時速75キロ
高校2年のまゆこは毎日がほんとに楽しい、
同じクラスの浅川のことがほんとに好きだから。
<朝、通学電車にのっている>
「まゆこ」 浅川いいなあ おもしろいなあ
「まゆこ」 浅川もあたしのこと明らかに好いてるんだよなあ、ほんと
<鷹の台と恋ヶ窪の真ん中あたり、いつものように電車の窓の外を見ている>
<長く続く駐輪場のコンクリートの塀 スプレーで大きくかかれたそれは
時速75キロで飛んでった>
「 ま ゆ 世界 で いち ば ん お ま え が 好 き だ」
ネジ工場
ひろしはネジ工場で働いていて、その中の服飾場ですみれも働いている
ひろしが残業のとき、すみれとよく二人で話す。
すみれは紺の作業服に真っ白な三角巾をしている。
「すみれ」 ネジ作るのうまいね
<ひろしはずっと手元を見ている>
「ひろし」 いろんなネジ作れんだぞ 長いのとか、平らなのとか
「すみれ」 あたしは今日も布切ったり、縫ったりしたよ
「ひろし」 それも面白そうだな、 ネジも面白いけど
「ひろし」 俺が世界で一番のネジを何万個も作ってやるよ
<ひろしはこっちを向いてにっこり笑った>
「すみれ」 なんだか照れるよ
女の子グループ
ひろこは、つよしのことが好きだ。今、秋の修学旅行の班決めをすることになった。
みんなはドヤドヤとうるさくなった、とくに女子は。
「ひろこ」 つよしと一緒がいいよ、本気で。絶対。 でもそんなこと言えないよなあ。
言えるわけないって。
<もういろんなとこでグループができ始め、ひろこと仲のいい女の子達のグループも
できていた>
ひろこはそのグループからゆっくり離れた
見るとつよしは友達と小突きあっている。
<ほとんど班ができてしっまている ひろこはドキドキドキドキしてきた>
「ひろこ」 ああー むりだ やだ
「ひろこっ ひろこ来るの遅いから班長になっちゃたよ ガンバ 」
<もう 決まってた>
男子だけのグループに入ったつよしのほうをチラッと見た。
つよしも こっちを見ていた おたがい目をそらした
とても苦しかった
四歩先、夏
夏休み、中学2年の広瀬は図書館に来ている。何するわけでもなく、
ただ涼んでいる。
7メートルくらい先の自動ドアから同じクラスの新井さんが入ってくるのが見えた
広瀬は目をそらした 頭を下に傾けた
新井さんは一瞬止まったようで すぐ歩き出した
「広瀬」 うわあこっち来てるなあ・・ 気まずいわ
四歩先くらいに来たとき、広瀬は頭を上げた
瞬間新井さんと目が合って、新井さんは瞬間目をそらした
「広瀬」 新井さん
「新井」 あっ 広瀬君 何してんの
「広瀬」 いや涼しいからさ、朝からずっといる 新井さんは
「新井」 おんなじ 行くとこないし、 まあいいや じゃあね
「広瀬」 じゃあね
次の日 図書館 同じ席
「広瀬君」
「広瀬」 おお 新井さん
<おもわず笑っちゃった>
「新井」 やっぱいた
<すごいかわいく笑ってる>
「広瀬」 俺は明日も来るけどね
「新井」 あたしも来るしね
トイレットで脱着
行ってきますと 家を出た
秋空晴れる 新学期
面目校則 スカートの
長さ自転車 こぎづらく
鞄にかくした 超ルーズ
普通普段の 仕草にて
駅のトイレに 入り込む
しかし戸惑い 緊張に
音速リズム このハート
人の手のよな 今の手で
織り目一つに 全神経
部屋で試した 極めポーズ
あの感じなら 大丈夫
スカート三段 織り上げりゃ
なんの迷いも もうないの
水を流して 深呼吸
鍵を開けたら 飛び出すの
誰のためでも 無いってこと
誰のためでも ないって
学校までに 20分
私今から はじまるの
おはようの森
夏美は中学2年。家がうまくいっていない
両親の怒鳴り声で目がさめた 一気に緊張してドキドキする。
布団の中で下に降りられるようになるのを待つ。私が起きたってことが親に分かると悪い
すごい緊張して気持ち悪くなってきた 「最悪だぁ」
トイレも我慢できないから起きようと思う
ガタガタ音を立てて布団から立つと、下が一気に静かになった。
「やっぱりなあ」
「夏美」 おはよう
「父」 おはよう ちょっと早いね
「夏美」 うん
「母」 今日さむいよー すごい晴れてるけどね
<とにかくつらい 朝ご飯の味がしない>
「夏美」 じゃ行ってくるね
「母」 いってらっしゃい
玄関を出るときなんかしぐさがぎこちなくなってしまった
外に出で歩いてると少し落ち着いた
クラスに入ると鳥井くんがいた
「夏美」 おはよう
「鳥井」 おはようの森のおはようさん
「夏美」 ハハハなにそれ
「鳥井」 今日早いな
「夏美」 うん
「鳥井」 かばんぶん投げていい?
「夏美」 アッハハハハッ いんじゃない?
「鳥井」 よくねえよ 汚れるし
鳥井くんが廊下に出てった
急に眠くなってきた。ほんとすごい晴れてるし
アウト老
二人は年寄りで、老人ホームにいる。
昼のレクレーションが始まる30分前、まさえはホールで座っている
「まさえさん」
「まさえ」 ああ寺田さん 今日も早いですね
「寺田」 まさえさんもやっぱりこの席がいいみたいですね
「まさえ」 日がよく当たって気持ちいいんですよね
<しばらく窓の外をながめる 爽快な空に緑が映えている>
「寺田」 今日のレクレーションなんでしたっけ
「まさえ」 爽快な 空に緑が 映えている 俳句ですよ、今日も
「寺田」 そうかあ、また俳句か。
「まさえ」 好きなんですけどね、ちょっと飽きました
「寺田」 飽きちゃった ああ飽きちゃった 飽きちゃった なんてね
<二人は大きく笑った>
<窓の外には小さな軟らかそうな芽が生え、芽はまわりを暖め
ているようだ>
「寺田」 どこか 行きませんか
「まさえ」 そうね 抜け出しちゃいましょう
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