発  端

 

僕も妻もそれぞれ両親の持ち家で育った。

犬や鶏を飼ったり、庭を掘り返して池を作ったり、カブト虫が欲しくて庭にカブト虫の好きな木を植えたり、いちごやいちじく、柿を採ったりと思い出も数多い。

子供達にも自分の家で思う存分元気に育ててやりたいという思いは昔からあった。

 自分の欲としても「一国一城の主」、「むしろ鶏口となるも牛後となることなかれ」…ちょっと違うか…とも思う。

 

妻の父は古い家に我慢して退職してから家を建て替えて、楽しい老後を送ろうと思っていた。しかし、その家で満足に住めたのは3年だった。脳腫瘍。

何十年も働いてやっと持った自分の城だったのに。

こんな思いから、お金を貯めてから家を建てるという選択もあるにはあったが、やはり、なるべく早めに自分の家を建てて、自分も長く住みたいし、子供もそこで育てたい、

そしてなにより、思い出を作りたいという気持ちも頭のどこかに湧いてきてはいた。

しかし、きっかけがなく、日々が淡々と過ぎていた。

 

アパートに越してきて5年が経ったある冬のこと 2人目の子供が生まれ、インフルエンザに気をつけていた僕たちは、某家電量販店で加湿器を購入した。

さらに部屋を暖かくするために、石油ファンヒーターをガンガン焚いていた。暖かく、そして、湿度を一定以上に保つことでインフルエンザを乗り切る作戦に出たのだ。

 

しかし、その作戦は裏目に出ることになった。そう、結露だ。ある日のこと 気がつくと玄関周りの壁に薄黒い汚れがあることに気がついた。カビだ。

そしてそれは寝室の棚の裏側や、タンスの裏側にも大量に発生していた。アパートに越してきてから生まれた長男はぜんそくがひどい。

カビがぜんそくをひどくするのではと悩むことになった。カビはアルコール消毒で一生懸命拭き取ったものの、しばらくするとまた発生してきた。

いたちごっこだった。

 

ある日のこと 夜中、寝ているとポタッ、ポタッと音がする。耳をすましていると、目の前の布団にポタッと水が落ちてきた。結露もとうとうここまできたか。

ポタッ、ポタッ、落下が続く。結露にしては激しすぎる。そして翌日も夜中になると水が落ちてくる。これは異常だ。

翌日、アパートの管理者に電話し、点検にきてもらう。その結果、上の階の洗濯排水のパイプが外れていた。

しかも、どうやら建築時から外れていたものの、上の階にずいぶん入居者がいなかったため今まで気がつかなかったものらしい。なんてこった。

 

もう嫌だ。こんなアパート。それが自分の家を持ちたいと思う気持ちを行動に移す引き金となった。

 

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