ベン・トー 5巻
(集英社スーパーダッシュ文庫 アサウラ)
あー、あー。ただいまマイクのテスト中。アメンボ赤いな、アタタタタ。本日は晴天なり。虎、虎、虎。諸君、私は戦争が大好きだ。テスト終了。では-------聖帝toraboの名において、全てのメガドライバー、土星人、夢箱人に命ずる。本作を読了せよ! これは推薦や懇願ではない。絶 対 遵 守の命令である!! かつて我々が愛したセガが、今も我々の心の内で燃えているセガ魂がそこにある。これ以上一体何が必要だというのだ?
〜あらすじ紹介〜
半額弁当争奪バトルに青春を賭ける佐藤洋たちHP同好会は合宿を終え、地元に戻って日常の争奪戦に精進していた。
そんなある日、佐藤のかつての憧れのクラスメイト、現在芸能アイドルとして活躍する広部さんが転校生として現れる。傍若無人の振る舞いをする彼女に、案の定巻き込まれる佐藤は、徐々に弁当争奪戦から遠ざかってしまう。
さらに、しばしの沈黙を破り、再び立ちはだかる猟犬群たちの乱入で戦闘は激化していき…! 佐藤は「狼」としての誇りを失ってしまうのか!? それとも秋鮭のごとくスーパーに戻ることはできるのかーーー!?
(公式HPより抜粋)
------諸君、「愛」とは何だろうか? それは相手の欠点を無視し、長所だけを賞賛することだろうか。相手の主張を盲目的に肯定し、受け入れ、奉仕することだろうか。相手の個性を無視して自分の理想や行為を押しつけ、望み通りの反応を要求することだろうか。否、断じて否! それは同じ愛でも自己愛である。自分を愛するための道具として相手を利用しているだけである。ならば人を愛すると言うことはどういう事なのか。その答えがここにある。
「あたしと半額弁当、どっちが好き?」
初恋の相手でもあり、片思いの少女『広部蘭』との関係に決着を付けるときの主人公の述懐を読んだとき、涙が止まらなかった。そうなんだよ、俺はセガが駄目な子だって分かってるんだよ。それでもセガが好きなんだよ。空気が全然読めない所も、ちょっとヒットしただけで調子に乗って大コケする所も、得意満面で斜め上にすっ飛んでく作品を作っては空回りする所も、赤字覚悟でハードを作ったりするお馬鹿な所も全部好きなんだ。駄目な子だけど好きなんだよ!!俺はセガがみんなから愛されるメーカーだから好きになったんじゃない。セガが売り上げが高い一流企業だから好きになったんじゃない。ちょっとお馬鹿で、要領が悪くて、だけど”ゲーム”を心から愛するセガが好きなんだよ。例え周りから「サターン? 『FF』が遊べないじゃん。何で買うの?」「セガなんてクソゲーばっかり」「ドリームキャストってまだゲーム出してたの?」「今どきメガドライブを買うなんて変わってるよねー」なんて言われても全然平気なんだよ。ハニカム三重構造の超高張力合金装甲に輪ゴム鉄砲を撃ち込まれるくらい、痛くも痒くもないんだよ。だって俺はセガが好きだから。例え世界中のゲーマーに嫌われたってセガが好きでいられる自信があるから。
そして本作の主人公である佐藤洋も奇しくも同じ結論に達する。だがそれは、あるいは必然という名の運命だったのかも知れない。だって彼は真のセガファンだから。本当に広部を愛するが故に、本当の広部を知るが故に、届かないと分かっている愛情をそれでもなお貫こうとするその姿勢には、紛れもないセガ魂が燃えていたから。だから今巻の彼は、俺にとってどんなヒーローよりも格好良く”主人公”していたと断言しよう。
加えて今回は、待ちに待っていた槍水先輩の魅力爆発の巻でもある。クール&ワイルドなキャラにもかかわらず、実はうっかり属性持ちで可愛い系という、お前はどこの氷炎将軍フレイザードだ、みたいな矛盾に満ちあふれた魅力が堪りません。しかも戦闘においても出番全開。仲間を信じ、折れそうな膝を支え、万に一つの勝機に全てを賭けて最後の戦いに挑む氷結の魔女が奥義、 ”絶 殺 領 域”。爽やかな花の香りに包まれたとき、獲物は己が運命を悟ることになる------逃れられぬ死の大鎌に捕捉された事を!
もちろんゲストキャラも相変わらず癖が強いのが揃っていて、大変に自分好み。ヲタクで変態で女好きでストーカーだけどイイ奴というホブヤーに、牧の”メロン”はもったいなさ過ぎるッ!!………独り言です忘れてください。復讐と執着に暗く燃えながら再登場した狩猟犬・山原と、今回のメインヒロインでありキーマンでもある広部蘭は、まさに表裏一体と言うべきか。捨てられない執着、超えられない目標、そして何より諦められないプライド。全てが上手くいかない逆境の中で、それでも諦めきれずに遠すぎる勝利を追い求め、その先に何かがあると信じて駆け抜けた彼女(彼)を待っていた物は……。う〜ん、いいよね、勝負、友情、そして成長。勝利は人を大きく成長させるが、敗北は時として勝利よりも人を成長させると思う。
そしてあやめが諸葛孔明(海のリハク)ポジションに収まっていたことには驚かなかったが、白粉の転落ぶりには驚いた、というか切なくなってきた。正ヒロイン候補 → ホモ同人作家 → 単なる痴女 → クリーチャー。ここまで来ると転落というよりは墜落だよなー、としみじみ思う。
というわけで。敗北を拒絶し必勝の策を以て挑む男と、敗北を恐れず全身全霊を以て挑む男が激突するとき------過去に囚われていた狼は新生の咆吼を轟かせ、自分に閉じこもっていた鬼灯のつぼみは大輪の花を咲かせる! それはまさに真の覚醒!! これに燃えなかったら何に燃えるっちゅーねん!
個人的評価としてはシリーズ最高傑作。相変わらず絶好調なお馬鹿ノリ、癖が強すぎる登場人物達、見事に収束していく伏線、テーマをこれ以上ないくらい体現してくれる主役達、そして何より燃えるセガ魂。文句の付けようがない内容である。もう一度諸君らに問う、君の胸の内にセガ魂は燃えているか!? 燃えているなら手に取るべし。ええい、燃えていなくても手に取れいッ!! 諸君らを熱くさせる戦いと愛の物語が待っているぞ!!