将来の社会システムを視野に入れた
新しい都市交通システムの構築(概要版)

フライパンと目玉焼き

現代都市政策研究会(MUP)   



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1 21世紀社会と歩行者の復権
(1)21世紀の都市の展望
   近年,都市の発展・拡大を前提とした「都市化社会」から,都市生活の質を重視した「都市型社
 会」へ移行しつつあり,社会経済構造やそれに対応する行政施策も転換期にある。ここでのキーワ
 ードは,「地球環境」「環境共生」「リサイクル」「高齢少子化」「情報化」「ボランティア」
 「パートナーシップ」など,様々なものが上げられる。
  このような傾向の中,都市と個人との関わりは今後重要度を増し,都市はその個性を最大限発揮
 するために,都市の中にある資源(人,物,歴史,文化等)を効果的に再生・活用するとともに,
 個人もその行為に関わることによって,自己のアイデンティティを確認していく傾向が強まるもの
 と考えられる。ある意味で,これからの都市は,個人個人がそれぞれの価値観を認め合い,自由な
 活動を確保され,豊かな自己実現を展開できる「場(装置)」として捉えられる。

(2)新しい社会システムへの転換
  このような状況認識に立つと,社会システムそのものも転換が求められる。つまり,物や金を生
 み出し続けるフローの社会経済システムから,都市を構成する要素(ストック)の維持・活用に価
 値が見い出される社会経済システムへの転換が必要となってくる。
  都市づくりの分野においても,都市の継続的成長管理を前提とした都市計画や,これまでの右肩
 上がりの経済成長をベースにした事業手法・箱物整備は見直しを迫られている。
  地域や生活の緩やかな連続性を確保しつつ,スクラップアンドビルドの都市建設から,都市の個
 性を生かした循環型の市街地更新による都市再生を進めることが今後の大きな課題である。この課
 題に取り組むに当たっては,経済の低成長をベースに,まちづくりの関係主体が連携と役割分担を
 行いながら,都市を継続的にマネージメントしていく手法の構築が求められている。

(3)土地利用システムの転換
  また,都市環境を形成する重要な要素である「土地利用」については,商品としての土地利用か
 ら,地域社会・国際社会を背景に,人々を豊かにする土地利用への転換を今後さらに図っていくこ
 とが求められる。そこに住む人の身近な生活を豊かし,外から訪れる人に魅力を与える土地利用は
 どうあるべきか−−−これを考えるためには,外部から人材・資金等をどう呼び込むか,都市の継
 続的にどう維持・運営するか,またその魅力をどう発信するかといった点を,都市づくりの基盤と
 して整備することが重要となる。また,それらの土地利用を繋ぐ動線をどう設定するのかというこ
 とが非常に重要になってくる。成熟都市・持続可能都市に対応した土地利用システムと交通システ
 ムの構築が,今後の都市の大きな課題であると言える。

(4)歩行者の復権
  都市としての京都は,ストックを重視した社会として京都固有の優れた都市資源の保全と魅力発
 信,その現代的活用の可能性が他都市に比べて圧倒的に豊富であり,世界の中でも独自の存在感を
 持っている。また,これに取り組む都市づくりの先進性が全国の他の都市の模範ともなりうる。
  ゆったりとした時間が流れ,身近な環境が豊かな「京都」。住み,訪れ,人や情報が交流する
 「京都」。この実現に向けて,京都は新たな都市づくりの第一歩を踏み出すことが望まれる。そこ
 で,今後の都市づくりの展開の契機となり,新しい社会経済システム・土地利用システムの構築を
 誘引しうる,インパクトを持った「都市のしつらえ」の形成を提案したい。
  身近で豊かな生活環境を確保し,人や情報が交流する「京都」を創造していくための「都市のし
 つらえ」−−この着想点として,「自動車で移動するまち」から「歩いて楽しめるまち」への転換
 を掲げる。自動車優先の社会から自転車の利用も含めた歩行者の復権を展望して,歩行者空間の形
 成,歩行者空間を繋ぐスムーズな交通ネットワークの形成,快適な交通機関の実現など,新しい都
 市交通システムの創造を目指す。これにより,京都の都市としての魅力が高まるとともに,同時に
 高齢者・障害者にとっても移動しやすいまちの再構築を図ることにより,総合的に,住み,働き,
 訪れる人の生活をより豊かにできるものと確信する。

