合は、後日、車の所有者に郵送で、
違反金の通告を行う場合があります”
ふうむ…。
誕生日は近い。
そして、免許更新の年。
あと数日ねばれば、ゴールド免許だったのだ。
しかし貼り紙には“通告を行う場合があります”とある。
通告を受けなければ、
ゴールド免許の線は、まだ残ってるってことなのかな。
ま、やっちまったもんは仕方ない、なるようにしかなるまい。
数日後。
帰宅して、マンション入り口のオートロックを開けた彼は、
ポストの郵便物を取って、自分の部屋の階に上がりながら、
郵便物を見ていた。
警視庁運転免許本部からのハガキが混ざっていた。
免許更新の案内。
(お。)
で、どっちなんだ?
Sメールになっているハガキのフリップを剥がし、
ステータス確認。
“講習区分:違反”
むぅ…。
切られたか。
ん?
“信号(赤色)等”
なんだ?
信号無視? ありえないな。
免許更新の度に、
駐禁1回とかでゴールドを逃し続けて来た彼だが、
運転中のマナーは人一倍守っているつもりだ。
信号無視など、何かの間違いだ。
“2004年10月”
何やってたときだろ、
そんな昔のことなど覚えていない。
心当たりがない彼だったが、
記憶力の低下で恥をかくことが多い最近の傾向を考え、
クレームを上げることはためらわれ、
そのまま鮫洲行きの日程を考え始めた。
2007年11月。
失効ギリの日付に有休を取り、
鮫洲の免許更新センターへ向かった彼は、
前回の更新で某芸能人に会った教室で、
再び違反者講習を受けた。
こういうの、たまに聞くと、意識は引き締まる。
彼のような“うぬぼれドライバー”は、
数年に1回は真面目な講習を受け、自重した方がいい。
しかし、赤信号ってなんだ…、やっぱりわからん。
講習が終わり、免許を受け取った。
青いライン。
いつになったら、ゴールド免許になるんだろう。
ま、最近は会社のテニス部の部活か土地整備以外には、
車もあまり乗らなくなったから、
違反リスクはかなり低くなっている。
次回はゴールドいけそうだな。
2007年12月。
昔の写真を整理していた彼は、
とあるセットに目が止まった。
二子新地のバーベキュー。
nanaたちとやったやつだ。
「あ…」
フラグが立った瞬間、鮮明に蘇る記憶…。
2004年10月。
バーベキューの帰り道、
メンツを乗せた彼は、多摩川の堤の道へ出た。
6人乗ってる。
ひとり、定員オーバー。
何人かはニコタマで降ろすから、
橋を渡って少しまでの間、ひとりは荷物扱い、勝手に。
対向車線の往来が赤信号で途絶えた瞬間になってようやく、
ニコタマへ橋を渡る右折が禁止だと気づいた彼は、
曲がれずにやむを得ず登戸方面へ直進した。
交差点に進入した彼は、
左側の信号待ちの車列の先頭に、
パトカーがいるのに気づいた。
「あぶねっ、
曲がっちまう前に右折禁止に気づいてよかった……」
「今の、赤信号ギリギリは、大丈夫なんですか?」
「交差点内で止まるより、抜けた方が、
交通の妨げにならないだろ? 大丈夫だよ」
聞こえはいいが、
要は目をつけられて“荷物”に気づかれたら、
まずいってこと。
さりげなく通過しながら、
彼はすみやかにアクセルを踏み増し、加速した。
そのまま堤通りを走りながら彼は、
東京都方面へ向き直す挽回策を考えていた。
右は多摩川。
左には、左折できる路地も、転回できる駐車場もない。
ひとつめの信号が近づいてきた。
赤になりかけている。
直進と、左折レーンがある。
彼は左折レーンに進入した。
「あれ?」
赤信号になった信号機の左に、
別の青信号がこっちを向いている。
そっちも3ツ目、車用の信号だ。
そのすぐ下には、
レーンが左折専用だと示す標識がある。
「これ、行っちゃっていいってこと?」
「さあ、どうなんでしょ」
「行っちゃえ〜」
後部座席でバーベキューの余韻に騒いでたメンツのうち、
nanaの連れのコが割って入った。
例えば女神さまの歌声のような、
低くてしっとりしている声が、
落ち着けて心地よい彼は一方で、
対極にある高い周波数のキンキンした声質は、
ハナから生理的に受け付けない。
本人に何の罪もないが、
受け入れ難い質の声で叫ばれたのが、
彼には耐えられず、瞬間的にイラッとした。
その声から逃げるように、
彼はアクセルを踏みながら、T字路の交差点に進入した。
「大丈夫だろ」
とつぶやきながら、彼はハンドルを切り、
進路とミラーの視界を順番に確保。
「あれ」
彼が走って来た堤通りに並行して、
堤の下に、別の車道があるのに気づいた。
彼が見た青信号って、こっちの道用ってこと?
ってことは、彼のレーンは赤信号だったか。
下の道に車がいなくて、よかった……。
いや、なに?
もっとまずいものの姿を、
彼はバックミラーの中に捉えていた。
パトカー。
さっきのパトカーだ。
手前の交差点で見かけたときから、
彼の車はロックオンされてたってことですか。
気づいた瞬間、バックミラーの中のそいつは、
サイレンを鳴らし始めた。
“はいシルバーのRVぃ、路肩に寄せてくださいぃ”
「うわ、まじで……」
「え、なになになにぃ?」
イラッ。
いいから、ちょっと黙っててくれないかな、その声。
さて、どうしたものか。
逃げ方ではなく、被害を最小限に食い止める方法を、
彼は考えていた。
止められる理由は、赤信号の交差点に進入したってことだ。
真後ろから見届けられたから、これは動かしようがない。
定員オーバーは、まだ気づかれないはずだ。
ダブルはイヤだ。
「みんなは出て来ないでくれ」
ハザードを灯いて路肩に止めるなり彼は、
ドアを開け財布を手に取り、
彼の車の後ろに停止しようとしているパトカーに、
自ら接近していった。
警官が出てきた。
先制攻撃。
「あの信号と標識の組み合わせ、わかりにくいっすよ、
左レーンが青かと思うじゃないっすか」
「ちゃんと見たら、赤は赤だろう」
そこを否定されるのは折り込み済み、
あまり問題ではない。
彼の車の方には、行くなよ……。
「はい免許証、見せてください」
パトカーのボンネットの上で、やりとりが始まった。
これは、いい流れだわ。
神妙に手続きを終え、切符を預かった彼は、
車へ戻って走り出した。
免許更新直後なのに。
次の更新も、またブルー免許なのか……。
そんなことを考えながら、彼はニコタマを目指した。
そういえば、そんなことがあったな。
そもそも、先日の駐禁が通告を受けようが受けまいが、
ブルー免許は3年前に確定していたわけだ。
忘れるもんだな、自分に都合の悪いことは。
ま、思い出してスッキリした。
気をつけて早いとこ、ゴールド免許になろ。
2007年12月。
帰宅した彼のポストに、
ある封書が届いていた。
「……」
開けるまでもない、内容はわかっている。
彼は歩きながら封を切った。
“2007年9月、
貴方の車の違反駐車が確認されました。
云々……”
違反金、15,000円也。
あぁ、次の更新も、またブルー免許なのか……。
