

大腸癌のうち,直腸癌が50〜60%を占めます。残りの結腸癌の発生部位はS状結腸,上行結腸の順に多いです.加齢と共に増加し60〜70歳代をピークとなります.本症の多くは大腸ポリープ(とくに腺腫)およびポリポーシスに由来すると考えられています。組織学的には腺癌が90%を占め,大部分は高分化,中分化型です。肉眼的には胃癌と同様にボールマンの分類が利用され,この1〜4型と表在型0型,壁外性進展の特殊型5型の6型に分けらます.転移はリンパ行性,血行性,腹膜播種性があるが.血行性による肝転移が比較的多くみられます。 ![]()
大腸上部に発生した癌では自覚症状が乏しく,腹痛・貧血・腹部腫瘤触知で発見されることが多いが,大腸下部のS状結腸や直腸発生の癌では症状が認められやすく肛門出血を比較的早期に気付くことが多いです.
診断は注腸造影法および大腸内視鏡下の生検biopsyまたはポリペクトミーpolypectomyからの組織診によりなされます.血清CEAの測定は進行癌の存在,進展度に参考となります.末期癌を除いては外科的切除が最も成績がよく,近年は肝転移に対しても積極的に切除が行われます.また化学療法や放射線療法,免疫療法の補助的合併療法も行われます。切除不能のものでは,姑息手術として腸吻合術,人工肛門造設術を行うことがあります。なお,隆起型の早期癌である腺腫内癌に関しては,粘膜内(m)癌はポリペクトミーで治療が完了し,粘膜下(sm)癌ではリンパ節転移や癌遺残の危険がある症例に対して腸切除が追加されます。
A.術式選択:術前に以下のように診断して、術式を決めます。
M(粘膜)、SM(粘膜下層)、MP(固有筋層)、SS(漿膜下層)

ただし、術前診断でリンパ節転移が明らかな場合は開腹大腸切除術をする。
また、大開腹手術の既往があるときも開腹大腸切除術を選択する。
B.早期癌におけるリンパ節郭清の選択
リンパ節転移の可能性がきわめて低い病変で、技術的に内視鏡的切除の対象とならない病変:D1
内視鏡的切除の結果、リンパ節転移の危険因子が組織学的に判明している病変:D1+α上記以外の病変:D2
T.直腸癌
A. 術式選択
Rs:腹腔鏡下前方切除、Ra:大きさ3cm以下では腹腔鏡下手術、それ以上は開腹前方切除:
Rb:開腹前方切除または腹会陰式直腸切断術
Rb,AW2cm未満
SM3まで上記と同じ(腹腔鏡下直腸切断)
MP以深:腹会陰式直腸切断術
B.側方リンパ節郭清の選択
Rbで進達度がMP以深、Rbでまたは術前もしくは術中にリンパ節転移の疑われるものに側方郭清を選択する。
U.術後補助化学療法
A.対象リンパ節転移を伴った大腸癌を対象とする
B.内容
TS1 2年間経口投与または5-FU(UFT)+LVを4クール施行後にフルツロンまたはUFTを1年間内服
当科経験数:750例(1992年12月より現在まで)。
術後入院期間は8日から12日。
| 経験数 | 750例 | 1992年より |
| 80例 | 2014年1年間 | |
| 開腹移行 | 2.6% |
腹腔鏡下大腸切除術は、初期のころは、大腸内視鏡によって摘除できないような腺腫や早期癌に対して施行されていた。しかし、結腸進行癌に対しても症例を選択し技術を習得すれば、通常の開腹手術と同じ範囲のリンパ節郭清を施行することができるようになりました。
本術式には、術創が小さく創痛が軽い、また術後の歩行開始時期、排ガスの時期、炎症性サイトカインの上昇が少ない、退院の時期などが早いという利点があることはすでに報告されています。一方、問題点としては、高度の手術手技を要する、手術時間がやや長い、器材の費用がかかる、などが挙げられます。