2 都市構造と交通体系

(1)「目玉焼き」の都市構造
   京都は,門前町や同業者町など地域ごとに自立する「まち」の連合によって構成されている。
 これらの「まち」は多様な用途や意匠の建物が集まりながらも,個性豊かな地域性や町並みを形成
 し,まとまりのある雰囲気を醸し出している。例えば,都心部などのにぎわいのある商店街,観光
 地や名所・旧跡などの観光スポット,西陣や伏見などの伝統産業のまち等々,京都には個性豊な地
 域が散在している。このような地域や「まち」の特徴は,歩くことによって初めてその魅力を体感
 し得るものであり,ヒューマンスケールの町並みは,まさに歩くことを前提としているのである。
  そこで,このことに着目して,次のような都市構造を提案したい。個性豊な一つの地域を「目玉
 焼き」に見立てる。その中で最も中心的なエリア,即ち歩くことを前提としたエリアを「黄身」と
 し,原則として自動車交通を排除する区域とする。その周辺部,即ち「白身」の部分はできるだけ
 自動車利用を抑制し「歩けるまち」の区域とする。ちょうど京都という都市を一つの大きなフライ
 パンにたとえると,その中に何人前もの目玉焼きが収まっている状態である。言うまでもなく,フ
 ライパンの縁にあたるのが,いわゆる三山ということになる。このような目玉焼き,即ちウォーキ
 ングエリアの候補地としては,職住共存の市街地で町家も多数現存する「都心部」や「西陣」「伏見」
 界わい,観光スポットの「御所・二条城」や「東寺」「祇園・清水」「太秦」「嵯峨・嵐山」「大
 徳寺・船岡山」界わい,ターミナル周辺の「京都駅・本願寺」や「山科駅」「醍醐・小野」界わい,
 大学や公共施設が集積する「吉田・岡崎」「衣笠・花園」界わい等が考えられる。
  このような地域を一つ一つの「目玉焼き」として設定した場合,次に問題となるのが目玉焼きと
 目玉焼き相互の交通システムの問題である。
<目玉焼き都市構造の概念図>
(2)将来の交通体系
  目玉焼き理論を成立させるためには,従来の車中心社会から歩行者と公共交通を中心とする都市
 構造への転換を必要とする。そのための交通ネットワークづくりを行うというのが,今回の研究テ
 ーマである。
  @ これまでの問題
   これまでの日本の都市は,マイカーの自由な利用を認めてきた。車の通行量が増えると道路拡
  幅,高速道路の新設といったようにハード面の整備が進められ,それに対して,車の通行の妨げ
  となる路面電車の廃止や,交通事故防止のための横断歩道橋・地下道の新設など,車の円滑な通
  行を妨げる公共交通機関や歩行者を道路上から排除する交通施策が行われてきた。
   もっとも,地下鉄の建設やバス路線網の充実,前述の横断歩道橋・地下道の新設といった代替
  の施策は実施されていたが,それらは歩行者に対して必ずしも利便をもたらしたわけではない。
  地下鉄は路面電車よりネットワークが疎にならざるを得ないし,バスは渋滞にすぐ巻き込まれて
  しまう。横断歩道橋や地下道は高齢者や身体障害者にとってきわめて不便なものである。結局,
  車を利用しないと生活が不便な社会となってしまったのである。
   その結果,都市に車があふれ,路線が複雑化して定時性を失ったバスから乗客は逸走し,減便
  そして路線廃止といった悪循環を繰り返すようになった。幹線道路以外の細街路にまで車が侵入
  することにより,歩行環境は極めて悪化した。都市中心部から活気は消え,かつては繁栄を誇っ
  た中心部の商店街は,郊外型の大型店やロードサイドショップに押されて衰退の一途をたどった。
   このような自動車中心の流れを食い止め,逆転させる仕組みを考えていく必要がある。

