子どもたちに本との出会いのときめきを…

KLV=カリブー――これが私たちの愛称です。
正式な名前は鹿沼図書館ボランティア
その英訳の頭文字をとって、KLV。

それを「カリブー」と読むようになったのは、
北アメリカに「カリブー」というヘラ鹿がいるからです。
つまり鹿沼の鹿と、ヘラ鹿をかけことばとしたのです。

 私たちKLVは、主に学校図書館を活動拠点としています。
市内には31の小・中学校がありますが、
今ではそのすべての学校図書館で活躍しています。

活動内容はそれぞれに異なりますが、
新刊本受け入れ・配架・補修廃棄から、
読み聞かせなどの読書普及活動、
図館利用指導・発展教材の読書指導・調べ学習などの授業支援、
読書啓発の掲示物づくり・KLV通信発行などの読書環境づくり、
さらには本のリサイクル市の開催まで、
全体では七分野十六種類の活動を行っています。

 KLVは、今から九年前に生まれました。
本離れのすすむ子どもたち。
司書の先生がいないために、子どもたちは本への興味を失い
学校図書館は人気のない寂しい部屋になっていました。

また、中学校では子どもたちの「荒れ」が原因で、
鍵のかかったままの部屋となっていました。

そんな現状に、ある母親が、
「子どもたちを図書館に呼び戻そう。」と提案したのです。

 たったひとりが口にした提案でしたが、
すぐさま教育委員会が受け入れ、
仲間づくりを全面的に支援してくれました。

そして1991年3月,22人のメンバーがKLV協会を発足させ、
手探りの状態ながらもたしかな歩みを踏み出したのでした。

今も仲間のひとりであるその提案者は、
当時のことを思い出しながらこう語ってくれました。

「子どもの読書離れは、
子どもと本をつなぐ人がいないことが原因だと思ったの。

つなぐ人の第一番めはもちろん司書の先生。
でもそれだけではないとも思ったわ。

たったひとりでは、とても無理よ。
子どもたちは大勢だもの。
つなぐ人も大勢必要よ。

私たちは司書の資格はないけれど、
少しぐらいは役に立つんじゃないかなと思ったの。」

 また呼びかけに賛同して参加したひとりは、
「中学校の図書館の鍵をなんとしても開けたかったの。
それを先生方に望むのはさらに先生方を苦しめるだけ。

私たちができることなら、私たちがやるべきじゃないかと思ったの。
たとえ、それが学校の図書館のことでもね。」

 KLVは、今では、290人を超える人数となり、
市内でも最大のボランティア団体となりました。

しかし、この初代KLVたちの熱い思いは、
今もKLV全員の心に息づいています。

先生方と保護者、地域住民が一体となってこそ、
子どもたちの読書活動を支えられると私たちは思うのです。
その支援活動の拠点こそが学校図書館なのです。

 KLVは、選書以外のほとんどの
学校図書館の業務にかかわっています。

ある学校のKLVは、図書館が暗いので、
少しでも明るい環境にと、壁を塗り替えました。

また、ある学校のKLVは、
本を選びやすいようにと書架も含めて
図書館の全面的な模様替えをしました。

このような管理的な活動もKLVは行いますが、
それらはすべて学校との話し合いに基づいて行われています。

これら,KLV活動は、ボランティアですので、「目的をもって、
自分の出来る事を、出来る時間に、無理をせず、
責任を持って行う」という姿勢を大切にしています。

はじめは、「学校のお手伝い」という意識で活動をしていましたが、
現在は、「自分たちの自主活動」という意識で、毎学期一回、
学校図書館運営委員会が開かれ、その席上で、
学校とKLVそれぞれに行っていきたいことを発表したあと、
意見調整があり、計画がたてられます。

したがってそれぞれの提案がすべて実施されるわけではなく、
KLVが学校の提案をお断りする場合もありますし、
KLVの提案が学校に断られる場合もあります。
KLVと学校は、お互いに「NO」と言える関係にあるのです。

 それでもこの九年間、学校と対立することなど一度もなく、
むしろその関係がお互いによい考えを出し合う環境をつくり、
子どもの読書量を三倍にするという成果を導き出したのです。

今、学校評議会が話題になっていますが、
私たちの学校図書館運営委員会は、
学校評議会よりも一歩先をいっているのではないかと、
ちょっと自慢に思っています。

 年々拡大発展しているKLV活動ですが、
もとはといえばあくまで「素人」集団です。

なかには司書や司書教諭の資格をもつ会員もいますが、
ほとんどは読書指導の専門家ではありません。

ごく普通のお母さんです。
ですから、KLVは研修をとても大切にしています。

 KLVの研修は、まずKLV養成講座から始まります。
KLV活動を行うために必要な
基本的な知識・技能を身に付けるための研修です。

図書分類、装備、補修、レファレンス技法などを学ぶ基礎編と、
読み聞かせ、ブックトーク、エプロンシアターなどを学ぶ実践編
のふたつにコースがあります。

また、図書館司書講習に準じたカリキュラムで行われる
KLV専門講座は、
KLVとしての経験を積んだメンバーを対象に行われるもので、
講座終了後に提出されるレポートにより単位認定の評価が
行われます。

