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こもあ生物学

日記帳54

鳥インフルエンザウイルスとその防疫について

「畜産技術2006年4月号pp6〜18」から抜粋

2006年5月22日 (月) 1 鳥インフルエンザの疫学
1)H5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルス(HPAI)は、渡り鳥が北方圏の営巣湖沼から持ち込む非病原性の鳥インフルエンザがニワトリに伝播し、感染を繰り返すあいだにニワトリに対する病原性を獲得したものである

2)インフルエンザA型ウイルスはヒトを含む哺乳類と鳥類に広く分布する

3)なかでも、水禽からはすべてのヘマグルチニン(HA)亜型(H1〜H16)とノイラミニダーゼ(NA)亜型(N1〜N9)の鳥インフルエンザウイルスが分離されている

4)家禽、家畜、ヒトのインフルエンザA型ウイルスはすべてカモの鳥インフルエンザウイルスに起源する

5)カモは夏季にシベリア、カナダ、アラスカの北極圏に近い営巣湖沼で鳥インフルエンザウイルスに水系経口感染し、結腸陰カの上皮細胞で増殖したウイルスを糞便とともに排泄する

6)秋になるとカモは南方に渡る。カモに害を及ぼすことなく受け継がれて鳥インフルエンザウイルスは家禽や家畜に伝播して、それに対する病原性を獲得することがある。ニワトリ集団に入った鳥インフルエンザウイルスは、数ヶ月にわたってニワトリからニワトリに感染を繰り返す。なかに病原性を獲得するものが出現する

7) これがHPAIVであり、そのHA亜型はH5とH7に限られている

8)シベリアのカモから分離されたアジアで分離されたウイルスと近縁である。これが新型インフルエンザになる。南中国に飛来するカモはシベリアの湖沼から鳥インフルエンザウイルスの遺伝子を持ち込むことになる

2006年5月22日 (月) 2 病原体と臨床症状
1)アヒルやガチョウは感受性は高いが、感染しても症状を現わさない

2)ニワトリは、甚急性経過を撮るものは症状を呈さずに、またはショック様症状で急死する

3)食欲・飲水欲の消失、産卵率低下、衰弱、咳、くしゃみ、ラッセル呼吸音、流涙、羽毛逆立、チアノーゼ、神経症状、下痢

4)H5、H7亜型のHAをもつ

5)インフルエンザウイルスには、A、B、C型がある。鳥類、哺乳類にはA型ウイルスだけが感染する

6)H1〜H16、N1〜N9亜型に分けられるRNA型ウイルスである。RNAは8分節に分かれていて、二つの異なるウイルス株が一つの細胞に感染すると、両ウイルスに由来する分節をもった子孫ウイルスが放出される

7)ヒトのインフルエンザウイルスとカモ由来の鳥インフルエンザウイルスの遺伝子分節が再集合して生じたものが、ヒトの新型インフルエンザウイルスである

8)感染源は生鳥の小売り市場である

9)ただし鳥インフルエンザウイルスに対するヒトの感受性は、レセプター特異性が異なるためきわめて低い

2006年5月22日 (月) 3 予防と治療
1)輸入検疫、日常の臨床検査、ウイルス検査、抗体検査の徹底による感染家禽の早期摘発と淘汰が重要である

2)ワクチンには環境に排出されるウイルスを減少させる効果は認められ、メキシコ、中国、ベトナム、インドネシアなどで用いられたが、本疾病の清浄化に寄与しなかった

3)不活化ワクチンには、「発症の予防」効果は期待できるが、「感染を予防する」免疫を誘導する力はないからである

4)家禽のモニタリング、野鳥のグローバルサーベイランス、感染家禽の早期摘発、淘汰、情報公開、検疫の徹底

5)治療は行わない

2006年5月23日 (火) 4 新型インフルエンザ
1)新型インフルエンザウイルスとは、過去数十年ヒトが経験していないヘマグルチニン(HA)またはノイラミニダーゼ(NA)亜型のインフルエンザA型ウイルスのことである

2)新たなHA亜型の鳥インフルエンザウイルスがヒトに伝播する性質を獲得すれば、ヒトにインフルエンザの大流行が起こる

3)前世紀、新型インフルエンザウイルスは3回出現し、そのたびに多くの人命が失われ社会機能が麻痺した

4)HPAIは、野鳥を家禽化した古代から発生していたに違いないが、その原因ウイルスがヒトに伝播して広がり、インフルエンザの大流行を起こしたことはない

5)鳥インフルエンザウイルスは、人類が地球上に現れる前から水禽のあいだで安定的宿主・寄生体関係にあった

6)ブタの呼吸器上皮細胞は、ヒトのインフルエンザウイルスにもカモの鳥インフルエンザウイルスにも感染する。両者がブタに同時感染すると、両ウイルスの遺伝子再集合体が生ずる

7)カモの鳥インフルエンザウイルスのHA遺伝子をもち、ヒトに伝播するようになったものが、新型インフルエンザウイルスである

8)北方の渡りガモの営巣湖沼にHPAIVが持ち込まれ定着し、毎年これをカモが南方に運び、ニワトリに伝播し、これが生鳥マーケットを介して伝播を繰り返すうちにニワトリに対する病原性を獲得する。現在はまだ偶発的にヒトへ伝播している状況である。今の段階ではヒトからヒトへの伝播は認められていない

9)いつブタの呼吸器でヒトのインフルエンザウイルスの遺伝子と再集合体をつくりヒトからヒトへ伝播するようになるか、を知るために、渡りガモ、家禽、ブタ、ヒトにおいて、インフルエンザウイルスの亜型のサーベイランスが常に実施されている

10)何型が新型インフルエンザウイルスとして登場するかを予測し、出現に際してワクチンの生産と診断のために的確なウイルス株を常に用意している

2006年5月23日 (火) 5 高病原性鳥インフルエンザの防疫対策
1)平成16年発生の山口、大分、京都府のものは、強毒タイプであった。17年の茨城県のものは、弱毒タイプであった

2)日本では、H5、H7亜型のものはすべて高病原性鳥インフルエンザとして取り扱うことにしてる

3)異常家禽の発見したら、立ち入り検査、病性鑑定、患畜殺処分、死体汚物等焼却、消毒を行い、手当金を交付する

4)届出義務違反者にはペナルティを課す

5)発生国からの家禽の輸入停止と発生国からのすべての入国者に対する靴底消毒を実施する

6)国際獣疫事務局(OIE、本部ぱり)、FAOが共同でGF-TADs(国際的な防疫対応システム)をつくった。HPAIはこの事業の対象である

7)サーベイランスとウイルスの生態の究明にむけて努力されている