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◆中国最貧困の貴州省農村から持続可能な開発を考える
1.【地球温暖化】【熱帯林減少】【生物多様性】【国際協力】【人口問題】を現地調査も踏まえて研究します。
2.地域コミュニティの共有資源(コモンズ)や貧困もふまえて、持続可能な農業を再考します。
3.中国貴州省の面積は18万平方キロで日本の半分、2010年人口は4000万人、省内生産(GDP)は4550億元(全国26位)、1人当たりGDPは1万2000元と全国最下位の31位。
4.貴州省黎平県の貧しい山村に2006年に滞在調査した写真をもとに、山村生活と農業を解説します。
5.他の写真は、貴州省のバイオマスエネルギー福建省のお茶生産四川省チベット族のバイオマス利用とソーラークッキングを参照。
 

中国貴州省黎平県点描

 Liping County 黎平县

 
 






















森林破壊森林観測に関連して、多くの議論があります。しかし、昔話『桃太郎』が関連していると連想できる人はいるでしょうか。冒頭にある「おじいさんは、山にシバ刈りに、おばあさんは、川に洗濯に」を人間環境学の視点から考えてみましょう。
 井戸はもちろん、浄水場所、上水道、洗濯機がない時代、貧しいお婆さんは、水のある川まで衣類を洗いに行ったのでしょう。では、お爺さんが刈った「シバ」とは何でしょう。山に「芝」が生えているなんて不思議だと思いませんか。
 お爺さんは,地主の牧場に行き、牧草刈りをしたのでしょうか。
 中華人民共和国南部に位置する貴州省は、一人当たり所得が最下位の最貧省です。その貴州省の中でも山岳地域にある黎平県山村に2006年10日間滞在し調査しました。(その後も滞在調査しています)この調査をもとにして、農業に関して、解説します。
 

多角的農業

 Sustainability

 
貴州省牛
昔話「桃太郎」冒頭で「おじいさんが山にシバ刈りに、おばあさんが川に洗濯に行きました。---」とあります。貧しいお婆さん、水のある川まで衣類を洗いに行ったのですが、お婆さんが柴刈りにいってもおかしくはないです。洗濯も柴刈りも、老人や子供など、体力の劣る人でもできる仕事だからです。男性と女性の社会的差異を「ジェンダー」といいます。男が洗濯をするのはおかしい---と思うのは、ジェンダーがあるからです。
チーフーの収穫

 Sustainability

 
チーフー
黎平県段々畑は、観光用ではありません。山の上でも農地としなくては収入が得られないという事情があります。
農地の行き来

 Sustainability

 
手持ち
段々畑に行き来するのは、水、収穫の出来具合の観察から、自家消費用の農作物の取得、堆肥運び、柴刈りなど様々です。友人や親類の家に出かけるついでに立ち寄っていくこともあります。とにかく、農地には、人の往来が盛んです。








 






貴州省黎平県を地図で見る
家族農業

 Family & Labor


貴州省
おばさんと息子が、子供と共にチーフーを収穫しています。家族三代そろって、農作業をする光景は、懐かしくもあり、家族団らんをうかがわせます。しかし、育児などの家事と農作業という就労が分離できない状況を反映しています。現代日本では「仕事」と「家族」という概念が完全に分離してしまいました。しかし、金を稼ぐ労働・勤労と家族の仕事・家事労働が同一の空間で行われる場合、「仕事」と「家庭」は両立しているといえます。開発途上国の社会開発を論じる場合、仕事、家族、家庭を総合してみるのことが重要な事なのです。
家族農業

 Family & Labor


貴州省
息子さんが、母親に子供を見てもらいながら、チーフーを収穫していました。家族三代の農作業は、日本ではもはや過去の物となりました。
家族農業

 Family & Labor


貴州省
息子さんが、大きさを選別しながら、チーフーをカゴあるいはビニール袋入れています。帰り際に、たくさんのチーフーを持たせてくれました。チーフーは、生のまま皮を剥いて食べることができます。とっても甘かったです。いづれ日本にも輸入されることでしょう。

