一昨年の10月に結婚をした私たちが1匹のウサギを買いに行ったのは、
結婚翌月の11月でした。
メスだと言われて買ったら数週間後にオスであることが発覚したヴィヴィアン。
その後は専業主婦だった妻と一日中生活を共にし、寝る時と出かけるとき以外は
いつもゲージから出して1Kの部屋に放し飼いにしていました。
部屋中を自由に飛びまわるせいで何かといたずらされることも多かったけど、
次第に懐くようになり、この頃では私たちが行く場所行く場所ぴょんぴょんと
ついて来るようになり、私が仕事に行く時は必ず玄関先まで来て
チョコンと座って見送ってくれました。
歯並びがもともと悪く、一月に一度は必ず動物病院に連れて行って伸びすぎた歯を
切ってもらっていたけど、1,000円で購入したウサギなのに毎月歯切るたびに
1,000円かかるなんてずいぶん高いウサギだな〜なんて、
冗談を言っていたこともありました。
歯が伸びすぎてしまうと食べることができなくなり、
そのせいで他の病気になることもあるから、様子がおかしかったらすぐに病院に
つれてきて下さいと以前から動物病院の先生には言われていました。
毎回歯を切ってもらうたびにカラダ全体を検査してくれて、
おかしいところがないかチェックしてくれた親切な先生。
その先生がその日は休みだった・・・
2/10朝、いつもならゲージを開けるとすぐに飛び出してきて
部屋を何周かするヴィヴィアンが、なぜか今日はじっとしたまま動かない。
どうしたのかな、と思ってよく見るとエサが全く減っていないことにが気づいた。
歯が噛み合ってないせいで食欲がないのかと思ったけど、
どうもそういう感じでもない。目が虚ろでグッタリしているという感じなのだ。
私はその日仕事があったので、ヴィヴィアンは妻に動物病院まで
連れて行ってもらうことにした。
そしたらいつもの親切な先生ではなくて、前にも一度会ったことがある
若くて愛想の悪い先生がいたのだ。
まず、いつものように歯を切ると「これで食欲は戻ると思いますよ」と一言。
特にカラダ全体をチェックすることもなく、ただ歯を切っただけで終わった。
妻はその言葉を信じてヴィヴィアンを家に連れて帰ってきたが、
数時間経っても一向に食欲が戻る気配はない。
妻は夕方もう一度ヴィヴィアンを連れて動物病院まで行き、
そのことを先生に話すと、「そしたら食欲増進の薬を出しておきましょう」と。
家に帰ってその薬を与えたのが17時半頃。
妻はヴィヴィアンの様子を随時メールで報告してくれたが、
私が仕事から帰れるのは早くても19時頃。とても仕事が手につかない状態だった。
そんな妻から電話がきたのは18時半頃。
今まではすべてメールでの報告だったのに、何か悪い予感・・・
そしてその予感は当たった。
「もうダメかもしれないよ〜・・・」
私が電話に出るなり妻は泣きながら今の様子を説明してくれたが、
ほとんど言葉になっていなかった。
ヴィヴィアンは、薬を与えた直後からどんどんカラダが衰弱していき、
下半身が麻痺したように硬くなっているというのだ。
私は仕事を終えるとすぐに家に向かった。
グッタリと横になっているヴィヴィアンと、その横で泣きじゃくる妻。
下半身付随の人間が必死に上半身だけを使って「ほふく前身」しようとするように、
ヴィヴィアンは必死に上半身だけを動かして立ち上がろうとしていた。
ただ、下半身に触ると体温が低下しているのがよくわかり、
カラダはカチカチに硬くなっている。まだ生きてるんだから諦めちゃいけない。
私はそう自分に言い聞かせたかったが、同時にもう無理かもしれない
という思いも強く、目頭が熱くなるのを抑えることができなかった。
必死にネットで調べてみると、そういう症状になったときは
とにかくカラダを温めることが大事だと書いてある。
それに従って私と妻はカラダを温め続けたが、
病院の先生はそういうことは一言も言わなかったらしい。
いつもの親切な先生がいれば・・・
泣いて話すことのできない妻の変わりに私は動物病院に電話した。
すると電話に出た年配の女性はこっちの名前も確認せずに、
「今日注射したウサギですよね?一時的に衰弱してるのかもしれません。
カラダを温めて砂糖水を飲ませてください。
それが続くようなら明日の朝一番に連れてきてください。」
妻に確認したが今日は注射なんて打っていないのだ。
カラダを温めることも砂糖水を飲ませることも一切言われていない。
何より、明日の朝じゃもう間に合わないかもしれない。
私は妻と電話を変わった。
「今日注射なんて打ってません。もうカラダが硬くなって自分じゃ動けないんです。
どうすればいいんですか。」妻は涙を必死に堪えて話していた。
その時だった。
キーーーーーッ!!
