ベン・トー 7.5巻
(集英社スーパーダッシュ文庫 アサウラ)
 


 本作を以て、アサウラ氏を俺の生まれ変わりと蝶認定する。「お前、まだ生きてるじゃん」というツッコミはパーフェクトスルーの方向性で。今まで生きてきてこれほどシンクロ感を感じた人間はほとんどいないと言っても過言ではない。

佐藤「そう、丸見えより、見えそうで見えないくらいが一番エロいのだ。もう少し、あとちょっと……
そのきわどさが僕らの胸を!! 想像を!! かきたてるッ!!

 
強敵(とも)よ!!-----いやそうではなくて。いやいや本音はそうなんだけど(どっちだ)。頭どころか全身の体毛が禿げ上がりそうなくらい同意したくなるようなジョジョ喋りはおいといて。忘れ得ぬサターンの名作として『パンツァードラグーン・シリーズ』を持ち出してきて熱く語り出した挙げ句、「正しいBGM」の聴き方の講習まで入ってくる辺り(「ぴろろ、ぴろろ、ぴろろ、ぴっ」というサターン基本メニュー画面切り替えの音が聞こえてくるようだ)、彼は本気でものの道理が分かっている漢であるとしか表現しようがない、マジで。以前から分かり切っていたことではあるが、アサウラ氏は筋金入りのセガ信者だ。彼が相手なら俺は三日三晩語り明かせる確信がある、誰が何と言おうとも!!(誰もどーも言わん)。だからこそを俺は言いたい。いや、このHPが存在する限り何万回でも言い続けよう-----全てのメガドライバー、土星人、夢箱人に告ぐ。本作を手に取れ。これは懇願ではない、命令である。心の底からセガを愛する信者(おとこ)の物語がそこにある!!



佐藤「女の子の涙を止めるのは男の務めでしょう?」

レッド「150点だ!! やろうぜ、少年!! 
奇跡を起こすぞ!!

 
本巻の主人公はサラリーマンレッド。異論反論のある奴は前に出ろ。その余りの間抜けさ加減が、もはや道化を通り越してギャグの域に達していたとしても! それでもレッドは格好いい!! 例えあやめに死ぬほど笑われていても、佐藤に勘違いされても、鉄格子付きの部屋にぶち込まれる羽目になっても! それでも彼は格好いい!! いやマジで。もはや社会的には抹殺されたも同様だけどNA! 自分もいつかレッドのような己の格好良さに殉じる漢になりたいものである……社会的に抹殺されたくはないが。



 しかしそのレッドの不遇の反動を受けたかのような"恩恵"を授かった佐藤ではあるが、
冷静に客観的に見るなら変質者だよね、比喩でも誇張でもなく(何が?)。一歩間違ってれば間違いなくとっ捕まってるはずだが、まるで身代わりのようにレッドが捕まっている辺り、浮き世の諸行無常を感じずにはいられない。

 
さとうくん それはふつうに へんたいだよ   じあまり

 思わず一句詠みたくなってしまう程である(だから何が?)。しかし何故日本人はこうも『源氏物語』が好きなのであろうか。それは日本が積み重ねてきた歴史の産物、あるいは大和男児の遺伝子に刻まれたDNAの命令か。思わず歴史考証から遺伝子の偶然にまで思いを馳せてしまいそうなくらい
うらやま-----じゃなかった、けしからん行為である。

 佐藤は確実に手っ取り早く幸せになりたかったら完全なる半身(パーフェクトハーフ)たるあやめとくっついた方がいいと思うが、より苦労して大きな幸せを手に入れたかったら『ちっちゃい先輩』とくっついた方がいいと思う自分は、特殊な性癖の持ち主なのだろうか。いや、おっきい先輩でも良いんだけど、アレはアレで余計な苦労をしそうな気がする。まあ、
あり得ない程に贅沢すぎる三択が用意されている段階で、佐藤は最下層地獄(コキュートス)に堕ちて白粉責めに合うべきだとは思う。



 その他にも今回は面白いエピソードが目白押しで、読者を飽きさせない。特筆すべきはそれぞれのエピソードやキャラをちゃんと連動させて、
生きた一つの「世界」を形作るその力量と言うべきか。出来そうで、これがなかなか難しい。在りし日のHP(ハーフプライサー)同好会の温かい日々、生温くも極熱に冷め切った野郎友達との愛憎、死神(あせび)のささやかなる日常、そしてあやめの意外な(あるいは当たり前な)学校生活など。例の三人は本当に仲が良かったからこそ、破滅が決定的になるしかなかったのだろう、とか。佐藤は良く分かってないみたいだが、お前は本当に恵まれてるんだぞ、とか。あせびはいつも通り、というか命が助かっただけでもめっけものだろう、とか。あやめは何だかんだ言って見るところはちゃんと見てると思うが、佐藤はやっぱり一度氏んだ方がいい、とか。ファンには満足のいく逸品である。もっともその分一見さんにはハードルが高くなっているが、元々○○.5Verはファンブックのようなコンセプトだし、そもそも本編自体がセガ信者が書いてる段階で変なハードルが設定されているようなものだし。何の問題も無い。本作の味が分かる人間とは美味い酒が飲めそうである。




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