野生蘭探索記

別邸ホーム




2004年5月下旬
トロントから北へ車で4時間くらいのある狭い地域に48種の野生蘭が咲くという情報得て、2004年に2泊の旅を3回しました。 ただし情報といっても咲くというだけ。どこへいつ行けば何が咲いているかの知りたい情報はほとんどありません。 狭い地域といっても東京都ほどの面積があるその地域には、基本的に南北に走る道路が1本あるだけで、 他は地元の人が使う程度の道が枝分かれしているだけの地域です。しかも熊、ガラガラヘビ、イタチなどが生息する地域でもあります。 情報不足に要領を得ず、行くか行くまいか考えていても季節は過ぎていきます。とにかく一人で出かけました。

5月下旬の初回探索行は当てもなく歩き回ったため効率が悪く、 ここぞと思うルートを何時間かけて歩いても蘭ひとつ見ないムダ足に終わる場合がほとんどでした。 それでもあるルートを数時間歩いたあと、やっと[ Striped Coralroot]  に出会った時には、嬉しさのあまりおもわず森の中で大声を上げてしまいました。初回探索行で出会った蘭はこれひとつだけ。 でも[ エンレイソウ] がたくさん咲いていました。

6月中旬
初回探索行のあと、トロントへ戻ってからはさらに情報を集めました。6月中旬の2回目の探索行では、 5大湖のひとつの沖合いに浮かぶ無人島にCalypso(ホテイラン)が咲くということで、その島を巡る小さな [ 遊覧船] に乗り、 さらにその島には遊覧船が接岸できないため[ ゴムボート]  に乗り移って上陸。ただし上陸したはいいものの、どこへ行けば良いやらチンプンカンプン。 適当に[ 森の中の細い道] を歩き始めたところ、 しばらく歩いたところで何と地面に寝そべってカメラを構えている人がいるではありませんか。 ガラガラヘビが生息する島だというのに何と大胆な。思わず“何があるー?”と声をかけたところ、 そのおじさん、撮影のじゃまをされたせいか不機嫌に起き上がり、“お前さん日本人か?” とたけさんへ逆質問。どうやら日本人のアクセントをご存知のようす。たけさんは自分のアクセントに自信がある と思い込んでいるのでチョット不満。でも不満を顔と声に出さない訓練が出来ているたけさんは、 “はい”と素直に答えると、おじさん急に相好を崩し“日本人大好き”とのたもうた。 こちらも“おじさんはドイツ人か?”と聞いたところ、おじさん一瞬間を置いて“なぜ判る?”とのこと。 こちらもドイツ人のアクセントは判ります。これでおあいこ。

森のおじさんは手招きして、“こっちへ来い、ホテイランが咲いてるぞ” “この株は俺が撮るから、お前さんはあっちの株を撮れ”と2−3m離れた株をご指定。その後二人仲良く森の中で撮影。 このおじさんは退職した元大工さん、いまは悠々自適の羨ましい生活。蘭が好きな奥様が体が弱くなかなか外に出られないとのことで、 愛する奥様のために野生蘭の情報を集め、せっせと写真を撮り集めているとのこと。その夫婦愛にたけさん思わずホロリ。 森のおじさんに出会えなければ、[ ホテイラン]  との出会いはまずなかったでしょう。すぐそばでこんな蘭も見つけました。 [ 蘭@]  [ 蘭A] 。その他に [ ヒメハギ] や [ リンネソウ] 、 それにたけさん好みの姿をしている[ Clintonia] も咲いていました。

撮影後は森の中で二人仲良く腰をおろし雑談。たけさんはどこに行けばどんな蘭が咲いてるか一所懸命に森のおじさんから情報収集。 意気投合の二人は、一度陸へ戻ってある場所で落ち合う約束をしてその場は一旦別れ別れ。その日の午後、 ある松林で再会した二人は黙々と[ Ram’s-head Lady’s-slipper] を撮影。 おじさんが教えてくれなければ足元に咲いている花に気がつきませんでした。撮影後、その日のうちに帰る予定の森のおじさんから、 たけさんはさらに違う蘭の咲く場所を聞き出しました。次の日にはおじさんが教えてくれた“今までに見た最大の株” という[ Yellow Lady’s-slipper]  を発見し、せっせと撮影。たけさんは大満足。