  A 地域内交通のネットワーク確立に向けて
   ネットワークの主眼は,「連続性の確保」である。マイカー利用が増えた背景をたどってみる
  と,公共交通機関を利用する場合,運賃や乗り継ぎといった分野での連続性が乏しく,抵抗が強
  い。それに引き換えマイカーは,ドア・トゥ・ドアで移動することが可能であり,渋滞さえ辛抱
  すれば快適に移動することができる。この状態で公共交通機関を利用しましょうと言っても,利
  用率の向上を見こめるはずがない。そこで必要となるのが,一定のシステムづくりである。
   システムづくりの主眼は,公共交通機関のネットワークづくりと自動車交通の需用管理である。
  従来,バラバラに運営されていた公共交通機関相互の連携を強化し,利便性の向上を図る。また,
  従来自由に市内を走ることができた車の需要を管理し,容量を超える車の流入を防ぐ。この時,
  車を利用するのと変わらない連続性が確保されていることが必要である。
   もっとも,公共交通機関のシステムも,旧態依然としたものではネットワーク化しても意味が
  ない。乗って楽しく快適な公共交通機関でないと,都市の魅力たり得ない。そのためには,事業
  者の側にも創意と工夫が必要であろう。

  B 新しい都市交通システム
   これまでの都市交通システムを改め,地球環境時代にふさわしい「目玉焼き都市構造」におけ
  る新しい都市交通システムを構築するためには,次の3つの視点からシステムを考えていかなけ
  ればならない。
   「とめる」システム…市内や「目玉焼き」への過剰な流入交通を抑制するシステム。
   「むすぶ」システム…公共交通機関のネットワーク機能を強化するシステム。
   「ながす」システム…魅力ある公共交通機関を整備し円滑化することにより,目玉焼き 相互
             の移動を楽しくかつ快適にするシステム。
   具体例の説明は第3章で述べるが,この3つの観点から都市交通を整備することにより,21世紀
  の新しい社会システムに対応した「歩けるまち・京都」の実現が達成できるものと考える。

3 とめる・むすぶ・ながす
   〜新しい都市交通システムの提案〜

(1)「とめる」ためのシステムの提案

  現在の市街地は,自動車が縦横無尽に往来し,いわば自動車が「走るまち」「走れるまち」にな
 り,歩行者が肩身の狭い思いをしている。歩行者の復権を目指し,「歩くまち」「歩けるまち」に
 市街地の構造を転換するためには,市街地内への自動車交通の流入抑制が一つの鍵を握る。そこで,
 「とめる」ための手法として次のような手法を提案する。

  @ パーク・アンド・ライド
   都市の内部への自動車交通の流入を抑制するため,都市の外周部に大規模な駐車場を設け,そ
  こから鉄道やバスといった公共交通機関に乗り換えて目的地に誘導する。
   平日を主とする通勤交通の場合,鉄道駅に近接する市街地外周部の既存大型店等の駐車場(例
  :六地蔵駅周辺の大型店の駐車場)を活用する方法が考えられる。この場合,例えば大型店の商
  品券の購入を条件として無料駐車契約を結ぶといった方法も考えられる。
   また,市外から本市の観光地を目的地とする観光交通の場合,観光地へのアクセスの便利な鉄
  道駅やバス路線に近接する場所に大規模な駐車場を確保する。例えば,京阪淀駅に近い京都競馬
  場の駐車場(約8千台)の利用や地下鉄竹田車庫の上空等の設置が考えられる。
   いずれの場合も,駐車料金と公共交通機関の料金がネックの一つになることから,それらの料
  金を格安にセットした料金設定が必要である。
淀競馬場駐車場入口だよ!

