【CD】"Tu Tinh Ca"(Lylical Song)/5 dong ke(ナム・ゾン・ケー)Vol.2 Phuong Nam Phim
私が開催に関わった8月15日のホーチミンでのコンサートのリハーサルで、彼女たちにはじめてあった。ジーンズにTシャツ姿のかわいい女の子の4人組。ルックスも悪くないので、こりゃアイドルグループに違いないと思った。ところが舞台にたって練習をはじめた彼女たちは、伴奏なしのアカペラで歌いはじめるではないか。女の子4人のグループでアカペラを歌うというのは珍しいなと思ったが、それだけではない。うまいのだ。日本側から参加したミュージシャンもそのうまさに舌をまいていた。みかけはアイドルグループみたいに見えるが実力は本格的だ。
不思議だったのは、女の子4人のグループなのに、5 dong ke(五線譜)。ひとり足りないのではと思ったのだが、その後新聞記事を読んで納得。元々5人グループで出発したが、ひとりメンバーが脱退したために4人のグループになったというわけだ。
今回彼女たちの2枚目のアルバムが発売された。全6曲。うち5曲はアカペラである。なかでもチン・コン・ソンのバラードは出色の出来だ。アカペラのアレンジも凝っていて、ベトナムの歌がとても新鮮に聞こえる。おしむらくはCDアルバムなのに6曲しかないこと。あともう5曲ぐらいは聞きたかったなあと思う。
実力は男性ボーカルグループAC&Mなどに負けていない。ハノイ音楽院でダンバウ(一弦琴)を学び、優秀な成績で卒業したというメンバーのひとり、Bao Lan(バオ・ラン)のアレンジに支えられ、世界でもまれな女性アカペラグループ、5 dong ke。CDだけでなく、ぜひまたライブで彼女たちの歌をききたいものだ。(2005/10/31)
【DVD】"Bay Tinh"『恋の罠(仮)』2005年ベトナム
☆監督/レー・クン・バック(Le Cung Bac)
☆脚本/ファム・トゥイ・ニャン(Pham Thuy Nhan)
☆音楽/バオ・フック(Bao Phuc)
☆製作/ホアン・ゴック・ファン(Hoang Ngoc Phan)
☆出演/タイン・マイ(Thanh Mai)、ホアン・フック(Hoang Phuc)、クォック・タイ(Quoc Thai)、マイン・フン(Manh Hung)
☆公式ウェブサイト:http://www.vietphim.net/
<あらすじ>
1930年代のハノイ。新聞記者のチョン(Trong)とタン(Tan)は売春問題を記事に取り上げ、その調査のため、ある娼館を訪ねる。そこでチョンは自分の初恋の人フエン(Huyen)と出会い、問い詰めるが、彼女は人違いだと突っぱねる。
あるとき、チョンが売春婦の厚生施設を訪ねると、そのにフエンの姿があった。彼女は自分がフエンであることを認め、裕福な家に育ち、美しく、学問もあった彼女が娼婦に身を落とすことになる顛末をTrongに語りはじめる。
従兄との禁じられた恋、そして彼女に縁談が決まると、彼は自殺してしまう。嫁いだ先で、夫は性病を患っていて、彼女を抱くこともできない。そして夫の友人との不倫な恋に堕ちた彼女は…。
<評>
製作映画会社のVietFilmは在米ベトナム人実業家Hoang Ngoc Phan氏が興した新興映画会社の作品。Phan氏と監督のLe Cung Bac氏と脚本のPham Thuy Nhanの3人は1975年以前にダラットの大学の同窓生だそうだ。
ストーリーは1930年代の作家Vu Trong Phungの小説とルポルタージュをもとに作られた。
ベトナムの古典小説に「金雲翹(キム・ヴァン・キェウ) 」があるが、美人薄命がテーマである。この映画も美人が娼婦に身を堕とすまでを描いたメロドラマだ。ベトナムにあっては、美人というのはゆくゆく男運にめぐまれないものらしい。
ベトナムの映画では珍しく1930年代を扱っている。テレビの昼メロ向きのストーリーだが、娼婦にまで身を堕とすというあたりに、凄まじさを感じてしまう。
VietFilmでは、今後ベトナムの近代の作家の作品を映画化したいとの意向があるようで、今後が楽しみだ。DVD・英語字幕付 (2005/07/10)
【映画】"Nu Tuong Cuop"『二人は恋泥棒(仮)』 2004年ベトナム
☆監督・脚本/レー・ホアン「Le nam he pho」「Gay Nhay」「ナイフ」「サイゴンからの旅人」
☆撮影/ディン・アイン・ズン
☆制作/ディン・タイン・フン「Nhung Co Gai Chan Dai」(Thien Ngan Galaxy)
☆出演/ミー・ズエン、ラム・チュン、バン・ラン
☆公式ウェブサイト http://www.phimnutuongcuop.com/
<あらすじ>
