
戦 士 の 道
応用解釈学ジャーナル
Number 1, Volume 1
ロサンゼルス, 1996年1月

解
釈学とは何か?
元々、解釈学(Hermeneutics)は、神聖なテキスト、本質的には聖書のテキストを解釈する方法だった。その後、それは文学的テキストやテキスト
一般の翻訳を包含した。現代では、それは、歴史・社会・心理等の我々の世界の様相を解釈するという哲学的方法となっている。
それが方法と呼ばれるのは、調査のトピックに系統立ててアプローチするやり方の、仕方あるいは流儀だからである。哲学的方法としての解釈学は我々の世界の
異なる様相を構造化する基礎を調査し、前提条件を置かずに探求する。
この応用解釈学のジャーナルの中で提案するものは、メキシコのヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファン・マトゥスにより叙述された立場を取り、そして彼や
他の呪術師が社会・歴史・心理などの彼らの世界の様相を彼自身の解釈したようなやり方で記述する。
このように哲学的方法の純粋に抽象的な考えとは対照的な呪術師の実用的な考え方を強調することを我々は意図しているのであり、今後、我々はそれを応用解釈
学(applied hermeneutics)のジャーナルと呼びたい。

哲
学の実用的方法論としての戦士の道
戦士の道の前提の1つは我々の問題のすべてにおいて議論されるだろう
「我々は知覚する者(perceptors)である」。ドン・ファン・マトゥスが弟子に教えた形式において、これは戦士の道の第1の前提である。それは、
「はげた人には髪がない」というようにわかりきったことを再び主張する同語重複の陳述のように思われるかもしれない。しかし、それは我々がここに持ち出し
たような同語重複ではない。呪術師の世界では、我々が知覚すること(perceiving)で方向付けられている有機体であるという事実を指しているので
ある。我々は知覚する者である。そして、それは、呪術師によれば、我々が我々の安定性を打ち立て、世界の中で我々を方向付ける唯一の源泉である。
ドン・ファン・マトゥスは、有機体としての人間は、不幸にも知覚に偽った見せかけを与える途方もなく巧妙な工作を実行する、と弟子に言った。人間は本当の
エネルギーの流入を感覚データに変え、呪術師が人間の形(the human
form)と呼ぶ厳密な解釈システムに従ってそれを解釈するのである。純粋なエネルギーを解釈するというこの不思議な行為は、偽りの見せかけ、我々の解釈
システムが存在のすべてであるという奇妙な信念を起こす。ドン・ファンは、我々が木として知っている木は知覚よりも解釈であることを説明した。我々が木を
扱うために必要なことは、我々にほとんど何もわからせないようなほんの一瞥だけであると彼は言った。残りは、彼が意図の呼出し(the calling
of intent)と説明した現象である。木の意図とは、すなわち、我々が木と呼ぶこの特定の現象に適する感覚データの解釈である。
そしてちょうどこの例と同じように、我々にとっての全世界は、無数の解釈によって構成されており、そこでは我々の感覚は最小限しか働かない。すなわち、我
々の視覚的な感覚が宇宙であるエネルギーの流入に触れるだけであり、そして最小限にそうするだけである。呪術師は、我々の知覚活動の大部分が解釈であると
主張する。人間は世界を作成するために真の知覚の最小限のインプットしか必要としない有機体であり、つまり、解釈システムに提供するに足るものだけを知覚
するのであると彼らは主張する。我々は知覚する者であると断言することは、我々を我々の起源に押し戻し、我々を知覚するという我々の本来あるべき立場に押
し戻そうとする呪術師の企みである。