貴州省
チーフーを掘り出して、カゴに大きさ別に収穫します。おばあさんは、孫の世話もしながらの作業です。託児所・保育園は農村にほとんどありませんし、費用節約のために、利用する顧客は限定されています。現代日本では「働く」という意味を、金を稼ぐ会社での勤労と同一視しています。このような近視眼的な「仕事」や「労働」の概念では、開発途上国も含まれるグローバルな問題に対応できないのです。
段々畑の耕作

 Handicrafts


貴州省
カブ(ロウポウ)の収穫。年配者でも、地域コミュニティでは、家事労働と農作業という就労につくことができます。現代日本では「働く」という意味を、サラリーマンという外仕事の意味で使用していますが、このような範囲に限定すれば、老人は、労働力を提供しない「老齢従属人口」として、扶養対象としてのみ認識されてしまいます。高齢者を「狭い範囲の労働」の概念で理解しようとすれば、老人は社会保障の問題を引き起こす「厄介者」出しかありません。日本での「高齢者への認識」は、開発途上国も含まれるグローバルな少子高齢化問題には応用できない場合が多いのです。
カブの収穫

 Old Man & Labor


貴州省
おじさんが段々畑でカブを収穫しています。
カブの収穫

 Old Man & Labor


貴州省
おじさんが段々畑でカブを収穫したあと、運搬してきた堆肥を撒布しました。家畜の糞尿を「有機肥料」として農地に投入します。日本の「有機農業」には、衛生的側面と高級感を重視して汚い「糞尿」は登場しません。なにをもって、「有機農業」としているのかは、国・地域によって大いに異なるということです。
カブの収穫

 Old Man & Labor


貴州省
運搬してきた堆肥のカゴが二つ、畦道に置かれています。天秤棒の両端にかけて山道を運搬してきました。撒布するのは、簡単ですが、重くて汚れる堆肥を活用するには、労力が不可欠ということです。家畜の糞尿を「有機肥料」として農地に投入するといっても、人力輸送ですから、大変に手間がかかります。

バイオマス・ニッポン総合計画では、ニッポンのバイオマスを有効活用することを提唱しています。しかし、農業廃棄物、山林の木質バイオマスなどは、広い範囲に分散しており、これを収集、運搬するのは労力がかかります。トラックや機械を使って集めるのであれば、バイオマス収集に要するエネルギー消費は大きくなってしまいます。
堆肥の投入

 Resources


柴
家畜の糞尿を「肥やし」として、段々畑に撒布しています。「肥やし」を山の上の運び上げ、そこの畑に撒布します。撒布前に、畑の除草作業を1時間以上行いました。
 
バイオマスの活用

 Biomass


柴
家畜の糞尿「肥やし」の撒布。ところで,女子による堆肥の運搬・撒布は、家事以外の範囲で、バイオマスの利用という開発と環境の問題にかかわってきています。地域コミュニティでは、家事とバイオマス利用は不可分の関係にあります。男子と女子との社会的な格差というジェンダーに注目した開発/環境政策も考慮すべきでしょう。
 
堆肥の投入

 Resources


柴
家畜の糞尿を「肥やし」として、段々畑に撒布しています。家畜の糞尿を「肥やし」として活用するためには、家畜の糞尿を収集・保管し、それを農地に運搬しなくてはなりません。山の上の段々畑に撒布するには、多大な労力がかかります。バイオマスを有効活用するには、手間が欠かせないのです。
堆肥の投入

 Resources


柴
バイオマスの活用など有機農業を進めるに際して、資本と労働力の観点が重要です。ここでみるような肥やしの利用を、衛生的に機械化するのであれば、その工程に多大なエネルギーが必要になるでしょう。つまり、機械化されたバイオマスの利用は、資本、資金だけでなく、資源エネルギーの追加投入が必要です。つまり、往々にして、持続可能な農業とは相反するものとなるのです。エネルギー収支を検討したうえで、サステイナビリティの評価をする必要があります。
バイオマスの活用

 Resources


柴

◆国際協力の分野では、1980年代以降開発途上国の女性の地位向上に着目した「開発と女性(WID)」、「ジェンダーと開発(GAD)」というアプローチがある。

WIDは、女子を家事・育児以外にも、生産活動における役割を重視するもので、従来の女子の生産活動が過小評価され、女子が開発プロジェクトから疎外されてきたとした。そこで、女子を単なる受益者として一方的に捉えるのではなく、人的資源として活用するために、開発に統合すべきであるとした。