<実験・実践,淀競馬場の駐車場をパークアンドライドの駐車場に!>


まちセン予定地(T.T)

<実験・実践,二条駅前の空き地(T.T)を嵐山観光の仮設駐車場に!>


竹田駅の車庫

<将来的に竹田駅の車庫の上に駐車場を>

  A フリンジパーキング
   都心部等の外縁部,すなわち「歩くまち」と「歩けるまち」の接点部分に,大規模な駐車場
  (フリンジパーキング)を設け,都心部等を目的地とする自由目的交通等の自動車をそこで駐車
  させ,そこから内部については徒歩又は公共交通機関の利用により,「歩くまち」への自動車の
  流入を抑制する。例えば都心部においては,御池地下駐車場の活用や堀川通や五条通といった広
  幅員幹線道路に地下駐車場を新設することが考えられる。駐車場の利用促進を図るため,駐車料
  金と公共交通機関の格安セット料金の設定,商店街や商業施設との連携による駐車料金のサービ
  ス等のソフト対応も併せて実施する必要がある。

  B 荷捌きタイムシェアリング・共同集配・デリバリーサービス
   公共交通機関,特にバスやLRTなどの円滑な運行を図るためには,自動車交通に大きな割合
  を占める物流交通の抑制が必要になるが,一方では種々の事業活動を行ううえで物流交通は必須
  のものである。この相反する要求を両立するためには,空間的なシェアリングは困難であること
  から。事業者の理解と協力を得て,例えば荷捌きや配送は午前中だけに限る等のタイムシェアリ
  ングの実施が有効であると考えられる。また,多様な小口輸送については共同集配の実施により
  物流交通そのものの抑制を図ることも必要である。さらに,百貨店や商店街での買物の場合,デ
  リバリーサービスを拡充すれば,来店者の自家用車利用の抑制が可能であると考えられる。

  C 交通規制の強化・トランジットモール
   上記の手法だけでは「歩くまち」の実現は困難であり,最終的には交通規制による強制的な自
  動車交通の排除が必要となる。例えば,幹線道路と細街路の交差点における自動車の横断を禁止
  する方法,同一道路の各交差点ごとに一方通行の方向を変える変則一方通行規制,時間帯別通行
  禁止などの方法により,細街路における通貨交通の排除を図ることが考えられる。
   また,幹線道路においても一般車の通行を禁止し,バスとタクシーだけを通行可とするトラン
  ジットモール化も検討する必要がある。例えば,都心部においては河原町通の御池〜四条間を荷
  捌きタイムシェアリングを併用しながらトランジットモールとすることもアイデアの一つとして
  考えられる。

(2)「むすぶ」ためのシステムの提案
  公共交通機関への転換を図るためには,公共交通機関の利用抵抗の低減化を図り,利用しやすい
 ように工夫する必要がある。公共交通機関の利用抵抗として最も大きなネックとなっているのが料
 金体系と利便性の問題であり,これらの問題を解決する方法として,次の手法を提案する。

  @ 共通乗車券システム
   事業者が異なる公共交通機関に乗り換えるたびに乗車券を購入するのは,利用者にとって大変
  手間なことである。1枚の共通乗車券や共通定期券で市内のあらゆる公共交通機関が利用できれば,
  そういった手間も省けて便利である。最近は,鉄道やバスにも磁気カード方式の採用が広がりつ
  つあり,そのような設備を少し改善すれば共通乗車券システムの構築も不可能ではない。

  A 乗継運賃制度の改善
   公共交通機関の乗り継ぎは日常よくあることだが,乗り継ぎのたびに別料金を支払わなければ
  ならず,その合計金額もばかにはならない。このことが公共交通機関の利用に対する大きな障壁
  となっている。そのため,たとえ乗り継ぎがあっても,出発地から目的地に至る交通費がリーズ
  ナブルなものになるような工夫が必要であるが,その方法としては,交通事業者にかかわらず,
  市内の料金体系を一つのものとしてとらえ,市内にいくつかのゾーンを設定し,乗り継ぎの有無
  を問わずゾーンごとの料金を設定する方法や乗車券の有効時間を設定し,その時間内は乗り継ぎ
  フリーとするような方法が考えられる。

