Trane's Works 55, 56
1956, 11/30, Fri. MATING CALL session
1. Mating Call
2. Soultrane
3. Gnid
4. Super Jet
5. On A Misty Night
6. Romas
■曲名はコメントにリンクしています
John Coltrane (ts), Tadd Dameron (p),
John Simmons (b), Philly Joe Jones (ds)
Van Gelder studio, Hackensack, New Jersey.
○この時、ジョン・コルトレーン30歳2ヶ月、タッド・ダメロン39歳9ヶ月、ジョン・シモンズ38歳5ヵ月半、フィリー・ジョー・ジョーンズ33歳4ヵ月半。
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■セッションの概観
●前回2度目のマラソン・セッション(10/26)から約1ヶ月。56年中、コルトレーンのワン・ホーンでの録音は2度ありますが、そのうちの一つです(もう一つは、3/1or2の " Chambers' Music " )。この時期プレスティッジで頻繁に行なわれたインスタントなスタジオ・ジャム・セッションとは異なり、ダメロンのリーダーシップの下でよく纏った演奏になっています(何か自主的にリハーサルしたのではないかと思わせるような音です)。曲も全曲ダメロンのオリジナルで、コルトレーンを前提に書かれたものも含まれます。特にバラードとミディアム・テンポの曲の出来が素晴らしく、コルトレーンはそのリリカルな側面を十全に引き出されており、ダメロンの手腕がしのばれます(このようなスモール・コンボでダメロンのマジックが遺憾なく発揮された先例として、1947, 12/22のデクスター・ゴードンとのセッションがあります)。
(西内)
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1. Mating Call ( Tadd Dameron ) 5:33
●AABAなのかAABB'AなのかAABCAなのかわからないが、とにかく1コーラス40小節で、ブリッジが16小節。テーマの提示部はAセクション(8小節)がリズムの変化を伴って一回多く繰返されている。テーマの再提示部では後の方のAセクションが繰返されており、最後はフェイドアウト。冒頭、フィリー・ジョーが高速で刻む16拍のハイ・ハットが印象的。リズムはAセクションでは変拍子(6/8? あるいはポリ・リズム? ラテンっぽい)、Bセクションでは4ビート。
●いかにもコルトレーンが好きそうなマイナーなメロディで、ダメロンのクレジットがなければコルトレーンが書いたか、どっかから見つけて持ってきたと勘違いしそう。ダメロンがコルトレーンの好みを顧慮したのだろうか。それともたまたまか。56年最後のスタジオ・セッションで後のコルトレーンを予見させる、いかにもコルトレーンに相応しいテーマ・メロディに逢着するわけだ(John Paul Jones もコルトレーンらしいと言えば言えるが、こちらの方がコルトレーン度は濃い)。後年の荘厳、崇高で、アルカイックな無表情さとでもいったものを帯びた非人称的な衝動、人格的なものの遠ざかりのさなかに立ち現れる、無関心の情熱を猛烈にドライヴするような衝動が漲る(二重形容の類かな? ま、いっか)変拍子かつマイナーの曲でのソロからはまだまだ遠く、微かにそのほのかな芽が感じられる程度で、むしろ曲調に見合って勇壮で哀切、わりと人間的で、突出することなく、役どころをわきまえた慎重で丁寧なソロになっており、フレーズは途切れることなくいい流れが維持されている。またその慎重さが良い方向に作用してマラソン・セッションでのような不快な“硬さ”を生んでおらず、好感を抱かせる。所々8分音譜が非常にゴードン的。
(吉野)
□memo□
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2. Soultrane ( Tadd Dameron ) 5:21
●このセッションの他の曲同様、ダメロンの曲の良さを活かそうという配慮からか、音の一つ一つを非常に大切に扱ってる感じなんだけど、くどくなくて、至って自然で、成功していると思う。硬く締まった中高音が冴えてて、軽やかで、清涼感も感じられる。ダブル・タイムが長く続くことはなく、テーマのメロディの流れを活かしたフレーズと装飾音とのバランスがとてもよい。コルトレーンの56年中で、屈指の好演だと思う。名演と言い切ってしまいたい気もするが、この曲、この演奏の可憐さには“名演”という褒め方は何か相応しくないような気もする。ひっそりと愛でていたい感じ。でもコルトレーン・ファン以外の人にも安心して薦められるねこれは。
(佐々木)
□memo□
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3. Gnid ( Tadd Dameron ) 5:06
