やんばる颱風
沖縄・山原 '07.07.08〜07.17


 バスを降りると紫外線が一気に身体を突き刺した。
 アテテテッ。
 暑くて痛いので言葉にするとこうなってしまう。
 冷風を求めて市役所に入ったが日曜でクーラーは止められていた。そ
れでも日差しは遮るのでひと息つくことができた。
 さすが南国の建物、風通しも巧く考えて作られていて、テラスで涼ん
でいるとこのままビール片手にいつまでも居たくなる。

 腹が減ったので名護そばを食いに行く。
 しかし一歩市役所を出ると再びアテテテッとなり、早速後悔した。
 沖縄そばも地方によっていろいろと呼び名やスタイルが違っている。
いわゆるソーキそばを有名にした岸本食堂はこの名護そばの系統になる。
 ネットで調べた有名店に行くはずが、道を訊いたおっさんに「安里そ
ば」を薦められる。
 そう言えばバスの運ちゃんもその店のことを言っていた。
 沖縄人に習って木陰を砂漠のオアシスのように渡り歩いて往くと、そ
の店はいかにもと思わせるプレハブ作りで、ちょうど昼時だったことも
あってすぐには座れないほど込んでいた。
 3枚バラ肉入りを頼むと甘辛く炊かれた大きなバラ肉が語呂合わせの
ように3枚も入っていて、見た目も味もワイルドなヤツだった。
 肉の味がしつこすぎる。肉は八重山のような細切りがさっぱりしてい
てイイ。
 今まで食った中では薄味あっさり系だがしっかりと出汁の味がする首
里の「ギャラリーしろま」が一番美味いと思う。

 市立博物館は何度も名護に来ているのに年末休暇や月曜日だったりで
入れたことがない。
 今度こそと勢いづいて入ったが職員はベンチで昼寝をしており、全体
的に見たければ勝手に見れば、というやる気のない雰囲気だ。
 ここも年末に行った八丈島も博物館とは名ばかりのところが多く、展
示品の管理やその展示方法の工夫がちっとも見られない。作ればそれで
ハイ終わり、そんな行政の姿勢だからだろう。
 ただひとつ、名護湾ではかなりの最近までイルカ漁が行われていて、
あの穏やかな日にも何故か波立っている海岸線がまるで漁師の鼓動のよ
うで、当時の賑わいを思い起こさせた。
 
 東村行きのバス停を探すが見つからず、人に訊ねてもそんな一日わず
か3本のローカルバスに乗る人間はいないので誰も知らない。
 名護十字路というバス停は行き先によって異なった場所にあり、上り
と下りの区別のつかないよそ者にとってはさらにその数が倍加するのだ。
 それが分かった頃にはバスは行ってしまい、途中の塩谷まで行って後
はヒッチハイクすることにした。しかし運転手が同じバス停で降りる女
子高校生に声をかけてくれ、その娘を迎えに来た車に乗せてもらって無
事東村平良に到着した。

 宿はすぐ隣が宮里藍の実家で、我が宿はまるで宮里家の物置くらいに
しか見えない。一泊2食で4200円の別館も良かったが、翌日から何
かと都合の良い本館5250円に移ったので宮里家とは道を隔てて2軒
向こうになってしまった。

 沖縄イコール海、というのはシロートだ。沖縄旅を続けて早10年、
15回も来ているのだから今回はそれなりのこともしてやろうと思った。
 そんなわけで新川川(あらかわがわ)というややこしい名前の川を遡
るエコツアーに参加することにした。
 ガイドの比嘉さんと高江集落のはずれから歩き出した。
 今この集落はヘリパットというヘリコプターの離着陸場が移設される
という問題を抱えていて、今朝もその工事現場となるあたりには反対派
が座り込みをしていた。
 住民のほとどんがヘリパットには反対だが、いざ座り込みとなるとい
ろいろとしがらみがあるらしくあまり盛り上がってはいない様子だ。
 しかしこのヘリパットは普天間基地移設問題が起きたときに日本政府
がこっそりとアメリカに約束してしっまているので、悲しいが間違いな
くできてしまうだろう。
 こんな我々には内緒の密約がまだいくつもありそうだ。

 川はいきなり深みになり、胸まで水に浸かると慣れていない身体には 堪えた。しかし真夏の沖縄でこの冷たさはかえって新鮮な経験だ。  もろい堆積岩を削って走る谷は深い森に包まれてうす暗く、青空が頭 上に線を描いて見えた。  いくつかの渕を泳ぎ、岩を越えて休憩するとカワセミが水面を切るよ うに飛んで行った。やんばるの森の奥からはアカショウビンのかん高い 声が響いている。  原生林に見えるこの森も二次林だそうで、そういえば川沿いには杣道 や生活用水を運んだパイプなどが残っていて、人が深く関わっていた様 子が分かる。  保水力の高いブナ科の木々が多く、それだからこそやんばるの森や生 物を守っていられるのだろう。それもヘリパットなどというのができて しまったらどうなるか分からない。  水は細かな粒子の赤土が溶けているのか完全な透明とはいえないが、 それでも良く澄んでいてテナガエビが泳いでいるのが見えた。この川に は1mもある大ウナギもいるという。  滝を2つ3つとシャワークライムをしてゴールするとそこにはまた真 夏の太陽がガッチリと立ちはだかっていた。
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