〜MUSASHI GUN道レビュー〜
MUSASHIだよ、全員集合
第一話「噂には尾ひれがつきもので」
まずこのレビューは、DVD-BOXを快く貸し出してくださった好古真之さんに捧げたいと思います。ありがとうございます。お陰で興味深い作品に触れることが出来ました。
噂というものは大抵は尾ひれ背びれが一人歩きして肥大化していき、人の誤解を誘ってしまうもの。だがしかし! 不肖この聖帝torabo、噂より現物の方が凄いと言う極めてレアな事態に遭遇してしまいました。いや凄かった。何が凄いってOPを見ているだけでトリップしてしまうというか、意識が朦朧としてくるというか、不思議時空に引きずり込まれたのではないかと錯覚してしまいそうなところが凄いです。
動画をあまり使っていないアニメを「紙芝居みたいだ」と批判することがありますが、本作は紙芝居ですらありません。紙芝居や漫画のように二次元であることを意識して良い意味で平面的に描かれた作画ではなく、だからといって動画と動きや奥行きを計算して描かれた作画でもなく。何て言うか2.5次元的な描画と言うべきでしょうか。中途半端な遠近感と作画の歪み(崩れではない)で味付けされた絵が、少ない動画枚数でグネグネと動く様は、例えが悪いがだまし絵の様というか、見ているだけで脳に直接ダメージが蓄積されていくというか。人間は食用ではないと認識しているものを口にすると、本能的に吐き出してしまうものですが、もしかして脳が「見てはいけないもの」として本能的に拒絶しているのでしょうか。いや、OPだけでここまで戦慄を感じさせた作品は本当に久しぶりです。恐るべし、MUSASHI。
時代は西暦千六百年。関ヶ原の戦いで西軍が勝利してしまったパラレルワールドのようです。まあ、その後の展開には死ぬほど関係ないことですが。ある程度は史実に沿っていくらしく、話は吉岡道場から始まります。どうやら宮本武蔵が吉岡一門に戦いを挑む一乗寺下り松の決闘から伝説の幕は開けるようです。
多勢の弟子を配置した吉岡一門に対し、史実のような騙し討ちは仕掛けず真っ向から乗り込んでいくMUSASHI。ここら辺は意外と男らしいというか、もうちょっと頭使えよと思わないでもないですが。やっぱりアニメなら爽快感も必要でしょう。周りを取り囲んで斬りかかってくる門弟を、ばったばったと薙ぎ倒すMUSASHIは暴れん坊将軍か水戸黄門か。斬りかかる度に放電現象が発生しているような気もしますが、恐らく気のせいでしょう。さっきから当主の吉岡伝七郎が何度も斬られているような気がしますが、恐らく気のせいでしょう。というか、同じ動画を使い回ししているような気がしますが、これも恐らく気のせいでしょう、絶対に。無双状態で門弟の群れを薙ぎ倒し、遂に当主の伝七郎に肉薄するMUSASHI。しかし敵もさるもの。もちろん伏兵を用意してあるのです。
伝七郎「ふはは! かかったな、MUSASHI! 兄の仇! 出ませーーい!」
門弟達「おうっ!!」
伝七郎の号令共に、周りの陣幕を切り裂いて更なる多勢の門弟がMUSASHIを包囲します。もちろん鉄砲隊も用意してある周到さ。その鉄砲隊がMUSASHIに接触しかねない最前線に配置されている段階で鉄砲隊としてはあまり役に立たない気もしますが、恐らく伝七郎は零距離射撃の浪漫を理解しているのでしょう。うむ、さすが吉岡一門当主。
MUSASHI「おいらの好きなことは、一人で大勢を相手に-----勝つこと!!」
もちろん我らがMUSASHIも負けてはいません。すかさず二丁拳銃を抜き放ち応戦です。ここまで接近した状態だと銃より剣の方が強そうですが、卑しくもGUN道の継承者なら二丁拳銃で戦うのが世の理というものです。「だったら何で最初から銃で戦わないんだ」という当たりま-----無粋なツッコミは禁止。
しかもここで恐るべき事が判明。MUSASHIの使っている銃弾は「眠り弾」であり、相手を殺さず無力化する代物らしいのです。もちろんさっき使ってた剣は「電気剣」で、当然こちらも非殺傷用(電力どうしてるんだろう?)。今で言うならさしずめ麻酔弾にスタンブレードというところでしょうか。しかし眠り弾ですか。まるで『ドラクエ』の「ひのきのぼう」「ぬののふく」並みのネーミングセンスだと思ったのは自分だけ?