  B 市バスと民営バスの共同運行・コミュニティバスの運行
   市内でも市バスと民営バスの路線が相当区間重複しているところがある。こういった場合,共
  同運行を行うことができれば,適切なダイアグラムを組むことが可能となり,利用客にとって利
  便性の向上が図れるほか,事業者にとっても合理的な経営が期待できる。
   また,バス路線の過疎地域であるとか地域の循環バスが必要なところでは,比較的狭い区域内
  で小型のバスを低料金で運行するコミュニティバスも必要である。将来の高齢社会を視野に入れ
  れば,福祉政策としても必要な施策である。(例:京阪宇治交通バスが八幡市の男山団地と枚方
  市の樟葉間を結ぶコミュニテイバスを運行している。高齢者にも評判がよい。)
角から出てくるbusby!!

<住宅街を走り,予想外に好評なコミュニテイバス>

(3)「ながす」ためのシステムの提案
  公共交通機関の利用を促進するためには,公共交通機関のスピードアップや輸送力の増強も必要
 である。また運行の定時性の確保や情報提供,さらに快適性や高齢者・身体障害者に対する配慮,
 省エネ等の地球環境問題に対する配慮も求められる。公共交通機関を円滑に,かつ環境や人にやさ
 しく「ながす」手法として次の手法を提案する。

  @ 総合的バスロケーションシステム・バス優先信号の導入
   バス停留所においてバスの運行位置を知らせるバスロケーションシステムを拡充するとともに,
  民営バスも含めた総合的なシステムに改善し,利用者に対する情報サービスを強化する。また,
  バスロケーションシステムの無線設備を活用すればバスの中央管制も可能となり,円滑なバスの
  運行が期待できる。
   さらにこの無線設備を活用して,主要交差点におけるバス優先信号を導入し,コンピューター
  処理による適切な交差点処理により,バスの運行のスピードアップが期待できる。

  A セルフサービス式ワンマンカーの導入
   現在,バスは降車時に運転手の確認のもとに料金を払うシステムになっているが,それを運転
  手の確認が不要なセルフサービス方式に変えると,入口と出口の区別が不要となり,どの出入口
  からも出入が可能となるため,バス停留所での停車時間の短縮が期待できる。特にこの方式は,
  連結バスや連結LRTなどの場合に有用である。

  B 深夜バスの導入
   深夜における都心部等から居住地までの移動については,これまでは個別のタクシー利用に頼
  っていたが,深夜に一定のバス路線の運行を行えば,何人ものタクシー利用者が1台のバスで帰宅
  することができ,利用者の負担の軽減や省エネにも効果が期待できる。

  C 基幹バス・DUOバス・LRTの導入
   バスの運行遅延は交通渋滞に巻き込まれることにより生じる。したがってバス専用レーンが確
  保されれば,バス運行のスピードアップを図ることが可能となる。その一つの方法として,市内
  の広幅員の幹線道路(御池通,堀川通,五条通等)の中央部にバス専用レーンを設け,そこに専
  用のバス(基幹バス)を走らせる。この場合,基幹バスのバス停も以前の市電の電停と同様なも
  のを設ける。他の交通システムの実施により幹線道路の自動車交通の抑制効果が現れてくれば,
  上記以外の幹線道路にもこの基幹バスを拡大する。
   また,基幹バスが順調に運行できるようなら,基幹バスの路線に架線を張り,DUOバス(架
  線があるところはトロリーバスで,架線のないところはエンジンで走るハイブリットバス)を走
  らせる。このDUOバスは,市内中心部では電力で走るため,環境に配慮した交通機関となる。
  特に交通渋滞が激しい道路においては,当該バス路線の地下化も行う。
   さらに次の段階として,DUOバスの路線の部分にレールを敷設すれば,LRTの運行が可能
  になる。LRTの候補路線としては,旧市電の外郭線,今出川通(白梅町〜出町〜百万遍),河
  原町通などが考えられるが,嵐電や叡電との相互乗り入れなども考慮する必要がある。
写真撮影(松村) 写真撮影(松村)