◆「ジェンダーと開発GAD」は、ジェンダー不平等の要因を、女性と男性の関係と社会構造の中で把握し、役割固定化と役割分担、ジェンダー格差を生み出す仕組みを変えることを目指す。換言すれば、GADは、ジェンダー不平等を解消するうえでの男性の役割に注目し、社会・経済的に不利な立場におかれた女子のエンパワーメントを促進する政策である。

作業終了

 Biomass


堆肥
糞尿「肥やし」の撒布終了。ポリバケツ2つを天秤棒に担いで帰宅します。バケツに掛けてあるのは、除草に使用した小型の鍬と、肥やしを撒くのに使った手杓です。
大学での授業

 Development & Environment


貴州省
大学での講義「開発経済学」「環境協力論」「環境政策機廖峇超政策供廚蓮∋続可能な開発を、開発途上国、地域コミュニティの視点も含めて、分析する授業です。俗説とは異なる議論も展開しています。

<ワーク・シェアリングによるリスク分散>

収穫の一定比率を報酬としたり,作柄を実ながら雇う農業労働者の数を決めたりすることは,農家が雇用労働者へ支払いをする場合,不作で収穫が少なければ支払いも少なく,豊作で収穫が多ければ支払いも多いのであって,リスク負担は小さくなる。また,同じ年であっても,土地条件の違いから,各農家の収穫には大きな差が生まれる。降水量が少なく水の得にくい土地が不作であっても,水が得やすい低地の収穫は豊作かもしれず,またこの逆もありうる。

 このように,同じ地域コミュニティ内の農家にあっても個々の収穫は不確実であるため,個々の農家が自分の土地の収穫にのみ所得を依存していれば,毎年の所得は大きく変動する。しかし,地域コミュニティの全農家について収穫の平均値は,個々の農家の収穫よりも安定している。つまり,収穫の不確実性に大数の法則が成立すれば,相互雇用によって多くの農家の下で少しずつ収穫を分けてもらうことで,毎年の所得の変動は小さくなる。換言すれば,収穫の不確実性の下で,相互雇用は所得安定化の機能を持っており,そのために地域コミュニティの慣習となっていると考えられる。

 こうした所得安定化は課税や生活保護手当の支給等による生活保障と同じく事後的な所得再分配によっても達成できる。しかし,地域コミュニティがこのような再分配政策を実施するには権力の正統性がなく困難である。また,再分配を合意した地域コミュニティのメンバーには,高い収穫を得た後,自家労働の投入の多さ,経営管理の良さなどを理由に,低収穫の農家への再分配を拒否するかも知れない。また所得再分配が実施されるのであれば,他の農家の収穫を当てにでき,怠けていても損はしないのであり,地域コミュニティにおける労働インセンティブは低下する。このように事後救済がとられることを見越して怠惰になるモラル・ハザードの存在のために,地域コミュニティにおいても事後的な所得再分配の実施は困難である。

 しかし,相互雇用は事後的な所得再分配ではなく,報酬を伴う雇用によって労働インセンティブを維持し,モラル・ハザードを抑制している。

 したがって,農家の雇用労働依存はインカム・シェアリングというよりも,雇用労働を地域コミュニティのメンバーに分与している点を強調してワーク・シェアリングと呼ぶほうが適切である。相互扶助,住民参加,情報交換,社会的制裁を通じて,住民相互の信頼関係が醸造されている地域コミュニティにあっては,低い取引費用でワーク・シェアリングが実施でき,所得安定化,生活保障の利益が生まれる。 

 農家が土地なし労働者に農作業を依存するのは,貧困者に所得を無償分与するよりは労働力の有効活用につながるうえに,土地喪失や失業のリスクを軽減できるという利点が指摘できる。小作農家には土地を地主から取り上げられるリスクがあり,自作農家でも家族員を含め,病気や災害によって土地を失ったり,家族員の雇用機会がなくなったりする。そうであれば万が一の場合でも、誰かに土地なし労働者として雇ってもらえるように,自分も日頃から土地なし労働者を雇用する, すなわち仕事の分与というワーク・シェアリングを行うはずである。


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東海大学教養学部人間環境学科社会環境課程 鳥飼 行博
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