でも無敵の強さを持った非殺の二丁ガンマンですか。まるでどこぞのスーパーコーディネーターみたいですが、こっちのMUSASHIも只者じゃありません。何しろ眠り弾です。決して相手を殺さない弾です。だから情け容赦なく脳天をぶち抜いても何の問題もありません。もちろん先ほどの電気剣も非殺傷用だから、わざわざ峰打ちしなくても刃の部分でぶった斬ってもモーマンタイ。まさにパーフェクトヒューマンテクニック。恐らくMUSASHIに”眠らされた”門弟達は二度と目覚めることはないでしょうが、使っている武器が非殺傷用なのですから、起きられない方が悪いのです。
オマケに圧倒的戦闘力で吉岡一門を駆逐しながら、いけしゃあしゃあとMUSASHIは暴言をぶちかまします。
MUSASHI「それにおいら、こんなつまんないことに時間かけてるヒマはないし」
お前の方から決闘を申し込んだんじゃなかったのか? 吉岡一門もこんな大迷惑な男に振り回された挙げ句全滅させられたのでは、同情の涙を禁じ得ません。そのあと、城取りの魅力を熱く語るMUSASHIですが、その時の動きが変。ポージングというか、不思議な踊りというか、暗黒太極拳というか。恐らく確実に自分のMPは低下しているでしょう。MUSASHI君もGUN道を習得する前に、ポージングについてどこぞのギアス持ち魔王にでも弟子入りした方がいいのではないでしょうか。
さて、まったくもって無意味な暇つぶしの一環として吉岡一門を壊滅させたMUSASHIは、唯一の相棒らしいローニンと落ち合うと、大阪城攻略に取りかかろうとします。しかし豊臣幕府が治世している世の中でその本丸たる大阪城を落とすということは、豊臣幕府を打倒するのと同じ事じゃないかと思うのですが、その辺を彼は分かっているのでしょうか。分かっていない方に300ペリカ。
しかも相棒の名前がローニンですか。『ウィザードリィ』の雑魚敵じゃないんですから、もうちょっと真面目に名前を考えましょうよ。
弾正「姫様を守れるのはMUSASHI殿をおいては他にはおりません!!」
ここで唐突に暑ッッ苦しいモヒカン男が登場して、いきなりMUSASHIに城とそこに住む姫の守りを依頼してきます。「おいおい、こいつ城取り屋だけど、そんな依頼して大丈夫なの?」と突っこんでいたら、さすがに作品でも同じツッコミを返されていました。しかしモヒカンも引きません。「城取り屋だからこそ城の守りにも精通しているはず」という理屈は、なるほど一理あります。でもまあ、ここで引き受けちゃったら話が進みません、城取り屋の矜持にも関わります。断固として断るMUSASHI君。
しかしあとで判明したことですが、このモヒカンは大阪城の人間でした。どんだけ豊臣幕府には人材いないんだ、と突っこみたくなってしまいましたよ。そりゃ城も落とされるだろうよ。こんなのに負けた徳川が哀れすぎます。
そして赤い月が輝く真夜中に、大阪城の姫を狙ってあやかし達が出現するのはお約束。でもそのあやかしがあまりにも薄っぺらいのはちょっと泣けました。そりゃ主人公の相棒の名前がローニンですから、雑魚敵の描写がこのレベルなのは推して知るべしでしょうな。
姫「かかってらっしゃい」
物の怪相手でもまったく臆することなく刀を抜き放つ姫は本来なら格好いいはずなのですが、何しろペラペラな影絵が相手なのですからビビる方があり得ません。圧倒的な戦闘力で雑魚を蹴散らします。
