◆プロローグ
話はこの旅行に出掛ける2か月ほど前にさかのぼる。
「どっかに行きたい!」
妻に巣食う虫がまたもや騒ぎだした。
「どこ?ビッグか?ユアーズか?(どちらも近所のスーパー)」
“バシッ!”
私の言葉が終わると同時に、妻の蹴りが飛んできた。
「外国に決まってるでしょ!もう長いこと海外に行ってない!」
はて?妻はプリプリ怒っているが、わずか半年前に釜山に行ったはずだが・・・。
「韓国は日本みたいなもんよ。もっと遠いとこよ」
「じゃ、どこ?」
「ヨルダン、レバノン、シリアあたりかなぁ〜。最低でも2〜3週間くらいは行ってみたい」
「いっそ2〜30年くらい行って来たら、一人だけで」
“ビシッ!”
再び、妻の蹴りが入った。
その後、妻は床に転がるやいなや、仰向けになって手足をバタバタ動かしながら叫び続けた。
「旅に出たい!旅に出たい!旅に出たい!旅に出たい!旅に出たい!旅に出たい!旅に・・・」
まるでおもちゃ売り場の前で駄々をこねる子供のようだ。
いや、寧ろ、ひっくり返って手足をモゾモゾ動かしている甲虫に近い。
よ〜し、それなら手元にあるこの新聞紙を丸めてと、
―――うりゃ〜!とーりゃ〜!どうじゃ〜!
凶器と化した新聞紙が妻を容赦なく叩きつけると、緑やら黄色やら茶色やらの内臓を撒き散らし,妻は文字通り、虫の息となった。
―――ふん、思い知ったか。
「ちょっと〜、私のハナシ聞いてる?」
「えっ、あぁ、ハイ、ちゃんと聞いてます・・・」
私の空の右手は、むなしく宙を彷徨っていただけだった。
「まぁ気持は分かるが、華和子(娘・3歳になったばかり)もまだ小さいし・・・」
どうにか妻を説得して、近い、安全、安い(これは両親の都合)、を優先的に考え、妻には台湾で
許していただいた。
今回もいつも通りの往復のチケット(※1)&ガイドブックのみの行きあたりばったりの旅。
親子3人の気ままな家族旅行に出掛けるとしよう。
台北・孔子廟にて。
(※1)H・I・Sで1人¥39800。広島発着・お盆がらみにしては安いが、娘の分もしっかり同額取られた。それは仕方ないとしても、
表示価格にない謎の手配料金¥2100×3人=¥6300を取られ、妻はいたく憤慨した。
8月9日
◆心配していた台湾直撃の台風は昨日の内に去ったようで(※2)、飛行機も無事台北に到着しホッとしていたら、現地はかなりの雨と風。しかも台湾新幹線に乗って台中に着いた頃には、ひどい暴風雨になっていた。
今日のうちに、次の目的地・鹿港に行くつもりだったが、断念して台中の宿に泊まることに。
ぬれネズミのまま、乗り継ぎの小さな駅(駅の名は「成功」。当てつけか?)で待機。
時刻表の電光掲示板も消え、「次の電車はいつ来るか分からない」と言われた。
しかしながら、駅員さんは色々と便宜を図ってくれた。
ホテルの部屋の中は、ご覧のありさま。
台中駅前の古い安宿。ツインで¥2700。エアコンは30年以上前の代物だったが、
とにかく雨がひどく(道路にも溢れ、膝まで浸かった)選ぶ余裕なし。
宿泊先のホテルから撮った、台中駅。
娘を抱え、駅からこの距離を歩くだけで大変だった。

土砂降りでも腹は減る、という訳で、タクシー(※3)に乗って、【肉員】の有名な店へ。
左が手軽な庶民料理、【肉員】。中身はミンチでサツマイモから作った皮(まるで餅のよう)で包み、甘辛タレが掛けてあり、約100円
右が魚のすり身が入ったスープ、【魚丸湯】。約75円。無論、どちらも好吃!
(※2)実は50年に一度と言われるような災害で、南の方はかなりの被害が出ていたようだ。現地のテレビも深刻な状況をずーっと放映していた。
(※3)タクシーは初乗り¥240くらい。運賃も概ね半額程度か。
台湾人親切対日本人態度相当良好
聞いてはいたが、台湾の人々はとても親切だ。例えば行き先に迷っていたら、「こう行けばいい」「こっちの方が速い」と、わざわざ話しかけてきて教えてくれる。この日も台風で困っている私達に、ダイヤの乱れた電車の乗り継ぎ方を聞いて回ってくれ、電車賃まで出してくれた。本当にありがたいことだと思う。
但し、「台北駅に行くのですか?私に着いて来て下さい」との親切な申し出に断り切れず、バス・電車を乗り継ぐ羽目になったこともあった。実はその日、かなり疲れていて、料金もあまり変わらないタクシーを利用するつもりだったのに・・・。