胃粘膜下腫瘍は、その起源から消化管間葉系腫瘍として、筋原性腫瘍、神経性腫瘍、そしてGISTを含むそれ以外の腫瘍に分類されます。「それ以外の腫瘍」の中で、c-kitという遺伝子を発現するもの、あるいはそのような腫瘍と区別できないもの(例えば、KIT蛋白の存在は証明できないが、平滑筋や神経鞘への分化も証明できず、かつCD34等の特異的抗原が認められるもの)が、GISTと定義されています。

切除可能であれば外科治療が第一選択となります。とくに2cmから5cm大のものは腹腔鏡下手術の格好の適応となります(後述)。 切除困難症例に対して、または術後化学療法としては、チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブ(imatinib,グリベック)が投与されます。イマチニブによるKIT蛋白の阻害によりGISTの増殖が抑制されます。 平滑筋腫瘍、GISTなどの胃粘膜下腫瘍は悪性例であっても大きくなければリンパ節郭清を要しないものが多いことから腹腔鏡下胃部分切除術の格好の適応とりまする。以下、その適応と手技を中心に述べることにします。

T 適応
胃粘膜下腫瘍の質的診断はX線・内視鏡・超音波検査、CTさらには超音波内視鏡検査を駆使しても不確実な部分が多いです。また、ボーリング生検による診断も出血・穿孔などの危険性が高く、生検材料も免疫染色などの特殊染色を用いても診断困難な場合が少なくありません。その大半を占める平滑筋腫瘍、GISTの場合には経過観察による発育速度の判定が良悪性の鑑別にに有用である1)ことが指摘されているが、小さな腫瘍では経過観察が許されるものの、最大径が3cm以上の腫瘍では安易な経過観察は慎むべきである。われわれは充実性の胃粘膜下腫瘍に対する治療方針として、腫瘍が2cm未満のときは経過観察している。2cm以上5cm未満ではその手術成績から局所切除で十分と考え腹腔鏡下胃部分切除手術を第1選択としている。5cm以上のときは肝転移、腹膜播種やリンパ節転移の可能性もあることから胃癌開腹手術に準じた手術を行うこと原則としています。
腫瘍が噴門や幽門近傍にある場合は局所切除でそれらの機能を破壊したり狭窄をきたす危険性があり開腹胃切除が選択されるべきです。ただし、胃内型の場合は腹腔鏡下胃内手術も有効な手術法となることがあります。

U 手術手技
1)体位とトロッカーの位置
手術は全身麻酔下で行い、患者の体位は截石位で頭高位がよい。まず臍上部にトロッカーを設置しスコープ用とする。標本の摘出もここから行う。気腹を行いCO2圧は10mmHgに維持する。第2のトロッカーは心窩部に肝圧排鉗子用のものを挿入し、肝とくに外側区域を頭側に圧排し視野の展開を行うのに使用する。さらに右季肋下に術者の左手鉗子用、そして左季肋下に術者の右手用のトロッカーを設置する。胃粘膜下腫瘍の大半を占める平滑筋腫瘍は胃体部から穹窿部にあるため、通常左季肋下のトロッカーを12mm径とし自動縫合器をここから挿入することが多い。術者は股間に位置する。

2)手術手技
まず病変の部位を確認するが、胃が空虚であれば通常bimanualに鉗子で触診すれば腫瘤を発見することは容易である。前壁の病変では左手鉗子で病変部近くの胃壁を挙上しながら自動縫合器で腫瘤近くの胃壁を切離していく。自動縫合器にはEndoscopic linear cutterとEndoGIAがあるが、腫瘤周囲の余分な胃壁の切除を避けるには30-35mm長のものを使用し2、3回に分け胃を切離する方がよい。切除によってひどい変形や狭窄が起こる危険性のある症例では術中胃内視鏡で内腔を確認しながら自動縫合器をかけていく。切除線を胃の長軸か短軸方向にするかも考慮されなければならない。腫瘤が大弯や小弯にかかっている場合は小網や大網を胃壁から剥離する必要がある。後壁に病変があるときは大網を剥離後、大弯線の胃壁を挙上して後壁の露出を行わなければならない。以前は血管処理に際し、クリップと電気メスによって丹念に止血しながら剥離していたが、現在はハーモニックスカルペル(laparosonic coagulating shears, LCS)を用いれば比較的容易に無血的に剥離可能となった。切除標本はエンドパウチなどの袋に入れ回収する。腫瘍を腹腔内で破壊しないよう十分注意しなければならない。

腹腔鏡下胃内手術は早期胃癌手術時とほぼ同じ手技で行われるが、核出術になりがちであるために鉗子で直接腫瘍を掴むこともあり腫瘍の破裂が起こる可能性がある。笹子らは播種による再発があるため核出術はすべきでないと述べており、胃内手術では十分に注意しなければならない。

V 自験例
術前診断で悪性を疑ったが最大径5cm未満の胃粘膜下腫瘍5例に本手術を施行した (平成19年2月現在で25例になっています)。平滑筋肉腫は4例で、胃内型2例、胃内外型1例、胃外型1例で、部位は体上部前壁2例、後壁1例、胃角部前壁1例で、大きさは最小25mm径から40mm径までであった(表1)。いずれも、細胞密度・核分裂像などからlow grade malignancyと診断された。神経鞘腫の1例は胃体下部前壁にあり胃内外型で大きさは33mm径であった。手術は、胃部分切除術を4例に、胃内手術を1例に行った。手術時間は平均約2時間で、術後入院は平均10日であった。症例3を図4に示す。摘出標本は胃内型で、最大径は35mmであった。HE染色では大型で長方形の核をもつ細胞が一部、索状に増殖していたのが観察された。細胞密度が高く核分裂像が散見されたが、細胞異型は少なく、良悪性境界病変と考えられた。補助診断としてKi-67染色を行ったところ、陽性細胞は200倍1視野平均で45個と多く認められ平滑筋肉腫と診断された。手術時間は76分、出血も軽微であった。2日目に排ガスがあり経口摂取を開始でき、術後入院期間は8日であった。