ヴィヴィアンは私が背中を温めているその目の前で突然奇声を上げたのだ。
「いま奇声を上げました!! もうヤダ・・・」
妻は受話器をもったまま、とうとう堪えていた涙が溢れ出した。
「奇声を上げたらもう危ないです」
受話器の向こうでそう説明する声は、とても事務的で冷たい口調だったそうだ。
妻は体を震わせながら受話器を置いた。
奇声を上げたヴィヴィアンはそれでも必死にカラダを動かそうとしていた。
私と妻は諦めずにカラダを温め続けたが、次第にカラダは硬直していく。
まず床にもたれていた頭が動かなくなり、開いたままの目も視点が定まらないような
状態になり、そして時々動いていた前足も完全に動かなくなり、
ピクっと動いたシッポも気のせいかと思うほど小さな動きで、小さく、
でも確実に刻みつづけていた心臓も最後には動かなくなってしまった。
2007年2月10日 20:13
享年1歳 ヴィヴィアン虹の橋へ旅立つ
動物病院への不信感、そして自分達の無力さへ対する憤り。
もう少し長生きさせてやることはできなかっただろうか。
そう思うと私たちは言葉を失い泣きつづけた。
奇しくも命日となった2月10日は、新しいアパートへの入居日だった。
引越しは次の週の予定だったけど、10日から入居は可能となっている。
「今度新しい家に連れて行くからね」
「新しい家は3Kだよ。広いからいっぱい遊べるよ」
そんな風に話しかけていた言葉が今では空しく蘇ってくる。
今度のアパートは動物は飼ってはいけないことになっているから、
近所の人にバレないようにヴィヴィアンを運ぶには夜運んだほうがいいとか、
ベランダに出ていかないように柵をしたほうがいいかなとか、
今となっては何の意味もない心配になってしまった。
動物は人間の言葉がわからないなんて人間が勝手に思っているだけで、
そんな私たちの会話をヴィヴィアンが聞いていたんだとしたら、
「心配しなくてもいいよ。ボクは新しい家にはいかないんだよ。」
なんて言いたかったのだろうか。
実際ウサギは環境の変化に敏感で相当ストレスをためやすい動物だから、
最近引越しの準備で部屋が雑然としていたり、出かけることが多くて
カマってあげられなかったことがストレスになっていたとしたら、
とてもかわいそうなことをしたと思う。
そうじゃなくても私は最近風邪を引いて仕事から帰ると寝込んでいたし、
妻も腰痛がひどくて昼間は横になっていたというから、
誰も遊んでくれる人がいなくて寂しかったのかもしれない。
ウサギって寂しいと死んじゃうんだよ
何度も聞いたことのある言葉だったけど、
ヴィヴィアンには亡くなる前に寂しい思いをさせてしまったことを謝りたい。
最近カマってあげられなくて、ごめんね
新しい家に連れて行ってあげれなくて、ごめんね
1年ちょっとの短い間だったけど、いっぱい楽しませてくれてありがとう
これからは好きなだけ自由に遊んでいいからね
翌日、ヴィヴィアンの遺体を連れて新しい家を案内してあげました。
もう今までの家には誰もいないからね。遊びに来るときはこっちの家に来るんだよ。
それとも虹の橋でいっぱいお友達つくって遊んでるから、
こっちに遊びに来ている暇なんてないのかな。
それなら虹の橋に迎えに行くまでずっと待っててね!
ヴィヴィ!短い間だったけど、たくさんの思い出をありがとう!
(2007年3月6日 記)
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