このほかには、先進地の視察研修や、
パソコンによる学校図書館の管理・運営に対応した
パソコン講座なども行っています。

このような研修があってこそ、
KLVの活動は大きく成長してきたのです。
まさに、「学び」が支えるKLV活動です。

 次に、地域と学校のパートナーシップについてですが、
「KLVの参加によって図書館活動に余裕が生まれ、
余裕がアイディアを生み、アイディアが活気を生みました。」と、
ある小学校に図書担当の先生が、おっしゃって下さいました。

KLVは市内31の小中学校で活動をしているということは、
前に申しましたが、施設ごとに活動の内容は違っています。

その施設ごとに特色を生かし、
地域性を活かしながら活動しています。

 ある一小学校を例に、具体的な活動を
図書担当の先生の言葉をお借りして紹介します。

・「本が好きな子」を育てる いちばんはじめの運営委員会で、
KLVさんは、まっ先に読み聞かせを提案しました。

そこで月一回、朝の二十分間の職員打ち合わせの時間に、
各クラスで読み聞かせをしてもらうことになったのです。

教師以外の人に子どもたちをお任せすることに
最初はとまどいもありましたし、
ときには子どもたちが騒いでしまってよく聞けないときもありました。
しかし、KLVさんの熱心で地道な読み聞かせに、
子どもたちはだんだんと引き込まれていきました。

・「本に自ら手をのばす子」を育てる
KLVの参加によって、図書室も変わりました。

それまでの図書室は「書庫」でした。
買った本が並べてあるだけの場所でした。

本校には専任の司書教諭がいません。
図書の受け入れ、配架、整理、修理は、
繁雑で膨大な量の仕事です。

私ひとりが学級担任の仕事のかたわらにこなすことはむずかしく、
それまでは夏休みにまとめて新しい本は登録したり
古い本は図書委員を集めて修理したりしてしのいでいました。

 KLVさんの手を借りてみると、
それまで滞っていた本の修理や受け入れが一気に進み
そうなると図書館運営全体がスムーズに流れ出したのです。

新刊本の受け入れと、古い本の修理・管理、
図書室の季節にあったディスプレイなどは
KLVさんが一手に引き受け、
少しずつ確実にやってくれるようになり、

私は購入本の選書や、図書委員会の指導、
児童への図書室利用指導、
校内読書感想画コンクールの企画などに
力を注げるようになりました。

今では図書室も整頓され、
新しい本が入るとアッという間に借りられていきます。

きれいな部屋というのは散らかしづらいもので
子どもたちも以前よりきちんと本をもどすようになり、
利用マナーが向上してきました。
図書室に生命が通い始めた感じでした。

・「本を使いこなす子に」……
 今後は、先の読み聞かせを中心とした「本が大好きな子」
を育てる読書指導。

使いやすく、楽しい図書室をよりどころとした
「本に自ら手をのばす子」を育てる利用指導の充実に加え
、自分の必要に応じて「本を使いこなす子」を育てるということを、
KLVさんと手を携えてつくっていきたいです。

 KLVは、あくまでも自分の意志で活動を行っています。
朝の読み聞かせをする人、本の補修をする人、
広報誌を作る人、支援の形は様々ですが、
「子どもたちにもっと本を読んでほしい」という思いは同じです。

KLV会員のほとんどは児童の保護者、お母さんたちです。
しかし、同時にKLVは学校教育関係者でもあるわけです。

 「六年前、私ひとりの肩に重くのしかかっていた山積みの
修理本と図書室にまつわる仕事は、相変わらず減っていません。

しかし、それをいっしょに背負ってくれるたくさんの
パートナーを得て、重荷はすっかり軽くなりました。

このパートナーシップが、
いつまでも続いてくれることを願っています。」
その言葉をお聞きしたら、我々KLVは、
自然に力が湧いてくるのを感じずにはいられません。

 次は、読書のまちづくりをすすめる中学生たちを紹介しましょう。
 「こんばんは!!」
 午後七時、地域の小学校体育館のミーティングルームに、
中学生たちが三々五々集まってきました。

今日は日曜日、Jrたちの活動日です。
午後九時までの、とてもにぎやかな時間の始まりです。
さっそく、先週の続きに取りかかるJrたち。

牛乳パックにきれいな紙が張られ、
さまざまな形の小物入れができあがっていきます。
 「あと何個?あと少しだね。がんばろう」
この小物入れは、Jrたちがクリスマス会で、
地域のお年寄りにプレゼントするために作っているものです。