本術式を施行するにあたっては、この術式に適する患者の条件やこの術式の適応となる疾患について検討することが重要です。手術適応としては、広範囲な癒着が予想されるような複雑な開腹手術の既往がないこと、高度の肥満体でないこと、病変が直径6cm以上でないこと、病変の部位が下部直腸でないこと、他臓器浸潤がないこと、などの条件が揃えば、腹腔鏡補助下手術で第2群、第3群までのリンパ節郭清が可能である。適応のないものはもちろん開腹手術で根治手術を行う。 大腸進行癌に本術式が適応となるか否かに関しては論争の多いところであるが、症例を的確に選択し本手術の技術に習熟すれば、開腹手術と同様の十分な範囲のリンパ節郭清を施行して、根治性のある手術を施行することができると考えている。
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1)回盲部切除と右半結腸切除術
気腹後、スコープ用の臍部トロッカーの他、左右季肋下、左右下腹部にトロッカーを設置するが、さらに心窩部や恥骨上部に追加することもある。病変部の位置確認は術前大腸内視鏡で病変部近くをクリッピングし術中レントゲン透視で行う。体位は右側高位がよく、さらに回盲部の操作時は頭低位、肝弯曲部付近のときは頭高位とする。盲腸下方そして回腸末端を後腹膜から丁寧に剥離・授動し、上行結腸、肝弯曲部に至る。右半結腸の間膜を後腹膜から十分剥離する。
この際、十二指腸と右尿管の走行には注意する。また、後腹膜などから出血したときは圧迫止血でゆっくり対処した方がよい。次に、回盲部付近の腸間膜を右外下方に引くと腸間膜を透し回結腸動脈が太い索状物として同定できる。これを注意深く剥離していき同血管の根部を露出、double clippingのもと切離する。次に、右半結腸切除では右結腸動脈と中結腸動脈の右枝を切離する。肥満例などでは血管剥離には超音波メスを用いることもある。横行結腸の切離線を決めた後、横行結腸から大網を剥離する。この剥離にはハーモニックスカルペル(LCS)を使用している。右側腹部のトロッカー創を約5cmに広げ切除する結腸を創外に引き出す。切除後、吻合を行い腹腔内に戻す。小切開創を縫合閉鎖し気腹を再開する。洗浄し出血のないことを確認後、ドレーンを留置する。
2)横行結腸切除
頭高位で、トロッカーはダイヤモンド型、すなわち臍部、右左季肋部そして心窩部の4ヵ所が基本である。早期癌ではあまり長く腸管を切除しないので、通常は肝弯曲部や脾弯曲部を完全に剥離しなくてもよい。
まず、LCSを用い胃結腸間膜を広く切離する。次に横行結腸間膜を挙上し、引き伸ばすと中結腸動脈の右枝と左枝の走行がわかることが多い。D1郭清では普通左枝の根部を露出し切離結紮する。もちろん進行癌やリンパ節転移があったときは、腹腔鏡下では中結腸動脈周囲の郭清が難しいこともあるので特にリンパ節転移のあるものでは開腹移行を躊躇すべきでない。切除腸管の剥離、授動が十分であることを確認後、上腹部に小切開をおき体外に引き出し切除、吻合を施行する。
3)S状結腸切除術・直腸前方切除術
截石位、頭低位で左骨盤部をやや高くする。臍部のほか、下腹部と臍の高さで左右腹直筋鞘の外縁にトロッカーを計5本挿入する。S状結腸を内側に引き左外側の腹膜と腸間膜の癒着部を電気メスで剥離する。内側でS状結腸を扇状に引き上げ腸間膜を進展させると下腸間膜動脈(IMA)の走行が確認できる。根部近くで漿膜を切離しIMAを露出する。D3郭清ではIMAの根部で切離する。D2は左結腸動脈が分岐した直下でIMAを切離する。D1+αはS状結腸動脈を分岐した直後に切離することにしている。
S状結腸間膜を肛門側のS状結腸切離線に向け切離した後、自動縫合器を用いS状結腸を切離する。左下腹部トロッカー創を広げた後、口側断端を把持し体外に引き出す。腫瘍を含むS状結腸を切除後、anvil headを断端から挿入しタバコ縫合をかける。これを体内に戻し、切開創を縫合閉鎖、再気腹する。経肛門的に28-32mm径の自動吻合器本体を断端まで静かに挿入する。断端からスパイクを突き出し貫通させ、これとanvil headを合体させ吻合する。