LOST CHILD


 さて、諸君は『プロ野球珍プレー好プレー集』という番組を知っているだろうか。そう、いわゆるプロ野球放送の中で、素晴らしいプレイや面白いプレイだけを編集して集めたものである。当然ながらそれは一つの試合を楽しむものではなく、その各プレイの妙味を楽しむものである。

 そして本作『LOST CHILD』もまたそんな感じの作品なのだ。いわゆる
『ヒーロー伝説 燃える&泣けるシーン集』(注:本作はストーリィ作品ではありません)みたいな感じ。とりあえずシナリオがシナリオの体を成していないので、さっぱり理解&感情移入が不能なのである。それだけなら「クソゲー。遊ぶ価値無し。スタッフはクソして寝ろ」の一言で切って捨てられるのだが、なまじ素材としては素晴らしいポテンシャルを秘めていたので、余計にもったいなくて仕方がない。今からその不満点についての個人的な意見をクドクドと書き連ねていくので、本作のファンの方は精神衛生上の理由からここで引き返すことを推奨する。では征くぜ! 野郎ども!! 毒舌ぶった切りだ! YAーーHAーーッ!!




☆シナリオの不備=悪役の不在
 本作のシナリオに関しては
矛盾点&穴&伏線未回収&整合性無視&一貫性不在&説明不足が半端ではなく、最後まで我慢してプレイしたけど結局話はよく分からなかった。だが、百歩譲ってそれはまだ許そう。シナリオが良いに越したことはないのだが、シナリオが多少悪くてもそれなりに話を盛り上げる方法があるのだ-----そう、それは悪役が話を引っ張ること。主人公をどれだけ格好良く描いても、それに釣り合いながら同時に引き立てる悪役がいなければ話は盛り上がらない。逆に言うなら悪役をそれなりの存在感で描けば、必然的にその悪役を乗り越える主人公は輝くのだ……ええい、もうまどろっこしい! 黒いマントを翻しながら高いところに立ち、高笑いをしながら「○○砲を発射せよ!」と叫ぶラスボスを出せば、それだけで話は(ある程度)盛り上がるんだよ!

 だが本作のラスボスである草薙教授には最後まで悪役という印象を受けなかった。なんて言うか……
大物ぶってるDQN?みたいな感じで。「俺は全て知ってるんだぞ〜。全ては俺の手の内だぞ〜」みたいな雰囲気をプンプン匂わせている癖に、その行動原理や価値観や目的などを一切語らないまま敵味方お構いなしにバンバン殺していくので、プレイヤーは完全に置き去りである。「なんでくさなぎはころすのんー?」「ボスだからです」4コマならこれも許されるかも知れんが、これだけ長いADVでこんな対応(↑ホントにこんな感じ)されたらそりゃ感情移入しろって方が無理でしょ。主人公側が好感を以てプレイヤーの共感を誘うのと同じように、悪役は反感を以てプレイヤーの共感や理解を誘わなければ駄目だと思う。彼がしっかりしていればシナリオがここまでグダグダになることはなかったのに……。

 でもまあ、ちょっとだけスタッフを弁護するなら、キャラクターの立ち具合とストーリィ展開に微妙な違和感というか乖離感を感じたから、もしかすると途中でライターが替わった(あるいは別のライターが加わった)のかも知れない。あるいは設定が途中で変わったのか。なんだかそんな不整合性というか不自然さを感じた。だから何か事情があったのかも知れないとは思う。だからといってこの出来が許されるわけではないが。




☆素材殺し-----料理人としては恥ずべきである
 上記で述べたようにシナリオだけで見るならどうしようもないくらいの駄作なのだが、それ以外の要素は光るところがある。特にOPムービー『魂の慟哭』はまぎれもない傑作。
これのためだけに本作を買ってもいいくらいだと思っている。むしろこのOPをいきなり見せられたからこそ余計な期待をしちゃったんだよねー(苦笑)。「ネットじゃ評判良くないけど、もしかして凄く面白いんじゃね?」そう思っていた時期が私にもありました_| ̄|○ 

 またキャラ造形も非常に好み。クールでシニカルなライバル小崎、熱い好漢の颱斗、影を内に秘めた文弥、歪んだお馬鹿ちゃんの清、ニヒルなペドフィリア(笑)嵩など、それぞれ個性的な脇役達が作品を彩ってくれたのは素直に嬉しいことだと思う。もっとも「作品」の方はその恩を仇で返すようにキャラを無駄死にさせていったけどな。馬鹿みたいに。
正直言ってシナリオの穴をごまかすためにキャラを死なせてお涙頂戴で誤魔化したのではないか? と勘ぐられても仕方ないと思う。この愛すべきキャラ達を思うにつけ、返す返すも残念無念で仕方がない。もっともっと……もっと生かすことが出来たはずなのに……。

 あと素朴な疑問なんだけど、OPムービー序盤に出てくるメガネに太眉毛の体育会系っぽいおにーちゃんって、結局本編に登場した? 遂に一度も登場しなかった気がするんだけど? 

 巷では不評の戦闘システムだが、自分は大好きだ。無駄に時間がかかるけど大好きだ。ちょっとアナクロな雰囲気はあるけど大好きだ。苦労して必殺技を決めたときなど、非常に大喜びである。だがそんな自分から見ても結論はこうなる-----
あの戦闘システムは駄目である、と。いくら何でもシナリオのテンポを殺しすぎ。ただでさえ駄目なシナリオを相乗効果で更にタルくしてしまっている。まさに勢いとノリが大事な場面で馬鹿みたいな時間をかけて平気で連戦させるのは流石に常識を疑ってしまう。加えてあの理不尽超絶難易度を見るにつけ、もしかしてスタッフは本作を嫌われ者にしたいのか? と考えたくなってしまうのもやむを得ない。戦う相手によって台詞を変えたり、細かい演出には気を配っているからこそ、余計もったいなく感じる。必殺技燃えるんだけどなー(ため息)。

 音楽はかなり良し。燃えるOPを始めとして、場面場面で燃える曲を使ってくれるので非常によろしい。特にフェンサーvsハンツマン戦で主題歌アレンジのBGMが流れたときには鳥肌が立つほど燃えた-----
戦いには負けたけどな!(涙)。

 テキストは×。言い回しが散文的というか、区切り方が適当すぎてちょっと分かり難い文章というか。しかも視点が主人公(一人称)視点と、他者(三人称)視点がコロコロ切り替わるので余計に状況が把握しづらくなってくる。本当にプロのライターさんなんだろうか。今時同人でももっとマシな文章を書くライターさんがゴロゴロいると思うが。



 と言うわけで長々と書いてきたが、正直言ってお薦めするには辛い作品である。冒頭にも書いたが「ただの駄作」ではない。目指した志というか心意気は決して間違っていないだけに、途中で転けまくってる姿が痛い(「悪い」でも「酷い」でも「つまらない」でもなく、「痛い」のだ……)。誰か本作をリファインしてくれないかなあ。あるいは「完全版」と称して全くの別ライターに作り直させるとか。このまま朽ち果てさせるには惜しすぎる素材だと思う。では最後に一言-----




 
最後の戦いでスレッジハマーがバースト化するのは、もう常識だろう! せめてそれくらいは察してくれよ……


 おしまひ




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