Maid & Earl 2



 「うーん……?」
 めったやたらに暑かった夏を越えてようやく訪れてくれた、過ごしやすい季節のある日。
 書留で届けられた少佐の手紙を前に、僕は首をひねっていた。
 軍が使っている官製の封筒、便箋で届けられた手紙の内容自体は、とりたてておかしいと言えるものではない。
 使い古しのために線の細い部分がいささかぼやけたタイプライターの文字で、用件が二枚の紙に渡って綴られている。
 一枚目には、時候の挨拶、兵士たちを慰労するため基地内で催しのようなものをやるということと、そこに僕を招待するということが書いてあり、名刺大の招待状が、斜めに入れられた切れ目に差し込んであった。
 二枚目の方には少佐の演し物にティルダさんを借りたい、その際には規定の日当を支払うという内容が書いてあり、用意のいいことに、招待状よりも大きい判型の仮通行証が、こっちも切れ目に差し込む形で添えられていた。



退役した貧乏貴族の「僕」に、かつての上司である少佐から届けられた手紙。



 「気が付いていると思うけど、その、少佐が企画することだから、ええと」
 考えがまとまっていないのに話し始めてしまったから、すぐに何を言いたいのか自分でも分からなくなってしまった。
 少佐は悪い人じゃない。どちらかというと、面倒見がよくて頼りになる善い人なんだけど……。
 あたふたしている僕とは対照的に、ティルダさんは冷静に言った。
 「以前お会いしたときに、口頭でお話を頂いてありましたから」
 「……そうなの?」



それが切っ掛けで始まった、「僕」と少佐とメイド。



 「どんなことがあろうと、例え誘拐されて無理矢理基地に連れ込まれたとしても、絶対に何がなんでも来ないでください」
 なんですかそれは。
 口を挟むより早く、お食事の用意をしてきます、とティルダさんは書斎を出ていってしまった。
 後に残されたのは、呆然とした僕と、耳の裏をかいているベルベットだけ。
 「どうなっているんだ?」
 僕の質問の答えなど知るわけがないベルベットは、静かに首を傾げると、そのときになれば分かるだろ、とでも言うかのように、一声鳴いた。



と、一匹の猫の話。




発行日:
2011年 コミックマーケット80(予定)

頒布スペース:
8/14 日曜日 西2 た-21a 「boox」     委託先:東1 D-10b 「LOFLAT」

タイトル:
「Maid & Earl 2」

サイズ:
A5



表紙/挿絵
Primeさん(8/14 日曜日 東1 D-10b 「LOFLAT」)
趣味を織り交ぜる日記

執筆



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