戦士の道につ
いての質問
チャックモールスとは何者か?
特によく尋ねられる質問の一つが、これまでにセミナーやワークショップで教えているカイリー・ルンダル、レニー・ムーレズそしてナイー・ムーレズの3人の
人間についてである。彼女たちは「チャックモールス(chacmools)」と呼ばれた。これは、メキシコのトゥラやユカタンのピラミッドで発見された大
量の人物像に与えられた名前に由来する用語である。考古学者はそれらの大量の重い横たわる人物像をピラミッドの扉に設置された香炉に分類したが、ドン・
ファン・マトゥスは、それらが、力の場所としてピラミッドを保護した戦士の守護者を表していると信じていた。
チャックモールというマヤ族の町で初めてこれらの像が発見されたので、それらは「チャックモール」と名付けられた。上に述べた3人は戦士の守護者のこの一
般的なカテゴリーに適合する。しかし、彼女たち3人が彼女たち自身によって戦士のこのカテゴリーを構成していると信じることは誤りである。彼女たち3人
は、これまで、戦士の守護者という考えを維持する責任を負った人たちである。守護することの責任を受け入れる人は誰でも、事実上、チャックモールになる。
カルロス・カスタネダは、自由という企ての名目上の指導者として、我々全てのチャックモールであり、そして同じ基準に従えば、キャロル・ティッグスもそう
である。
それにもかかわらず、カイリー・ルンダル、レニー・ムーレズそしてナイー・ムーレズは、古代メキシコに住んでいた呪術師により発見され発達したマジカル・
パスと呼ばれる動作を日常生活で初めて人々に適用する重荷を引き受けた。また、これらの3人の女性はこれらのマジカル・パスを一般大衆にもたらすことを喜
びとし栄誉とする。そして、その行為は彼らを解放へ導き出すべきであり、日常生活の行為を支配する自尊心に彼らを束縛しているものをより遠くへ切り離すべ
きである。理想的には、テンセグリティはその実践者に自由をもたらすべきであり、我々のセミナーとワークショップで参加者に知られている3人のチャック
モールスはこの状況から利益を得るべきである。しかし、我々がマジカル・パスのような秘密主義のものを公開することがもたらした目新しさは予期せぬ落とし
穴を持っていた。
1995年12月9日〜10日のセミナーとワークショップで聴衆にありがとうとさよならを言った後、彼女たち3人は戦士の道という多重構造の事柄の別の層
へ進むだろう。彼女たちは確定できない可能性に対して彼女たちの修練を試すために分かれるだろう。

