おとーりについて

宮古の”おとーり”とは?


おとーりあれこれ


宮古島には、”おとーり”というものがある。
おとーりを語らずして宮古は語れないのだ。
さて、おとーりとは、宮古独特の、”お酒の飲み方”のことである。
沖縄でお酒といえば、泡盛。宮古の人は、実によく酒を飲む。
泡盛はタイ米で作った、焼酎に近い酒で、一般に市販されているものは、アルコール度 25度から、40度くらいが多い。それをたいていは、10度くらいの水割りにして飲む。私は以前、普通水割りにするものとは知らずに、ストレートで飲んで、なんて臭い酒だろうと思っていた。
宮古では、この水割りを、ピッチャーに作り、ドバドバとグラスに注ぐ。なんと大胆で合理的な方法だろうか。
そして、酒の席で、誰かが「まわしぇ(回せ)」と言い出すか、全く前ぶれなしに誰かが立ち上がり、片手にピッチャー、片手にグラスを持って、”ええ、本日は”なんて言い出す。なんだなんだ?と思っていると、立ち上がった人は、うんたらかんたら今日はめでたいだの、久しぶりにメンバーがそろっただの、一通り演説した後、”おとーり回します”と言うと、持ってたグラスの酒を飲み干す。
すごいなーなんて感心してる場合ではない。飲み干すとすぐ、ピッチャーの酒をグラスに注いで、隣の人に差し出す。隣の人は受け取って飲み干し、ピッチャーを持ってる人にグラスを返す。するとまた、すぐグラスを酒で満たし、さっきの人のさらに隣へと差し出す。この反復運動がテーブルを一周すると、最後に酒を飲んだ人が、隣の人(”親”とよばれる、おとーりを回した人)のピッチャーを取り、親の持ってるグラスに酒を注ぐ。親は”どうもありがとうございました。では次、○○さんにつなぎたいと思います”なんて言ってグラスを空け(もちろん腹におさめる)、ピッチャーと、今テーブルを一周したグラスを、そのまま○○さんに渡す。
これが、延々と続くのだ。
全員が親をやったら終わる時もあるし、2回目に突入することも少なくない。おとーり以外の自分のグラスは、氷が溶けて薄くなってても誰も気にしない。

飲み屋に行くと、普通のグラスの他に、”おとーりグラス”とピッチャーは、たいてい用意されている。おとーりグラスは、ショットグラスか、もう少し大きいものが多いが、規定はない。自分の普通のグラスでそのまま回す無茶な人もいる。これは怖い。こういう人は結構自分以外の人にも飲むことを強要するのだ。
おとーりの酒は多かったら残す人ももちろんいる。仲間内で、酒に弱いとわかっていれば、初めから少ししか注がない思いやりを示す人も多い。だがたまに”俺の酒が飲めないのか”的な人がいると、大変な迷惑である。あるいは先輩のおとーりだから、なんていって無理して飲む人がいる。たいていは単に調子に乗りすぎて飲みすぎるだけの人が多いが、宮古の夜は、酔っ払いが絶えない。

おとーりはそもそも、少ししかない貴重な酒を、平等に分けあって飲むために始まったんだという説がある。
ピッチャーで作れば濃さにも差がないし、全員のコミュニケーションもとれ、優れた飲みかただと言う人も多い。演説をしなければならないから、宮古の人はしゃべりのうまい人が多いのも事実だ。しかし、酒に弱い人は友達があまりできないとか、酔っ払いの多さから、おとーりを禁止すべきだと言う人も多い。若いうち(中学生とか、下手したら小学生)から飲むきっかけは、大人が飲みすぎだからだというのも、おとーり反対派の意見だ。
しかし、議会でおとーり禁止を可決して、”では可決を祝っておとーり回します”と言ったとか言わないとか、とにかく宮古におとーりが、とてつもなく根付いているのは確かで、いまさら、おとーりは、なくならないだろう。
要は回す人のモラルの問題としか言い様がない。私は、おとーりを”すばらしい文化”と誇れるものにして欲しいと願っている。

さて、おとーりにはいくつかのルールがある。
まず、回す方向だが、”大漁まわり”と”豊作まわり”があり、まあ、漁師さんとか、海にまつわる仕事をしている人は大漁まわり、農家とかの人は豊作まわりが普通らしい。大漁まわりは時計回り、豊作回りは反時計回り。豊作でも大漁でも、あんまり関係ない人は、両隣を見て先輩から、とか、別に気にしないとか、いろんな人がいる。
今はあまりうるさくなくなったが、回す時、右手でグラスを回さないと失礼に当たるとか、昔は言ったらしい。ピッチャーを途中でテーブルに置いてはいけないという人もたまにいる。だから私は、ピッチャーは最後まで左手に持ったままにするように心がけている(まあ、あまり回す機会はないのだが)。

回す時のグラスに対する酒の量を、宮古の地名で表す言い方があって、おもしろいので紹介しよう。
グラスの上の方まで注ぐと上野線、グラスの真ん中くらいは城辺(ぐすくべ)線(これは、宮古の真ん中を通ってる道路だから。他のは言葉の響きだけでついている)。下の方なら下地(しもじ)線、こぼれるほどすれすれまで入れるのは平良(ひらら)線、受け取った時、少ないと思ったら多良間(たらま)線、そして、自分が親の時、自分だけ少し入れたりすると、時に”池間線”と横から注意がくる。

これで、おとーりについて私が知っていることは、おしまい。最後に一言。
酒は飲んでも飲まれるな

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