と、ここで新たな発見が。加速装置どころか減速装置がかかってるとしか思えないほどスピード感が欠落している本作のアクションシーンですが、レビューを書くために見直しているうちに面白い現象に気付きました。何と、早送りで見るとアクションシーンが普通に見えるのです(笑)。ちょうど4倍速から8倍速辺りが適当でしょうか。我ながらなかなかな発見です。何と! あのMUSASHIのアクションシーンを普通に楽しむことが出来る! ------特許出願しておいた方がいいでしょうか? 唯一の欠点は早送りのため音声がないことぐらいですか。しかし早送りしないと”アニメ”しないアニメ作品というのもなかなかありません。
ヤシャ「-----さすがですね。腕を上げられましたな」
ここで中ボスらしき怪人が登場です。なんだか自分でも十秒で書けそうなくらい手抜きの仮面(素顔?)を被っていますが、これはきっと対戦相手の精神的脱力を狙った高度な戦術的心理学的手段なのでしょう。向敵相や菩薩相のようなものです。さしずめ脱力相(落書き相)というところでしょうか。なかなか侮れない強敵のようですね。
弾正「おらぁーーーっ」
いきなり弾正の顔面キックを食らって驚くヤシャに思わず爆笑。おいおい、褒めた俺の面目丸つぶれじゃん、この落書き男。そのあと切り札たる陰陽剣を使いこなす弾正を一蹴し、姫を手玉に取るところはさすがは中ボスというところでしょうか。
ヤシャ「何とか様がお待ちです、そろそろお覚悟を」
姫「あやかしの妻になどなるつもりはありません!」
そんなしょーもない理由で大阪城にやってきてたのか_| ̄|○
せめて世界支配とか人類殲滅とか、嘘でもいいからもうちょっと格好いい理由で侵攻して来いよ。上司の嫁探しのために大阪城に侵入した挙げ句、モヒカンに顔面蹴られる落書き男の存在意義って一体……。
そのあとはお約束通りの展開というか、さらった姫を連れて帰還するところをMUSASHIとローニンに待ち受けられて始まるクライマックス対決。これは普通に面白かったです。相変わらず減速装置が働いている上に、ランダムでスタープラチナとキング・クリムゾンが炸裂していましたが、秘技4倍速送り(特許出願中)で格好いいアクションとして楽しむことが出来ました。当然音声はありませんが、元々大した台詞など言っていないので問題ありません。
それにしてもローニンって素で格好良いですね。ベラベラと喋る度に安っぽくなっていくMUSASHIと比すると、サムライは言葉ではなく刀で語るのみ! みたいな感じで。しかもMUSASHIとは単なる相棒同士というわけではなく、ライバルでもあるようです。まるで『ルパン三世』の五右衛門(ギャグも使いこなすので原作Ver)みたいですよ。名前は雑魚っぽいけどな!
というわけで。噂に違わぬどころか、噂以上の破壊力で楽しませてくれたMUSASHI第一話。正直言ってここまでレビューの書き甲斐がある作品だとは思っていませんでしたよ。もう画面の端から端まで、三分に一回は突っこみたくなるこのクオリティは真似しようと思っても出来るものではありません。しかも第二話ではMUSASHI君がGUN道の修行に出るようです。都市伝説にまでなった絶技GUN道を拝めるのかと思うと、今からドキドキして夜も熟睡してしまいそうですよ。こりゃマジで第二話が楽しみです。
第二話に続く