 Jrたちとは、中学生の図書館ボランティアKLV・Jrのことです。
KLV・Jrの活動は、1998年にスタートしました。

そのころ中学校図書館で活動するKLVは、
中学生の読書離れに頭を痛めていました。

小学生のように本を読み聞かせて本好きにする
ことができず、お手上げでした。

そのようなとき、 「本を使う必要性を感じれば、
中学生も自分からすすんで本を手にするはずよね。」
と仲間のひとりが口にしました。

そのひと言がKLV・Jrを誕生させたのです。
中学生に読み聞かせをさせることで、中学生を本好きにする。
これがKLV・Jrの誕生の理由です。

 私たちは、1998年の夏休み、公民館を会場に、
中学生のための図書館ボランティア養成講座を開催しました。

公募に応じた16名が参加し、5日間にわたって、
絵本の読み聞かせや紙芝居、影絵など実技を中心に
KLVの指導を受けることになりました。

この講座で最も工夫したことは、講座最終日の5日目、
保育園での御話会実習を組み込んだことです。

子どもたちに目標をもって取り組んでもらいたかったからです。
この養成講座を通して自信をもち始めたJrたちは、
その後も定期的に集まり、ますます意欲的に練習を重ねました。

そして小学校に行って地域の方々や児童の前で、
かぐや姫の影絵を上演したり地域の公民館で行われた
独居老人のクリスマス会や子どもたち対象の映画会に積極的に
参加して読み聞かせを行ったりしてきました。

 Jrの子どもたちは、
以前小学校でKLVの活動を楽しんできた子どもたちです。

 「子どもたちが中学生になり、こんどは自分たちから
本の楽しさを働きかける側になり
自分たちも楽しんでしまおうと、今取り組んでいるのです。

そんなKLV・Jrは、私たちの大切な大切な宝物なのです。」
とJr養成に指導に関わってきたお母さんは、目を細めます。

 最後にJrたちの声をお聞きください。
・KLV・Jrの活動に参加するようになってもう二年が経ちます。

いろいろやりましたが、やっぱりいちばん印象に残るのは、
初めて活動に参加したときのことです。

保育園へ行って本の読み聞かせやエプロンシアターをやりました。
このときのことをきっかけに、
ボランティアはやりがいがある活動だと思いました。

保育園児たちが喜んでくれている場面は、
今でも思い出され、やる気を呼びます。

それまではまるでボランティアなど興味なかったけど、
人に喜んでもらうのがとてもうれしいことなのだと感じられます。

・ エプロンシアターをやってみて、
いろいろな人とふれあうことができました。

初めのうちは、じょうずにできるか不安だったけど、
何回かやるうちに、「ありがとう」や「じょうずだったよ」
などと言われるようになり、とてもうれしかったです。
KLV・Jrに入ってとてもよい経験ができました。

・ ペープサート「おやゆびひめ」は、みんなで話し合って決めました。
それぞれの分担をもってみんなで下書きから始まって、色塗り、
雨が降ると色が落ちてしまうので上からテ―プをはりました。

自分たちが作ったもので発表するのは初めてだったけど、
とても楽しかったです。


・ 最近やった人形劇の指人形は、自分たちで作りました。
初めて人形劇を保育園でやったときは、声が小さかったり、
人形が下を向いてしまったりと、うまくできませんでした。

今ではよくできるようになりましたが、
もっと練習してうまくなりたいです。

・ 私たちは日曜日の夜に活動をしています。
打ち合わせをしたり、作成したり、
練習したり、みんなでがんばっています。

公民館主催の独居老人のクリスマス会でプレゼン
トする小物入れをリサイクル品として、
牛乳パックで作り千代紙で飾りました。

各自アイデアを出し合いすてきなものができました。
おじいさん、おばあさん、地域の係の人がとても喜んでくれました。
いっしょうけんめい作ったので、とてもうれしかったです。

 ひとつの活動を通じて、社会に参加していく、
地域の人たちと関わっていくという実践あっての学習に
自分なりの目標をもってがんばってほしいと思います。

 わたしたちKLVは、ひとりひとりが信念をもちながら、
楽しくできることをしようと、
さらに学ぶことの重要性を感じつつ活動しています。

特に養成講座として、新たな仲間づくりのため、
活動の確認の意味での基礎編。

活動の充実や新たな活動への挑戦をしようと
勉強を重ねていく実践編。

ひとつの事がらをさらに深めていく専門講座を、
それぞれの会員が独自に進めていくというものです。

 日々の生活の中で、子どもたちが、
数多くの本の中から一冊の本を手にとり、本の楽しさや、
感動や何かを感じることが出来たかと考えたとき、
KLV活動をやっていてよかった!!

と思える様に自信と誇りをもって、
活動していこうと考えています。