<高規格路面電車LRTを走らせよう! 写真は広島のグリーン・ムーバー>

(4)交通機関としての自転車の再評価
  京都の市街地は,ヒューマンスケールの適度なまちの広がりを有し,高低差もそれほどではない
 ため,自転車を利用するには適した市街地である。これまでも地下鉄駅に通勤通学用の自転車駐車
 場が整備されたりしてきたが,今後,観光客に対応したサイクル・アンド・ライド(奈良市では観光
 促進策として実施)や誰もが使いやすいレンタサイクル(JR学研都市線住道駅で試行)の導入,
 自転車専用道の整備等,自転車を環境にやさいしい都市交通機関として再評価し,その活用促進を
 図ることが求められる。

(5)提案手法の段階的整備
  これまで提案してきた手法については,それぞれの手法が相互に関連しており,最終的にはすべ
 ての手法を取り入れた総合的な展開が求められる。しかし,これを一気に整備することは不可能で
 あり,ソフト対応で可能なものや軽微な設備投資で可能なものから段階的に導入し,後で述べる社
 会実験等を行いながら,徐々にインフラ整備が必要な手法の導入を図る必要がある。

4 社会実験の提案〜システムの実現に向けて〜
(1)段階的実現イメージ
  目玉焼き都市構造,即ち「歩くまち」「歩けるまち」を段階的に実現するためには,空間形成,
 行動計画ともに段階的な進展を図る必要がある。
 <空間形成の段階的イメージ>
  @モデル空間の形成(一番目の卵を割ってフライパンの上に落とす。一つ目の目玉焼きを作る)
  Aモデル空間に続く空間形成の促進(二つ目,三つ目の目玉焼きを作る)
  B空間の成熟化と空間境界の明確化(目玉焼きをじっくりと焼き上げる。)
 <行動計画の段階的イメージ>
  @社会実験の実施
  A全市的な行政支援施策の構築・運用と新しい交通基盤の先行的整備
  B次世代型交通基盤ネットワークの構築
  新しい都市交通システムを構築していくための進め方としては,目標とする将来像の達成に向け
 た現実的なプログラムを作成・実行したうえで,一定の到達点に達するごとに取組の方向性を軌道
 修正しながら新システムに移行する際には,人々の生活スタイルや価値観の大きな変化,技術革新
 による交通基盤の導入等,きっかけとなる大きな状況変化が背景にある。現在起こりつつある成長
 型社会構造から成熟型社会構造への転換をある意味で誘導し,新交通基盤構築の気運を掘り起こし
 高めて行くためには,PR効果の高いアクションを展開することが必要である。そこで,行動計画
 の第一段階として次のような社会実験の提案を行いたい。

(2)社会実験の具体的内容
  @「むすぶ」社会実験
   交通機関の乗り継ぎ抵抗を低減化するため,「共通乗車券の導入」「ゾーン均一運賃制・時間
  均一運賃制の導入」「市バスと民営バスの共同運行」の社会実験を行う。これは,将来的に運輸
  連合体としての組織化を念頭において実施するものである。
  A 「ながす」社会実験
   路上公共交通機関であるバスの迅速性・定時性を確保するため,「専用レーンの設置」「バス
  優先信号の導入」の社会実験を行う。これは,将来的には基幹バス,トランジットモール,LR
  Tの導入を念頭において実施するものである。
  B 「とめる」社会実験
   市内への自動車交通の流入を抑制し,鉄道等の公共交通機関の利用を高めるとともに,歩行者
  が歩きやすい環境を確保するため,「まちなか(目玉焼きの黄身の部分)での交通規制の強化」
  「フリンジパークの設定」「荷捌きタイムシェアリングの実施」「拠点駅の設定と民間駐車場を
  開放したパークアンドライドの実施」の社会実験を行う。

