『Houston, Tranquility Base here. The Eagle has landed』
 モノクロの中継映像に乗せられた流暢な英語音声。それは太平洋を隔てた米国からではなく、遙か空の彼方に浮かぶ月面より届けられた言葉だった。
 アメリカ合衆国が提唱した宇宙開発計画のひとつ、アポロ計画。1960年代中に人類を月面へ到達させるという壮大な開拓計画は、十度の宇宙ロケット打ち上げと五度の有人宇宙飛行を経て、宇宙船アポロ11号により遂に実現される事となる。
 衛星回線により世界各国へと配信された生中継映像は、文字通り全世界の注目を浴びた。夜空を見上げればいつもそこにありながら、手を伸ばしても決して届かない。地球にとって唯一無二の衛星であるその天体、月。そこへ初めて人が足を踏み入れようとする、その歴史的瞬間への期待と興奮が、いま正に地球全土を包み込もうとしている。
 中継映像が映し出しているのは白い宇宙服姿の人物像。アポロ11号の乗組員であるニール・アームストロング船長だ。さすがに鮮明とは言い難いその映像で、彼は船のハッチを開きハシゴを一段ずつ下りていく。ひとつずつ、ひとつずつ、灰色の地表へと。
 そして着陸船より足を踏み出し、アームストロング船長は歴史的なその一歩を記した。
『That's one small step for man, one giant leap for mankind』
 日本語訳で、「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」 宇宙開拓史に確かに刻まれる有名なその科白せりふが発せられた瞬間だった。
「ちっくしょー……俺だっていつかは行ってやるからな!!」
 その中継の一部始終を身守っていた少年は、喜びと嫉妬と期待とをない交ぜにした複雑な、しかし楽しそうな面差しで中継映像に終止釘付けになっていた。

 時代は1969年、七月十六日。
 地球人類が初めて、三十八万四千四百kmを隔てた月面へ到達した時の出来事。

 物語は地球から八千六百二十七光年距離を踏破するまでに到る時代を舞台とする。



 

 

 

 


流星剣閃 クラウソーラス3

 

 

 

 

 

 



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