7月上旬
Grass Pink(カラポゴン)とRose Pogonia(トキソウ)が咲くという森のおじさんが教えてくれたある湖畔の湿原に来たものの、 さっぱりその場所が判らず道端に車を止め途方にくれるたけさん。たまたま散歩で通りかかったおば様が、 こちらの途方にくれている様子とカメラ道具を見て蘭を探していると思ったらしく、 “蘭を探しているなら良い場所を教えてあげるから、この先の私の別荘へいらっしゃい”との申し出。 別荘では湖畔のおば様が撮った野生蘭の写真を言葉を尽くして褒めながら、せっせと蘭の自生地を聞き出しました。そして 湖畔のおば様お手製のクッキーと紅茶に大満足のたけさん。その後、無事に「何事」もなく教えてもらった蘭の自生地へ直行。 湖畔の広い湿原に咲き乱れる[ カラポゴン] と [ トキソウ] に言葉を失うたけさん。 [ Leafy White Orchis] と思われる株も見つけ、 食虫花である[ Pitcher Plant] も見つけました。 でも湖畔のおば様に教えてもらったモウセンゴケはついに見つかりませんでした。

その自生地で出会った高そうなカメラを首から2台ぶら下げたメガネのおじさんから、今度は別の蘭の自生地を聞き出しました。 たけさん、さっそくその場所へ移動。その自生地はある公園の中ですので入園料を取られます。 でもまだ見ぬ蘭に会いたく財布のヒモを緩めました。公園事務所では、 北米インディアンの血が混ざっていると思われる可愛いおねえさんが、蘭の咲く場所をていねいに教えてくれました。しかし “熊が出るかも知れないから気をつけてね”とのやさしいアドバイスにうれしくも一瞬気が怯むたけさん。 でも会いたさ見たさに怖さを忘れ、腰に熊撃退スプレーをぶら下げて出発。 その教えてもらった場所で撮った[ Showy Lady’s-slipper]  (アメリカアツモリソウ)です。

2004年の野生蘭探索行は暗中模索の単独行でしたが、先々の訪問地で多くの親切な人たちに恵まれ満足のゆく成果でした。

2005年6月中旬
前年の野生蘭探索行で要領を覚えたたけさんは、今年は1泊の旅で昨年に見たすべての蘭に再会し、 もし叶うなら未だ会わぬ蘭との遭遇を計画。でも計画策定の途中からその計画がどんどん膨らみ始め、昨年訪問の地域への往復ではなく、 オンタリオ州南部をぐるりと回る4泊5日の一大旅行を計画。 その計画に共鳴した野草仲間と二人で行くことに決め、ガソリン節約のためたけさんの四駆ではなく、 環境に優しいお仲間さんの日本車を交代で運転することに決定。

出発日のしばらく前までは天気予報とにらめっこでしたが、出発予定日が近づくにつれ天気はますます崩れ始め雷雨の予報まで出る始末。 でも今さら休暇も変更できないし、もう行くしかないと腹をくくった二人は食料品の調達を開始。たけさんは赤ワインを2本仕入れて準備万端。 ワインさえあれば他はなくてもなんとかなるのは経験済み。結果は、快晴には恵まれなかったものの、 訪問地への移動の時だけに雨が降るという幸運さ。さすがたけさん、晴れ男。実際の走行距離は1639kmでした。

野生蘭についてはトキソウを除いて昨年の蘭にすべて再会、初めての野生蘭として [ Moccasin-flower] に会えました。この蘭は花だけ見れば クマガイソウにそっくりで、確かに“熊が居そう”なところに咲いていました。その他の花では、好きなところで キンポウゲ科の[ Thimbleweed] 、 透き通るような白いスイレンの[ Fragrant Water-lily] 、 細身のアヤメである[ Slender Blue Flag] 、それから 端整な姿の[ Bunchberry] 等に会えました。

カナダにはまだまだ多くの野生蘭があるとのこと。これからも新しい野生蘭との出会いを求め探索行を続けたいと思います。

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