Soul Trane, On a Misty Night 同様、テーマの提示部では細心の注意を払ってメロディが扱われています。8小節のコーダが付いていて、テーマのメロディとは少し趣きの違った、粋でジャジーな感じになっています。最初の4小節はサブ・トーンで、後の4小節はふだん通りのタイトな音で吹いてます。
●ダブル・タイムを駆使した、ミディアム・テンポの曲でのこの時期に典型的なプレイになってます。“熱”は帯びるものの、これは強引さ、荒々しさ、情動的な激しさといったものではないと思います。メロディックなフレーズが少ないにもかかわらず、ほっとするような愛らしい曲想から逸脱するような類のダブル・タイムじゃないです。ダメロンとフィリー・ジョーの2小節交換の後の半コーラスでは粗いながらも適度に盛り上がり、テーマ(BA)の再提示へ続きますが、ごく自然に行っているんじゃないでしょうか。
(西内)
□memo□
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4. Super Jet ( Tadd Dameron ) 5:51
●ABAB(なのか、ABAB'なのかABACなのか実は良くわかってないんだがとりあえずABABということで話を進めます。どなたか正しいところを教えてください。)の曲の形式に忠実というか、曲なりのソロになっていて、
Aセクション:テーマ・フレーズに準じた、あるいは他のフレーズの反復、リフ・フレーズが中心の即興。
最初のBセクション:中継的展開部(展開はしてないかも)。
Aセクション:最初のAと同じ。
後のBセクション:終結部。とくに1st、2ndコーラスではジャンプ系というかR&B風というか、その手の終止形で終わる。
といったパターンがすべてのコーラスに共通し、オーヴァーラッピングも少なく、曲のどの箇所で演奏しているのか、わりと判りやすい即興になっている。ダメロンも同様のソロの構成で、またフィリー・ジョーのソロのフレーズにも反映されているようだ(判りにくいが)。ダメロンの指示によるものか、あるいは単にコルトレーンに後続の者が同調しただけか。
●他の曲同様の慎重なコルトレーンで、そこそこ安定しているが、ミディアム・テンポの曲やスロー・バラードに比べるとやや精彩に欠け、大人し過ぎて物足らない。ところが、アルバムの曲順通り、Romas の後に聴くとけっこう軽ろやかで爽快。
●フィリー・ジョーのソロの後、何が原因かわからぬが、テーマ再提示の出だしでコルトレーンがどもって出遅れてる感じ。
(吉野)
□memo□
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5. On A Misty Night ( Tadd Dameron ) 6:19
Soultrane か、このOn A Misty Night が、11月30日のセッション中ベスト・プレイではないでしょうか。とても安定していて、安心して聴いていられます。といっても、スタティックな抑制感があるわけではなく、やや速めのミディアムの Mating Call やアップ・テンポの Super Jet よりも、むしろこちらのほうが、よりヴィヴィッドな即興になっています。あまり気張った感じのしない軽やかなダブル・タイムの中に、所々挟まれよいアクセントとなっている、緩急の妙といいますか、偏心的な動きのフレーズの切れがとても良く、気持ちいいです。同じようなミディアム・テンポでの好演に、6月5日の Bye Bye Black Bird がありますが、それをさらに磨き上げたような感じです。ある意味、56年型コルトレーンの、ミディアム・テンポでの完成形と言ってもよいのではないでしょうか。また、決して目覚しいものではないし、インタープレイという程のものでもないのですが、ダメロンのソロでの、フィリー・ジョー、シモンズらのちょっとした対話といいますか、交歓といいますか、3者のさりげない絡みがこの佳曲をより好ましいものにしています。
(西内)
□memo1□     □memo2□
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6. Romas ( Tadd Dameron ) 6:50
●テーマ・レスの地味なスロー・ブルース。各コーラスともコンパクトに纏ったブルースらしい展開で、次のコーラスへの移行も至って自然。適度な間が取られ、長いダブル・タイムはない。それなりにアーシーだし、ディープでもあるけど、ダメロンのソロに聴かれるアーシーなモチーフに比べると質がかなり違っていて、泥臭くないし、灰汁もなくわりと端正。波長が合わないと聴くのがちょっとしんどい曲だけど、腰を落ち着けてじっくり聴くと、ダメロンの訥々としたピアノも悪くない。
(佐々木)
□memo□
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Trane's Works 55, 56