テ
ンセグリティ・ログ
テンセグリティとは何か?
テンセグリティは、スペイン人征服以前の時代にメキシコに住んでいたインディアンの呪術師が発展させたマジカル・パスと呼ばれる動作の現代版である。
スペイン人征服以前の時代とは、カルロス・カスタネダ、キャロル・ティッグス、フロリンダ・ドナー・グラウそしてタイシャ・アベラーに古代メキシコの
シャーマンたちの認識する世界を伝えたメキシコ・インディアンのシャーマン、ドン・ファン・マトゥスによって用いられた言葉であり、それは、ドン・ファン
によれば、7,000〜10,000年前のことだった。
ドン・ファンは弟子たちに、そうしたシャーマンたちが、推し測ることのできない実践を通して、人間は宇宙の中の流れとしてエネルギーを直接的に知覚できる
ことを発見したと説明した。言い換えれば、それらのシャーマンたちは、ドン・ファンによれば、我々の誰でもが、エネルギーの流入を我々という有機体に関連
する知覚データへ変換するシステムを、一瞬の間、破棄できると主張したというのである。流入するエネルギーの知覚データへの変換は、宇宙のエネルギーの流
れを我々の知る日常生活の世界に変換する解釈のシステムであるとシャーマンたちは断言する。
ドン・ファンは、さらに、それらの古代のシャーマンたちは、彼らが見ること(seeing)と呼ぶエネルギーの直接的な知覚をひとたび確立してしまうと、
自分たちにもそれを適用することに精通するようになったと説明した。つまり、彼らは、そうしたいと思う時にはいつでもエネルギー場の集成体としてお互いを
知覚した。そのような仕方の中で、人間は見る者(seer)に大きな輝く球体として現れる。その球体は両手を広げたほどの大きさである。
人間をエネルギー場の集成体として知覚する時、肩甲骨の高さで腕の長さ後ろに離れたところに強く輝く点を知覚することができる。この輝く点を発見した古代
の見る者たちは、そこで知覚が組み立てられているのだと断定し、それを集合点(assemblage
point)と呼んだ。彼らは、見ることによって、その輝きの点について、その場所が人類に共通で、そこに宇宙全体を構成する輝く繊維状の無数のエネル
ギー場が集まることに気付いた。そこに集まるとすぐに、それらは、有機体としての人間が利用可能な感覚データとなる。この感覚データに変換されたエネル
ギーの利用はそれらのシャーマンたちにとって純粋な魔法とみなされた。エネルギー全体が、集合点によって、有機体としての人間が生きたり死んだりする実際
の、全てを含む世界に変わるのである。それらのシャーマンたちは、純粋なエネルギーの流入を知覚可能な世界に変える行為は解釈のシステムであると考えた。
もちろん、彼らにとって、あるいはエネルギーに注意深い我々の中のある人たちにとって衝撃的なことではあるが、彼らは、集合点が純粋なエネルギーの流入を
感覚データに変換することによって知覚が組み立てられる場所であるだけでなく、感覚データの解釈(interpretation)が起こる場所でもあると
いう結論に達した。
次に彼らにとって衝撃的だったのは、眠っている間に集合点がとても自然にそして目立たないようにいつもの位置から移動するのを観察したことだった。大きく
移動するほどそれに伴って夢も奇妙になることを彼らは発見した。こうした見ることによる観察から、それらのシャーマンたちは集合点の意志的な移動の実用的
な行為へと飛躍した。そして彼らはその最終結果を夢見の技法(the art of dreaming)と呼んだ。
それらのシャーマンたちはこの技法を、ふつうの夢の実用的な利用であり、集合点を意のままに移動し、そしてまた意のままに新しい位置を保持することによっ
て他の世界への入口を作り出すものであると定義した。それらのシャーマンたちは夢見の技法の実践を理性と宇宙の中の流れとしてエネルギーを直接的に見るこ
とを入り混ぜて観察した。彼らは、いつもの位置にあると、集合点は宇宙を構成するエネルギーの繊維の所定のごく一部を集める点であるが、しかしもし集合点
が輝く卵の範囲内で場所を変えると、異なるエネルギー場のごく一部がそれに集まり、新たな感覚データが流入する結果となることをはっきり理解した。いつも
のものと異なるエネルギー場が感覚データに変わると、それらの異なるエネルギー場は異なる世界として解釈されるのである。
それらのシャーマンたちは夢見の技法の実践に夢中になった。それを実践するうちに、彼らは、今までになく肉体的に勇敢で幸福な状態を体験した。そして、そ
うした状態を再現することに夜通し努力する中で、彼らはそれらが身体のある動作に伴って繰り返されることを見つけ出した。彼らの努力は、そうした動作を数
多く発見し、そして発展させることとなった。彼らはそれらをマジカル・パス(magical passes)と呼んだ。
古代メキシコのシャーマンたちのマジカル・パスは彼らの最もすばらしい財産となった。彼らはそれらを儀式や謎で取り囲み、秘伝を受けた者だけに極秘のうち
にそれらを教えた。これはドン・ファン・マトゥスが弟子たちにそれらを教えたやり方だった。彼の系統の最後のリンクである彼の弟子たちは、マジカル・パス
についてこれ以上秘密にしておくことは、彼らの仲間の人たちに利用できるようドン・ファンの世界へ招き入れるという関心事とは反対するものであるという結
論で一致した。そのために、彼らはマジカル・パスを覆い隠された状態から救い出す決心をした。この流儀で、彼らはテンセグリティ(Tensegrity)
を作り出した。それは「各々の構成部材が最大限に効率的で経済的に働くように連続的な引張の構成部材と不連続の圧縮の構成部材を使う骨格構造の特性」を意
味する建築学の専門用語である。
これは最も適切な名前である。なぜなら、マジカル・パスの2つの推進力を暗示する緊張(tension)と健全(integrity)という2つの言葉が
混じり合っているからである。

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