| ● 山ざくら散りゆく花にわが恋も いそぐなかれとねがうも悲しき |
| ● 風吹けば溜まりの葦に艫結び たゆとう舟にゆだねる身ひとつ |
| 雪にけぶるふるさとの町帰りなば 幼きころの信濃の流れ |
| ● 早池峰の山のふもとの道野辺に 一人静かに咲く藪いちご |
| ● 暮れなずむ林に浮かぶ烏瓜 揺れる朱い実秋の風吹く |
| ● 野辺に出で子等と遊びし若菜摘み 籠に溢れる春先の幸 |
| ● ひとり身の田舎に暮らす母のもと 便りをはこべ往く渡り鳥 |
| ● 行く秋に一人山路を登り来て 振り向き見れば懐かしの里 |
| ● 大楠の山野辺に咲く花に問う 君を見初めた人はいずこに |
| ● 冬深く花が寂しと想う日は 窓辺に活ける侘助一輪 |
| ● ぬばたまの雲なき夜に仰ぎ見る 遙かに渡る十六夜(いざよい)の月 ● 仰ぎ見る星の光を浴びる夜は 高きに澄み行くわが想いかな |
| ● 里山の人に知られぬ花なれば 群れ咲くときに君を連れたし |
| ● 逢いたさに深山細みち訪ねきて よそおう吾(あ)れに君はいでしも |
| ● 秋の日に野菊を摘むと野に入りて 優しき姿にしばし佇む |
| ● 朝露の今ひとときの夢に似て 微かに香る笹ユリの花 |
| ● 大海(おおうみ)を越える入日の天(あめ)の道 雲居の端に隠れる惜しも |
| ● たわむれに細き手に取るレース糸 いかに編みまし糸の交わり |
| ● 水無月の緩い流れの杜若 匂へる花は泥(でい)に染まらず |
| 黒姫の山のしずくに濡れそぼる アキカラマツの花の群れ咲く |
| ぬえくさの乙女の髪の珠珊瑚 あしたの露に色は変はらじ |
| 幾とせの別れののちにまみえる日 酌み交わしませう八海の酒 |
| 雪解けのかさ増す水に隠れ見ゆ 苔むす岩のかわく間もなし |
| 鳥渡る北の大地に眠る山 やがて吹き寄す春の風待つ |
| 海越えて届く荷造りなつかしき 母の手文字にふるさと思う |
| 生かされる我がよき世をばこころして 思い新たな寿ぎの春 (平成18年元旦に詠む) |
| 月に寝る行方も問はぬ草枕 旅の友かな虫の音をきく |