(3)社会実験の総合的実施
  以上の社会実験を世界的にも情報発信できるセンセーショナルなイベントとして,市民・事業者
 ・行政が連携しながら,「むすぶ」「ながす」「とめる」の3つの実験を同時に総合的に実施する。
  この社会実験は@経済の活性化を図る,A社会実験の豊富な成果を得る,B新しい都市交通シス
 テム構築の気運を高めるという3つの大きな意味を有する。社会実験のフローは次に示すとおりで
 ある。
  @ステップ1(社会実験の枠組み設定)
   ・各種団体(交通事業者,商店街,大型店等)への参画の呼びかけ
   ・協力体制の構築(ボランティア参加登録,学識経験者を交えた研究会,警察との協議, マ
    スコミへの広報等)
   ・関係者による連携方法,役割分担の取り決め
   ・スケジュールの設定
  Aステップ2(事前準備)
   ・社会実験の実施PR(ポスター,マスコミ等)
   ・休日1日交通機関無料パスポートの全世帯への配布及び販売
   ・実験資材等の準備
   ・商店街でのイベント準備
  Bステップ3(社会実験の実施)
   ・バリケード等によるバス専用レーン化
   ・手旗によるバス優先信号
   ・改札等におけるボランティアによる1日パスポートのチェック
   ・実験データの調査
    Cステップ4(実験結果の分析)
      ・大学研究室やシンクタンクによる多面的分析
      ・実験を踏まえた今後のアクションプランの検討・作成
  この社会実験を実施するには一定の費用が必要となる。概略の試算では約3億円以上の経費がか
 かるが,京都市の負担金を初め,社会実験に対する国の補助制度の活用や交通事業者からの分担金,
 商店街や大型店等からの協賛金,1日パスポートの売り上げ等を勘案すると決して不可能な金額で
 はない。それよりも,このような社会実験を行うことにより得られる成果や効果は,実験費用の何
 十倍もの価値があるといっても過言ではないだろう。

パートナーシップ

5 むすび〜今後の展望〜
  以上のとおり,このレポートでは京都における新しい交通システムの方向性を示すとともに,そ
 の実現に向けた行動計画を具体的に提案した。実際に社会実験を行うことにより,新しい都市づく
 りに向けた豊富なデータ収集と,都市づくりの気運を盛り上げることが可能となり,なおかつ,総
 合的な視点から施策展開を行うことにより,都市が抱える様々な課題に一石を投じることが可能で
 あると,改めて確信している。今後,更なる研究を要するが,主に今後の大きな課題であると思わ
 れる点について,今後の展望も含めて触れることで結びとしたい。
  第一には,新しい交通システムと土地利用との相互関係である。交通システムが整備されるにし
 ても,「歩くまち」「歩けるまち」として相応しい土地利用が維持・誘導されなければ意味がない。
 そのような土地利用のあり方や誘導方策等について研究する必要がある。
  第二には,将来像の実現に向けたプロセスの具体化である。社会実験を実施するにしても,実施
 の推進母体となる組織の確立が必要であるし,京都市の将来ビジョンとして,この新しい都市交通
 システムを後押しするような打ち出しが必要である。更には,社会実験の効果を測定し,これをも
 とにモデル地区・モデル事業を実施して目に見える形で成功事例を確保することや,全市的な施策
 展開に向けて,市民の評価や意見を常に把握するための仕組みを持つことが必要である。
  第三には,市民の価値観やライフスタイルの転換である。地球環境問題一つを取り上げて見ても,
 市民一人一人がライフスタイルを転換しない限り,問題は解決しない。21世紀は自動車交通から公
 共交通機関に転換すべきといったところで,日常の買物なり通勤に自動車を利用していたのでは始
 まらない。たとえ少々不便であっても,普段の生活の中から公共交通機関を利用しようという意識
 の変革が求められるのである。


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Last Update:1999/11/24
編集文責 MUP事務局
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newmup@geocities.co.jp

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