ホンとトゥーは境遇の似た少女だった。家族もなく、家もなく、スラムに互いに寄り添うように暮らしていた。まわりの文明的で、豪華な世界に一歩でも近づき、あれもこれも欲しいという思いをすぐにみたすため、二人は企みと自らの美しさをためらいもなく利用して、女性に優しく、女好きの男たちを騙すことにした。
男をだますことにやすやすと成功すると、ホンはこの悪の道を進むことで金持ちになろうと夢見るが、トゥーはこんな生き方はやめようと懇願する。男をだまそうとしたとき、トゥーは自分のだました相手とロマンチックな恋に落ちるが、その恋は試練に満ちたものだった。
どの話の結末もそうであるように、ホンは逆にハンサムで女に優しい若い男にだまされてしまう。恨みのあまり、自分自身がいやになって、自分の人生に決着をつけようとするが…。
<評>
「ナイフ」「サイゴンからの旅人」の2作をみて、レー・ホアンという監督はうまい監督だなと感じていました。最近では"Gai Nhay(バーガール)"や"Le Nam He Pho"でヒットを飛ばした監督としても知られています。
その監督と"Nhung Co Gai Chan Dai(長い足の女たち)"で民間映画会社として最初のヒットを作り出したギャラクシー社のカップリングで、さてどんな映画ができるのだろうと、期待してみにいきました。というより「ナイフ」のミー・ズエンがかわいかったから、彼女の姿をみるだけでもいいや、というのが本音。
レー・ホアン監督はさすがに映画をたくさんとってきただけのことはあって、手馴れている感じでした。しかし、"Nhung Co Gai Chan Dai"のような軽さはなく、やはり後半ちょっと重くなってしまったのが残念。前半の部分がコメディタッチだったのに、後半になってシリアスものに無理無理につきあわされてしまった感じ。映像は「ナイフ」の時にも感じたような、きれいな映像をみせてくれました。
肝心のミー・ズエンですが、「ナイフ」のときには、初々しい無垢な少女を演じてみせてくれましたが、少々トウがたってしまったのか、ちょっとおばさんチックでがっかり。
歌手のラム・チュンやモデルのバン・ランが好演してました。
この映画をみて、あらためてベトナム女性の「凄み」みたいなものを強く感じました。(2005/02/27)
【美術】インスタレーション "Convergence & Assembly" 2004年ベトナム 作家/バオ・トアン
<評>
絵画収集家の友人にハノイ美術館でインスタレーションのオープニングパーティにいかないか?と誘われたので、うむ、ベトナムのインスタレーションとはどんなものであろう、と興味津々でかけた。
いってみると、もう有名画家やらハノイ美大の先生・学長、演出家などなど、著名人が集まっている。主催はBritish Council、つまり英国大使館。英国大使館や美術館館長の挨拶のあと、登場したバオ・トアン氏。なんと身体に文字がかかれていて、まるで耳なし芳一みたい。みなさん、来てくれてくれて本当にありがとう、みたいな簡単な挨拶。いかにも芸術家って感じで、ここで好感度アップ。
では、みなさんどうぞ、と案内されて、インスタレーションを拝見。庭には竹でつくられた1mぐらいの人型の中に電球がしかけられていて、
それがいくつも宙に浮かんでいる。部屋にはいると、これまた異なる素材の紙やなにやらで造られた人型が、押し合いへし合いしている。う〜ん、これで何がいいたいのだろう、などと考えることなしに、その一つひとつの人型をみているとつい微笑みたくなる。どこか、ドラえもんの体型にもにているような。ユーモラスなインスタレーションではありました。
ベトナムでもこうした作家の作品が受け入れられるようになったということなのでしょうか。
バオ・トアン氏は今度はハノイを流れる「紅河」にインスタレーションすることを計画しているという。今後も期待しましょう。(2004/10/29)
【映画】Nhung Co Gai Chan Dai(長い足の女たち) 2004年ベトナム 監督/ヴ・ゴック・ヴァン 出演/アイン・トゥー、ハイ・ドン
<あらすじ>
田舎から街にでてきたトゥイは、若い写真家の彼氏のすすめで広告業界からファッションモデルの道へ進み、モデルとしての生活をはじめる。家賃稼ぎのアルバイトにいかがわしいバーでのショーに出て当局の手入れに遭い逮捕されるが、有名ファッション写真家に助けられる。彼氏を捨て、その写真家の愛人となるかわりにトップモデルの地位を手に入れたトゥイ。が、しかし、そんな生活は長くは続かなかった…。
<評>
ベトナムの映画=つまらない、と思っていたので、映画館に足を運ぶことなどなかったのですが、この作品の場合、映画館前のポスター、まずこれがよかったですね。きれいなお姉さんたちが長いオミアシを挑発的にみせつけてる写真で、オジサンは映画の内容などどうでもよいから、キレイなお姉さんたちを拝んで眼福にあずかりたいというただの助平心で映画をみにいきました。
