「あのさあマーカー、あのリキッドってよお…すげーな」

「何だ、新入り批評か」

同僚の目の前で平気で「今まで集めてきたAVを自分好みに編集」とかや っとるロッドもすごいっちゃすごいな。目尻でも引っ張ってやろう。パ タリロみたいな顔になってオツだ。

「やめて出鼻くじくの。目を引っ張るのも今すぐ中断して。俺はタレ目 のままの俺が好きだから」

「そうか。それで、リキッドがどうした」

というか、そのエロビデオの音声を切れ。腹立たしい。そんなフランス 女なんかタイ人でもガーナ人でも勝手にスワッピングさせときゃいいだ ろ。

「アイツさあ、さっき、暑いなあとか言っていきなりエアコン付けてん だよ。今日、外涼しいのに。雨降ってるわけでもないのに。網戸だって あんのに。何なんだ?」

「アメリカの舞浜じゃエネルギー消費量を拡大することが推奨されてる んじゃないか?二酸化炭素排出量5%アップで税金が5%ダウンとか」

「すげーな。正に物質文明の申し子だな」

「ああ。今時は逆にかっこいいな」

私の実家なんか、未だに電気来てないし。



「おいリキッド、来い」

「なんだよー」

オレはやっと貰った休みなんだから寝たいしバイオハザード2の隠しシ ナリオもやりたいし撮り溜めしてたアニメも観たいのに。でもなあ、 マーカーに逆らったら恐いよな。ヒラキにされそうだよな。よし、ここ は大人しく行こう。

「おい、お前が今食いたい物を言ってみろ」

何しようってんだ?真面目な顔しちゃって。

「なんだよー、作ってくれんの?えーと…クレープ!」

「…そうか。お前、クレープの作り方を知っとるか?」

マーカーもしかして、いつもそういう顔してればかっこいいんじゃねえ の?

「知らないよ。それが一体なんなんだよー」

「牛乳と水をそれぞれ1カップ強、タマゴ4個、篩った小麦粉2カップ、 大さじ4杯のバターをよく混ぜて漉せ。冷蔵庫で2時間寝かせれば、 クレープが20枚焼ける」

「ふーん。めんどくせー、そんなん冷凍の奴でいいじゃん。…で?」

マーカーがいきなりキレた。

「バカモンがあっ!!!私の料理をベルトコンベアから出てきたパサパ サの円盤と一緒にするな!! 大体冷凍食品が世界中のどこでも入手できると思ったら大間違いだし、 お前に手作りの食事を作ってくれる賢く優しく美しいお兄さんがいつい かなる時にもスタンバってると思うのならお前はもうバカ!すごくすご いバカ!!私が何を言いたいのかわかるか!」

「えっ…」

たじろいでたら、マーカーのテンションは勝手に下がった。そして、粉 の袋と何やら見たこともない形のザルを放られた。

「お前は粉を篩う係だ」

ああ、手伝うのね。
このザルに粉を入れてポンポン振ってればいいのね。

「こういうことはキチンと覚えておかんといかんぞ、人として」

「へー。クレープ作れないとガンマ団員はダメなのかよ?」

「…お前な、少し脳の容積が不足してるようだから嵩増しにガンマ団生 協特製の熟成味噌でも詰めておけ。注文番号はGの17だ」

どういう意味だよ…いや、オレがバカ扱いされたってのは分かったんだ けど、そしてそんなことがわかっちゃったオレを賢いと感じているオレ がいるのも本当だけど、何で今オレがバカって言われたんだっていう理 由の方だよ、問題は。

「その内分かる。嫌でも分かる。生活力と、地に足付いた行動様式がど んだけ大事かってことが」

「あ、そう」

よくわかんねーけど、クレープはうまかった。
レタスとハム巻いて食った。