■ベトナム便り
第52回『2013年ベトナム経済をふりかえる』2014年も明けて1か月が経過した。ベトナムでは今年、西暦1月31日が旧暦の正月元旦であった。田舎のある人は故郷に帰るので街は静かになるが、田舎の家々には子や孫たちが帰ってきて賑わいを見せる。日本の正月と変わらない風景だ。
年初のこの時期に昨年のベトナムの経済をふりかえってみたい。
産業別のGDPの寄与率は、農林水産業が0.48ポイント、工業が2.09ポイント、サービス産業が2.85ポイントとサービス産業の寄与率が高い。ただ、二次産業の加工製造業部門に限ると、2012年に5.80%だった成長率が、2013年には7.44%という高い成長率を示し、また、建設業もGDPにおける比率は高くないものの3.25%(2012年)から5.83%(2013年)と一昨年より高い値を示し、2013年度の経済成長の積極的な要素となったとしている。
2013年12月ハノイで行われた「ベトナム開発パートナーシップフォーラム」でグエン・タン・ズン越首相は2013年のGDPは1,760億米ドル(約17.6兆円)、一人当たりのGDPは1,960米ドルに達したと発表した。
農林水産業は昨年、干ばつや塩害などの天災による生産量の低下に加え、国内外の消費市場が狭まる一方、特に畜水産用の物資、原料の価格高騰によって成長が阻害されたため、振るわなかった。
工業生産において2013年は特に加工製造部門で明確な復調の兆しがあったとしている。全工業生産指数では年間で5.9%と予想され、2012年よりも高かった。
商業、サービス業および輸出入業においては多くの試練に直面し、小さくない影響を生産販売にまでもたらしていると指摘し、小売・消費サービスの売上は2012年に比して12.6%の増加だったが、価格の要素を除いた成長率としては過去4年間で最低の成長率だったとしている。
昨年ハノイにはロイヤルシティとタイムズシティという大規模マンション群の地下に巨大なショッピングモールが次々とオープンしたが、オープン当初は多くの人で賑わうものの、数か月経つと閑古鳥が鳴くといった状況で、消費の落ち込みは実感されるところだ。
外国直接投資(FD))においても、2013年12月15日の時点で、216億米ドルと予測され、前年比54.5%もの増加となっている。新規の登録許可が1,275件、143億米ドルで前年比70.5%増、また従来のプロジェクトに対して追加に登録されたものは、472件、73億米ドルで同30.8%増となっている。実行ベースでは115億米ドル、2012年に比較して9.9%増となり、引き続き堅調だ。
外国直接投資の新規登録許可を国別にみると、韓国が37.5億米ドルで1位、以下シンガポール(30.1億米ドル)、中国(22.8億米ドル)、日本(13.0億米ドル)、ロシア(10.2億米ドル)、香港(6.0億米ドル)、台湾(4.0億米ドル)と続いている。ここでも韓国のプレゼンスは強まっている。
輸出入は輸出が1,322億米ドルで、輸入は1,313億米ドルとわずかながらだが、出超となった。ただし、輸出の伸び率は前年比15.4%で、2011年(同比34.2%)と2012年(同比18.2%)より低い点が気にかかる。
また輸出入とも外国投資企業によるものの割合が増加する傾向があるのも特徴だ。2013年の輸出では外国投資企業によるものが61.4%を占め、前年比22.4%も増加している。また、対する輸入も外資企業によるものが56.7%、前年比24.2%増となっており、外資に依存せざるを得ない傾向にあることも特徴的だ。
この輸出金額のほぼ98%がサムスン電子のベトナム北部・バクニン工場1社の製品であるというから驚く。このバクニン工場は2009年末にサムスン電子が25億米ドルを投じて設立した工場で、主に携帯電話とその部品を生産している。工員数は4万人、国営石油グループ(PETROVIETNAM)に次ぐ、ベトナム第二位の大企業である。
次いで繊維製品が179億米ドル(前年比18.6%増)、電子・コンピュータ製品及びその部品が107億(36.2%増)、靴サンダルが19億(27.6%増)と続く。
輸入は、品目別に見ると機械・設備・用具・部品類、電子・コンピュータ製品と部品、生地・縫製副資材、電話及びその部品などの増加が著しい。ベトナムでは裾野産業が未発達のため、輸出のために国内で生産できない部品や原材料をすべて輸入に頼っている。輸出を増やそうとすると、原材料や部品の輸入が増えるという現実がある。
輸入を国別にみると、中国が最大の取引国で、368億米ドルであり、前年比で26.7%にもなる。上記の輸出のための輸入品の多くが中国製だ。東シナ海での領土問題等、ベトナムと中国は外交的・軍事的には対立があっても、経済的にはベトナムが中国に一層依存せざるを得ない状況にある。
消費者物価指数は、2013年を通じて平均6.6%と、9.21%だった一昨年と比べてもインフレがおさまってきていると実感できる。しかし、これがベトナムの景気が悪いための結果だともいえるので、嬉しさ半分というところだろうか。
労働人口における失業者数は全国で2.2%、都市部では3.58%、農村部で1.58%と発表された。2012年度はそれぞれ、1.96%、3.21%、1.39%だったので、かなりの増加となっている。特に気になるのは15歳から24歳までの若年層で、全国で6.36%、都市部で11.11%、農村部で4.87%とかなりの高率となっていることである。景気の悪影響が雇用、特に若年層に現れている。
多少明るい兆しが見えるとはいっても、内実は厳しいものがある。EUの金融・財政不安や中国の金融問題に再び火がつくと、今年のベトナム経済にも悪い影響を受けざるを得ない。ベトナムで暮らし、生計をたてるものとして、ベトナムの経済の行く末に注意をしたい。(了)
新妻東一 2014/02/04
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