ところがどうして、どうして、これが面白かった。ベトナム「芸術」映画ばかり見せられてきた私としては、ベトナムの娯楽映画、面白いじゃないかと目からウロコが落ちました。
後で知ったことですが、出演者はみな有名ファッションモデルや本当の写真家だそう。監督は若干29歳。映画会社も新興民間映画会社とあって、意気込みが違う。ベトナム映画ではじめてウェブサイト(http://www.nhungcogaichandai.com/)を設け、ポスターのコンペやその授賞式までやって、派手なプロモーションをしかけたそうです。
ベトナム映画はこれまで、在外ベトナム人の映画監督の手になるものはいいなあと思えるものもあったのですが、ベトナムで製作された映画で日本に紹介されたものは皆芸術映画ばかりで、面白いものはありませんでした。
このような新興映画会社が多くでてきて、内容も興行成績も競い合うようになればいいのですがね。ただしベトナム人の友人に聞くと、やっぱりまだベトナム映画は面白くない、とぼやきます。おいおいもっときちっと見てからにしてよね、と思うのですが。
この映画、余談ですが、足の長くてきれいな女が好きなファッション写真家は坂田明似、ファッションデザイナーとしてでてくる俳優は八嶋智人似で、すごく笑えました。(2004/09/13)
【写真はhttp://www.nhungcogaichandai.com/提供】
【小説】つぶらな瞳 1990年ベトナム 作/グエン・ニャット・アイン 訳/加藤栄 出版/てらいんく
<あらすじ>
ベトナム北部の農村、ドードー村。小学校から幼馴染として育った、ハー・ランと私。後年、「つぶらな瞳」と呼ぶことになる彼女と私は、教室でも、放課後も一緒だ。二人そろって県都の中学校に進学してからは、席も離れ離れになって、友達に戻れるのは、週末に村に帰るときだけになる。都会にあこがれる女と、ひたすら彼女に思いを寄せ続ける男。
<評>
私の大学の大先輩、加藤栄さんの最新訳書である。加藤栄さんはベトナム現代小説を精力的に日本に紹介している日本で随一のベトナム文学翻訳家である。本が出来上がると必ず謹呈として本が贈られてくるので、早速拝読した。
まず驚いたのは、この作品には戦争の「せ」の字もでてこない。南北統一以前のサイゴン政権時代の中部ベトナムが舞台だ(とあるが、なぜか帯にはベトナム北部とある。どうして??)というのでうなづけるが、ベトナム文学が政治に奉仕するものであった時代からすれば、この小説は「ありえない」といわれるところだろう。
90年代にニャット・アイン氏の作品は戦後生まれのドイモイ世代に広く受け入れられたという意味はよくわかる。思春期にある若者たちはこうした小説を好んで読むに違いない。もう不惑を越えたオジサンにとってみれば、少々ウレシハズカシの世界ではある。作者によればこの本の前半を読めば、ベトナムに行きたくなる、といっていたが、静かな農村の風景が描かれ、人々の喧騒やバイクの騒音すさまじい現在のベトナムの都市とは全くの異世界である。
ワタクシ的には前作の「ツバメ飛ぶ」の方がよかったが、それは私がベトナムとかかわったきっかけが「戦争」であったということからくるものが大きいようだ。(2004/09/13)
<あらすじ>
エドワードとアルフォンスの兄弟は、幼い頃に病気で失った母を錬金術により蘇らせようと試みる。しかし、錬成は失敗。エドワードは、左足と弟のアルフォンスを失ってしまう。自分の右腕を犠牲になんとかアルフォンスの魂を錬成し、鎧に定着させることに成功したエドワード。が、その代償はあまりにも高すぎた。そして兄弟は、すべてを取り戻す旅に出るのだった。
<評>
12歳になる娘が今はまっているのが、この「鋼の錬金術師」。すごく面白いからお父さんも読んでみて、とベトナムに遊びにきたときに娘が持ってきてくれたのが、このコミック8巻。あらすじをきいたときには、なんかキワモノっぽいので少し敬遠したのですが、どうしてどうして、絵も、ストーリーもしっかりしていて、読み応えありました。
錬金術が行われた時代、ときいていたので、ヨーロッパ中世かと思いきや、ヨーロッパのそれも第一次と第二次世界大戦の戦間期の雰囲気。列車も電話もあるし、なにより軍人はドイツ軍の軍装に似た衣装をまとっている。加えて、国を滅ぼされたものがテロリストとして現れるが、それに対する描き方も単に敵味方という関係にとどまらない深さをもっていると感じました。
娘はこのマンガとアニメをきっかけに、なぜか戦争のことや歴史について興味がわいたそうです。単なるファンタジーにとどまらないリアルさをこの作品がもっているからかもしれません。
適当にギャグもまぶしてあって、肩は凝りません。オジサンにもおいしい作品ではありました。「魂を練成して鎧に定着」ってあたりが、ちょっと納得がいかないのですが、そこはおとぎ話。目をつぶりましょう。(2004/09/13)
【写真はamazon.co.jp提供】